フリーランスに決算書は必要?青色申告決算書の作り方と確定申告の流れをわかりやすく解説

はじめに

フリーランスとして確定申告の準備を始めると、「会社ではないのに決算書が必要なのか」「青色申告決算書には何を書けばよいのか」と迷う方も多いでしょう。

結論からいうと、事業所得について青色申告をするフリーランスは、原則として確定申告書と一緒に「青色申告決算書」を提出します。一方、白色申告をする場合に作成するのは「収支内訳書」です。

決算書の作成は、1年間の売上や経費を整理し、事業でどれだけ利益が出たのかを確定する作業です。青色申告特別控除を受けるためにも、正確な帳簿と決算書が欠かせません。

この記事では、フリーランスに必要な決算書の種類、青色申告決算書の作り方、確定申告の流れ、作成時の注意点をわかりやすく解説します。

1. フリーランスに決算書は必要?まず知っておきたい結論

1-1. 青色申告をするフリーランスは「青色申告決算書」が必要

フリーランスの収入が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けている場合は、確定申告書に青色申告決算書を添付します。

青色申告決算書は、1年間の売上、必要経費、利益、資産、負債などをまとめた書類です。一般的なフリーランスが使用する「一般用」は、主に次の内容で構成されています。

  • 損益計算書

  • 売上や仕入れ、経費の明細

  • 減価償却費の計算

  • 貸借対照表

特に65万円または55万円の青色申告特別控除を受ける場合は、正規の簿記の原則に基づいて記帳し、損益計算書と貸借対照表を期限内に提出することが重要です。国税庁+1

1-2. 白色申告の場合は「収支内訳書」を提出する

白色申告をするフリーランスは、青色申告決算書ではなく「収支内訳書」を作成します。

収支内訳書には、年間の売上や仕入れ、必要経費、所得金額などを記載します。青色申告決算書と比べると記載項目は少ないものの、売上や経費を正しく集計するための記帳は必要です。

白色申告者にも記帳と帳簿書類の保存義務があり、確定申告書を提出する際には、原則として総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書などを添付します。国税庁

1-3. 法人の「決算書」と個人事業主の「決算書」の違い

法人の決算書と、フリーランスなどの個人事業主が作成する決算書は、目的や提出先、構成が異なります。

法人は、事業年度ごとに貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書などを作成し、法人税の申告を行います。

一方、個人事業主は原則として1月1日から12月31日までを計算期間とし、所得税の確定申告を行います。青色申告者は青色申告決算書、白色申告者は収支内訳書を確定申告書に添付します。

フリーランスが日常的に使う「決算書」という言葉は、法人の財務諸表一式ではなく、主に青色申告決算書を指していると考えるとよいでしょう。

1-4. 確定申告で決算書が必要になる主なケース

フリーランスが決算書を作成する主なケースは、事業所得や不動産所得について青色申告を行う場合です。

具体的には、次のようなケースが該当します。

  • 本業のフリーランス収入を事業所得として青色申告する

  • 副業の収入が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けている

  • 赤字を翌年以降に繰り越すため、青色申告をする

  • 65万円、55万円または10万円の青色申告特別控除を受ける

  • 金融機関などに事業の収支を示す必要がある

ただし、フリーランスとして得た収入が必ず事業所得になるとは限りません。活動規模、継続性、営利性、帳簿書類の保存状況などから、業務に係る雑所得と判断されることもあります。

2. フリーランスが作成する決算書とは

2-1. 青色申告決算書とは

青色申告決算書とは、青色申告者が1年間の事業成績と年末時点の財産状況を税務署へ報告するための書類です。

一般用の青色申告決算書では、売上から仕入れや経費を差し引き、青色申告特別控除を適用する前の所得金額を計算します。さらに、一定の控除を受ける場合は、事業用の現金、預金、売掛金、固定資産、借入金などを貸借対照表に記載します。

青色申告決算書は確定申告書とは別の書類ですが、両者は連動しています。決算書で計算した所得金額を確定申告書に転記し、他の所得や所得控除と合算して最終的な所得税額を計算します。

2-2. 収支内訳書とは

収支内訳書は、白色申告者が年間の収入と必要経費の内訳を記載する書類です。

売上、仕入れ、給料賃金、外注工賃、減価償却費、地代家賃などを集計し、最終的な所得金額を計算します。売上先や仕入先、減価償却資産などの明細も記載します。

白色申告は青色申告より提出書類が簡略化されていますが、帳簿を作成しなくてよい制度ではありません。日々の取引を記録し、請求書や領収書などを保存しておく必要があります。

2-3. 貸借対照表・損益計算書の役割

損益計算書は、一定期間にどれだけ売上があり、どれだけ経費を使い、最終的にいくら利益が残ったかを示す書類です。

基本的な計算は次のとおりです。

売上・収入金額-売上原価-必要経費=青色申告特別控除前の所得金額

一方、貸借対照表は、年初と年末時点における事業の資産、負債、元入金などを示します。現金、普通預金、売掛金、パソコンなどの固定資産、買掛金、借入金といった残高を記載します。

損益計算書が「1年間の事業活動」を表すのに対し、貸借対照表は「特定時点の財産状況」を表す書類です。

2-4. 65万円控除・55万円控除・10万円控除との関係

青色申告特別控除には、65万円、55万円、10万円の区分があります。

55万円控除を受けるには、原則として複式簿記で記帳し、損益計算書と貸借対照表を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出しなければなりません。

65万円控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる電子申告を行うか、一定の要件を満たす電子帳簿保存を行う必要があります。

複式簿記や貸借対照表の要件を満たさない青色申告者には、原則として10万円控除が適用されます。なお、控除できる金額は青色申告特別控除前の所得金額が上限です。国税庁+2国税庁+2

3. 青色申告決算書に記載する主な内容

3-1. 売上・収入金額

売上・収入金額には、1月1日から12月31日までの間に事業から得た収入を記載します。

注意したいのは、入金日だけを基準に集計しないことです。通常は、仕事が完了して報酬を受け取る権利が確定した時点で売上を計上します。

例えば、12月に納品した仕事の報酬が翌年1月に振り込まれた場合、原則として12月の売上です。年末時点で未入金の報酬は、売掛金として貸借対照表に計上します。

源泉所得税が差し引かれている報酬についても、差引後の入金額ではなく、源泉徴収前の報酬総額を売上として記帳する点に注意しましょう。

3-2. 必要経費

必要経費とは、売上を得るために直接必要となった支出です。

フリーランスの代表的な必要経費には、次のようなものがあります。

  • 仕事用パソコンや周辺機器の購入費

  • 会計ソフトや業務用サービスの利用料

  • 通信費

  • 広告宣伝費

  • 外注費

  • 交通費

  • 事務所の家賃

  • 打ち合わせ費用

  • 書籍や研修の費用

  • 税理士などへの報酬

個人的な食費、衣服代、所得税、住民税など、事業と関係のない生活費は必要経費にできません。支出の名称ではなく、事業との関係を説明できるかどうかが重要です。国税庁

3-3. 所得金額

フリーランスの事業所得は、売上などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

青色申告決算書では、売上原価や各種経費を差し引いた後に「青色申告特別控除前の所得金額」を算出し、そこから適用可能な青色申告特別控除を差し引きます。

売上と所得は同じではありません。年間売上が500万円でも、必要経費が200万円なら、控除前の所得は原則として300万円です。

所得税や住民税は、基本的に売上ではなく、必要経費や各種控除を反映した所得をもとに計算されます。

3-4. 減価償却費

パソコン、カメラ、車両、事務所設備など、長期間使用する一定の資産は、購入した年に全額を経費にするのではなく、法定耐用年数に応じて複数年に分けて必要経費にします。この手続きが減価償却です。

一般に、使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満のものは、業務に使用した年に全額を必要経費にできます。一方、一定金額以上の資産は、取得価額、取得日、耐用年数、償却方法、事業使用割合などを確認して減価償却費を計算します。国税庁

青色申告決算書には、減価償却資産ごとの名称、取得年月、取得価額、償却率、本年分の償却費などを記載します。

3-5. 貸借対照表の資産・負債・元入金

貸借対照表の資産には、事業用の現金、預金、売掛金、棚卸資産、固定資産などを記載します。

負債には、買掛金、未払金、借入金、預り金などを記載します。年末時点で支払いが済んでいない経費がある場合は、内容に応じて未払金などとして処理します。

元入金は、個人事業に投入されている元手に相当する項目です。ただし、法人の資本金とは異なり、事業主貸、事業主借、前年の所得などによって翌年の金額が変動します。

貸借対照表では、資産の合計額と負債・資本の合計額が一致しなければなりません。一致しない場合は、記帳漏れ、二重計上、残高の転記ミスなどを確認しましょう。

3-6. 家事按分や専従者給与の記載

自宅の家賃、電気代、インターネット料金、スマートフォン料金などを事業と生活の両方で使っている場合、事業で使用した部分だけを必要経費にできます。これを家事按分といいます。

例えば、自宅面積の25%を仕事専用スペースとして使用している場合、使用実態に応じて家賃の25%を事業経費とする方法が考えられます。通信費なら使用時間や使用頻度など、合理的で説明できる基準を用いることが大切です。

家事関連費は、取引記録などに基づいて事業上必要な部分を明確に区分できる場合に、その部分を必要経費に算入できます。国税庁+1

また、生計を一にする配偶者や親族に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費にするには、一定の要件を満たし、期限までに届出書を提出する必要があります。

4. フリーランスが決算書を作る前に準備するもの

4-1. 売上や入金がわかる請求書・通帳

まず、1年間の売上を確認できる資料をそろえます。

請求書、納品書、業務委託契約書、売上管理表、銀行口座の入金履歴、決済サービスの明細などを確認しましょう。

銀行への入金額と請求金額が一致しない場合は、振込手数料や源泉所得税が差し引かれている可能性があります。入金額だけで売上を記帳すると、売上の計上漏れにつながるため注意が必要です。

4-2. 経費の領収書・レシート・クレジットカード明細

経費を確認するため、領収書、レシート、請求書、クレジットカード明細、電子マネーの利用履歴などを準備します。

カード明細や銀行明細だけでは、購入した内容を確認できないことがあります。領収書や利用明細など、支出の相手先、日付、金額、内容がわかる資料もあわせて保存しましょう。

電子メールやウェブサイトから受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、電子帳簿保存法に対応した方法で保存する必要があります。

4-3. 開業届・青色申告承認申請書

青色申告をするには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、青色申告の承認を受ける必要があります。

原則として、青色申告を始めたい年の3月15日までに申請します。その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、事業開始日から2か月以内が提出期限です。国税庁+1

申請書の控えや受付結果を確認し、自分が青色申告の対象になっているかを確かめておきましょう。

4-4. 固定資産や在庫に関する資料

高額なパソコン、カメラ、車両、設備などを所有している場合は、購入日、取得価額、使用開始日がわかる資料を用意します。

商品や材料を取り扱う事業では、12月31日時点の在庫数量と金額を確認する棚卸しも必要です。年末に残っている商品や材料は、原則としてその年の経費に全額算入するのではなく、棚卸資産として翌年に繰り越します。

4-5. 会計ソフトや帳簿データ

仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、固定資産台帳など、1年間の帳簿データを準備します。

会計ソフトを利用している場合は、決算処理を行う前に次の点を確認しましょう。

  • 口座やカードの未処理明細が残っていないか

  • 同じ取引を二重登録していないか

  • 個人的な支出が経費に含まれていないか

  • 売掛金や未払金の残高が実際の金額と一致するか

  • 現金や預金残高が帳簿と一致するか

5. 青色申告決算書の作り方

5-1. 1年間の売上を集計する

1月1日から12月31日までに計上すべき売上を集計します。

請求書の一覧と銀行口座の入金履歴を照合し、未入金の売上や現金で受け取った売上も含めて確認してください。プラットフォームを通じて仕事を受注している場合は、手数料控除前の売上総額と、差し引かれた手数料を分けて記帳します。

年をまたぐ取引では、入金日ではなく、納品や役務提供の完了時期などに基づいて正しい年分へ計上します。

5-2. 経費を勘定科目ごとに整理する

領収書やカード明細を確認し、支出を勘定科目ごとに分類します。

例えば、インターネット料金は通信費、電車やタクシーは旅費交通費、業務を外部へ委託した費用は外注工賃、事務所の家賃は地代家賃として処理します。

勘定科目の名称に絶対的な正解があるわけではありませんが、毎年同じ基準で継続して処理することが大切です。金額が大きい支出や内容が特殊な取引については、摘要欄に具体的な内容を記録しておきましょう。

5-3. 減価償却費を計算する

固定資産台帳を確認し、その年に計上する減価償却費を計算します。

年の途中で購入した資産は、原則として事業に使用し始めた月から月割りで計算します。自家用と事業用を兼ねている資産は、減価償却費のうち事業使用割合に対応する金額だけを必要経費にします。

取得価額によっては、一括償却資産や青色申告者向けの少額減価償却資産の特例を選べることがあります。適用期限や対象要件があるため、購入した年の制度を確認しましょう。

5-4. 家事按分を反映する

自宅兼事務所の家賃、水道光熱費、通信費、車両費などについて、事業分と生活分を分けます。

按分割合は、床面積、使用時間、走行距離、通信の利用状況など、支出の性質に合った基準で計算します。

単に「半分くらい仕事で使っている」と判断するのではなく、間取り図、使用時間の記録、走行記録など、割合の根拠を残しておくことが重要です。

5-5. 損益計算書を作成する

集計した売上、売上原価、必要経費を青色申告決算書の損益計算書へ記載します。

一般的には、次の順序で所得を計算します。

  1. 売上・収入金額を記載する

  2. 仕入れや棚卸高から売上原価を計算する

  3. 給料賃金、外注工賃、減価償却費などを記載する

  4. 通信費、消耗品費、地代家賃などの経費を記載する

  5. 専従者給与などを反映する

  6. 青色申告特別控除前の所得金額を計算する

売上や経費の内訳を説明する2ページ目、3ページ目の明細も忘れずに入力します。

5-6. 貸借対照表を作成する

65万円または55万円の青色申告特別控除を受ける場合は、貸借対照表の作成が必要です。

年初と年末の現金、預金、売掛金、固定資産、買掛金、借入金などの残高を記載します。帳簿上の預金残高は、通帳やインターネットバンキングの残高と照合しましょう。

事業用口座から生活費を引き出した場合は事業主貸、個人のお金で事業経費を支払った場合は事業主借として処理します。

最終的に、資産の合計と負債・資本の合計が一致することを確認してください。

5-7. e-Taxまたは確定申告書等作成コーナーで作成する

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って青色申告決算書や収支内訳書を作成できます。

決算書を作成した後、そのデータを引き継いで所得税の確定申告書を作成し、e-Taxで送信することも可能です。e-Tax+1

会計ソフトを使っている場合は、帳簿データから青色申告決算書を自動作成し、対応しているサービスであれば、そのままe-Taxへ送信できます。

6. 決算書を使った確定申告の流れ

6-1. 帳簿を締めて年間の所得を確定する

最初に、1年間の取引がすべて帳簿へ入力されているか確認します。

売掛金、未払金、棚卸資産、減価償却費、家事按分などの決算整理を行い、12月31日時点の残高を確定させます。

入出金の記録だけではなく、未入金の売上や未払いの経費も反映することが大切です。

6-2. 青色申告決算書を作成する

確定した帳簿をもとに、青色申告決算書を作成します。

損益計算書で所得金額を計算し、必要に応じて貸借対照表を作成します。売上先、地代家賃、減価償却資産、給与などの明細も入力してください。

損益計算書と貸借対照表の青色申告特別控除前の所得金額が一致しているか確認しましょう。

6-3. 確定申告書を作成する

青色申告決算書で算出した所得金額を確定申告書へ反映します。

給与所得、雑所得、配当所得など、事業所得以外の所得がある場合は、それらも合算します。報酬から源泉所得税を差し引かれている場合は、源泉徴収税額も忘れずに入力してください。

6-4. 控除や税額を確認する

所得控除や税額控除を入力し、納付または還付される所得税額を確認します。

主な所得控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、配偶者控除、基礎控除などがあります。

ふるさと納税をしている場合は寄附金控除、住宅ローン控除の対象者は住宅借入金等特別控除も確認しましょう。

6-5. e-Tax・郵送・税務署窓口で提出する

確定申告書と青色申告決算書は、主に次の方法で提出できます。

  • e-Taxで送信する

  • 郵便または信書便で送付する

  • 税務署の窓口などへ提出する

65万円の青色申告特別控除をe-Taxの要件によって受ける場合は、期限内に申告書と青色申告決算書を電子送信する必要があります。

郵送する場合、確定申告書は信書に該当するため、宅配便などの荷物扱いではなく、郵便または信書便を利用します。国税庁+1

6-6. 所得税を納付または還付を受ける

申告の結果、納付税額がある場合は期限までに納付します。

振替納税、インターネットバンキング、クレジットカード、スマートフォンアプリ、コンビニ納付など、複数の納付方法があります。

源泉所得税や予定納税額が最終的な所得税額を上回る場合は、差額が還付されます。還付を受ける口座は、原則として申告者本人名義の口座を指定します。

7. フリーランスが決算書作成で注意すべきポイント

7-1. 事業用とプライベートのお金を分ける

決算書を正確かつ効率的に作成するためには、事業用とプライベートのお金を分けることが重要です。

事業専用の銀行口座とクレジットカードを用意すれば、明細の大部分が事業取引となり、仕訳の判断や残高確認がしやすくなります。

個人用口座で事業取引を行うこと自体が禁止されているわけではありませんが、生活費と事業経費が混在すると、計上漏れや誤計上が起こりやすくなります。

7-2. 領収書や帳簿を保存する

青色申告者、白色申告者のいずれにも、帳簿や取引書類の保存義務があります。

保存期間は書類の種類によって異なりますが、帳簿や決算関係書類などは原則として5年または7年間保存します。紙で受け取った書類と電子データで受け取った書類では保存方法が異なるため、必要な形式を確認しましょう。国税庁+2国税庁+2

領収書には、何のために支払ったかをメモしておくと、後から事業との関連性を説明しやすくなります。

7-3. 売上の計上漏れを防ぐ

税務上の誤りとして特に注意したいのが、売上の計上漏れです。

銀行振込だけでなく、現金、決済サービス、ポイント、海外サービスからの入金なども確認します。複数の口座やプラットフォームを利用している場合は、サービスごとに年間取引明細を取得しましょう。

源泉徴収後の入金額を売上として登録すると、売上が少なく計上されます。必ず源泉徴収前の報酬額を売上にし、差し引かれた所得税は事業経費ではなく、確定申告で精算する税額として管理してください。

7-4. 経費にできるもの・できないものを正しく判断する

経費になるかどうかは、支払ったものの名称だけでは判断できません。事業に必要な支出であり、その関係を客観的に説明できることが重要です。

例えば、カフェ代でも、取引先との打ち合わせであれば経費になる可能性がありますが、個人的な飲食であれば経費にはできません。

スーツや日常着など、仕事でも使うものの私生活でも一般的に使用する支出は、必要経費として認められにくい傾向があります。

判断に迷う場合は、業務との関係、使用目的、参加者、場所などを記録し、税理士や税務署へ確認しましょう。

7-5. 期限に遅れないように準備する

所得税の確定申告期限は、原則として対象年の翌年3月15日です。期限日が土曜日、日曜日または祝日などに当たる場合は、通常は翌開庁日が期限になります。

65万円または55万円の青色申告特別控除は、法定申告期限内に申告することが要件の一つです。期限後申告になると、複式簿記で正しく記帳していても、原則としてこれらの控除を受けられません。

年明けから作業を始めるのではなく、毎月記帳し、遅くとも年末までに未処理の取引を減らしておきましょう。

7-6. 消費税やインボイス制度の影響も確認する

所得税の決算書を作成する際は、消費税の申告義務も確認する必要があります。

消費税の課税事業者に該当するかどうかは、基準期間の課税売上高、特定期間の売上や給与等支払額、課税事業者の選択、インボイス発行事業者の登録状況などによって判断します。

インボイス発行事業者として登録したフリーランスは、登録後、原則として消費税の申告が必要です。所得税の確定申告とは別に、消費税の集計と申告を行います。国税庁+1

会計ソフトでは、取引ごとの税区分や適用税率、インボイスの有無を正しく登録しておくことが重要です。

8. 決算書作成をラクにする方法

8-1. 会計ソフトを使う

会計ソフトを利用すると、日々の仕訳から損益計算書、貸借対照表、青色申告決算書まで一連の流れで作成できます。

勘定科目ごとの集計や減価償却費の計算を自動化できるため、手書きや表計算ソフトよりも計算ミスを減らしやすくなります。

ただし、自動作成された決算書が必ず正しいとは限りません。元となる取引登録や勘定科目が誤っていれば、決算書にも誤りが反映されます。

8-2. クラウド会計で銀行口座やカードを連携する

クラウド会計に銀行口座やクレジットカードを連携すると、入出金明細を自動取得できます。

過去の登録内容から勘定科目が提案されるため、毎月の入力負担を軽減できます。請求書作成サービスや決済サービスと連携できる会計ソフトなら、売上と入金の照合も効率化できます。

自動連携後は、二重登録、私的支出、振替取引などが正しく処理されているか確認しましょう。

8-3. 税理士に依頼する

取引数が多い場合や、消費税申告、従業員給与、複数事業、海外取引などがある場合は、税理士への依頼を検討しましょう。

税理士には、記帳代行、決算書作成、確定申告書作成、税務相談などを依頼できます。

費用はかかりますが、申告ミスのリスクを抑え、本業に使える時間を確保しやすくなります。すべてを依頼せず、日々の記帳は自分で行い、決算と申告だけを依頼する方法もあります。

8-4. 日々の記帳を習慣化する

決算書作成をラクにする最も効果的な方法は、取引をため込まないことです。

週に1回または月に1回、売上と経費を登録する日を決めましょう。領収書を撮影して保存し、未処理の明細を定期的に確認するだけでも、年末の負担は大きく減ります。

月ごとの利益を把握できれば、税金や社会保険料の支払いに備えた資金管理にも役立ちます。

8-5. 決算前にチェックリストで確認する

決算処理を始める前に、次の項目を確認します。

  • すべての売上が計上されているか

  • 年末の未入金売上を売掛金にしているか

  • 私的支出を経費から除外したか

  • 家事按分の割合に根拠があるか

  • 固定資産の登録漏れがないか

  • 在庫の棚卸しを行ったか

  • 預金残高と帳簿残高が一致しているか

  • 未払経費や前払費用を確認したか

  • 源泉徴収税額を集計したか

  • 青色申告特別控除の要件を満たしているか

チェックリストを毎年使い回せる形にしておくと、確認漏れを防ぎやすくなります。

9. フリーランスの決算書に関するよくある質問

9-1. 開業したばかりでも決算書は必要?

開業初年度であっても、事業所得について青色申告をする場合は青色申告決算書を作成します。

例えば、10月に開業した場合は、原則として開業日から12月31日までの売上や経費を集計します。開業前に支払った準備費用については、内容に応じて開業費や固定資産などとして処理できる場合があります。

青色申告を希望する場合は、青色申告承認申請書の提出期限に注意してください。

9-2. 売上が少なくても決算書を作る必要はある?

売上が少ない場合でも、事業所得について青色申告書を提出するのであれば、原則として青色申告決算書を作成します。

一方、所得税の確定申告義務があるかどうかは、売上額だけでは決まりません。必要経費を差し引いた所得、他の所得、所得控除、源泉徴収税額などをもとに判断します。

申告義務がない場合でも、源泉所得税の還付を受ける場合や、青色申告の赤字を繰り越す場合には、確定申告が必要です。

9-3. 副業フリーランスでも決算書は必要?

副業収入が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けている場合は、青色申告決算書を作成します。

副業収入が業務に係る雑所得に該当する場合は、青色申告制度を利用できないため、通常の青色申告決算書は作成しません。

事業所得と雑所得の区分は、収入額だけで機械的に決まるものではありません。営利性、継続性、独立性、活動規模、帳簿書類の保存状況などを踏まえて総合的に判断されます。国税庁+1

9-4. 赤字でも青色申告決算書は提出する?

赤字であっても、青色申告をする場合は青色申告決算書を作成して提出します。

青色申告者が事業所得などで赤字となり、他の所得との損益通算後も純損失が残った場合、一定の要件を満たせば、その損失を原則として翌年以後3年間繰り越せます。国税庁

赤字だから申告しなくてよいと判断すると、繰越控除を受けられなくなる可能性があります。売上が少ない年や開業初年度ほど、申告するメリットを確認しましょう。

9-5. 決算書を作らないとどうなる?

青色申告決算書が必要な申告で決算書を提出しなければ、申告書類が不十分となります。

また、損益計算書や貸借対照表を添付しなかった場合、65万円または55万円の青色申告特別控除の要件を満たせない可能性があります。

売上の計上漏れや経費の過大計上によって税額が少なくなっていた場合は、修正申告や追加納税が必要になり、状況によっては延滞税や加算税が発生します。

9-6. 決算書の作成は自分でできる?

取引数が少なく、事業内容がシンプルであれば、会計ソフトや国税庁の確定申告書等作成コーナーを使って自分で作成できます。

ただし、複式簿記では、売掛金、未払金、固定資産、事業主貸、事業主借などの処理が必要です。入力方法がわからないまま処理すると、損益計算書と貸借対照表が一致しないことがあります。

消費税申告、海外取引、家族への給与、不動産、補助金、高額な設備投資などがある場合は、早めに税理士へ相談するのが安心です。

まとめ

フリーランスが事業所得について青色申告をする場合は、原則として青色申告決算書を作成し、確定申告書と一緒に提出します。白色申告の場合は、青色申告決算書ではなく収支内訳書を使用します。

青色申告決算書を正確に作るためには、1年間の売上と必要経費を集計し、減価償却、家事按分、売掛金、未払金などの決算整理を行う必要があります。65万円または55万円の青色申告特別控除を受ける場合は、複式簿記による記帳と貸借対照表の作成、期限内申告が重要です。

決算直前に1年分の取引をまとめて処理すると、売上の計上漏れや経費の誤登録が起こりやすくなります。事業用口座やクラウド会計を活用し、日々の記帳を習慣化して、余裕を持って確定申告の準備を進めましょう。