フリーランスは失業保険をもらえる?廃業・収入減で使える給付金と備え方を解説
はじめに
フリーランスとして働いていると、案件の終了、取引先の都合、体調不良、業界の変化などによって、収入が急に減ることがあります。会社員であれば「失業保険をもらいながら次の仕事を探す」という選択肢がありますが、フリーランスや個人事業主の場合は同じように受給できるのか、不安に感じる方も多いでしょう。
結論からいうと、現在フリーランスとして働いている人が、単に「仕事がなくなった」「売上が落ちた」「廃業した」という理由だけで、失業保険を受け取れるわけではありません。失業保険、正式には雇用保険の基本手当は、原則として雇用保険に加入していた労働者が、失業状態になったときに受け取る制度だからです。雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定、再就職の促進を目的とする制度とされています。
ただし、会社員を退職してフリーランスになる前のタイミングや、退職後に開業した人が一定の条件を満たす場合など、例外的に基本手当を受け取れる可能性はあります。また、失業保険の対象外でも、住居確保給付金、求職者支援制度、生活福祉資金貸付制度、国民年金保険料の免除、国民健康保険料の減免など、生活を支える制度は複数あります。
この記事では、「フリーランス 失業保険」で調べている方に向けて、フリーランスが失業保険をもらえるケース・もらえないケース、廃業や収入減で使える給付金、事業継続や再起を目指すための支援制度、そして会社員から独立する前に確認すべきポイントを解説します。
1. フリーランスは失業保険をもらえる?結論から解説
1-1. 原則としてフリーランス・個人事業主は失業保険の対象外
フリーランスや個人事業主は、原則として失業保険の対象外です。なぜなら、失業保険は雇用保険に加入していた人が、離職後に再就職を目指すときに支給される制度だからです。
会社員やアルバイト、パートなどで一定の条件を満たして雇用されている人は、雇用保険の被保険者になります。一方、フリーランスは特定の会社に雇用される労働者ではなく、自分で事業を営む立場です。そのため、自分自身を雇用保険の被保険者として加入させることは基本的にできません。
つまり、現在フリーランスとして活動している人が「案件が途切れた」「売上がゼロになった」「仕事をやめた」というだけでは、会社員の失業と同じ扱いにはなりません。ここが、フリーランスの失業保険を考えるうえで最も重要なポイントです。
1-2. 失業保険は「雇用保険に加入していた人」のための制度
失業保険と呼ばれる給付は、正式には雇用保険の「基本手当」です。基本手当を受けるには、単に仕事がないだけではなく、雇用保険に加入していた期間や離職理由、求職活動の状況などが確認されます。
一般的な離職者の場合、基本手当の受給資格には、離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。倒産や解雇などによる特定受給資格者、または特定理由離職者に該当する場合は、離職の日以前1年間に通算6か月以上でも受給資格を得られる場合があります。
そのため、会社員時代に雇用保険へ加入していた人が退職した場合は、退職後の行動次第で基本手当を受け取れる可能性があります。一方、最初からフリーランスとして働いていて、雇用保険に加入していた期間がない人は、基本手当の対象になりません。
1-3. 「仕事がなくなった」「廃業した」だけでは受給できない理由
フリーランスが失業保険を受け取れない大きな理由は、「失業状態」の考え方にあります。
ハローワークでは、失業とは、離職した人が「就職しようとする意思」と「いつでも就職できる能力」があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動をしている状態と説明されています。病気やけがですぐ就職できない場合、しばらく休養する場合、家事に専念してすぐ働けない場合などは、失業給付を受けられないとされています。
フリーランスの場合、仕事がない状態でも「事業を継続している」「自営業を営んでいる」「開業準備に専念している」と判断されると、失業状態とは認められにくくなります。ハローワークの案内でも、自営を開始または自営準備に専念する人、自分名義で事業を営んでいる人などは、原則として基本手当を受けられない状態として示されています。
つまり、廃業したかどうかだけでなく、「再就職の意思があるか」「すぐ働ける状態か」「求職活動をしているか」「自営業を続けていないか」が判断されます。
1-4. 例外的に受け取れる可能性があるケース
フリーランスでも、次のようなケースでは失業保険を受け取れる可能性があります。
たとえば、会社員を退職したあと、すぐに開業せず、ハローワークで求職の申し込みをして再就職活動をしている場合です。この場合、会社員時代の雇用保険加入期間や離職理由などの要件を満たしていれば、基本手当の対象になる可能性があります。
また、退職後にフリーランスとして開業した人でも、「事業開始等による受給期間の特例」を申請していた場合、事業を休業・廃業したあとに再就職活動を始めることで、基本手当を受け取れる可能性があります。2022年7月1日から、離職後に事業を開始した人などについて、事業を行っている期間を最大3年間、基本手当の受給期間に算入しない特例が設けられています。
ただし、どのケースでも最終的な判断はハローワークが行います。開業届の有無、収入の有無、求職活動の実態、事業の状況によって判断が変わるため、自己判断で進めないことが大切です。
2. フリーランスが失業保険を受け取れる可能性があるケース
2-1. 会社員を退職後、フリーランスになる前に求職活動をしている場合
会社員を退職したあと、まだ開業しておらず、再就職する意思がある場合は、失業保険を受け取れる可能性があります。
たとえば、「会社を退職したが、すぐにフリーランスになるか、再就職するか迷っている」「まずはハローワークで求人を探しながら、今後の働き方を考えたい」という状態であれば、失業状態と認められる余地があります。
この場合は、退職後に会社から受け取る離職票を持って、住居地を管轄するハローワークで求職の申し込みを行います。そのうえで、受給資格が決定され、待期期間や給付制限、認定日などの流れに沿って手続きが進みます。
注意したいのは、最初から「再就職するつもりはなく、フリーランスとして開業する」と決めている場合です。自営業を開始する、または自営準備に専念する場合は、失業状態とは認められにくくなります。フリーランスになるかどうか迷っている段階でも、実際に営業活動や契約締結、開業準備をどこまで進めているかによって判断が変わります。
2-2. 退職後に開業した人が使える「受給期間の特例」
会社員を退職してからフリーランスとして開業する人は、「事業開始等による受給期間の特例」を必ず確認しておきたいところです。
雇用保険の基本手当は、原則として離職日の翌日から1年以内に受け取る必要があります。しかし、退職後すぐに事業を始めた人は、その1年の間に基本手当を受け取れないまま受給期間が過ぎてしまうことがあります。
この問題に対応するため、離職後に事業を開始した人、事業に専念し始めた人、事業の準備に専念し始めた人については、事業の実施期間を最大3年間、受給期間に算入しない特例が設けられています。これにより、事業を休業・廃業したあとに再就職活動をする場合、基本手当を受け取れる可能性が残ります。
ただし、この特例は自動的に適用されるわけではありません。原則として、事業を開始した日、事業に専念し始めた日、または事業準備に専念し始めた日の翌日から2か月以内に、住居地を管轄するハローワークへ申請する必要があります。
2-3. 開業後に廃業・休業した場合に基本手当を受け取れる条件
退職後にフリーランスとして開業し、その後に廃業・休業した場合でも、受給期間の特例を申請していれば、基本手当を受け取れる可能性があります。
主な条件は、会社員時代の雇用保険加入期間など基本手当の受給資格があること、受給期間の特例を適切に申請していること、事業を休業または廃業し、再就職の意思と能力があること、ハローワークで求職活動を行うことです。
また、特例の対象になるには、事業の実施期間が30日以上あること、その事業について就業手当または再就職手当の支給を受けていないこと、事業によって自立できないと認められる事業ではないことなどの条件も示されています。
ここで重要なのは、廃業したから自動的に失業保険がもらえるわけではないという点です。基本手当は「事業をやめた人への補償」ではなく、「再就職を目指す人への給付」です。そのため、廃業後に会社員として再就職する意思があるか、実際に求職活動をしているかが問われます。
2-4. 受給できないケース:すぐ開業した・再就職の意思がない・雇用保険加入期間が足りない
フリーランスが失業保険を受け取れない代表的なケースは、次のとおりです。
まず、会社を退職してすぐに開業し、受給期間の特例も申請していないケースです。この場合、基本手当の受給期間である原則1年を過ぎてしまうと、あとから廃業しても受給できない可能性が高くなります。
次に、再就職の意思がないケースです。「フリーランスを続けたいが、しばらく仕事がないので失業保険をもらいたい」という考え方では、基本手当の趣旨に合いません。基本手当は、積極的に就職しようとする人を支える制度だからです。
さらに、会社員時代の雇用保険加入期間が足りないケースも受給できません。一般的には離職前2年間に通算12か月以上、特定受給資格者や特定理由離職者では離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間が必要です。
2-5. 会社員時代の離職票・雇用保険被保険者証を確認する
失業保険の受給可能性を確認するには、会社員時代の書類を整理することが第一歩です。特に重要なのは、離職票と雇用保険被保険者証です。
離職票には、退職理由、賃金、離職日など、基本手当の判断に必要な情報が記載されます。雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していたことを確認する書類です。会社から交付されない場合や内容に疑問がある場合は、ハローワークで確認できることがあります。厚生労働省は、雇用保険被保険者証などの記載事項により、雇用保険加入手続きが適正に行われているか確認できると案内しています。
フリーランスとして独立する前後は、開業準備に意識が向きがちですが、失業保険の可能性を残したいなら、退職直後に必要書類を確認し、早めにハローワークへ相談しましょう。
3. 失業保険を申請する前に知っておきたい注意点
3-1. 「失業状態」と認められるための条件
失業保険を受け取るには、ハローワークで失業状態と認められる必要があります。失業状態とは、働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、職業に就けない状態です。
そのため、単に収入がないだけでは不十分です。たとえば、病気やけがで今すぐ働けない、育児や介護で就職できない、しばらく休むつもりでいる、開業準備に専念しているといった場合は、失業状態と認められない可能性があります。
フリーランスの場合は、「仕事がない」と「失業状態」は同じではありません。事業を継続しているのか、休業しているのか、廃業しているのか、再就職活動をしているのかを明確に説明できるようにしておきましょう。
3-2. 開業届を出すタイミングと受給への影響
開業届を出すタイミングは、失業保険の受給に大きく影響する可能性があります。
開業届を提出し、自営業を開始したと判断されると、原則として失業状態ではなくなります。ハローワークの案内でも、自営業を開始する人は失業の状態を満たさなくなるため、届出が必要とされています。
ただし、開業届を出したから絶対にすべての給付が受けられない、という単純な話ではありません。求職活動中に創業の準備や検討を行う場合は、支給可能な場合があるとされています。重要なのは、実際の活動内容と収入、事業の継続性、再就職の意思です。
退職後にフリーランスになる予定がある人は、開業届を出す前にハローワークで相談し、基本手当、再就職手当、受給期間の特例のどれが関係するのか確認しておくことをおすすめします。
3-3. 仕事の受注・収入がある場合は申告が必要
失業保険の受給手続き中に、単発の仕事、業務委託、アルバイト、内職、手伝いなどで収入が発生した場合は、必ず申告が必要です。
ハローワークの失業認定申告書では、就職や就労には、自営業を営んだ場合や自営業を開始した場合なども含まれるとされています。
「少額だから申告しなくてよい」「クラウドソーシングの小さな案件だから問題ない」と自己判断するのは危険です。収入の有無だけでなく、働いた日数や時間、仕事内容によって基本手当の支給に影響する場合があります。
フリーランス経験者は、過去の取引先から単発で相談や作業を依頼されることもあります。受給中に仕事をした場合は、金額の大小にかかわらず、認定日に正しく申告しましょう。
3-4. 不正受給になりやすいケース
フリーランスが特に注意したいのが、不正受給です。
ハローワークは、不正受給の典型例として、実際には行っていない求職活動を申告する、就職や就労をしたのに申告しない、自営や請負で事業を始めたのに申告しない、内職や手伝いとその収入を申告しない、会社役員に就任したのに申告しないといったケースを挙げています。
フリーランスの場合、「請負」「業務委託」「副業」「手伝い」「試しに受けた案件」など、会社員の就職とは違う形で仕事をすることが多いため、申告漏れが起きやすくなります。
不正受給と判断されると、受け取った金額の返還だけでなく、追加の納付を求められる可能性があります。悪質な場合は刑罰の対象になることもあります。少しでも迷う場合は、自己判断せず、ハローワークに確認しましょう。
3-5. 判断に迷ったらハローワークへ相談する
フリーランスの失業保険は、個別事情によって判断が分かれやすい分野です。開業届を出しているか、実際に事業を継続しているか、売上があるか、求職活動をしているか、会社員時代の雇用保険加入期間があるかによって結論が変わります。
特に、退職後にフリーランスになる予定の人は、退職後すぐにハローワークへ相談しましょう。開業してから相談するよりも、開業前に相談したほうが、基本手当、再就職手当、受給期間の特例などの選択肢を整理しやすくなります。
「フリーランスだから失業保険は絶対無理」と決めつける必要はありません。一方で、「会社員時代に雇用保険に入っていたから必ずもらえる」と考えるのも危険です。正確な判断には、ハローワークでの確認が欠かせません。
4. フリーランスが廃業・収入減で使える給付金・支援制度
4-1. 住居確保給付金:家賃の支払いが苦しいときの支援
フリーランスが収入減でまず確認したい制度のひとつが、住居確保給付金です。
住居確保給付金は、離職などにより住居を失った人、または失うおそれが高い人に対して、就職に向けた活動などを条件に、一定期間、家賃相当額を支給する制度です。一定の収入・資産要件を満たす必要があります。
フリーランスの場合、廃業だけでなく、個人の責任によらない理由で収入が大きく減った場合に対象となる可能性があります。開業届を出しているから使えない、と決まっているわけではありません。ただし、自治体ごとに相談窓口や運用が異なるため、まずは住んでいる自治体の生活困窮者自立相談支援機関に相談しましょう。
家賃は固定費の中でも負担が大きく、滞納が続くと生活再建が難しくなります。収入減が見えた時点で、早めに相談することが重要です。
4-2. 求職者支援制度・職業訓練受講給付金:再就職やスキル習得を目指す場合
フリーランスを廃業して再就職を目指す場合や、スキルを身につけて働き方を立て直したい場合は、求職者支援制度を確認しましょう。
求職者支援制度は、再就職、転職、スキルアップを目指す人が、月10万円の生活支援の給付金を受けながら、無料の職業訓練を受講できる制度です。ハローワークが、訓練開始前から訓練期間中、訓練終了後まで求職活動をサポートします。離職して雇用保険を受給できない人や、収入が一定額以下の在職者なども対象になり得ます。
対象となる訓練には、Webデザイン、プログラミング、事務、介護、医療事務など、地域や時期によってさまざまなコースがあります。フリーランスとしての経験を活かしつつ、再就職に必要なスキルを補いたい人に向いています。
ただし、職業訓練受講給付金には本人収入、世帯収入、資産、出席率などの要件があります。給付金を受けられない場合でも、無料の職業訓練を受講できることがあるため、ハローワークで相談してみましょう。
4-3. 生活福祉資金貸付制度:一時的に生活費が足りない場合
一時的に生活費が足りない場合は、生活福祉資金貸付制度も選択肢になります。
生活福祉資金貸付制度には、生活再建までの間に必要な生活費用を貸し付ける総合支援資金などがあります。生活支援費は、二人以上の世帯で月20万円以内、単身世帯で月15万円以内などの上限が設けられています。
給付金ではなく貸付なので、原則として返済が必要です。そのため、利用前には返済計画をよく考える必要があります。ただ、急な収入減で家賃や食費、公共料金の支払いが難しいときには、生活を立て直すためのつなぎ資金として役立つ場合があります。
相談先は、地域の社会福祉協議会です。フリーランスとして収入が不安定になった場合でも、早めに相談することで、ほかの支援制度につないでもらえる可能性があります。
4-4. 国民年金保険料の免除・納付猶予
フリーランスは、原則として国民年金に加入し、自分で保険料を納めます。しかし、廃業や収入減で支払いが難しくなった場合は、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できる可能性があります。
日本年金機構は、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度について案内しており、申請は原則として毎年度必要としています。また、失業などによる特例免除承認者は、翌年度も申請が必要です。
免除や猶予を受けた期間があると、将来の年金額に影響する場合があります。ただし、未納のまま放置すると、障害年金や遺族年金の受給に影響するおそれもあります。免除された保険料は10年以内であれば追納できると案内されています。
支払いが難しいときは、未納にする前に、市区町村の年金窓口または年金事務所へ相談しましょう。
4-5. 国民健康保険料の減免・軽減
フリーランスは、国民健康保険に加入している人が多いでしょう。収入が減っても、前年所得をもとに保険料が決まるため、廃業直後や売上減少時に負担が重く感じられることがあります。
国民健康保険料については、災害その他特別な事情により納付が困難な場合、減免や納付猶予を受けられる場合があります。厚生労働省は、市町村国保の場合は住んでいる市町村の国民健康保険窓口へ、国民健康保険組合の場合は加入している組合または都道府県の窓口へ問い合わせるよう案内しています。
減免の条件や必要書類は自治体によって異なります。廃業届、確定申告書、収入減を示す帳簿や売上台帳などが必要になることもあります。
国民健康保険料を滞納すると、延滞金や保険証の扱いに影響する可能性があります。支払いが難しいと感じたら、納期限を過ぎる前に相談することが大切です。
4-6. 生活保護:生活の立て直しが難しい場合の最終的な支援
収入や資産、ほかの支援制度を活用しても生活が成り立たない場合は、生活保護も選択肢になります。
生活保護は、資産や能力などを活用してもなお生活に困窮する人に対して、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度です。支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。
「フリーランスだから申請できない」「住むところがないと申請できない」「書類が全部そろっていないと申請できない」と誤解されることがありますが、厚生労働省は、必要な書類がそろっていなくても申請でき、住むところがない人でも申請できると案内しています。
生活保護は最後の手段というイメージがありますが、生活を守るための制度です。生活費、家賃、医療費に困っている場合は、早めに福祉事務所へ相談しましょう。
5. 事業継続・再起を目指すフリーランスが確認したい制度
5-1. 小規模事業者持続化補助金:販路開拓や集客に使える補助金
廃業ではなく、事業を立て直したいフリーランスは、小規模事業者持続化補助金を確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化などに取り組む際に使える補助金です。Webサイト改善、チラシ作成、広告出稿、展示会出展、店舗改装など、売上回復や集客につながる取り組みに活用できる場合があります。
2026年時点でも公募が行われており、たとえば商工会地区向けの一般型・通常枠では、第20回公募の公募要領公開日や申請受付開始日、申請受付締切などのスケジュールが公表されています。
ただし、補助金は後払いが基本です。採択されたあと、事業を実施し、経費を支払い、報告を行ってから補助金が支払われます。資金繰りが厳しい状態で使う場合は、先に自己資金やつなぎ資金が必要になる点に注意しましょう。
5-2. IT導入補助金:業務効率化やデジタル化に使える補助金
IT導入補助金は、会計ソフト、受発注システム、予約管理ツール、EC関連ツール、セキュリティ対策など、業務効率化やデジタル化に使える補助金です。
なお、2026年時点では、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」という名称に変更され、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的に、AIを含むITツールの導入を支援する制度として案内されています。
フリーランスでも対象要件を満たせば、申請できる可能性があります。たとえば、請求書発行や会計処理に時間がかかっている、顧客管理が属人的になっている、予約や販売をオンライン化したいといった場合に検討しやすい制度です。
ただし、対象となるITツールや登録事業者、申請枠、補助率、締切は年度ごとに変わります。申請前には必ず公式サイトで最新情報を確認しましょう。
5-3. 自治体独自の給付金・補助金
国の制度だけでなく、都道府県や市区町村が独自に実施している給付金・補助金もあります。
たとえば、創業支援、事業承継、商店街活性化、デジタル化、物価高騰対策、家賃補助、専門家相談、展示会出展補助など、地域によってさまざまな制度があります。フリーランスや個人事業主が対象に含まれることもあります。
自治体の制度は、募集期間が短かったり、予算上限に達すると早期終了したりすることがあります。住んでいる自治体だけでなく、事業所所在地の自治体、商工会議所、商工会、中小企業支援センターの情報も確認しましょう。
「給付金」「補助金」「助成金」「個人事業主」「フリーランス」「事業者支援」などのキーワードで、自治体の公式サイトを検索すると見つかりやすくなります。
5-4. 日本政策金融公庫などの融資制度
事業を続けたいが一時的に資金が足りない場合は、日本政策金融公庫などの融資制度も検討できます。
日本政策金融公庫は、事業に取り組む人を支援する政策金融機関であり、国民生活事業では小規模事業者向けの小口融資を主に取り扱っています。個人事業主も利用対象に含まれています。
融資は給付金ではないため返済が必要です。売上回復の見込みがない状態で借りると、将来の負担が重くなります。一方で、入金までのつなぎ、広告投資、設備更新、仕入れ資金など、事業改善の計画が明確な場合は、再起のための選択肢になります。
申し込み前には、売上推移、資金繰り表、事業計画、返済計画を整理しましょう。税理士、商工会議所、よろず支援拠点などに相談するのも有効です。
5-5. 給付金・補助金・融資の違いと注意点
フリーランスが支援制度を探すときは、給付金、補助金、融資の違いを理解しておく必要があります。
給付金は、条件を満たすと支給され、原則として返済不要の支援です。生活支援や緊急支援に使われることが多い制度です。
補助金は、事業に必要な経費の一部を補助する制度です。採択審査があり、経費を支払ったあとに補助金が支払われる後払い方式が一般的です。申請したら必ずもらえるものではありません。
融資は、金融機関などから資金を借りる制度です。返済義務があり、利息も発生します。資金繰りには役立ちますが、売上回復の見込みがないまま借りるとリスクが高まります。
生活に困っている場合は給付金や生活支援制度、事業を伸ばしたい場合は補助金、資金繰りを一時的に補いたい場合は融資、というように目的に合わせて使い分けましょう。
6. フリーランスが廃業時にお金を受け取るための備え方
6-1. 小規模企業共済:フリーランスの退職金代わりになる制度
フリーランスが廃業時にまとまったお金を受け取る備えとして、代表的なのが小規模企業共済です。
小規模企業共済は、小規模事業者の退職金のような制度で、事業をやめた後の生活資金に備えるためのものです。月額1,000円から70,000円まで、500円単位で掛金を設定でき、経営状況に応じて掛金を変更できます。
個人事業主が廃業した場合などには、共済金を請求できるケースがあります。中小機構の案内では、個人事業主の廃業に伴う請求事由などが示されています。
失業保険がないフリーランスにとって、小規模企業共済は「自分で作る退職金」として重要です。売上が安定している時期から少額でも積み立てておくことで、廃業や引退時の生活資金を準備しやすくなります。
6-2. iDeCo:老後資金を作りながら節税する
iDeCoは、老後資金を自分で積み立てる個人型確定拠出年金です。フリーランスや自営業者などの国民年金第1号被保険者も加入対象に含まれます。iDeCo公式サイトでは、20歳以上60歳未満の自営業者、その家族、フリーランス、学生などが第1号加入者として説明されています。
iDeCoの特徴は、掛金が所得控除の対象になることです。国民年金基金の公式情報でも、iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除として、本人名義分の掛金全額が所得控除対象になると説明されています。
ただし、iDeCoは老後資金の制度であり、原則として60歳まで引き出せません。廃業直後の生活費としては使いにくいため、小規模企業共済や生活防衛資金とは目的を分けて考える必要があります。
6-3. 所得補償保険・就業不能保険:病気やケガで働けないリスクに備える
フリーランスは、病気やケガで働けなくなると、そのまま収入減につながりやすい働き方です。会社員であれば傷病手当金や有給休暇などで一定期間支えられることがありますが、フリーランスは自分で備える必要があります。
その備えとして、所得補償保険や就業不能保険があります。所得補償保険は、病気やケガで働けなくなったときの収入減に備える保険です。就業不能保険は、長期間働けない状態になったときに給付を受けられるタイプの商品が多くあります。
選ぶときは、給付開始までの待機期間、給付期間、対象となる就業不能状態、精神疾患の扱い、保険料、免責条件を確認しましょう。フリーランスの場合、毎月の固定費や家族構成によって必要保障額が変わります。
失業保険の代わりにはなりませんが、「働けないリスク」への備えとしては有効です。
6-4. 生活防衛資金を何か月分用意すべきか
フリーランスは、生活防衛資金を会社員より厚めに用意するのが理想です。
目安としては、最低でも生活費の6か月分、できれば12か月分を現金またはすぐ使える預金で確保しておきたいところです。家族を扶養している人、家賃や住宅ローンが高い人、取引先が少ない人、業界の変動が大きい人は、さらに厚めに準備する必要があります。
生活防衛資金は、投資ではなく安全資金です。株式や投資信託など値動きのある資産ではなく、普通預金や定期預金など、必要なときにすぐ使える形で持っておきましょう。
フリーランスにとって、生活防衛資金は「仕事を選ぶ余裕」を作るお金でもあります。資金がないと、条件の悪い案件を受けざるを得なくなり、事業の立て直しが遅れることがあります。
6-5. 売上が落ちる前に固定費を見直す
フリーランスの資金繰りを守るには、売上が落ちてからではなく、売上が安定しているうちに固定費を見直すことが大切です。
見直したい固定費には、家賃、通信費、サブスクリプション、保険料、車両費、事務所費、外注費、広告費、ツール利用料などがあります。特に、毎月自動で引き落とされるサービスは、使っていないまま放置しがちです。
また、事業用と生活用の口座やクレジットカードを分けると、固定費を把握しやすくなります。毎月の損益とキャッシュフローを確認し、売上が何%下がると赤字になるのかを把握しておきましょう。
失業保険がないフリーランスにとって、固定費の低さは大きな防御力です。売上が落ちたときに慌てて削るのではなく、普段から身軽な事業構造を作っておくことが重要です。
7. 会社員からフリーランスになる前にやるべきこと
7-1. 退職前に雇用保険の加入期間を確認する
会社員からフリーランスになる前に、まず確認したいのが雇用保険の加入期間です。
基本手当を受けるには、原則として離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。倒産や解雇などの一定の離職理由に該当する場合は、離職前1年間に通算6か月以上でも対象になることがあります。
雇用保険の加入期間は、雇用保険被保険者証や給与明細、会社への確認、ハローワークでの照会などで確認できます。短期離職や転職を繰り返している人は、通算期間を確認しておきましょう。
独立を急いで退職したあとに「雇用保険の加入期間が足りなかった」と気づいても、基本的には取り返せません。退職前の確認が重要です。
7-2. 退職理由による給付制限・受給開始時期の違いを知る
失業保険は、退職理由によって受給開始時期や給付日数が変わる場合があります。
自己都合退職の場合は、待期期間のあとに給付制限がかかることがあります。一方、倒産や解雇などの会社都合に該当する場合は、給付制限の扱いや受給資格の要件が異なることがあります。
また、所定給付日数は、離職理由、年齢、被保険者であった期間などによって変わります。ハローワークの案内では、一般の離職者の所定給付日数は、被保険者であった期間に応じて90日、120日、150日などとされています。
退職理由は、離職票に記載されます。事実と違う退職理由になっていると、受給内容に影響する可能性があるため、離職票を受け取ったら内容を確認しましょう。
7-3. 開業届を出す前に失業保険の受給可否を確認する
会社員を辞めてフリーランスになる場合、開業届を出す前に失業保険の受給可否を確認しましょう。
開業届を出して自営業を始めると、失業状態ではないと判断される可能性があります。自営業や自営準備に専念する人は、基本手当の対象外となり得るためです。
一方で、退職後に事業を開始する人には、受給期間の特例や再就職手当など、別の制度が関係することがあります。どの制度を使えるかは、開業時期、求職活動の有無、事業の継続性、雇用保険の残日数などによって変わります。
「とりあえず開業届を出してから考える」のではなく、退職後すぐにハローワークで相談し、失業保険を受けるのか、開業して再就職手当を目指すのか、受給期間の特例を申請するのかを整理しましょう。
7-4. 再就職手当とフリーランス開業の関係を理解する
会社員を退職したあと、フリーランスとして開業する場合でも、条件を満たせば再就職手当を申請できる可能性があります。
再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、早期に安定した職業に就いた場合に支給される手当です。ハローワークの案内では、自営を開始した場合も、一定の条件のもとで対象となることが示されています。
また、ハローワーク渋谷の案内では、自営の開始により1年を超えて事業を安定的に継続して行うことができると認められた場合、再就職手当を申請できる場合があるとされています。必要書類としては、開業届の写し、業務委託契約書、営業許可証など、事業内容によって異なる書類が求められることがあります。
ただし、再就職手当を受けると、その事業について受給期間の特例を使えない場合があります。独立後のリスクに備えたいのか、早期開業による手当を受けたいのか、自分の状況に合わせて判断しましょう。
7-5. 退職後すぐにハローワークで相談する
会社員からフリーランスになる人は、退職後すぐにハローワークへ相談するのが安全です。
退職後の行動によって、基本手当、再就職手当、受給期間の特例のどれが関係するか変わります。特に受給期間の特例は、事業を開始した日などの翌日から2か月以内に申請する必要があるため、後回しにすると選択肢を失う可能性があります。
ハローワークへ行く際は、離職票、雇用保険被保険者証、本人確認書類、マイナンバー確認書類、印鑑、写真、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなど、基本手当の手続きに必要なものを確認して持参しましょう。
独立準備で忙しい時期ほど、制度確認を後回しにしがちです。しかし、フリーランスは失業保険の対象外になりやすいからこそ、会社員時代の雇用保険をどう扱うかが重要になります。
8. フリーランスの失業保険・給付金に関するよくある質問
8-1. フリーランスを廃業したら失業保険はもらえる?
フリーランスを廃業しただけでは、原則として失業保険はもらえません。
失業保険は、雇用保険に加入していた人が離職し、再就職の意思と能力があり、積極的に求職活動をしている場合に受け取れる制度です。フリーランスとして働いていた期間は、原則として雇用保険の被保険者期間にはなりません。
ただし、会社員を退職後に開業し、受給期間の特例を申請していた人が、その後に廃業して再就職活動を始める場合は、基本手当を受け取れる可能性があります。
8-2. 副業フリーランスでも失業保険は受け取れる?
副業フリーランスの場合、本業で雇用保険に加入していたかどうかが重要です。
会社員として雇用保険に加入しており、退職後に副業をどう扱うかによって、基本手当の受給可否が変わります。副業収入がある場合や、業務委託の仕事を続けている場合は、失業認定で申告が必要です。
副業の規模が大きく、実質的に自営業を継続していると判断されると、失業状態と認められない可能性があります。少額の副業でも、仕事内容、日数、時間、収入を正しく申告し、ハローワークの判断を受けましょう。
8-3. 収入がゼロになったらすぐ給付金をもらえる?
収入がゼロになっても、すぐに給付金をもらえるとは限りません。
失業保険は雇用保険の制度なので、フリーランスの売上がゼロになっただけでは対象になりません。住居確保給付金や求職者支援制度、生活福祉資金貸付制度なども、それぞれ収入、資産、求職活動、世帯状況などの要件があります。
ただし、使える制度がないとは限りません。家賃が払えない、生活費が足りない、再就職したい、職業訓練を受けたいなど、困っている内容によって相談先が変わります。早めに自治体、ハローワーク、社会福祉協議会へ相談しましょう。
8-4. 開業届を出していても住居確保給付金は使える?
開業届を出しているフリーランスでも、住居確保給付金を使える可能性はあります。
住居確保給付金は、離職などで住居を失った人、または失うおそれが高い人に対し、一定期間、家賃相当額を支給する制度です。一定の収入・資産要件や求職活動などの条件があります。
個人事業主やフリーランスの場合、収入減の事情や今後の就労方針によって判断されます。開業届の有無だけであきらめず、自治体の生活困窮者自立相談支援機関に相談しましょう。
8-5. フリーランスが病気で働けないときに使える制度はある?
病気やケガで働けない場合、失業保険とは別の制度を検討する必要があります。
まず、国民年金保険料の免除・納付猶予、国民健康保険料の減免、生活福祉資金貸付制度、生活保護などが状況に応じて選択肢になります。
また、障害が残る場合は障害年金の対象になる可能性もあります。民間の所得補償保険や就業不能保険に加入していれば、契約内容に応じて給付を受けられることもあります。
病気やケガですぐ働けない状態は、雇用保険の基本手当でいう失業状態とは異なります。働けない理由がある場合は、ハローワークだけでなく、年金事務所、自治体、医療機関の相談窓口にも相談しましょう。
8-6. 失業保険と給付金は併用できる?
失業保険とほかの給付金を併用できるかは、制度ごとに異なります。
たとえば、求職者支援制度の職業訓練受講給付金は、雇用保険を受給できない求職者などを対象とする制度です。 そのため、雇用保険の基本手当を受給している人が同時に受け取れるとは限りません。
住居確保給付金や自治体の支援制度も、収入要件や他制度との関係が定められている場合があります。生活保護についても、ほかに活用できる資産や制度がある場合は、それらを踏まえて保護の要否が判断されます。
併用できるかどうかは、自己判断せず、各制度の窓口で確認しましょう。失業保険はハローワーク、住居確保給付金は自治体の相談窓口、生活福祉資金は社会福祉協議会、生活保護は福祉事務所が主な相談先です。
まとめ
フリーランスは、原則として失業保険をもらえません。失業保険、正式には雇用保険の基本手当は、雇用保険に加入していた労働者が、離職後に再就職を目指すときの制度だからです。フリーランスや個人事業主が「仕事がなくなった」「売上が落ちた」「廃業した」というだけでは、基本手当の対象にはなりません。
ただし、会社員を退職後、開業前に求職活動をしている場合や、退職後に開業して受給期間の特例を申請していた場合など、例外的に受給できる可能性はあります。退職後に事業を開始した人は、事業の実施期間を最大3年間、基本手当の受給期間に算入しない特例を利用できる場合があります。
また、失業保険が使えなくても、住居確保給付金、求職者支援制度、生活福祉資金貸付制度、国民年金保険料の免除、国民健康保険料の減免、生活保護など、生活を支える制度はあります。事業を続けたい人には、小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、日本政策金融公庫の融資なども選択肢になります。
フリーランスにとって大切なのは、失業保険に頼れない前提で備えることです。小規模企業共済、iDeCo、所得補償保険、生活防衛資金、固定費の見直しなどを組み合わせて、収入減や廃業に備えましょう。
会社員からフリーランスになる予定の人は、退職前に雇用保険の加入期間を確認し、退職後すぐにハローワークへ相談することが重要です。開業届を出す前に、基本手当、再就職手当、受給期間の特例のどれが自分に関係するのか確認しておくことで、独立後のリスクを減らせます。

