フリーランスに給与所得はある?会社員との違い・確定申告・副業時の注意点をわかりやすく解説
はじめに
フリーランスとして働き始めたとき、多くの人が迷うのが「自分の収入は給与所得なのか」という点です。会社員時代は毎月の給料から税金や社会保険料が差し引かれ、年末調整も会社が行ってくれていたため、所得区分を意識する機会はあまり多くありません。
しかし、フリーランスになると、受け取るお金は「給与」ではなく「報酬」として扱われることが一般的です。その場合、所得税の計算方法や経費の扱い、確定申告の方法が会社員とは大きく変わります。
また、会社員を続けながら副業でフリーランス収入を得ている人や、年の途中で会社を退職して独立した人は、「給与所得」と「事業所得」または「雑所得」が混在することもあります。この場合、確定申告でそれぞれの所得を正しく分けて申告することが重要です。
この記事では、「フリーランスに給与所得はあるのか」という基本から、会社員との違い、確定申告の考え方、副業時の注意点までわかりやすく解説します。
1. フリーランスに給与所得はある?まず結論をわかりやすく解説
フリーランスに給与所得があるかどうかは、「フリーランスとして受け取ったお金なのか」「雇用契約に基づいて受け取ったお金なのか」で判断します。
結論からいうと、フリーランスとして業務委託や請負で受け取る報酬は、原則として給与所得ではありません。給与所得になるのは、会社や団体などに雇用され、使用人や役員などとして給料・賃金・賞与を受け取る場合です。国税庁も、給与所得を「使用人や役員等が支払いを受ける俸給、給料、賃金、賞与などに係る所得」と説明しています。
1-1. フリーランスの報酬は原則「給与所得」ではない
フリーランスが取引先から受け取る報酬は、一般的に「仕事の成果」や「役務提供」に対する対価です。たとえば、Webデザイナーがサイト制作を請け負った場合、ライターが記事を納品した場合、エンジニアがシステム開発を業務委託で行った場合などは、雇用されて給料を受け取っているわけではありません。
そのため、これらの収入は給与所得ではなく、実態に応じて「事業所得」または「雑所得」として扱います。
ここで重要なのは、肩書きではなく働き方の実態です。本人が「フリーランス」と名乗っていても、実態として会社の指揮命令を受け、勤務時間や勤務場所が拘束され、給与として支払われている場合は、給与所得に該当する可能性があります。一方、契約書上も実態上も業務委託であり、成果物や業務提供に対して報酬を受け取っている場合は、原則として給与所得にはなりません。
1-2. 給与所得になるのは「雇用契約」で働いている場合
給与所得になる代表例は、会社員、アルバイト、パート、契約社員、非常勤職員などとして働くケースです。これらは、勤務先との間に雇用契約があり、労働の対価として給料や賞与を受け取ります。
たとえば、平日は会社員として働き、休日にフリーランスとしてデザインの仕事をしている人の場合、会社から受け取る給料は給与所得、休日のデザイン報酬は事業所得または雑所得です。
また、フリーランスとして活動している人でも、別途アルバイトや非常勤講師などをしている場合、その勤務先から受け取る給料は給与所得になります。つまり、「フリーランスだから給与所得が絶対にない」のではなく、「雇用契約に基づく収入があれば給与所得もある」と考えるとわかりやすいでしょう。
1-3. 業務委託・請負・委任で受け取る報酬は何所得になる?
業務委託、請負、委任、準委任などの契約で受け取る報酬は、給与所得ではなく、主に事業所得または雑所得に分類されます。
継続的に仕事を受け、独立した事業として収入を得ている場合は、事業所得に該当する可能性があります。たとえば、フリーランスエンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント、カメラマン、動画編集者などとして継続的に活動しているケースです。
一方、本業とは別に単発で原稿料を受け取った、趣味の延長でたまに制作物を販売した、継続性や事業性が弱い収入を得たといった場合は、雑所得として扱うことがあります。国税庁は、事業所得を農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得とし、事業所得の金額は総収入金額から必要経費を差し引いて計算すると説明しています。
1-4. 「源泉徴収されている=給与所得」ではない点に注意
フリーランスが特に間違えやすいのが、「報酬から所得税が引かれているから給与所得だ」と考えてしまうことです。
たしかに会社員の給与からは源泉徴収が行われます。しかし、フリーランスの報酬でも、原稿料、講演料、デザイン料、士業報酬など一定の報酬・料金については、支払者が源泉徴収を行うことがあります。つまり、源泉徴収されているかどうかだけで給与所得かどうかは判断できません。
給与所得かどうかは、源泉徴収の有無ではなく、雇用契約に基づく給料か、業務委託などに基づく報酬かで判断します。源泉徴収されたフリーランス報酬は、確定申告で事業所得または雑所得として申告し、すでに差し引かれた源泉徴収税額を精算します。
2. 給与所得とは?会社員の収入との違い
給与所得とは、会社や団体などに雇用されて働く人が、勤務先から受け取る給料、賃金、賞与などに係る所得です。会社員にとっては最も身近な所得区分ですが、フリーランスの報酬とは税金の計算方法や経費の扱いが異なります。
2-1. 給与所得の基本:勤務先から給料・賞与を受け取る所得
給与所得は、勤務先との雇用関係を前提とした所得です。毎月の基本給、残業代、各種手当、賞与などが含まれます。
会社員の場合、給与の支払時に所得税が源泉徴収され、社会保険料や雇用保険料なども給与から差し引かれます。さらに、多くの人は年末調整によって年間の所得税が精算されます。
一方、フリーランスは取引先から報酬を受け取り、自分で売上や経費を管理し、原則として確定申告によって税金を計算します。この違いが、会社員とフリーランスの大きな分かれ目です。
2-2. 給与所得控除とは?会社員が経費を個別計上しない理由
会社員は、仕事のためにスーツ、文房具、書籍、通信費などを使うことがあります。しかし、原則としてフリーランスのように一つひとつ経費を計上するわけではありません。
その代わりに設けられているのが「給与所得控除」です。給与所得の金額は、給与などの収入金額から給与所得控除額を差し引いて計算します。国税庁も、給与所得は「収入金額-給与所得控除額」で計算すると説明しています。
給与所得控除は、会社員にとっての概算経費のような役割を持ちます。そのため、会社員は原則として個別の必要経費を集計しなくても、給与収入に応じた控除を受けられます。
一方、フリーランスには給与所得控除は使えません。フリーランスは、売上を得るために実際に支出した費用を「必要経費」として計上します。
2-3. 年末調整で税金が精算される仕組み
会社員の場合、毎月の給与から概算の所得税が源泉徴収されます。ただし、毎月差し引かれる税額はあくまで概算であり、生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除、住宅ローン控除などを反映した最終的な税額とは一致しないことがあります。
そこで、勤務先が年末に年間の給与総額や各種控除をもとに税額を再計算し、過不足を精算する手続きが年末調整です。国税庁は、年末調整を「毎月の給与等から源泉徴収した所得税等の合計額」と「1年間に納めるべき所得税等の額」との差額を精算するものと説明しています。
フリーランスには、基本的に年末調整がありません。自分で年間の売上、経費、所得控除、源泉徴収税額などを集計し、確定申告で税額を確定させます。
2-4. フリーランスの報酬との違いを一覧表で比較
| 項目 | 会社員の給与所得 | フリーランスの報酬 |
|---|---|---|
| 主な契約形態 | 雇用契約 | 業務委託、請負、委任、準委任など |
| 収入の呼び方 | 給料、賃金、賞与 | 報酬、売上、委託料など |
| 所得区分 | 給与所得 | 事業所得または雑所得 |
| 経費の扱い | 原則として給与所得控除 | 実際にかかった必要経費を計上 |
| 税金の精算 | 年末調整が中心 | 確定申告が中心 |
| 書類 | 源泉徴収票 | 支払調書、請求書、帳簿、領収書など |
| 社会保険 | 勤務先の健康保険・厚生年金など | 国民健康保険・国民年金などが中心 |
| 労働法上の保護 | 労働者として保護されやすい | 原則として事業者として契約する |
このように、会社員とフリーランスでは、収入の性質も税務処理も大きく異なります。特に「給与所得控除が使えるか」「必要経費を自分で計上するか」は、確定申告で重要なポイントです。
3. フリーランスの収入は「事業所得」か「雑所得」に分かれる
フリーランスの収入は、多くの場合「事業所得」または「雑所得」に分類されます。どちらに該当するかによって、青色申告の可否、赤字の扱い、必要書類などが変わるため、正しく判断することが大切です。
3-1. 事業所得になるケース
事業所得になるのは、独立・継続・反復して行う事業から収入を得ているケースです。たとえば、次のような場合は事業所得に該当する可能性があります。
フリーランスとして継続的に案件を受注している場合、複数の取引先と契約して売上を得ている場合、事業用のWebサイトやポートフォリオを作って営業している場合、帳簿を付けて収支管理をしている場合、生活費の主要な収入源になっている場合などです。
具体的には、フリーランスエンジニア、Webデザイナー、ライター、動画編集者、翻訳者、コンサルタント、イラストレーター、カメラマン、講師などとして、継続的に収入を得ているケースが考えられます。
事業所得として申告する場合、売上から必要経費を差し引いて所得を計算します。青色申告の承認を受け、要件を満たせば青色申告特別控除などのメリットを受けられる可能性があります。
3-2. 雑所得になるケース
雑所得は、給与所得、事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、退職所得など、他の所得区分に当てはまらない所得です。フリーランスに近い活動でも、事業といえるほどの規模や継続性がない場合は、雑所得になることがあります。
たとえば、会社員が休日に単発で記事を書いて原稿料を受け取った場合、趣味で作ったイラストをたまに販売した場合、知人から一度だけ業務を頼まれて報酬を受け取った場合などです。
雑所得でも、収入を得るために直接必要だった費用は差し引ける場合があります。ただし、事業所得に比べると税務上のメリットは限定されます。国税庁は、雑所得について、公的年金等、業務に係るもの、その他に区分して説明しており、業務に係る雑所得では一定の場合に書類保存や収支内訳書などが必要になることもあります。
3-3. 事業所得と雑所得の判断基準
事業所得と雑所得の判断は、単に収入金額だけで決まるものではありません。一般的には、次のような要素を総合的に見て判断します。
継続性があるか、反復して取引しているか、営利目的で行っているか、独立して事業として行っているか、帳簿や請求書を管理しているか、相応の時間や労力を投入しているか、社会的に事業として認められる実態があるか、といった点です。
たとえば、年間売上が一定額あるだけで必ず事業所得になるわけではありません。逆に、売上がまだ小さくても、開業届を出し、継続的に営業し、帳簿を整えて本格的に事業として取り組んでいる場合は、事業所得として認められる可能性があります。
ただし、事業所得と雑所得の区分は個別事情によって判断が分かれることがあります。迷う場合は、税務署や税理士に確認すると安心です。
3-4. 事業所得と雑所得で変わる税務上のメリット・デメリット
事業所得と雑所得の大きな違いは、青色申告の利用や赤字の扱いです。
事業所得の場合、青色申告の承認を受け、一定の要件を満たせば青色申告特別控除を受けられます。青色申告特別控除には、要件に応じて最高65万円、55万円、10万円の控除があります。国税庁も、青色申告者に対する特典として青色申告特別控除を説明しています。
また、事業所得の赤字は、一定の場合に他の所得と損益通算できる可能性があります。青色申告であれば、純損失の繰越控除などが使える場合もあります。
一方、雑所得は、原則として青色申告の対象になりません。雑所得内での経費計上はできても、事業所得ほどの税務上のメリットは期待しにくい点に注意が必要です。
ただし、メリットがあるからといって、実態が雑所得に近い収入を無理に事業所得として申告するのは避けるべきです。所得区分は、実態に合わせて判断することが大切です。
4. フリーランスと会社員の税金・働き方の違い
フリーランスと会社員は、働き方だけでなく、税金、経費、社会保険、労働保険の扱いも異なります。会社員からフリーランスになると、これまで会社が行っていた手続きを自分で行う場面が増えます。
4-1. 契約形態の違い:雇用契約と業務委託契約
会社員は、勤務先と雇用契約を結びます。勤務時間、勤務場所、業務内容などについて会社の指揮命令を受け、その対価として給与を受け取ります。
一方、フリーランスは、取引先と業務委託契約、請負契約、委任契約、準委任契約などを結ぶことが一般的です。仕事の進め方や成果物、納期、報酬額などは契約内容に基づいて決まります。
この違いは、税金だけでなく、労働法上の保護にも関わります。フリーランスは原則として労働者ではなく事業者として扱われるため、会社員と同じような残業代、有給休暇、解雇規制などが当然に適用されるわけではありません。
ただし、近年はフリーランスの取引環境を整える動きも進んでいます。フリーランス・事業者間取引適正化等法は、2024年11月1日に施行され、発注事業者とフリーランスの取引適正化や就業環境の整備を目的としています。
4-2. 税金の納め方の違い:年末調整と確定申告
会社員は、勤務先が給与から所得税を源泉徴収し、年末調整で年間税額を精算するのが一般的です。そのため、給与所得だけで生活している人は、確定申告をしないケースも多くあります。
一方、フリーランスは、原則として自分で確定申告を行います。年間の売上、必要経費、所得控除、源泉徴収税額などを集計し、所得税を計算します。納税額がある場合は期限までに納付し、源泉徴収されすぎている場合は還付を受けられることもあります。
このように、会社員は「会社が税務手続きをサポートする働き方」、フリーランスは「自分で税務管理を行う働き方」といえます。
4-3. 経費の扱いの違い:給与所得控除と必要経費
会社員は、給与収入に応じて給与所得控除が適用されます。仕事に関連する支出があっても、原則として個別に経費計上するわけではありません。
フリーランスは、売上を得るために必要な支出を必要経費として計上します。たとえば、パソコン代、ソフトウェア代、通信費、打ち合わせの交通費、取材費、書籍代、外注費、広告宣伝費、事業用の家賃や光熱費の一部などが該当することがあります。
ただし、プライベートな支出は経費にできません。自宅兼事務所の家賃や通信費など、事業用と私用が混在する支出は、合理的な基準で按分する必要があります。
4-4. 社会保険・労働保険の違い
会社員は、勤務先の健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などに加入するのが一般的です。保険料の一部は会社が負担し、給与から本人負担分が差し引かれます。
一方、フリーランスは、原則として国民健康保険と国民年金に加入します。会社員時代の健康保険を任意継続できる場合もありますが、期間や条件があります。厚生労働省も、社会保険の適用対象ではない事業所で働く人は、国民年金や国民健康保険などに加入すると説明しています。
また、フリーランスは原則として雇用保険の対象ではありません。仕事がなくなっても、会社員のように失業給付を受けられるとは限らないため、生活防衛資金を確保しておくことが重要です。
4-5. 退職後に会社員からフリーランスになる場合の注意点
会社員からフリーランスになる年は、給与所得と事業所得が混在しやすい時期です。
たとえば、1月から6月まで会社員として働き、7月からフリーランスになった場合、1月から6月までの給料は給与所得、7月以降のフリーランス報酬は事業所得または雑所得として申告します。
この場合、退職した会社から源泉徴収票を受け取り、フリーランスとしての売上や経費も集計して、確定申告を行うのが一般的です。退職後に年末調整を受けていない場合は、確定申告によって所得税が還付されることもあります。
また、退職後は健康保険、年金、住民税の支払い方法も変わります。会社員時代は給与天引きだったものが、自分で納付する形に変わるため、独立初年度は資金繰りに注意が必要です。
5. フリーランスが確定申告で確認すべきポイント
フリーランスにとって確定申告は、税金を正しく計算するための重要な手続きです。給与所得との違いを理解したうえで、売上、経費、所得区分、必要書類を整理しておきましょう。
5-1. 確定申告が必要になるフリーランスの条件
フリーランスとして所得がある場合、原則として確定申告が必要です。ここでいう所得とは、売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた金額です。
たとえば、年間売上が300万円、必要経費が100万円であれば、所得は200万円です。この所得から基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得をもとに税額を計算します。
ただし、所得額や他の所得の有無、源泉徴収の状況、医療費控除や住宅ローン控除の有無などによって、申告が必要かどうかは変わります。副業会社員の場合は、後述する「20万円以下」のルールにも注意が必要です。
5-2. 所得金額の計算方法:収入から必要経費を差し引く
フリーランスの所得は、基本的に次の式で計算します。
収入金額-必要経費=所得金額
収入金額には、取引先から受け取った報酬、売上、原稿料、講演料、制作費などが含まれます。必要経費には、その収入を得るために直接必要だった支出を計上します。
たとえば、Webライターであれば、取材交通費、書籍代、通信費、パソコン関連費、クラウドツール利用料などが考えられます。デザイナーであれば、デザインソフト代、素材購入費、外注費、制作環境に関する費用などが該当することがあります。
ただし、経費にできるのは事業に関係する支出です。生活費、家族旅行、個人的な買い物などは経費にできません。事業用と私用が混ざる支出は、使用割合に応じて家事按分します。
5-3. 青色申告と白色申告の違い
フリーランスの確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告は、事前に青色申告承認申請書を提出し、一定の帳簿付けを行うことで利用できる申告方法です。要件を満たせば青色申告特別控除を受けられるほか、赤字の繰越しなどのメリットがあります。国税庁の資料でも、青色申告の主な特典として、最高65万円の控除、親族に支払う給与の必要経費算入、赤字の繰越しなどが紹介されています。
白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法です。青色申告に比べると手続きはシンプルですが、青色申告特別控除などのメリットはありません。なお、白色申告でも帳簿付けや書類保存は必要です。
フリーランスとして継続的に活動するなら、早めに青色申告を検討するとよいでしょう。
5-4. 確定申告に必要な書類
フリーランスの確定申告では、主に次のような書類や情報を用意します。
まず、売上がわかる資料です。請求書、入金明細、売上台帳、取引先別の支払明細などが該当します。次に、経費がわかる資料として、領収書、レシート、クレジットカード明細、銀行口座の取引履歴、請求書などを準備します。
青色申告の場合は、青色申告決算書が必要です。白色申告の場合は、収支内訳書を作成します。給与所得がある人は、勤務先から受け取った源泉徴収票も必要です。
また、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、寄附金控除などを受ける場合は、それぞれの控除証明書や明細も用意します。
5-5. 源泉徴収票と支払調書の違い
源泉徴収票と支払調書は混同されやすい書類ですが、意味が異なります。
源泉徴収票は、給与や退職金などを支払った勤務先が発行する書類です。給与収入、給与所得控除後の金額、所得控除の額、源泉徴収税額などが記載されています。給与所得がある人は、確定申告で源泉徴収票の内容をもとに給与所得を入力します。
一方、支払調書は、報酬や料金などを支払った事業者が、一定の場合に税務署へ提出する法定調書です。国税庁は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」について、支払者が所轄税務署へ提出するものとして説明しています。
支払調書は、フリーランス本人に必ず交付されるとは限りません。支払調書が届かなくても、確定申告が不要になるわけではないため、自分の請求書、入金履歴、帳簿で正確に収入を把握しておく必要があります。
5-6. 確定申告書で給与所得・事業所得・雑所得を記入する場所
確定申告では、所得の種類ごとに入力・記入する場所が分かれています。
会社員として受け取った給料は「給与所得」に記入します。フリーランスとして継続的に事業を行っている場合の所得は「事業所得」に記入します。副業や単発収入などで事業所得に該当しないものは「雑所得」に記入します。
給与所得がある場合は、源泉徴収票の内容をもとに入力します。事業所得の場合は、青色申告決算書または収支内訳書の内容をもとに入力します。雑所得の場合は、収入金額や必要経費を整理して入力します。
重要なのは、すべての所得を合算して所得税を計算することです。給与所得だけ、フリーランス収入だけを別々に税率計算するのではなく、総合課税の対象となる所得を合算し、所得控除を差し引いて税額を計算します。
6. フリーランスが給与所得もある場合の申告方法
フリーランスでも、アルバイト、パート、非常勤勤務、会社員時代の給与などがある場合は、給与所得とフリーランス収入をあわせて確定申告する必要があります。
6-1. アルバイト・パート・非常勤勤務をしている場合
フリーランスとして活動しながら、アルバイトやパート、非常勤勤務をしている場合、その勤務先から受け取る給料は給与所得です。
たとえば、平日はフリーランスのデザイナーとして働き、週末だけ専門学校の非常勤講師として雇用されている場合、デザイン報酬は事業所得または雑所得、非常勤講師の給料は給与所得です。
この場合、確定申告では、勤務先から受け取った源泉徴収票をもとに給与所得を入力し、フリーランス収入は事業所得または雑所得として入力します。給与からすでに源泉徴収されている所得税があれば、確定申告で精算されます。
6-2. 会社員をしながら副業フリーランスをしている場合
会社員をしながら副業でフリーランス収入を得ている場合、本業の給料は給与所得、副業の報酬は事業所得または雑所得です。
たとえば、会社員が副業でWeb制作を請け負っている場合、本業の給料は給与所得、Web制作の報酬は事業所得または雑所得になります。継続的に営業し、事業として行っている場合は事業所得に該当する可能性がありますが、単発的・小規模な副業であれば雑所得になることもあります。
会社員の副業では、「副業所得が20万円以下なら確定申告不要」という話を耳にすることがあります。ただし、これは所得税の確定申告に関する一定のルールであり、住民税の申告や、医療費控除などで確定申告をする場合の扱いには注意が必要です。
6-3. 年の途中で会社員からフリーランスになった場合
年の途中で会社を退職してフリーランスになった場合、その年は給与所得とフリーランス収入が混在します。
たとえば、3月まで会社員、4月からフリーランスになった場合、1月から3月までの給与は給与所得、4月以降の報酬は事業所得または雑所得です。
退職時または退職後に会社から源泉徴収票を受け取り、確定申告で給与所得として申告します。フリーランスとしての売上や経費も集計し、事業所得または雑所得として申告します。
退職後に年末調整を受けていない場合、所得控除が反映されていないことがあるため、確定申告によって所得税が還付されるケースもあります。
6-4. 給与所得と事業所得を合算して税額を計算する流れ
給与所得と事業所得がある場合の大まかな流れは次のとおりです。
まず、源泉徴収票をもとに給与所得を計算します。次に、フリーランスの売上から必要経費を差し引いて、事業所得または雑所得を計算します。そして、給与所得、事業所得、雑所得などを合算し、総所得金額を求めます。
その後、基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除、医療費控除などの所得控除を差し引き、課税所得を計算します。課税所得に所得税率をかけて税額を算出し、すでに源泉徴収されている税額を差し引きます。
最終的に、源泉徴収税額が本来の税額より多ければ還付、不足していれば納税となります。
6-5. 源泉徴収票がある場合に確認すべき項目
源泉徴収票を受け取ったら、次の項目を確認しましょう。
まず、「支払金額」は給与収入の総額です。いわゆる額面年収に近い金額で、給与所得の計算の基礎になります。
次に、「給与所得控除後の金額」は、給与収入から給与所得控除を差し引いた後の金額です。「所得控除の額の合計額」には、社会保険料控除や扶養控除など、年末調整で反映された控除が記載されます。
「源泉徴収税額」は、給与から差し引かれた所得税額です。確定申告では、この金額を入力することで、すでに納めた税金として精算されます。
年の途中で退職した場合や、複数の勤務先がある場合は、源泉徴収票をすべて集めて申告する必要があります。
7. 会社員が副業でフリーランス収入を得る場合の注意点
会社員の副業フリーランスは、所得税、住民税、就業規則の3つに注意が必要です。特に「20万円以下なら何もしなくてよい」と誤解しないことが大切です。
7-1. 副業収入は給与所得・事業所得・雑所得のどれにあたる?
副業収入の所得区分は、働き方によって変わります。
副業先に雇用され、アルバイトやパートとして給料を受け取る場合は給与所得です。たとえば、平日は会社員、夜に飲食店でアルバイトをしている場合、副業分も給与所得になります。
一方、クラウドソーシングでWeb制作を請け負う、企業から業務委託で記事制作を受ける、個人でコンサルティングを行うといった場合は、給与所得ではなく事業所得または雑所得です。
継続的に事業として行っていれば事業所得、単発的・小規模で事業性が弱ければ雑所得と考えます。
7-2. 副業所得が20万円以下でも注意すべきこと
会社員の副業でよく知られているのが、「給与所得者の副業所得が20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる場合がある」というルールです。
国税庁は、給与所得者で確定申告が必要な人の条件の中で、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人などを挙げています。
ただし、この20万円ルールには注意点があります。まず、20万円以下かどうかは「収入」ではなく、原則として「所得」で判断します。副業売上が30万円でも、必要経費が15万円なら所得は15万円です。
また、医療費控除、住宅ローン控除の初年度、ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合など、別の理由で確定申告をする場合は、副業所得も含めて申告する必要があります。
7-3. 住民税の申告が必要になるケース
副業所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
所得税の20万円ルールは、住民税にそのまま適用されるものではありません。所得税の確定申告をしない場合でも、副業所得がある人は、住んでいる市区町村に住民税の申告が必要か確認しましょう。
自治体によって案内の表現や申告方法が異なるため、居住地の市区町村の公式情報を確認することが大切です。大阪市も、給与所得以外の所得に対する市民税・府民税等の納税方法について、申告書で選択する仕組みを案内しています。
7-4. 副業が会社に知られる主な理由
副業が会社に知られる理由として多いのが、住民税の通知です。
会社員の住民税は、勤務先が給与から天引きする「特別徴収」が一般的です。副業所得を含めた住民税額が勤務先に通知されると、給与に対して住民税が高いことから副業を推測される可能性があります。
また、SNSでの発信、取引先や知人経由の情報、同業他社での活動、会社の備品や時間を使った副業などから知られることもあります。
副業を行う場合は、税務面だけでなく、会社の就業規則や情報管理にも注意が必要です。
7-5. 住民税の徴収方法を選ぶときの注意点
確定申告書では、給与所得以外の住民税について、徴収方法を選択できる場合があります。一般的には、「給与から差引き」または「自分で納付」を選ぶ欄があります。
副業分の住民税を自分で納付したい場合は、「自分で納付」に該当する選択をすることがあります。ただし、自治体の処理や所得の種類によっては、希望どおりにならない場合もあります。
特に、副業がアルバイトなどの給与所得である場合、普通徴収を選べないこともあります。副業が会社に知られることを避けたい場合でも、制度上必ず防げるとは限らない点を理解しておきましょう。
7-6. 就業規則・副業規定も必ず確認する
副業を始める前に、勤務先の就業規則や副業規定を確認しましょう。
副業が全面的に禁止されている会社もあれば、事前申請制、許可制、競業禁止、情報漏えい防止、長時間労働防止などの条件を設けている会社もあります。
会社に無断で副業をした場合、税金の問題とは別に、社内規定違反となる可能性があります。特に、本業と競合する仕事、会社の顧客を利用した仕事、会社の機密情報を使う仕事、本業に支障が出るほどの長時間労働には注意が必要です。
副業フリーランスとして安心して活動するためには、税務処理だけでなく、勤務先とのルールも整理しておくことが大切です。
8. フリーランスが間違えやすい給与所得まわりの注意点
フリーランスの税務では、「給与所得」「源泉徴収」「経費」「事業所得」「雑所得」などの言葉を混同しやすいものです。ここでは、特に間違えやすいポイントを整理します。
8-1. 報酬から源泉徴収されていても給与所得とは限らない
最も多い誤解が、「源泉徴収されているから給与所得だ」というものです。
フリーランスの報酬でも、一定の報酬・料金については源泉徴収の対象になることがあります。たとえば、原稿料、講演料、デザイン料、士業報酬などです。
この場合、取引先が所得税を差し引いて報酬を支払いますが、所得区分は給与所得ではなく、事業所得または雑所得として申告します。源泉徴収された金額は、確定申告で「すでに納めた税金」として精算します。
源泉徴収の有無ではなく、雇用契約か業務委託契約か、働き方の実態はどうかを確認しましょう。
8-2. 経費にできるもの・できないものを混同しない
フリーランスは必要経費を計上できますが、何でも経費にできるわけではありません。
経費にできるのは、売上を得るために必要な支出です。たとえば、業務用ソフト、パソコン、通信費、交通費、打ち合わせ費用、外注費、広告宣伝費などは、事業との関連性があれば経費になる可能性があります。
一方、個人的な飲食代、家族旅行、プライベートの買い物、事業と関係のない服飾費などは経費にできません。
また、自宅兼事務所の家賃、インターネット料金、スマートフォン代など、事業用と私用が混ざる費用は、合理的な基準で按分します。経費の根拠を説明できるよう、領収書や利用状況を記録しておきましょう。
8-3. 事業所得と雑所得を誤って申告しない
事業所得と雑所得は、税務上の扱いが異なります。特に、青色申告や赤字の扱いに影響します。
実態として単発的な副収入に近いものを、税務メリットだけを目的に事業所得として申告するのは避けましょう。逆に、継続的に事業として行っているにもかかわらず、すべて雑所得として処理していると、青色申告のメリットを活用できない可能性があります。
判断に迷う場合は、収入の規模、継続性、営業活動、帳簿の有無、生活への依存度などを整理し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
8-4. 赤字の扱いに注意する
フリーランス収入が赤字になった場合、その赤字を他の所得と相殺できるかどうかは、所得区分によって異なります。
事業所得の赤字であれば、一定の場合に給与所得などと損益通算できる可能性があります。青色申告であれば、要件を満たすことで純損失の繰越控除なども利用できる場合があります。
一方、雑所得の赤字は、原則として他の所得と損益通算できません。副業で赤字が出たからといって、必ず給与所得と相殺できるわけではない点に注意しましょう。
赤字の扱いは税額に大きく影響するため、事業所得か雑所得かの判断を慎重に行う必要があります。
8-5. 請求書・領収書・帳簿を保存しておく
フリーランスは、自分で収入と経費を証明できるようにしておく必要があります。
請求書、領収書、レシート、クレジットカード明細、銀行口座の入出金履歴、契約書、発注書、納品書、メールでの取引記録などは、確定申告の根拠資料になります。
また、白色申告でも青色申告でも、帳簿や書類の保存は重要です。特に、雑所得であっても業務に係る雑所得については、一定の収入規模を超える場合に書類保存や収支内訳書などが必要になることがあります。
支払調書が届かない場合でも、帳簿と入金履歴があれば申告できます。日頃から記録を残す習慣をつけましょう。
9. フリーランスの給与所得に関するよくある質問
9-1. フリーランスでも給与所得控除は使える?
フリーランスとして受け取る報酬には、原則として給与所得控除は使えません。
給与所得控除は、給与所得を計算するための控除です。会社員、アルバイト、パート、非常勤勤務など、雇用契約に基づいて給料を受け取っている場合に適用されます。
フリーランスの報酬は、事業所得または雑所得として扱われるため、給与所得控除ではなく、実際にかかった必要経費を差し引いて所得を計算します。
ただし、フリーランスであっても、別途アルバイトや非常勤勤務などで給与を受け取っている場合、その給与部分については給与所得控除が適用されます。
9-2. 業務委託で毎月固定報酬をもらう場合は給与所得?
毎月固定額を受け取っているからといって、必ず給与所得になるわけではありません。
業務委託契約で、毎月10万円、30万円、50万円などの固定報酬を受け取っている場合でも、実態として独立した事業者として業務を行っているなら、給与所得ではなく事業所得または雑所得になります。
ただし、勤務時間や勤務場所を細かく指定され、会社の指揮命令を受け、実態として従業員と変わらない働き方をしている場合は、給与所得に近いと判断される可能性があります。
判断のポイントは、報酬が固定かどうかではなく、雇用関係があるか、指揮命令を受けているか、独立した事業者として働いているかです。
9-3. フリーランスが会社から源泉徴収票をもらったらどうする?
源泉徴収票を受け取った場合、その会社からの収入は給与所得として扱われている可能性が高いです。
たとえば、フリーランスとして活動しながら、非常勤講師やアルバイトとして勤務していた場合、勤務先から源泉徴収票が発行されます。この場合、確定申告では源泉徴収票の内容を給与所得として入力します。
一方、業務委託報酬について通常発行されるのは、源泉徴収票ではなく支払調書や支払明細です。もし、業務委託だと思っていた会社から源泉徴収票が届いた場合は、契約形態や支払いの扱いを確認しましょう。
9-4. 支払調書がない場合でも確定申告は必要?
支払調書が届かなくても、確定申告が必要な人は申告しなければなりません。
支払調書は、支払者が税務署に提出する法定調書であり、フリーランス本人に必ず交付されるものではありません。そのため、「支払調書が届いていないから申告しなくてよい」という考え方は誤りです。
確定申告では、自分の請求書、入金履歴、売上台帳、会計ソフトの記録などをもとに収入を集計します。源泉徴収されている場合は、支払明細や入金額から源泉徴収税額も確認しておきましょう。
9-5. 会社員の副業フリーランスは青色申告できる?
会社員をしながら副業フリーランスをしている場合でも、副業が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けていれば、青色申告できる可能性があります。
ただし、副業収入が雑所得に該当する場合は、青色申告の対象にはなりません。青色申告は、主に事業所得、不動産所得、山林所得がある人を対象とした制度です。
副業が事業といえるかどうかは、継続性、営利性、規模、営業活動、帳簿管理などを総合的に判断します。会社員の副業だから必ず雑所得というわけではありませんが、すべてが事業所得になるわけでもありません。
9-6. フリーランス収入と給与所得が両方あると税金は高くなる?
フリーランス収入と給与所得が両方あると、所得が合算されるため、結果として税額が増えることがあります。
所得税は、原則として所得が多くなるほど税率が高くなる累進課税です。そのため、給与所得に加えて事業所得や雑所得が増えると、課税所得が増え、所得税や住民税の負担も増える可能性があります。
ただし、「両方あるから不利」とは限りません。フリーランス収入については必要経費を差し引けますし、源泉徴収されている場合は確定申告で精算されます。経費や所得控除を正しく反映すれば、納めすぎた税金が還付されるケースもあります。
大切なのは、給与所得、事業所得、雑所得を正しく区分し、収入と経費を正確に申告することです。
まとめ
フリーランスの収入は、原則として給与所得ではありません。給与所得になるのは、会社員、アルバイト、パート、非常勤勤務など、雇用契約に基づいて給料や賞与を受け取る場合です。
一方、フリーランスが業務委託、請負、委任、準委任などで受け取る報酬は、実態に応じて事業所得または雑所得として扱います。源泉徴収されている場合でも、それだけで給与所得になるわけではありません。
会社員とフリーランスの大きな違いは、給与所得控除と必要経費、年末調整と確定申告、社会保険や労働保険の扱いにあります。会社員は勤務先が税務や社会保険の手続きを行う部分が多い一方、フリーランスは自分で売上、経費、税金、保険を管理する必要があります。
また、会社員をしながら副業フリーランスをしている人や、年の途中で会社員からフリーランスになった人は、給与所得と事業所得または雑所得が混在します。確定申告では、それぞれの所得を正しく分けて申告しましょう。
特に、副業所得が20万円以下の場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。就業規則や副業規定、住民税の徴収方法にも注意が必要です。
フリーランスとして安定して働くためには、「自分の収入が何所得にあたるのか」を理解することが第一歩です。給与所得、事業所得、雑所得の違いを正しく押さえ、日頃から帳簿や書類を整理して、確定申告に備えましょう。

