フリーランスに103万の壁は関係ある?扶養・税金・年収ラインをわかりやすく解説

はじめに

「フリーランンスにも103万の壁があるの?」「売上が103万円を超えると扶養から外れる?」と不安に感じる人は少なくありません。

結論からいうと、会社員やパートでよく使われる「103万の壁」は、フリーランスにはそのまま当てはまりません。給与を受け取る人とフリーランスでは、所得の計算方法が異なるためです。

フリーランスが確認すべきなのは、売上額そのものではなく、売上から必要経費などを差し引いた「所得」です。また、税金上の扶養と社会保険上の扶養は別制度であり、それぞれ異なる基準で判定されます。

なお、税制改正により、税金上の扶養ラインは2025年分が合計所得金額58万円以下、2026年分が62万円以下に変更されています。この記事では、フリーランスに関係する税金・扶養・社会保険の年収ラインをわかりやすく解説します。

1. フリーランスに103万の壁は関係ある?まず結論

1-1. 103万の壁は主に「給与収入」の目安で、フリーランスにはそのまま当てはまらない

従来の103万の壁は、給与を受け取る会社員・アルバイト・パートを前提とした目安です。

2024年分までの制度では、給与収入103万円から給与所得控除55万円を差し引くと、所得が48万円になりました。この48万円が基礎控除や扶養親族の所得要件と一致していたため、「年収103万円」が税金や扶養の代表的なラインとして広く使われてきたのです。

一方、業務委託契約などで報酬を受け取るフリーランスには、原則として給与所得控除がありません。したがって、「売上103万円以下なら所得税がかからない」「売上103万円を超えたら扶養から外れる」とは判断できません。

1-2. フリーランスは「年収」ではなく「所得」で扶養・税金を判断する

フリーランスの場合、基本的には次の式で所得を計算します。

所得=年間売上-必要経費-青色申告特別控除

たとえば、年間売上が150万円、必要経費が50万円、青色申告特別控除が65万円なら、税金上の事業所得は35万円です。

売上は103万円を大きく超えていますが、所得は35万円であるため、ほかの要件を満たせば税金上の扶養に入れる可能性があります。

ただし、社会保険の扶養では、青色申告特別控除が差し引かれないのが一般的です。税金と社会保険では、同じ「所得」「収入」という言葉でも計算方法が異なる点に注意してください。

1-3. 2025年分は「所得58万円」、2026年分は「所得62万円」が税金の扶養ライン

税金上の扶養親族や同一生計配偶者の所得要件は、次のように改正されています。

  • 2024年分まで:合計所得金額48万円以下

  • 2025年分:合計所得金額58万円以下

  • 2026年分:合計所得金額62万円以下

したがって、2026年分について、フリーランスが配偶者控除や扶養控除の対象になるための基本ラインは、年間売上103万円ではなく、原則として合計所得金額62万円以下です。給与だけを受け取る人の場合は、2026年・2027年分について給与収入136万円以下が目安になります。(注1)

制度は短期間で改正が続いているため、「2025年以降はずっと58万円」と思い込まないようにしましょう。

1-4. ただし社会保険の扶養では「130万円の壁」に注意が必要

健康保険や国民年金第3号被保険者に関する社会保険上の扶養では、原則として年間収入130万円未満であることが基準になります。60歳以上または一定の障害がある人は、原則180万円未満です。

自営業者・フリーランスの場合は、売上から事業のために直接必要と認められる経費を差し引いた金額で判定されることがあります。しかし、税法上の必要経費がすべて認められるとは限りません。

また、被保険者の配偶者ではない19歳以上23歳未満の親族については、2025年10月以降、年間収入要件が原則150万円未満に引き上げられています。(注2)

2. そもそも103万の壁とは何か

2-1. 103万の壁の意味は「所得税がかかるか」と「扶養に入れるか」の目安

103万の壁には、主に次の意味が含まれていました。

1つ目は、給与を受け取る本人に所得税がかかり始める目安です。2つ目は、親や配偶者が扶養控除・配偶者控除を受けられるかどうかの目安です。

さらに、企業が独自に支給する配偶者手当や家族手当の支給条件として、現在も「年収103万円以下」が使われている場合があります。

ただし、税制上の基準は改正されており、現在の制度を103万円だけで説明することはできません。特にフリーランスは、給与収入を前提とした金額ではなく、合計所得金額で判断する必要があります。

2-2. 会社員・アルバイト・パートの場合は給与所得控除がある

給与所得者には、仕事に必要な支出を概算で差し引く「給与所得控除」があります。実際に仕事用の文房具や交通費をいくら使ったかにかかわらず、給与収入に応じた一定額が控除される仕組みです。

給与所得は、基本的に次の式で計算します。

給与所得=給与収入-給与所得控除

給与所得控除の最低額は、2025年分が65万円、2026年・2027年分が74万円です。そのため、給与収入と所得の境目も改正前とは異なっています。(注1)

2-3. フリーランスには給与所得控除がないため計算方法が違う

フリーランスが業務委託報酬などを受け取った場合、その所得は事業所得または雑所得に区分されます。

事業所得や雑所得には給与所得控除がなく、原則として実際にかかった必要経費を売上から差し引きます。

たとえば、給与収入100万円の人と、フリーランスとして売上100万円を得た人では、税金上の所得が同じになるとは限りません。フリーランスの必要経費が10万円なら所得は90万円、必要経費が60万円なら所得は40万円になるためです。

2-4. 「収入103万円以下なら安心」と考えると間違いやすい理由

フリーランスの売上が103万円以下でも、経費がほとんどなく、ほかの所得もある場合には、扶養条件を超える可能性があります。

反対に、売上が103万円を超えていても、必要経費や青色申告特別控除を差し引いた所得が扶養ライン以下であれば、税金上の扶養に入れる場合があります。

また、税金上の扶養に入れても、社会保険上の年間収入が130万円以上と判断されれば、健康保険の扶養から外れることがあります。「103万円以下ならすべての扶養に入れる」という考え方は避けましょう。

3. フリーランスが見るべき税金の扶養ライン

3-1. 税金の扶養は「合計所得金額」で判断される

配偶者控除や扶養控除の判定では、対象者の「合計所得金額」を確認します。

合計所得金額には、フリーランスの事業所得や雑所得だけでなく、給与所得、不動産所得、配当所得なども含まれます。複数の収入源がある場合は、フリーランス所得だけを見て判断してはいけません。

たとえば、事業所得が50万円でも、アルバイトによる給与所得が20万円あれば、合計所得金額は原則70万円となり、2026年分の62万円ラインを超えます。

3-2. 個人事業主・フリーランスの所得は「売上-経費」で計算する

個人事業主やフリーランスの所得は、売上から必要経費を差し引いて計算します。

必要経費とは、売上を得るために直接必要な支出です。具体的には、次のようなものが該当します。

  • 仕事用のパソコンや周辺機器

  • ソフトウェアやクラウドサービスの利用料

  • 通信費や事務用品費

  • 取材費、交通費、外注費

  • 広告宣伝費や販売手数料

  • 自宅兼事務所の家賃・光熱費の事業使用分

プライベートでも使用している支出は、仕事で使用した割合だけを「家事按分」して経費にします。生活費や個人的な買い物を経費にすることはできません。

3-3. 青色申告特別控除を使うと扶養判定に影響する場合がある

青色申告を行い、一定の要件を満たすと、事業所得などから最大65万円の青色申告特別控除を差し引けます。控除額は、記帳方法や申告方法などにより65万円、55万円または10万円です。(注3)

税金上の扶養判定で使う合計所得金額には、原則として青色申告特別控除後の事業所得が反映されます。

たとえば、売上160万円、必要経費50万円の場合、控除前の利益は110万円です。65万円の青色申告特別控除を受けられれば、税金上の事業所得は45万円となり、2026年分の62万円以下に収まる可能性があります。

ただし、社会保険の扶養判定では、青色申告特別控除を必要経費として差し引けないのが一般的です。

3-4. 配偶者控除・扶養控除の対象になる所得ライン

2026年分の所得税では、主な税金上の扶養ラインは次のとおりです。

配偶者の合計所得金額が62万円以下で、扶養する側の所得などの要件を満たせば、配偶者控除の対象になります。

配偶者の所得が62万円を超えても、133万円以下であれば、配偶者特別控除の対象になる可能性があります。扶養する側の合計所得金額が900万円以下なら、配偶者の所得95万円以下までは原則として満額の38万円控除です。

配偶者以外の一般的な扶養親族については、合計所得金額62万円以下が扶養控除の基本要件です。

ただし、19歳以上23歳未満の親族は、所得が62万円を超えても123万円以下であれば、扶養する人が「特定親族特別控除」を受けられる場合があります。(注1)

3-5. 親や配偶者の税負担が増えるケース

フリーランス本人の所得が扶養ラインを超えると、親や配偶者が受けていた所得控除が減少または消失する可能性があります。

ただし、配偶者の場合は、所得が62万円を少し超えた時点で控除が突然ゼロになるわけではありません。配偶者特別控除に切り替わり、一定の範囲までは満額、その後は段階的に減少します。

19歳以上23歳未満の子についても、特定親族特別控除によって親の控除額が段階的に調整されます。

一方、一般の扶養親族は、所得ラインを超えると扶養控除が適用されなくなるため、親などの所得税・住民税が増えることがあります。

4. フリーランス本人にかかる税金はいくらから?

4-1. 所得税がかかるライン

フリーランス本人に所得税がかかるかどうかは、扶養判定の62万円ではなく、本人の所得から所得控除を差し引いた「課税所得」で判断します。

2026年・2027年分は、合計所得金額132万円以下の人について、所得税の基礎控除が最大104万円です。そのため、フリーランス収入以外の所得がなく、基礎控除以外の事情を考慮しない単純なケースでは、事業所得が104万円以下なら課税所得は0円になります。(注1)

社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除などがあれば、事業所得が104万円を超えても所得税がかからないことがあります。

なお、2025年分の最大基礎控除は95万円でした。所得税の課税ラインと、家族が扶養控除を受けるための所得ラインは別の金額です。

4-2. 住民税がかかるライン

住民税には、前年の所得に応じて課税される所得割と、一定額を負担する均等割などがあります。

扶養親族がいない一般的な単身者では、合計所得金額45万円以下を非課税基準としている自治体があります。ただし、非課税基準は自治体、扶養人数、未成年者・障害者・ひとり親などの状況によって異なります。(注4)

所得税が0円でも、住民税だけが発生することは珍しくありません。また、住民税は所得を得た翌年度に課税されるため、収入が減った後に納付が始まることがあります。

4-3. 個人事業税がかかる可能性があるライン

個人事業税は、都道府県が課税する地方税です。法定業種に該当し、原則として事業所得などが事業主控除の年間290万円を超えると課税される可能性があります。

税率は業種によって3%、4%または5%です。

注意したいのは、個人事業税の計算では、所得税の青色申告特別控除が適用されないことです。所得税の確定申告書で事業所得が290万円以下でも、青色申告特別控除を足し戻すと290万円を超え、個人事業税が発生する場合があります。(注5)

4-4. 消費税の課税事業者になる売上ライン

消費税は、所得ではなく「課税売上高」で判定します。

個人事業主は、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。前々年の売上が1,000万円以下でも、前年1月から6月までの特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるなど、一定の場合は免税されません。

また、インボイス発行事業者として登録している場合は、課税売上高が1,000万円以下でも、原則として消費税の申告・納税が必要です。(注6)

4-5. 年収ではなく所得と控除で税額が変わる

フリーランス本人の税負担は、単純な売上額だけでは決まりません。

所得税は、売上から経費や青色申告特別控除を引き、さらに基礎控除や社会保険料控除などを差し引いて計算します。

一方、住民税、個人事業税、消費税では、それぞれ控除や判定方法が異なります。「売上が○万円を超えたら、すべての税金が一斉に発生する」という仕組みではありません。

5. 扶養内で働くフリーランスが注意すべき年収ライン

5-1. 所得62万円の壁:税金上の扶養判定

2026年分の税金上の扶養判定では、合計所得金額62万円以下が基本ラインです。

フリーランスの場合は、原則として売上から必要経費と青色申告特別控除を差し引いた所得を確認します。ただし、給与所得や不動産所得などがある場合は、それらも合計しなければなりません。

2025年分の申告について確認する場合は58万円以下、2024年分以前は48万円以下というように、対象年によって基準が異なります。

5-2. 130万円の壁:社会保険の扶養判定

社会保険上の扶養は、原則として年間収入130万円未満であることが条件です。

一般的には、現在の収入状況から今後1年間の見込み額を計算して判断します。税金のように、1月から12月までの確定額だけで判定するとは限りません。

自営業者の場合、売上から差し引けるのは、事業を行うために直接必要と認められる経費に限られることがあります。減価償却費や青色申告特別控除など、確定申告では所得を減らせる項目でも、社会保険では控除できない場合があります。(注7)

同居の場合は本人の収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合は仕送り額未満であることなど、収入額以外の要件もあります。

5-3. 106万円の壁は会社員・パート向けの制度

106万円の壁は、一定規模以上の会社で短時間労働者として働く人が、勤務先の健康保険・厚生年金に加入する基準を表した通称です。

純粋なフリーランスには勤務先がないため、原則として106万円の壁は関係ありません。

ただし、フリーランスとパート勤務を掛け持ちしている場合は、パート先で週20時間以上働くなどの条件を満たすと、勤務先の社会保険に加入する可能性があります。

2026年6月時点では月額賃金8万8,000円以上という要件がありますが、2026年10月にこの賃金要件が撤廃される予定です。今後は106万円という金額より、週の所定労働時間や勤務先の規模が重要になります。(注8)

5-4. 150万円・160万円・201万円の壁は配偶者控除・配偶者特別控除に関係する

150万円、160万円、201万円といった金額は、主に給与収入で働く配偶者に関する目安です。

150万円は、2024年分まで、配偶者特別控除を満額受けられる給与収入の目安でした。

160万円は、2025年分について、給与所得者本人に所得税がかかり始める目安であると同時に、配偶者特別控除を満額受けられる給与収入の目安でもありました。

約201万6,000円は、2025年分について、配偶者特別控除がなくなる給与収入の上限です。

2026年・2027年分は給与所得控除が改正されたため、給与収入だけの場合、配偶者特別控除を満額受けられる配偶者の給与収入は原則169万円以下、対象外になる上限は207万円以下に変わっています。また、給与所得者本人に所得税がかかり始める単純な目安は178万円です。(注1)

フリーランスは、こうした給与収入の金額ではなく、所得62万円、95万円、133万円という所得基準を確認しましょう。

5-5. 扶養を外れると何が変わるのか

税金上の扶養から外れると、扶養している親や配偶者が受けていた扶養控除・配偶者控除などが減少または消失します。

社会保険上の扶養から外れた場合は、自分で国民健康保険と国民年金に加入するか、勤務先の健康保険・厚生年金に加入する必要があります。

ただし、税金上の扶養から外れたからといって、必ず社会保険の扶養からも同時に外れるわけではありません。反対に、税金上は扶養対象でも、社会保険では扶養対象外になることもあります。

6. フリーランスの扶養判定でよくある勘違い

6-1. 売上が103万円を超えたら必ず扶養から外れるわけではない

フリーランスの場合、売上103万円は税金上の扶養判定ラインではありません。

売上が150万円でも、経費と青色申告特別控除を差し引いた所得が62万円以下なら、2026年分の税金上の扶養に入れる可能性があります。

一方、経費が少なければ、売上103万円以下でも所得62万円を超えることがあります。必ず収支を計算して判断しましょう。

6-2. 経費を引いた後の所得で判断するケースが多い

税金上の扶養は、原則として経費を引いた後の所得で判定します。

ただし、経費にできるのは事業に必要な支出だけです。個人的な飲食代、家族旅行、私物の購入費などを経費にすることはできません。

また、社会保険では税法上の経費より狭い範囲しか認められない場合があります。確定申告書の所得が130万円未満だからといって、必ず社会保険の扶養に入れるとは限りません。

6-3. 税金の扶養と社会保険の扶養は別物

税金上の扶養は、扶養する人の所得税や住民税を軽減する制度です。

社会保険上の扶養は、一定の家族が保険料を直接負担せず、健康保険の給付を受けたり、配偶者が国民年金第3号被保険者になったりする制度です。

税金上の扶養ラインは2026年分で所得62万円、社会保険は原則年間収入130万円未満です。金額だけでなく、所得の計算方法や判定時期も異なります。

6-4. 健康保険組合によって社会保険の扶養条件が異なる

社会保険の被扶養者認定は、加入している協会けんぽや健康保険組合などの保険者が行います。

特にフリーランスの場合、どこまでを必要経費として認めるか、どの書類を提出するか、開業直後の収入見込みをどのように判定するかが保険者によって異なることがあります。

確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書、請求書、契約書などの提出を求められる場合もあります。最終的には、扶養する家族の勤務先または健康保険組合に確認してください。

6-5. 開業届を出すと扶養から外れるとは限らない

税務署に開業届を提出しただけで、自動的に税金や社会保険の扶養から外れるわけではありません。

基本的には、所得や年間収入、生計維持関係などをもとに判断されます。

ただし、健康保険組合によっては、自営業を始めた事実、事業規模、継続性、収入見込みなどを詳しく確認することがあります。開業届を提出する前後に、加入している健康保険の認定基準を確認しておくと安心です。

7. フリーランスが扶養内に収めるための考え方

7-1. まず年間売上・経費・所得を把握する

扶養内で働きたい場合は、次の3つを分けて管理しましょう。

  • 年間売上

  • 年間必要経費

  • 経費や青色申告特別控除を差し引いた所得

売上だけを記録していても、税金上の扶養判定はできません。会計ソフトや表計算ソフトなどを利用し、毎月の売上と経費を集計することが重要です。

給与収入や不動産所得などがある人は、フリーランス所得以外も含めた合計所得金額を確認してください。

7-2. 必要経費として認められるものを整理する

仕事のために支払った費用は、領収書や請求書、カード明細などを保存し、内容を説明できるようにしておきましょう。

自宅の家賃やインターネット料金、スマートフォン料金など、仕事と私生活の両方に使う費用は、使用時間や面積などの合理的な基準で按分します。

扶養に収めるためだけに不要な買い物をするのは得策ではありません。1万円の経費を使っても、手元のお金は1万円減ります。事業上必要な支出を正しく計上することが基本です。

7-3. 青色申告を活用して所得を抑える

青色申告特別控除を利用できれば、税金上の所得を最大65万円減らせます。

65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳などの要件を満たし、原則として期限内申告を行ったうえで、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存を行う必要があります。

青色申告を始めるには、原則として期限までに青色申告承認申請書を提出しなければなりません。事業を始めた時点から、早めに準備しておきましょう。

7-4. 年末前に売上見込みを確認する

税金上の所得は、原則として1月1日から12月31日までの取引をもとに計算します。

年末が近づいたら、未入金の売上も含めて年間売上を見積もり、経費や青色申告特別控除を差し引いた所得を確認しましょう。入金日ではなく、仕事を完了して報酬を受け取る権利が確定した時点で売上を計上するケースもあるため、単純に銀行への入金額だけを見るのは危険です。

社会保険は今後1年間の収入見込みで判断されることがあるので、税金とは別に管理してください。

7-5. 扶養内にこだわるべきか、収入を増やすべきか判断する

扶養から外れると、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。しかし、扶養を維持するために仕事を断り続けると、将来の売上やキャリアの成長を妨げることもあります。

配偶者控除や配偶者特別控除は、一定の範囲では段階的に縮小するため、所得が少し増えただけで世帯手取りが大幅に逆転するとは限りません。

社会保険の扶養を外れる場合は負担の増加が比較的大きくなりやすいため、売上を少しだけ増やすのではなく、保険料を負担しても手取りが十分増える水準を目指す考え方もあります。

8. フリーランスが扶養から外れた場合の影響

8-1. 親・配偶者の所得税や住民税が増える可能性

税金上の扶養から外れると、親や配偶者の所得から差し引かれていた控除が減少します。その結果、親や配偶者の所得税・住民税が増える可能性があります。

増える税額は、控除額にその人の税率を掛けて計算するため、扶養する側の所得や税率によって異なります。扶養控除38万円がなくなったからといって、税金がそのまま38万円増えるわけではありません。

8-2. 国民健康保険・国民年金の負担が発生する可能性

配偶者の社会保険の扶養から外れ、勤務先の社会保険にも加入しない場合は、原則として国民健康保険に加入します。

20歳以上60歳未満の配偶者が国民年金第3号被保険者から外れた場合は、原則として国民年金第1号被保険者となり、保険料を自分で納付します。

国民健康保険料は自治体や前年所得、世帯構成によって異なるため、住んでいる自治体の試算サービスなどで確認しましょう。

8-3. 手取りが一時的に減るケース

社会保険の扶養を外れた直後は、増えた収入よりも健康保険料や年金保険料の負担が大きくなり、手取りが一時的に減ることがあります。

特に年間収入が130万円をわずかに超える程度では、負担増を吸収しにくい場合があります。

一方、税金は所得の一部に対して段階的に課税されるため、所得税が発生しただけで収入増加分のすべてがなくなるわけではありません。

8-4. 収入を増やした方が得になる分岐点

扶養を外れた後の損得分岐点は、国民健康保険料、国民年金保険料、必要経費、家族手当の有無、親や配偶者の税率などによって変わります。

全国共通の「売上○万円を超えれば必ず得」という金額はありません。

次の式で、世帯全体の手取りを比較することが大切です。

増加後の売上-追加経費-本人の税金-社会保険料-家族の税負担増-失われる家族手当

8-5. 扶養を外れる前に確認すべきこと

扶養を外れる可能性がある場合は、次の項目を確認しましょう。

  • 税金上の合計所得金額

  • 社会保険で認められる必要経費

  • 今後1年間の収入見込み

  • 配偶者の会社の家族手当

  • 国民健康保険料の見込み額

  • 国民年金の加入・納付手続き

  • 配偶者特別控除や特定親族特別控除を利用できるか

社会保険の扶養条件は加入先によって異なるため、収入が基準を超える前に勤務先や保険者へ相談しておくことが重要です。

9. ケース別|フリーランスの103万の壁の考え方

9-1. 学生フリーランスの場合

学生が親の税金上の扶養に入る場合、2026年分は原則として合計所得金額62万円以下が扶養控除の基準です。

ただし、19歳以上23歳未満で所得が62万円を超えても123万円以下なら、親が特定親族特別控除を受けられる可能性があります。所得62万円超85万円以下なら、親の所得などの要件を満たすことで、所得税では63万円の控除を維持できます。

社会保険では、被保険者の配偶者ではない19歳以上23歳未満の親族について、年間収入150万円未満が原則的な要件です。税金と社会保険の基準を別々に確認しましょう。

9-2. 主婦・主夫フリーランスの場合

配偶者の税金上の扶養を意識する場合は、2026年分の合計所得金額62万円以下が配偶者控除の基本ラインです。

所得が62万円を超えても133万円以下なら、配偶者特別控除が使える可能性があります。所得95万円以下までは、扶養する配偶者の合計所得金額が900万円以下なら原則満額控除です。

社会保険の扶養を維持したい場合は、税金上の所得ではなく、保険者が算定した年間収入130万円未満を確認します。

9-3. 副業フリーランスの場合

会社員が副業としてフリーランス活動を行う場合、給与所得と副業所得を合算して所得税を計算します。

年末調整済みの給与所得者は、給与・退職所得以外の所得が20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも、医療費控除などのために確定申告をする場合は、副業所得も申告しなければなりません。(注9)

また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になることがあります。

9-4. 親の扶養に入っている場合

親の税金上の扶養に入っているフリーランスは、自分の合計所得金額を確認します。

2026年分は原則62万円以下が扶養控除の基準です。売上が62万円以下という意味ではありません。

親の健康保険の扶養に入っている場合は、年間収入130万円未満が原則です。ただし、19歳以上23歳未満で配偶者ではない人は150万円未満となります。年齢条件は、その年の12月31日時点の年齢で判断されます。

9-5. 配偶者の社会保険に入っている場合

配偶者の健康保険の扶養に入っているフリーランスは、年間収入130万円未満かどうかを確認します。

社会保険では、青色申告特別控除後の所得ではなく、売上から保険者が認めた直接的な必要経費を差し引いた金額で判定されるのが一般的です。

確定申告書上の所得が50万円でも、社会保険上の年間収入が130万円以上と判定される可能性があります。加入している健康保険組合に、経費として認められる項目を事前に確認しましょう。

10. フリーランスの103万の壁に関するよくある質問

10-1. フリーランスで売上103万円を超えたら確定申告は必要?

売上が103万円を超えただけで、必ず確定申告が必要になるわけではありません。

フリーランスを本業としている人は、所得金額の合計が所得控除の合計を超え、計算した所得税額が一定額を超える場合に、原則として確定申告が必要です。

給与所得者の副業の場合は、副業の「売上」ではなく、売上から経費を引いた「所得」が20万円を超えるかどうかが1つの基準になります。

所得税が0円でも、青色申告特別控除を受ける場合、赤字を繰り越す場合、源泉徴収税の還付を受ける場合などは、確定申告が必要または有利になることがあります。

10-2. 経費を引いたら所得が58万円以下なら扶養に入れる?

2025年分の税金上の扶養判定であれば、合計所得金額58万円以下が基本要件です。

ただし、2026年分は62万円以下に引き上げられています。対象となる年を間違えないようにしてください。

また、所得要件以外にも、生計を一にしていること、親族関係、事業専従者ではないことなどの条件があります。社会保険の扶養は、58万円や62万円ではなく、原則として年間収入130万円未満で判定されます。

10-3. 青色申告特別控除は扶養判定に使える?

税金上の配偶者控除・扶養控除の判定では、原則として青色申告特別控除後の事業所得が合計所得金額に反映されます。

したがって、青色申告特別控除によって所得が62万円以下になれば、2026年分の税金上の扶養に入れる可能性があります。

一方、社会保険の扶養判定では、青色申告特別控除を必要経費として差し引けないのが一般的です。

10-4. 社会保険の扶養は売上と所得のどちらで判断される?

社会保険では、税法上の所得をそのまま使うとは限りません。

自営業者の場合、一般的には、年間売上から事業を行うために直接必要と認められる経費を差し引いた金額を年間収入として判定します。

税法上は経費になる減価償却費や、青色申告特別控除などが差し引けない場合があります。最終的な判定は加入している健康保険の保険者が行います。

10-5. 扶養から外れたらすぐに損になる?

税金上の扶養を外れても、収入の増加分を超えて税金が増えるとは限りません。配偶者の場合は配偶者特別控除があるため、控除額が段階的に減少します。

一方、社会保険の扶養を外れると、健康保険料や年金保険料の負担が発生し、一定の収入帯では手取りが減る場合があります。

ただし、収入をさらに増やせば負担増を上回り、世帯全体の手取りも増えていきます。目先の扶養だけでなく、将来の働き方や事業の成長も含めて判断することが大切です。

まとめ

フリーランスに、給与所得者向けの「103万の壁」がそのまま当てはまるわけではありません。

フリーランスが税金上の扶養を確認するときは、売上ではなく、売上から必要経費や青色申告特別控除を差し引いた合計所得金額を確認します。

税金上の扶養ラインは、2025年分が所得58万円以下、2026年分が所得62万円以下です。フリーランス本人の所得税については、2026年・2027年分の最大基礎控除が104万円であるため、扶養判定とは異なるラインで考えます。

社会保険の扶養は原則として年間収入130万円未満ですが、税法上の必要経費がすべて差し引かれるとは限りません。19歳以上23歳未満の配偶者以外の親族には、150万円未満という特例もあります。

「売上103万円」だけで判断せず、税金上の所得、社会保険上の年間収入、本人にかかる税金、家族の控除をそれぞれ分けて確認することが重要です。