フリーランスの健康保険料はいくら?計算方法・安くする方法・加入先をわかりやすく解説

はじめに

フリーランスになると、会社員時代の健康保険から外れ、自分で加入先を選んで保険料を納める必要があります。「健康保険料は月いくらになるのか」「国民健康保険は高すぎるのではないか」と不安に感じる方も多いでしょう。

フリーランスの健康保険料は一律ではありません。加入する制度、前年の所得、住んでいる自治体、年齢、世帯人数などによって大きく変わります。また、2026年度からは従来の医療分・後期高齢者支援金分・介護分に加え、「子ども・子育て支援金分」も保険料に合算されています。世田谷区公式サイト

この記事では、フリーランスの健康保険料の目安、計算方法、加入先の選び方、保険料を安くする方法までわかりやすく解説します。

1. フリーランスの健康保険料はいくら?まず結論をわかりやすく解説

1-1. フリーランスの健康保険料は「加入先・所得・自治体・年齢」で変わる

フリーランスの健康保険料を決める主な要素は、次の4つです。

  • 国民健康保険、任意継続、家族の扶養、国民健康保険組合のどれに加入するか

  • 前年の所得がいくらか

  • 住んでいる自治体の保険料率

  • 40歳以上64歳以下かどうか

市区町村の国民健康保険に加入する場合は、原則として前年の所得をもとに保険料が計算されます。さらに、所得割率や均等割額は自治体ごとに異なります。

例えば2026年度の所得割率は、東京都新宿区では医療分7.51%、支援金分2.80%、子ども・子育て支援金分0.27%です。一方、横浜市では医療分8.33%、支援分2.62%、子ども分0.34%となっています。同じ所得でも、住む自治体によって年間保険料が変わることがわかります。新宿区役所+1

1-2. 会社員時代より高く感じやすい理由

会社員の健康保険料は、原則として勤務先と従業員が分担して負担します。給与明細から引かれているのは本人負担分だけです。

一方、フリーランスが任意継続に加入する場合は、会社が負担していた分も含めて全額を自分で支払います。そのため、任意継続の保険料は退職前に給与から引かれていた金額のおおむね2倍になることがあります。強開健保

国民健康保険には会社負担がありません。また、会社の健康保険とは異なり、国民健康保険には原則として「扶養」という考え方がなく、加入者一人ひとりに均等割がかかります。家族が多い世帯ほど保険料が高くなりやすい点にも注意が必要です。仙台市コールセンターガイド

さらに、国民健康保険料は前年所得をもとに計算されます。独立後に収入が減っていても、会社員時代の給与所得が高ければ、独立初年度の保険料が高額になることがあります。

1-3. 国民健康保険料の目安を年収別にシミュレーション

以下は、2026年度の東京都23区の保険料率を使った概算です。

「年収」ではなく、売上から必要経費や青色申告特別控除などを差し引いた後の事業所得を基準としています。

試算条件は次のとおりです。

  • 単身世帯

  • 所得は事業所得のみ

  • 所得軽減・減免なし

  • 合計所得2,400万円以下のため基礎控除43万円

  • 39歳以下は介護分なし

  • 40~64歳は介護分あり

  • 2026年度の東京都23区共通基準料率を使用

前年の事業所得39歳以下・年額月額換算40~64歳・年額月額換算
100万円約12万7,000円約1万600円約15万9,000円約1万3,300円
200万円約23万3,000円約1万9,400円約28万9,000円約2万4,100円
300万円約33万9,000円約2万8,200円約41万9,000円約3万4,900円
400万円約44万5,000円約3万7,100円約54万9,000円約4万5,800円
500万円約55万1,000円約4万5,900円約67万9,000円約5万6,600円
700万円約76万2,000円約6万3,500円約93万2,000円約7万7,700円
1,000万円約95万8,000円約7万9,800円約112万8,000円約9万4,000円

東京都23区の2026年度料率は、医療分7.51%、支援金分2.80%、介護分2.43%、子ども・子育て支援金分0.27%です。均等割も加算されます。新宿区役所+1

ただし、上記は軽減を適用していない概算です。低所得世帯には均等割の7割・5割・2割軽減があるため、実際の保険料が表より安くなる場合があります。新宿区役所

1-4. 40歳以上は介護保険料も加算される

40歳以上65歳未満の人は、介護保険の第2号被保険者となり、国民健康保険料に介護分が加算されます。

2026年度の東京都23区では、介護分として算定基礎額の2.43%と、加入者一人当たり年額1万7,800円の均等割が加算されます。新宿区役所

65歳になると国民健康保険料の介護分は原則として加算されなくなり、自治体から別途、介護保険料が請求されます。

2. フリーランスが加入できる健康保険の種類

2-1. 国民健康保険

国民健康保険は、市区町村が運営する公的医療保険です。会社の健康保険や家族の扶養などに入っていないフリーランスは、原則として住所地の国民健康保険に加入します。

保険料は主に前年所得、加入者数、年齢、自治体の料率によって決まります。所得が増えるほど所得割が高くなり、家族が加入すると人数分の均等割が増えるのが特徴です。

特別な職業要件がなく、ほとんどのフリーランスが加入できる一方、所得や家族構成によっては保険料が高くなることがあります。

2-2. 会社員時代の健康保険の任意継続

任意継続とは、退職後も最長2年間、会社員時代の健康保険に継続して加入できる制度です。

協会けんぽの場合、次の条件を満たす必要があります。

  • 退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間がある

  • 退職日の翌日から20日以内に申し込む

保険料は全額自己負担になりますが、退職時の標準報酬月額に上限があるため、会社員時代の給与が高かった人は国民健康保険より安くなることがあります。2026年度の協会けんぽでは、任意継続の標準報酬月額の上限は32万円です。強開健保+2強開健保+2

なお、現在は本人の申し出によって任意継続を途中でやめることも可能です。

2-3. 家族の健康保険の扶養に入る

配偶者や親などが会社の健康保険に加入している場合、収入などの条件を満たせば被扶養者になれる可能性があります。

一般的な収入基準は年収130万円未満です。60歳以上または一定の障害がある人は年収180万円未満、19歳以上23歳未満の親族は、配偶者を除き年収150万円未満が基準となる場合があります。あわせて、被保険者との生計維持関係も審査されます。強開健保+1

扶養に入れれば、通常は本人分の健康保険料が追加されません。ただし、フリーランスの収入判定で差し引ける経費は、税務上の必要経費と一致しないことがあります。最終的な認定基準は加入先の健康保険に確認しましょう。

2-4. 国民健康保険組合に加入する

国民健康保険組合は、同じ業種や職種に従事する人を対象にした健康保険です。医師、歯科医師、薬剤師、建設業、飲食業、クリエイターなどを対象とする組合があります。

加入条件は組合ごとに異なり、対象職種、居住地域、組合への加入、業務実態を証明する書類などが求められます。国保組合は同種の事業または業務に従事する人によって組織される制度です。厚生労働省+1

保険料が所得ではなく年齢や職種、家族人数などによる定額制になっている組合もあります。所得が高いフリーランスは、市区町村の国民健康保険より安くなる可能性があります。

2-5. 加入先ごとのメリット・デメリット比較

加入先主なメリット主なデメリット
国民健康保険職業を問わず加入しやすい。低所得世帯には軽減制度がある所得や家族人数によって高額になりやすい
任意継続扶養家族を追加しても通常は保険料が増えない。給与が高かった人は有利な場合がある全額自己負担。申し込み期限が短い
家族の扶養原則として本人の保険料負担がない収入や生計維持などの条件がある
国保組合高所得者は市区町村国保より安くなる場合がある対象業種・地域などの加入条件がある

どの制度が最も安いかは、所得だけでなく、退職前の標準報酬月額、家族人数、年齢、職種によって変わります。

3. 国民健康保険料の計算方法

3-1. 国民健康保険料の基本構成

市区町村の国民健康保険料は、主に次の項目を合計して計算します。

  • 所得割

  • 均等割

  • 平等割

  • 資産割

すべての自治体が4項目を採用しているわけではありません。所得割と均等割だけで計算する「2方式」の自治体もあれば、平等割を加えた「3方式」、資産割まで加えた「4方式」の自治体もあります。厚生労働省

3-2. 所得割とは

所得割は、前年の所得に応じて計算される部分です。

基本的な計算式は次のとおりです。

所得割=算定基礎額×自治体の所得割率

算定基礎額は、一般的には前年の総所得金額等から基礎控除を差し引いた金額です。

合計所得が2,400万円以下の場合、基礎控除は43万円です。2,400万円を超えると29万円、15万円と段階的に小さくなり、2,500万円を超えると基礎控除はありません。横浜市公式サイト+1

フリーランスの事業所得は、基本的に次の式で求めます。

事業所得=売上-必要経費-青色申告特別控除

3-3. 均等割とは

均等割は、所得に関係なく国民健康保険の加入者一人ひとりにかかる金額です。

本人だけでなく、配偶者や子どもも国民健康保険に加入すれば、それぞれに均等割が発生します。ただし、未就学児の均等割には法定の軽減制度があり、自治体独自の子育て世帯向け軽減が設けられている場合もあります。

所得が少ない世帯については、世帯全体の所得に応じて均等割が7割・5割・2割軽減されます。軽減を受けるためには、所得がゼロの場合でも住民税申告などが必要になることがあります。新宿区役所+1

3-4. 平等割・資産割がある自治体もある

平等割は、加入者数にかかわらず一世帯ごとにかかる保険料です。

資産割は、固定資産税額などをもとに計算する仕組みです。ただし、現在は資産割を廃止し、所得割と均等割を中心に計算する自治体が増えています。

平等割や資産割の有無は自治体によって異なるため、自分の市区町村の計算方式を確認する必要があります。

3-5. 医療分・後期高齢者支援金分・介護分の違い

国民健康保険料は、目的別にも分かれています。

医療分は、加入者の医療費などに充てられる部分です。

後期高齢者支援金分は、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度を支えるための部分です。

介護分は、介護保険制度を支えるための保険料で、40歳以上65歳未満の加入者にかかります。

さらに、2026年度からは児童手当の拡充などの財源に充てる「子ども・子育て支援金分」が加算されています。新宿区役所+1

3-6. 保険料には上限額がある

国民健康保険料は所得に応じて増えますが、無制限に高くなるわけではありません。各区分に賦課限度額が設けられています。

2026年度の法定上限を採用する自治体では、上限は次のとおりです。

区分年間上限額
医療分67万円
後期高齢者支援金分26万円
介護分17万円
子ども・子育て支援金分3万円

39歳以下または65歳以上の人は、介護分を除いて最大96万円です。40歳以上64歳以下の人は、介護分を含めて最大113万円となります。横浜市公式サイト+1

実際には、自治体の条例や世帯構成、加入月数によって異なるため、通知書や自治体の試算結果を確認してください。

3-7. 自治体ごとに保険料が違う理由

国民健康保険料率は、地域の医療費、加入者数、加入者の所得水準、都道府県に納める国民健康保険事業費納付金、公費による補助などをもとに決められます。横浜市公式サイト

そのため、所得と家族構成が同じでも、自治体が変われば所得割率や均等割額が変わることがあります。

なお、大阪府のように府内統一保険料率を採用し、同じ所得・世帯構成なら府内のどこに住んでも原則として同じ保険料になる地域もあります。大阪市公式サイト

4. フリーランスの健康保険料を自分で計算する手順

4-1. 前年の所得を確認する

まず、前年の確定申告書や青色申告決算書を確認します。

確認するのは売上ではなく、必要経費などを差し引いた所得金額です。複数の所得がある場合は、事業所得だけでなく給与所得、不動産所得、雑所得、配当所得、譲渡所得などが計算対象になることがあります。

2026年度の国民健康保険料は、原則として2025年1月1日から12月31日までの所得をもとに計算されます。世田谷区公式サイト+1

4-2. 基礎控除後の所得を計算する

合計所得が2,400万円以下であれば、前年所得から43万円を差し引きます。

例えば事業所得が300万円なら、一般的な算定基礎額は次のとおりです。

300万円-43万円=257万円

この257万円に自治体の所得割率を掛けます。

なお、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などは、所得税や住民税では利用できますが、国民健康保険の所得割計算では原則として直接差し引けません。

4-3. 自治体の料率を確認する

自治体のホームページで、年度ごとの次の金額を確認します。

  • 医療分の所得割率と均等割額

  • 後期高齢者支援金分の所得割率と均等割額

  • 介護分の所得割率と均等割額

  • 子ども・子育て支援金分の所得割率と均等割額

  • 平等割・資産割の有無

  • 賦課限度額

保険料率は年度ごとに改定される可能性があります。前年の料率ではなく、計算したい年度の数字を使いましょう。

4-4. 所得割・均等割・介護分を合算する

東京都23区に住む39歳以下の単身フリーランスで、前年の事業所得が300万円の場合を計算します。

算定基礎額は次のとおりです。

300万円-43万円=257万円

医療分は、おおむね次のように計算します。

257万円×7.51%+4万7,600円=約24万600円

支援金分は次のとおりです。

257万円×2.80%+1万7,600円=約8万9,600円

子ども・子育て支援金分は次のとおりです。

257万円×0.27%+1,873円=約8,800円

合計すると、年間保険料は約33万9,000円です。月額換算では約2万8,200円ですが、実際の納付回数は自治体によって異なるため、毎回の納付額が単純な12分の1になるとは限りません。

4-5. 自治体のシミュレーターを使う方法

自分で計算するのが難しい場合は、自治体が提供している国民健康保険料の試算システムを利用すると便利です。

一般的には、次の情報を入力します。

  • 前年の所得

  • 生年月日

  • 国民健康保険に加入する家族の人数

  • 加入予定月

  • 世帯主の収入状況

試算結果はあくまで目安です。産前産後軽減、非自発的失業者向け軽減、自治体独自の減免などが反映されないこともあります。横浜市公式サイト+1

4-6. 確定申告前後で保険料が変わるタイミング

国民健康保険料は、確定申告や住民税申告によって確定した前年所得をもとに計算されます。

多くの自治体では4月から翌年3月までの年間保険料を6月前後に決定し、納入通知書を送付します。例えば新宿区では2026年度分の通知書を2026年6月12日に発送しています。新宿区役所+1

確定申告が遅れた場合や所得情報を自治体が確認できない場合は、いったん均等割だけで計算され、所得が判明した後に再計算されることがあります。新宿外国人情報センター

5. フリーランスの健康保険料を安くする方法

5-1. 青色申告で所得を抑える

青色申告では、条件を満たすことで10万円、55万円または最大65万円の青色申告特別控除を利用できます。

青色申告特別控除は事業所得を減らすため、所得税や住民税だけでなく、国民健康保険料の所得割にも影響します。65万円控除を利用するには、複式簿記による記帳などに加えて、原則としてe-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存が必要です。国税庁+1

ただし、青色申告を選ぶだけで自動的に65万円控除を受けられるわけではありません。期限内の申請や正確な帳簿作成が必要です。

5-2. 必要経費を正しく計上する

事業に必要な支出を正しく経費に計上すると、事業所得が下がり、結果として国民健康保険料の所得割が安くなる可能性があります。

フリーランスが計上できる代表的な経費には、次のようなものがあります。

  • パソコン、周辺機器、ソフトウェア代

  • 通信費

  • 事務所家賃

  • 自宅兼事務所の家賃や光熱費の事業使用分

  • 交通費

  • 広告宣伝費

  • 外注費

  • 書籍、研修費

  • 税理士などへの報酬

私生活の支出まで経費にすることはできません。領収書や請求書を保存し、事業との関連性を説明できるようにしておきましょう。

5-3. 所得控除を活用する

社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除、扶養控除、iDeCoの掛金に関する小規模企業共済等掛金控除などを利用すると、所得税や住民税を抑えられます。

ただし、これらの所得控除は、一般的な国民健康保険料の所得割計算では直接差し引かれません。国民健康保険料を直接下げる効果があるのは、必要経費や青色申告特別控除など、事業所得そのものを減らすものが中心です。

所得控除は「国民健康保険料を下げる方法」というより、税金を含む年間の公的負担を軽くする方法として活用しましょう。

5-4. 任意継続と国民健康保険を比較する

退職してフリーランスになる場合は、国民健康保険へ切り替える前に任意継続の保険料を確認しましょう。

特に次のような人は、任意継続が安くなる可能性があります。

  • 退職前の給与が高かった

  • 前年所得が高い

  • 扶養する家族が多い

  • 国民健康保険料が上限付近になる

反対に、退職後の所得が大幅に下がる場合は、翌年度以降の国民健康保険料が安くなる可能性があります。1年目は任意継続、所得が下がった後は国民健康保険に切り替える選択肢も検討できます。

5-5. 国民健康保険組合に入れるか確認する

クリエイター、デザイナー、ライター、カメラマン、建設業、士業、医療関係者などは、職種別の国民健康保険組合に加入できる場合があります。

国保組合では、所得にかかわらず一定額の保険料となるケースがあるため、所得が高い人ほど市区町村の国民健康保険より有利になる可能性があります。

ただし、組合費が別途必要なことや、家族分の保険料が加算されることもあります。健康保険料だけでなく、組合費や給付内容まで含めて比較しましょう。

5-6. 家族の扶養に入れるか確認する

独立直後の収入が少ない場合は、配偶者や親の健康保険の扶養に入れる可能性があります。

扶養に入れれば健康保険料が原則として追加されないため、最も負担を抑えやすい方法です。

ただし、フリーランスの場合、税務上の所得ではなく、健康保険独自の基準で事業収入や経費を判定することがあります。確定申告上の所得が130万円未満でも、必ず扶養に入れるとは限りません。

5-7. 減免制度・軽減制度を利用する

国民健康保険には、主に次のような軽減・減免制度があります。

  • 低所得世帯に対する均等割の7割・5割・2割軽減

  • 倒産や解雇などによる非自発的失業者向け軽減

  • 災害による減免

  • 廃業や収入減少による減免

  • 産前産後期間の保険料軽減

  • 未就学児の均等割軽減

  • 自治体独自の子育て世帯向け軽減

所得減少による減免条件は自治体によって異なります。例えば大阪市では、退職、廃業、営業不振などによって当年度所得が前年より30%以上減少すると見込まれる世帯について、所得割の減免制度があります。大阪市公式サイト

保険料の納付が難しい場合は、滞納する前に自治体の国民健康保険窓口へ相談しましょう。

5-8. 引っ越しで保険料が変わるケースを確認する

自治体ごとに所得割率や均等割額が異なるため、引っ越しによって国民健康保険料が変わることがあります。

ただし、保険料だけを目的に引っ越すのは慎重に判断すべきです。家賃、住民税、交通費、自治体サービスなども含めた生活費全体で比較しましょう。

同じ都道府県内でも市区町村によって保険料が違う地域がある一方、大阪府のように統一保険料率を採用している地域もあります。

6. 国民健康保険・任意継続・扶養・国保組合はどれが安い?

6-1. 所得が低いフリーランスに向いている加入先

所得が低い場合は、家族の扶養に入れるかを最初に確認しましょう。条件を満たせば、健康保険料を原則として負担せずに済みます。

扶養に入れない場合は、国民健康保険が候補になります。低所得世帯には均等割の7割・5割・2割軽減があるため、所得や世帯構成によっては任意継続より安くなります。

ただし、所得がなくても申告していないと軽減が適用されないことがあります。所得ゼロでも、自治体から求められた申告を行いましょう。

6-2. 所得が高いフリーランスに向いている加入先

所得が高い人は、国民健康保険の所得割が大きくなります。

次の加入先を比較しましょう。

  • 任意継続

  • 職種別の国民健康保険組合

  • 市区町村の国民健康保険

任意継続には標準報酬月額の上限があり、国保組合には所得に連動しない定額制を採用しているところがあります。そのため、所得が高いほど任意継続や国保組合が有利になる可能性があります。

一方、市区町村の国民健康保険にも賦課限度額があるため、一定以上の所得では保険料が増えなくなります。必ず実額で比較してください。

6-3. 家族を扶養している場合の考え方

家族が多い場合は、任意継続や会社員である家族の健康保険が有利になりやすい傾向があります。

会社の健康保険では、条件を満たす被扶養者が増えても、通常は健康保険料が人数分増えるわけではありません。

一方、市区町村の国民健康保険では、家族もそれぞれ加入者となり、人数分の均等割が加算されます。配偶者や子どもの所得がゼロでも、均等割がかかることがあります。

6-4. 退職直後は任意継続も比較する

退職直後は、前年の給与所得をもとに国民健康保険料が計算されるため、国保が高くなりやすい時期です。

任意継続は退職前の標準報酬月額をもとに計算され、協会けんぽでは標準報酬月額に上限があります。退職前に次の金額を確認しておくと比較しやすくなります。

  • 任意継続の月額保険料

  • 国民健康保険の年間保険料

  • 家族を含めた総額

  • 介護保険料の有無

  • 組合独自の付加給付

任意継続の申し込み期限は、原則として退職日の翌日から20日以内です。期限を過ぎてから比較することはできないため、退職前から試算しておきましょう。強開健保+1

6-5. クリエイター・士業・建設業などは国保組合を確認する

次のような職種では、国保組合が設けられていることがあります。

  • デザイナー、イラストレーター、ライター

  • 写真家、映像制作者

  • 医師、歯科医師、薬剤師

  • 弁護士、税理士などの士業

  • 大工、内装、電気工事などの建設業

  • 飲食業、食品関連業

例えば建設業の国保組合では、建設産業を主な仕事としていることや、対象地域に居住していることなどが加入条件となります。東京特許国庫

職種名だけで判断せず、実際の仕事内容や所属団体、居住地域が条件を満たすか確認してください。

6-6. 加入先を選ぶときのチェックリスト

加入先を決めるときは、次の項目を確認しましょう。

  • 前年の所得はいくらか

  • 今年の所得はどの程度になる見込みか

  • 40歳以上65歳未満か

  • 国民健康保険に加入する家族は何人か

  • 家族の健康保険の扶養に入れるか

  • 任意継続の申し込み期限内か

  • 退職前の標準報酬月額はいくらか

  • 対象となる国保組合があるか

  • 国保組合の組合費を含めても安いか

  • 自治体の軽減・減免を利用できるか

単身で所得が低ければ国民健康保険、扶養家族が多ければ任意継続、高所得で対象職種に該当すれば国保組合が有利になる可能性があります。ただし、最終的には個別の試算が必要です。

7. フリーランスが国民健康保険に加入する手続き

7-1. 退職後に国民健康保険へ切り替える期限

会社を退職して健康保険の資格を失った場合は、原則として資格喪失日から14日以内に国民健康保険の加入手続きを行います。通常、退職日の翌日が資格喪失日です。厚生労働省

国民健康保険への切り替えは自動ではありません。会社が健康保険の資格喪失手続きをしても、市区町村の国民健康保険に自動加入するわけではないため、自分で届け出る必要があります。

7-2. 加入手続きに必要な書類

一般的に必要となる書類は次のとおりです。

  • 健康保険資格喪失証明書

  • マイナンバーカードまたは個人番号確認書類

  • 運転免許証などの本人確認書類

  • 世帯主と加入者の情報

  • 委任状

自治体によっては、退職証明書や離職票で手続きできることもあります。家族分をまとめて切り替える場合は、家族全員の資格喪失日が確認できる書類を用意しましょう。

7-3. 手続きできる場所

基本的には、住民票のある市区町村の国民健康保険担当窓口で手続きします。

自治体によっては、次の方法にも対応しています。

  • 郵送

  • オンライン申請

  • マイナポータルを利用した申請

  • 支所や出張所での手続き

必要書類や申請方法は自治体によって異なるため、事前にホームページで確認しましょう。

7-4. 保険料の納付方法

国民健康保険料の主な納付方法は次のとおりです。

  • 口座振替

  • 納付書

  • コンビニエンスストア

  • スマートフォン決済アプリ

  • クレジットカード

  • インターネットバンキング

  • 年金からの特別徴収

対応する方法は自治体によって異なります。口座振替を原則としている自治体もあります。横浜市公式サイト

年間保険料を12回で支払うとは限りません。例えば新宿区では6月から翌年3月までの10回払い、世田谷区では年度当初から加入している場合、7月から翌年3月までの9回払いとなります。世田谷区公式サイト+1

7-5. 手続きが遅れた場合の注意点

加入手続きが遅れても、保険料は手続きした月からではなく、国民健康保険の資格が発生した月までさかのぼって請求されます。

例えば4月に退職し、8月に国保加入の届け出をした場合でも、原則として4月分から保険料を支払います。横浜市公式サイト+1

数か月分をまとめて請求される可能性があるため、退職後は早めに手続きしましょう。

8. フリーランスの健康保険料でよくある注意点

8-1. 売上ではなく所得で保険料が決まる

フリーランスの国民健康保険料は、基本的に売上ではなく所得をもとに計算されます。

例えば年間売上が600万円、必要経費が200万円、青色申告特別控除が65万円なら、事業所得は次のとおりです。

600万円-200万円-65万円=335万円

国民健康保険料の所得割では、さらに基礎控除を差し引いた金額が計算の基礎になります。

同じ売上でも、事業に必要な経費の金額によって保険料は変わります。

8-2. 赤字や低所得でも保険料がかかることがある

事業所得が赤字で所得割がゼロになっても、均等割や平等割がかかることがあります。

ただし、世帯所得が一定基準以下であれば、均等割などが7割・5割・2割軽減されます。所得がない場合でも、申告をしていなければ軽減判定ができないことがあるため注意してください。

赤字で保険料の支払いが難しい場合は、自治体独自の減免や分割納付を相談しましょう。

8-3. 副業から独立した場合の保険料

会社員として健康保険に加入しながら副業をしている間は、原則として勤務先の健康保険が継続します。副業収入が増えただけで、直ちに国民健康保険へ切り替わるわけではありません。

退職して独立すると、前年の給与所得と副業の事業所得などを含む総所得をもとに国民健康保険料が計算されます。

そのため、会社員時代に高い給与と副業所得があった人は、独立初年度の国民健康保険料が特に高くなる可能性があります。

8-4. 扶養から外れるタイミング

家族の健康保険の扶養に入っている人が、今後の年間収入見込みなどの基準を超えた場合は、扶養から外れる手続きが必要です。

扶養の判定は、必ずしも1月から12月までの確定した収入だけで行うわけではありません。月収や契約状況などから、今後1年間の収入見込みで判断されることがあります。

扶養資格を失った場合は、その日から国民健康保険などに加入します。手続きが遅れると、扶養資格を失った日にさかのぼって国民健康保険料が請求される可能性があります。

8-5. 保険料は社会保険料控除の対象になる

自分や生計を一にする家族のために支払った国民健康保険料は、確定申告で社会保険料控除の対象になります。

その年に実際に支払った金額の全額を所得から控除できます。国税庁+1

ただし、控除できるのは年間保険料として通知された金額ではなく、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った金額です。

8-6. 住民税・国民年金との違い

国民健康保険料、住民税、国民年金保険料は、それぞれ別の制度です。

項目主な目的金額の決まり方
国民健康保険料病気やけがの医療費前年所得、自治体、年齢、世帯人数など
住民税自治体サービスの財源前年所得や所得控除など
国民年金保険料老後・障害・遺族年金原則として全国一律
介護保険料介護サービスの財源年齢、所得、自治体など

フリーランスは、国民健康保険料だけでなく、住民税と国民年金保険料も自分で支払います。独立前には、税金と社会保険料を合わせた資金計画を立てておきましょう。

9. フリーランスの健康保険料に関するよくある質問

9-1. フリーランスの健康保険料は月いくらですか?

所得、自治体、年齢、家族人数によって異なるため、一律の金額ではありません。

2026年度の東京都23区で、39歳以下の単身者、前年の事業所得300万円、軽減なしの場合は、年間約33万9,000円、月額換算で約2万8,200円が目安です。

事業所得500万円なら月額換算約4万5,900円、700万円なら約6万3,500円となります。40歳以上64歳以下は介護分が加算されます。

9-2. 国民健康保険料が高すぎるときはどうすればいいですか?

まず、通知書の所得額、加入人数、加入期間に誤りがないか確認してください。

そのうえで、次の方法を検討します。

  • 任意継続と比較する

  • 国保組合に加入できないか確認する

  • 家族の扶養に入れるか確認する

  • 低所得軽減や所得減少による減免を申請する

  • 必要経費や青色申告特別控除を正しく反映する

  • 自治体に分割納付を相談する

収入が急減した場合でも、国民健康保険料は前年所得をもとに計算されます。支払いが難しいときは、滞納する前に自治体へ相談しましょう。

9-3. フリーランスは健康保険に入らないことはできますか?

原則としてできません。

日本国内に住所があり、勤務先の健康保険、家族の扶養、後期高齢者医療制度、生活保護などの対象でない人は、国民健康保険の被保険者となります。厚生労働省

民間の医療保険に加入していても、公的健康保険の代わりにはなりません。

9-4. 任意継続と国民健康保険はどちらが得ですか?

次の条件によって変わります。

  • 退職前の標準報酬月額

  • 前年所得

  • 住んでいる自治体

  • 年齢

  • 扶養家族の人数

  • 国民健康保険の軽減・減免の有無

前年所得が高い人や扶養家族が多い人は、任意継続が有利になりやすい傾向があります。単身で退職後の所得が低い人は、国民健康保険が安くなる可能性があります。

退職前に、任意継続の月額と自治体の国民健康保険料を必ず試算しましょう。

9-5. 開業届を出すと健康保険料は上がりますか?

開業届を提出したことだけを理由に、健康保険料が上がるわけではありません。

国民健康保険料は、基本的に前年所得や加入者数などで決まります。開業届の有無よりも、確定申告で申告した所得金額が影響します。

ただし、開業して事業所得が増えれば、翌年度の国民健康保険料が上がる可能性があります。

9-6. 確定申告をすると健康保険料は安くなりますか?

確定申告をしただけで自動的に安くなるわけではありません。

必要経費や青色申告特別控除を正しく申告し、事業所得が低くなれば、国民健康保険料の所得割が安くなる可能性があります。

また、所得が少ない人でも申告をしていないと、均等割の軽減を受けられないことがあります。所得ゼロや赤字の場合も、必要に応じて確定申告または住民税申告を行いましょう。

9-7. 健康保険料は経費にできますか?

国民健康保険料や任意継続の健康保険料は、事業の必要経費にはできません。国税庁も、国民健康保険税や国民年金保険料は必要経費にならないと案内しています。国税庁

ただし、支払った健康保険料は確定申告で社会保険料控除として、原則全額を所得から差し引けます。

帳簿上は事業の経費ではなく、事業主貸などの勘定科目で処理するのが一般的です。

まとめ

フリーランスの健康保険料は、加入先、前年所得、自治体、年齢、家族人数によって決まります。市区町村の国民健康保険に加入する場合、売上ではなく、必要経費や青色申告特別控除を差し引いた後の所得が重要です。

健康保険料を抑えるには、必要経費を正しく計上して青色申告を活用するだけでなく、国民健康保険、任意継続、家族の扶養、国民健康保険組合を比較する必要があります。

退職直後は前年の給与所得によって国民健康保険料が高くなりやすいため、任意継続の20日以内という期限を過ぎる前に試算しましょう。所得が急減した場合や保険料の支払いが難しい場合は、自治体の軽減・減免制度も確認することが大切です。