フリーランスの所得税率はいくら?年収別の計算方法・控除・節税ポイントをわかりやすく解説

はじめに

フリーランスの所得税率は、原則として5%〜45%です。ただし、売上や年収にそのまま税率をかけるわけではありません。売上から必要経費や青色申告特別控除を差し引き、さらに基礎控除や社会保険料控除などを反映した「課税所得」に税率を適用します。

そのため、同じ年収500万円のフリーランスでも、経費や家族構成、社会保険料、青色申告の有無によって所得税額は大きく変わります。

なお、令和7年分・令和8年分の所得税では基礎控除が見直され、合計所得金額に応じて最大95万円となっています。本記事では、原則として令和7年分・令和8年分の制度を前提に、フリーランスの所得税率や計算方法、年収別のシミュレーション、節税方法を解説します。国税庁+1

1. フリーランスの所得税率はいくら?まず押さえる基本

1-1. フリーランスの所得税率は5%〜45%の累進課税

フリーランスの事業所得には、原則として5%〜45%の所得税率が適用されます。税率は次の7段階です。

  • 5%

  • 10%

  • 20%

  • 23%

  • 33%

  • 40%

  • 45%

所得が増えるほど税率が上がる「超過累進税率」が採用されています。ただし、最も高い税率が所得全体にかかるわけではありません。所得を複数の段階に分け、それぞれの部分に対応する税率を適用します。国税庁

1-2. 税率がかかるのは「年収」ではなく「課税所得」

フリーランスの所得税率がかかるのは、売上や年収ではなく「課税所得」です。

課税所得は、おおむね次の流れで計算します。

売上-必要経費-青色申告特別控除=事業所得

事業所得などの合計-所得控除=課税所得

例えば、年間売上が500万円でも、必要経費が100万円、青色申告特別控除が65万円であれば、事業所得は335万円です。ここから基礎控除や社会保険料控除などを差し引くため、実際に税率をかける金額はさらに小さくなります。

フリーランスの場合、「年収500万円だから税率20%」というようには判断できません。

1-3. 所得税と復興特別所得税の違い

所得税を計算した後は、原則として「復興特別所得税」が加算されます。

復興特別所得税は、基準所得税額に2.1%をかけて計算します。

復興特別所得税=基準所得税額×2.1%

例えば、所得税が10万円の場合、復興特別所得税は2,100円です。所得税と合わせた負担額は10万2,100円となります。

復興特別所得税は、平成25年から令和19年、つまり2037年までの各年分について所得税と併せて申告・納付します。国税庁+1

1-4. 会社員とフリーランスで所得税の計算が違うポイント

会社員は給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。勤務先が毎月の給与から所得税を源泉徴収し、通常は年末調整で年間の税額を精算します。

一方、フリーランスの事業所得には給与所得控除がありません。実際に事業のために支出した必要経費を売上から差し引き、自分で帳簿を作成して確定申告を行います。

ただし、フリーランスでも原稿料、講演料、デザイン料など一定の報酬については、取引先から所得税が源泉徴収されることがあります。源泉徴収は税額の前払いであり、最終的な税額は確定申告で精算します。国税庁+1

2. フリーランスの所得税率表と速算表

2-1. 課税所得別の所得税率・控除額一覧

フリーランスの所得税は、次の速算表で計算できます。

課税所得金額所得税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

課税所得金額は、1,000円未満を切り捨ててから速算表に当てはめます。国税庁

2-2. 所得税の速算表の見方

速算表を使う場合、次の式で所得税を計算します。

課税所得×税率-控除額=所得税額

例えば、課税所得が400万円の場合は、税率20%、控除額42万7,500円です。

400万円×20%-42万7,500円=37万2,500円

復興特別所得税を含めると、概算は次のとおりです。

37万2,500円×2.1%=7,822円

37万2,500円+7,822円=38万322円

申告納税額は、所定の端数処理を行ったうえで計算します。

2-3. 課税所得が増えると税率はどう上がるのか

課税所得が195万円未満であれば税率は5%ですが、195万円以上になると、195万円を超えた部分に10%の税率が適用されます。

同様に、課税所得が330万円以上になると、330万円を超えた部分の税率が20%になります。

速算表の「控除額」は、所得全体に同じ税率をかけた後、低い税率が適用される部分を調整するための金額です。

2-4. 「税率が上がると手取りが急に減る」は誤解

課税所得が194万9,000円から195万円になったからといって、所得全体に突然10%の税率がかかるわけではありません。

税率10%が適用されるのは、原則として195万円以上の部分です。そのため、課税所得が税率の境目を超えても、税引後の手取りが逆に減ることは基本的にありません。

ただし、所得が増えると、国民健康保険料や住民税、各種控除の適用額などが変わることがあります。所得税以外の負担を含めた手取り額は別途確認が必要です。

3. フリーランスの所得税の計算方法

3-1. 所得税の基本計算式

フリーランスの所得税は、次の手順で計算します。

  1. 売上から必要経費を差し引く

  2. 青色申告特別控除を差し引く

  3. 所得控除を差し引いて課税所得を求める

  4. 課税所得に所得税率を適用する

  5. 復興特別所得税を加算する

  6. 源泉徴収税額や予定納税額を差し引く

基本式は次のとおりです。

事業所得=売上-必要経費-青色申告特別控除

課税所得=事業所得などの合計-所得控除

所得税=課税所得×税率-速算表の控除額

申告納税額=所得税+復興特別所得税-源泉徴収税額-予定納税額

住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、所得税の計算途中で別途反映します。国税庁

3-2. 年収から必要経費を差し引いて所得を出す

フリーランスの場合、一般に「年収」と呼ばれる金額は、経費を差し引く前の売上を指すことがあります。

例えば、年間売上500万円、必要経費120万円の場合、青色申告特別控除を適用する前の所得は380万円です。

500万円-120万円=380万円

事業に直接必要なパソコン、通信費、広告費、外注費、交通費などは、要件を満たせば必要経費にできます。

3-3. 所得から所得控除を差し引いて課税所得を出す

事業所得を計算した後は、基礎控除や社会保険料控除などを差し引きます。

例えば、事業所得335万円、基礎控除88万円、社会保険料控除50万円の場合は、次のとおりです。

335万円-88万円-50万円=197万円

課税所得は197万円です。

令和7年分・令和8年分の基礎控除は、合計所得金額132万円以下なら95万円、132万円超336万円以下なら88万円、336万円超489万円以下なら68万円、489万円超655万円以下なら63万円、655万円超2,350万円以下なら58万円です。国税庁

3-4. 課税所得に税率をかけて控除額を差し引く

課税所得197万円の場合、速算表では税率10%、控除額9万7,500円です。

197万円×10%-9万7,500円=9万9,500円

復興特別所得税は次のとおりです。

9万9,500円×2.1%=2,089円

所得税と復興特別所得税の合計は、端数処理前で10万1,589円です。

3-5. 源泉徴収されている場合の計算方法

原稿料や講演料など一定の報酬は、支払時に所得税と復興特別所得税が源泉徴収されることがあります。一般的な原稿料・講演料では、1回の支払額が100万円以下なら10.21%、100万円を超える場合は超過部分に20.42%が適用されます。報酬の種類によって計算方法が異なる点には注意が必要です。国税庁+1

例えば、年間の確定税額が20万円で、すでに取引先から25万円が源泉徴収されていれば、確定申告によって差額の5万円が原則として還付されます。

反対に、確定税額が30万円で、源泉徴収税額が20万円なら、差額の10万円を納付します。

4. 年収別に見るフリーランスの所得税シミュレーション

ここでは、令和8年分の所得税について、次の条件で試算します。

  • 年収は年間売上を意味する

  • 必要経費は売上の20%

  • 青色申告特別控除65万円を適用

  • 社会保険料控除は年間50万円

  • 配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などは適用しない

  • 税額控除、源泉徴収、予定納税はない

  • 所得税と復興特別所得税の合計を表示

実際の税額は、経費や控除の金額によって異なります。

年収・売上必要経費事業所得基礎控除課税所得所得税・復興特別所得税
300万円60万円175万円88万円37万円約1万8,800円
500万円100万円335万円88万円197万円約10万1,500円
700万円140万円495万円63万円382万円約34万3,500円
1,000万円200万円735万円58万円627万円約84万3,800円

4-1. 年収300万円の所得税はいくら?

年収300万円の場合、必要経費を60万円とすると、青色申告特別控除後の事業所得は175万円です。

300万円-60万円-65万円=175万円

基礎控除88万円と社会保険料控除50万円を差し引きます。

175万円-88万円-50万円=37万円

所得税は次のとおりです。

37万円×5%=1万8,500円

復興特別所得税を含めた税額は、約1万8,800円です。

4-2. 年収500万円の所得税はいくら?

年収500万円の場合、必要経費100万円、青色申告特別控除65万円を差し引くと、事業所得は335万円です。

500万円-100万円-65万円=335万円

基礎控除88万円と社会保険料控除50万円を差し引くと、課税所得は197万円です。

335万円-88万円-50万円=197万円

所得税と復興特別所得税の合計は、約10万1,500円です。

4-3. 年収700万円の所得税はいくら?

年収700万円の場合、必要経費140万円、青色申告特別控除65万円を差し引くと、事業所得は495万円です。

基礎控除63万円と社会保険料控除50万円を差し引くと、課税所得は382万円です。

382万円×20%-42万7,500円=33万6,500円

復興特別所得税を含めた税額は、約34万3,500円です。

4-4. 年収1,000万円の所得税はいくら?

年収1,000万円の場合、必要経費200万円、青色申告特別控除65万円を差し引くと、事業所得は735万円です。

基礎控除58万円と社会保険料控除50万円を差し引くと、課税所得は627万円です。

627万円×20%-42万7,500円=82万6,500円

復興特別所得税を含めた税額は、約84万3,800円です。

年収が1,000万円あっても、課税所得が900万円未満であれば所得税率33%にはなりません。

4-5. 経費や控除の金額で所得税はどれくらい変わる?

適用される所得税率が20%の場合、正当な必要経費や所得控除が10万円増えると、所得税は基本的に約2万円減ります。復興特別所得税を含めると、軽減額は約2万420円です。

ただし、経費や控除によって合計所得金額が変わり、基礎控除の区分も変化する場合があります。実際の節税額は、単純に「支出額×税率」とはならないことがあります。

また、節税額より支出額のほうが大きい点にも注意が必要です。税金を減らす目的だけで不要なものを購入すると、手元資金は減ってしまいます。

5. フリーランスが所得税計算で使える主な控除

5-1. 基礎控除

基礎控除は、一定の合計所得金額以下の人が利用できる所得控除です。

令和7年分・令和8年分は、合計所得金額に応じて控除額が95万円、88万円、68万円、63万円、58万円などに分かれます。合計所得金額2,500万円を超える場合、基礎控除は0円です。

令和9年分以後は、合計所得金額132万円超655万円以下に対する上乗せ措置が終了し、原則58万円となる予定です。国税庁+1

5-2. 青色申告特別控除

青色申告者は、要件に応じて65万円、55万円または10万円の青色申告特別控除を受けられます。

65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳、貸借対照表と損益計算書の提出、期限内申告などに加えて、原則としてe-Taxによる電子申告または一定の電子帳簿保存が必要です。これらの要件を満たさない場合でも、複式簿記などの要件を満たせば55万円控除を利用できることがあります。国税庁+1

5-3. 社会保険料控除

本人や生計を一にする家族のために支払った国民健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金などは、要件を満たせば社会保険料控除の対象です。

その年に実際に支払った金額は、原則として全額を所得から控除できます。国税庁

5-4. 小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済の掛金やiDeCoの個人型年金加入者掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象です。

その年に支払った対象掛金は、原則として全額を所得から控除できます。所得税と住民税を軽減しながら、廃業後や老後の資金を準備できる点が特徴です。ただし、途中解約や受取方法によって税務上の扱いが異なるため、加入前に資金拘束や受取時の課税も確認しましょう。国税庁

5-5. 生命保険料控除・地震保険料控除

生命保険、介護医療保険、個人年金保険などの対象契約について保険料を支払った場合、生命保険料控除を受けられることがあります。

平成24年以後に締結した新契約の場合、所得税における生命保険料控除の合計上限額は12万円です。支払保険料の全額が控除されるわけではありません。国税庁

地震保険料を支払った場合も、一定額を地震保険料控除として所得から差し引けます。

5-6. 配偶者控除・扶養控除

所得要件を満たす配偶者がいる場合は、配偶者控除または配偶者特別控除を利用できることがあります。

令和7年分以後、配偶者控除や扶養控除の対象となる親族の合計所得金額の要件は、原則として58万円以下に引き上げられています。給与収入だけの配偶者の場合、給与所得控除の最低額65万円を考慮すると、給与収入123万円以下が一つの基準です。国税庁+1

5-7. 医療費控除・寄附金控除

本人や生計を一にする家族のために一定額を超える医療費を支払った場合、医療費控除を受けられることがあります。

一般的な医療費控除額は、次の式で計算します。

支払った医療費-保険金などで補てんされた金額-10万円

総所得金額等が200万円未満の場合、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。国税庁

ふるさと納税など一定の寄附については、寄附金控除の対象になります。フリーランスは原則として確定申告を行うため、ワンストップ特例を利用するのではなく、確定申告書に寄附金控除を記載するケースが一般的です。確定申告をすると、申請済みのワンストップ特例は無効になるため、すべての寄附を申告する必要があります。国税庁+1

6. フリーランスが経費にできるもの・できないもの

6-1. 経費にできる主な支出

必要経費にできるのは、売上を得るために直接必要な支出です。

代表例には次のようなものがあります。

  • パソコン、モニター、周辺機器

  • 業務用ソフトやクラウドサービスの利用料

  • インターネット料金や携帯電話料金

  • 広告宣伝費

  • 外注費

  • 交通費、出張費

  • コワーキングスペースや事務所の賃料

  • 書籍、資料、研修費

  • 税理士や弁護士への報酬

  • 業務用備品、消耗品

  • 事業に関係する振込手数料

高額なパソコンや設備は、購入時に全額を経費にできず、原則として減価償却が必要になる場合があります。

6-2. 家事按分が必要な費用

自宅の家賃や電気代、インターネット料金など、仕事と私生活の両方に使っている費用は、事業で使用した部分だけを経費にします。これを家事按分といいます。

例えば、自宅全体の床面積の25%を仕事専用スペースとして継続的に使用している場合、家賃の25%を経費にする方法が考えられます。

通信費であれば、使用時間や利用実態などに基づいて事業割合を決めます。税務調査で説明できるように、按分方法と根拠を記録しておくことが重要です。

6-3. 経費にできない支出

次のような支出は、原則として必要経費にできません。

  • 日常の食費や衣服代

  • 所得税、住民税

  • 国民健康保険料や国民年金保険料

  • 事業と無関係な旅行代

  • 私的な家賃や通信費

  • 交通反則金などの罰金

  • 家族や友人との私的な飲食代

  • 事業主本人に支払う給与

国民健康保険料や国民年金保険料は経費ではありませんが、社会保険料控除として所得から差し引けます。

6-4. 領収書・レシート・帳簿の保存方法

青色申告では、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿、決算関係書類などを原則7年間保存します。請求書、見積書、契約書などは、書類の種類によって5年間または7年間の保存が必要です。

電子メールやクラウドサービスで受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、電子データのまま保存する必要があります。消費税の仕入税額控除やインボイス制度に関係する書類は、別途7年間の保存が必要になることがあります。国税庁+1

6-5. 経費を増やすときの注意点

経費として認められるためには、事業との関連性と支出の事実を説明できなければなりません。

領収書があるだけで、すべての支出が経費になるわけではありません。反対に、領収書を紛失しても、銀行明細やクレジットカード明細、取引記録などから支出内容を証明できる場合があります。

税金を減らすためだけに不要な支出を増やすのも避けましょう。10万円を使って所得税が2万円減っても、手元資金は8万円減ります。

7. フリーランスの所得税を抑える節税ポイント

7-1. 青色申告で最大65万円の控除を受ける

青色申告特別控除は、フリーランスが利用しやすい代表的な節税制度です。

課税所得に対する限界税率が20%の場合、65万円控除による所得税と復興特別所得税の軽減額は、単純計算で約13万2,000円です。住民税にも影響するため、実際の負担軽減効果はさらに大きくなる可能性があります。

65万円控除を受けるには、期限内申告やe-Taxなどの要件を確実に満たす必要があります。

7-2. 必要経費を漏れなく計上する

少額の経費でも、年間で合計すると大きな金額になることがあります。

特に見落としやすいのは、次のような支出です。

  • 振込手数料

  • サブスクリプション料金

  • ドメイン、サーバー代

  • オンライン会議ツール

  • 業務用書籍

  • 取引先との打ち合わせ交通費

  • 自宅家賃や通信費の事業部分

  • クレジットカードの年会費の事業部分

事業用口座と事業用クレジットカードを分けると、経費の計上漏れを防ぎやすくなります。

7-3. 小規模企業共済やiDeCoを活用する

小規模企業共済やiDeCoの対象掛金は、原則として全額が所得控除になります。

例えば、年間36万円を拠出し、所得税の限界税率が20%の場合、所得税と復興特別所得税だけで単純計算約7万3,000円の負担軽減が見込めます。

ただし、これらは自由に引き出せる普通預金ではありません。生活資金や納税資金を確保したうえで、無理のない掛金に設定しましょう。

7-4. ふるさと納税を活用する

ふるさと納税は、一定の上限内で寄附額から2,000円を差し引いた金額が、所得税と翌年度の住民税から控除される制度です。国税庁

上限額は所得や家族構成、社会保険料、その他の控除によって変わります。売上だけで上限を判断せず、その年の所得見込みをもとに計算することが重要です。

7-5. 家族への給与を経費にする方法

青色申告者が、生計を一にする配偶者や親族に給与を支払う場合、一定の要件を満たせば「青色事業専従者給与」として必要経費にできます。

適用には、原則として次の条件が必要です。

  • 15歳以上の親族である

  • その事業に専ら従事している

  • 期限までに届出書を提出している

  • 届出額の範囲内で実際に給与を支払っている

  • 業務内容に対して給与額が相当である

勤務実態がない家族への給与や、業務内容に比べて高額な給与は経費として認められない可能性があります。国税庁+1

7-6. 法人化を検討すべき年収の目安

法人化に一律の年収基準はありません。売上ではなく、経費を差し引いた利益や課税所得、家族への給与、社会保険料、法人に残す資金などを比較して判断します。

所得税率は課税所得900万円以上で33%になるため、課税所得が900万円前後まで増え、今後も安定した利益が見込まれる場合は、法人化による負担の違いを試算する価値が高まります。国税庁

ただし、法人化すると法人住民税の均等割、社会保険への加入、決算申告費用などの負担が発生します。「年収1,000万円を超えたら必ず法人化したほうが得」とは限りません。

8. 所得税以外にフリーランスが支払う税金・社会保険料

8-1. 住民税

住民税は、前年の所得をもとに計算され、原則として翌年度に課税されます。

標準的な所得割の税率は都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%です。このほか、均等割や年額1,000円の森林環境税が課税されます。自治体によって超過課税があるため、実際の金額は住所地によって異なることがあります。東京都税務局+1

所得税が少なくても、翌年に住民税の納付が必要になることを考慮して資金を残しておきましょう。

8-2. 個人事業税

法定業種に該当する個人事業には、個人事業税が課税されることがあります。

年間の事業主控除は原則290万円で、税率は業種に応じて3%〜5%です。多くの業種では5%が適用されます。

個人事業税の計算では、所得税で適用した青色申告特別控除を差し引けないため、所得税の事業所得に青色申告特別控除額を足し戻して計算する点に注意が必要です。東京都税務局+1

8-3. 消費税

個人事業者は、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。前々年の売上が1,000万円以下でも、前年の一定期間の課税売上高などによって課税事業者になることがあります。

また、インボイス発行事業者として登録している場合は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、原則として消費税の申告と納税が必要です。国税庁+2国税庁+2

8-4. 国民健康保険料

国民健康保険料は、前年の所得や加入人数、年齢、住所地の自治体などによって計算されます。

所得が増えると所得割部分も増えるため、所得税だけを見て納税資金を決めると不足する可能性があります。保険料率や上限額は自治体や年度によって異なるため、住所地の試算ページなどで確認しましょう。mhlw.go.jp+1

8-5. 国民年金保険料

フリーランスが国民年金の第1号被保険者に該当する場合、原則として国民年金保険料を自分で納付します。

令和8年度、2026年4月から2027年3月までの国民年金保険料は月額1万7,920円です。保険料は年度ごとに見直されます。支払った保険料は社会保険料控除の対象です。年金ネット+1

8-6. 所得税だけで手取りを判断してはいけない理由

フリーランスの手取りを計算するときは、次の負担をまとめて考える必要があります。

  • 所得税、復興特別所得税

  • 住民税

  • 個人事業税

  • 消費税

  • 国民健康保険料

  • 国民年金保険料

特に住民税や国民健康保険料は、前年の所得をもとに負担額が決まるため、独立2年目以降に負担が重く感じられることがあります。

売上として入金された金額をすべて生活費に使わず、税金や社会保険料の支払いに備えて別口座へ移しておくと安心です。

9. フリーランスの所得税に関する確定申告の流れ

9-1. 確定申告が必要になる所得の目安

専業フリーランスの場合、収入から必要経費を差し引いた所得を計算し、所得控除や税額控除を反映した結果、納付すべき所得税が生じる場合は原則として確定申告が必要です。

令和7年分・令和8年分について、国内居住者で、事業所得以外の所得がなく、合計所得金額が132万円以下の場合、基礎控除は95万円です。そのため、他の条件を考慮しなければ、所得95万円以下では課税所得が0円となります。

ただし、青色申告特別控除や赤字の繰越控除を利用する場合、所得税が0円でも確定申告が必要または有利になることがあります。また、所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。

会社員の副業では、給与所得と退職所得以外の所得が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。国税庁

9-2. 白色申告と青色申告の違い

白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法です。帳簿の記帳・保存義務はありますが、青色申告特別控除は利用できません。

青色申告には、主に次のメリットがあります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除

  • 青色事業専従者給与

  • 純損失の繰越控除

  • 一定の少額減価償却資産の特例

青色申告で生じた純損失は、一定の要件を満たせば翌年以後3年間にわたって繰り越せます。国税庁

9-3. 確定申告に必要な書類

一般的なフリーランスが準備するものは次のとおりです。

  • 確定申告書

  • 青色申告決算書または収支内訳書

  • 売上や経費を記録した帳簿

  • 源泉徴収税額が分かる支払調書や取引記録

  • 国民年金保険料の控除証明書

  • 生命保険料控除証明書

  • 小規模企業共済やiDeCoの掛金証明書

  • 医療費控除の明細書

  • 寄附金受領証明書

  • マイナンバー関係書類

  • 還付先口座の情報

支払調書が発行されていなくても、売上は帳簿や入金記録に基づいて申告します。支払調書を受け取っていないことを理由に申告しなくてよいわけではありません。

9-4. 所得税の納付期限と納付方法

所得税の確定申告期間は、原則として対象年の翌年2月16日から3月15日までです。3月15日が土日祝日に当たる場合は、通常、翌開庁日が期限になります。

納付期限も原則として確定申告期限と同日です。納付方法には、振替納税、インターネットバンキング、ダイレクト納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、金融機関や税務署窓口での納付などがあります。国税庁+1

9-5. 還付を受けられるケース

次のような場合は、確定申告によって所得税が還付される可能性があります。

  • 源泉徴収税額が確定税額を上回っている

  • 医療費控除を適用する

  • 寄附金控除を適用する

  • 年の途中で独立し、会社員時代の給与から税金が多く引かれている

  • 予定納税額が確定税額を上回っている

  • 赤字の事業所得と給与所得などを損益通算できる

還付申告は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。国税庁+1

10. フリーランスの所得税率に関するよくある質問

10-1. フリーランスの所得税は年収いくらからかかる?

所得税がかかり始める年収は、一律には決まっていません。所得税は売上ではなく、売上から必要経費や各種控除を差し引いた課税所得にかかるためです。

令和7年分・令和8年分は、合計所得金額132万円以下の国内居住者について基礎控除が95万円です。他の所得がなく、追加の条件を考慮しなければ、事業所得が95万円以下の場合は課税所得が0円となります。

ただし、住民税や国民健康保険料の基準は所得税と異なります。

10-2. 所得税率10%になる年収はいくら?

所得税率10%になるのは、年収ではなく課税所得が195万円以上329万9,000円以下の場合です。

例えば、年収500万円でも経費や所得控除が多ければ、課税所得が195万円未満となり、税率5%になることがあります。反対に、経費や控除が少なければ、年収500万円未満でも税率10%になる可能性があります。

10-3. 源泉徴収されていれば確定申告は不要?

源泉徴収されていても、原則として確定申告が必要です。

源泉徴収税額は、売上に一定割合をかけた仮の前払い額です。必要経費や所得控除を反映した最終税額ではありません。

確定申告で年間税額を計算し、源泉徴収税額が多ければ還付、少なければ追加納付となります。

10-4. 副業フリーランスの所得税率はどうなる?

副業フリーランスの所得は、会社員としての給与所得などと合算して所得税を計算します。

例えば、給与所得が400万円、副業の所得が100万円であれば、原則として合計所得500万円をもとに課税所得を計算します。副業所得だけに独立した税率を適用するわけではありません。

給与所得者は、給与所得と退職所得以外の所得が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。20万円以下で所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になることがあります。

10-5. 赤字の場合でも所得税はかかる?

事業所得が赤字で、ほかに課税対象となる所得がなければ、通常、その事業所得に対する所得税はかかりません。

事業所得の赤字は、一定の給与所得や不動産所得などと損益通算できる場合があります。青色申告者は、損益通算しても控除しきれない純損失を、原則として翌年以後3年間繰り越せます。国税庁

ただし、副業が税務上の「雑所得」と判断される場合、原則として給与所得などとの損益通算はできません。

10-6. 税理士に依頼したほうがいい年収の目安は?

税理士への依頼に、明確な年収基準はありません。

次のような状況では、税理士への相談を検討する価値があります。

  • 売上や取引件数が増え、記帳に時間がかかる

  • 年間の課税売上高が1,000万円前後になった

  • インボイス登録をしている

  • 外注先や従業員への源泉徴収が必要

  • 海外取引や複数事業がある

  • 法人化を検討している

  • 家族への給与を経費にしたい

  • 税務調査や過去の申告漏れが不安

特に消費税の課税事業者になると、所得税とは別に消費税の集計や申告が必要です。税理士費用と、記帳・申告にかかる時間や税務リスクを比較して判断しましょう。

まとめ

フリーランスの所得税率は5%〜45%ですが、税率がかかるのは年収や売上ではなく、必要経費と所得控除を差し引いた課税所得です。

所得税の基本的な計算手順は、次のとおりです。

売上-必要経費-青色申告特別控除=事業所得

事業所得など-所得控除=課税所得

課税所得×税率-速算表の控除額=所得税

さらに復興特別所得税を加算し、源泉徴収税額や予定納税額を差し引いて最終的な納付額を求めます。

所得税を適正に抑えるには、青色申告の利用、必要経費の漏れ防止、社会保険料控除、小規模企業共済やiDeCoなどの活用が効果的です。

一方で、不要な支出を増やすだけでは手元資金が減ってしまいます。所得税だけでなく、住民税、個人事業税、消費税、国民健康保険料、国民年金保険料まで含めて資金計画を立てることが、フリーランスの安定した事業運営につながります。