フリーランスは再就職手当をもらえる?受給条件・開業届のタイミング・申請手順をわかりやすく解説

はじめに

会社を退職してフリーランスになるとき、「失業保険をもらうべきか」「開業したら再就職手当はもらえないのか」と迷う人は少なくありません。

結論からいうと、フリーランスや個人事業主として開業する場合でも、条件を満たせば再就職手当を受給できる可能性があります。ただし、会社員として再就職する場合と違い、開業日・開業準備の開始日・事業継続の見込み・提出書類の確認が非常に重要です。

特に注意したいのは、ハローワークで受給資格決定を受ける前や7日間の待期期間中に開業したと判断されると、再就職手当の対象外になる可能性がある点です。フリーランスとして再就職手当を狙うなら、「先に開業届を出す」のではなく、ハローワークで手続きと相談を済ませてから動くことが基本になります。

1. フリーランスは再就職手当をもらえる?結論

1-1. 個人事業主・フリーランスでも条件を満たせば受給できる

フリーランスでも、雇用保険の基本手当の受給資格があり、ハローワークで求職申込み・受給資格決定を受けたうえで、一定の条件を満たして事業を開始すれば、再就職手当の対象になる可能性があります。

再就職手当は「会社に就職した人だけ」の制度ではありません。厚生労働省・ハローワークの案内でも、受給資格決定後に早期に安定した職業に就いた場合だけでなく、「事業を開始した場合」も対象として示されています。

1-2. 「就職」だけでなく「事業開始」も再就職手当の対象になる

フリーランスの場合、会社と雇用契約を結ぶわけではないため、「再就職」という言葉に違和感を持つかもしれません。しかし、制度上は、早期に自営業・個人事業を開始し、職業的に自立できる見込みがある場合も再就職手当の対象になり得ます。

たとえば、Webデザイナー、ライター、エンジニア、コンサルタント、カメラマン、講師、士業、店舗型ビジネスなどで、継続的に事業を行う実態を示せる場合は、申請を検討できます。

1-3. 会社員への再就職とフリーランス開業で異なるポイント

会社員として再就職する場合は、雇用契約書や採用証明書、雇用保険加入の見込みなどで「安定した職業に就いたこと」を確認します。

一方、フリーランスの場合は、開業届の控え、業務委託契約書、請負契約書、売上資料、事業用口座、領収書、事務所や備品の契約書などによって、「事業を開始したこと」「1年を超えて継続できる見込みがあること」を説明する必要があります。自営業を開始する場合の手続きでは、事業実態が確認できる資料の提出を求められることがあります。

1-4. 受給できる人・できない人の早見表

ケース再就職手当の可能性
ハローワークで受給資格決定後、待期満了後に開業した可能性あり
基本手当の支給残日数が3分の1以上ある可能性あり
1年以上継続できる事業実態を示せる可能性あり
開業届・契約書・売上資料などを提出できる可能性あり
受給資格決定前にすでに開業していた対象外になりやすい
7日間の待期期間中に開業・営業開始した対象外になりやすい
単発案件だけで継続性を示せない不支給の可能性あり
前職の会社からの仕事が中心慎重な確認が必要
申請期限を過ぎた不支給の可能性あり

2. 再就職手当とは?失業保険との違い

2-1. 再就職手当は早期に再就職・開業した人向けの給付金

再就職手当とは、雇用保険の基本手当の受給資格がある人が、所定給付日数を一定以上残して早期に再就職または事業開始した場合に支給される給付金です。

失業状態が長引く前に職業生活へ戻る人を支援する制度で、フリーランスとして開業する場合も、要件を満たせば対象になります。

2-2. 失業手当を満額受け取る場合との違い

失業手当、正確には雇用保険の基本手当は、失業状態にある期間中、認定を受けながら一定日数分を受け取る給付です。

一方、再就職手当は、基本手当を最後まで受け取らず、早期に再就職・開業した人に対して、残っている支給日数の一部をまとめて支給する制度です。

つまり、失業手当を満額受け取る場合は「失業状態が続いている間の給付」、再就職手当は「早く働き始めた人への一時金」と考えるとわかりやすいでしょう。

2-3. 就業手当・常用就職支度手当との違い

再就職手当は、安定した職業に就いた場合や継続性のある事業を開始した場合に支給される手当です。

就業手当は、再就職手当の対象になるほど安定した就職・開業と判断されない場合に案内されることがある手当です。たとえば、事業継続性が見込まれない事業形態や、再就職手当が不支給となった場合に、就業手当が案内される可能性があります。

常用就職支度手当は、就職が困難な人などが安定した職業に就いた場合に支給される手当です。ハローワークの就職促進給付には、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当などがあります。

2-4. フリーランスが再就職手当を狙うメリット

フリーランスとして独立する直後は、売上が安定しにくく、事業用の備品、ソフトウェア、広告費、事務所費、交通費などの初期費用もかかります。

再就職手当を受け取れれば、開業初期の資金繰りを支える一時金として活用できます。また、失業手当を満額受け取るよりも早く事業に集中できるため、案件獲得や営業活動に時間を使いやすくなります。

ただし、再就職手当を受け取るために無理に開業日を早めるのは危険です。条件を満たさないまま開業したと判断されると、不支給になる可能性があります。

3. フリーランスが再就職手当をもらうための受給条件

3-1. 受給手続き後、7日間の待期期間が満了している

再就職手当を受けるには、ハローワークで受給手続きをした後、7日間の待期期間が満了してから就職または事業開始している必要があります。

待期期間中に仕事をした日や、失業状態ではなかった日があると、待期期間に含まれない場合があります。フリーランスの場合、営業開始、受注、請求、開業届の提出、事業サイトの公開などが「すでに事業を始めている」と見られる可能性があるため、事前確認が重要です。

3-2. 基本手当の支給残日数が3分の1以上ある

再就職手当は、就職日または事業開始日の前日までに失業の認定を受けたうえで、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていることが必要です。

たとえば所定給付日数が90日の人なら、30日以上残っている必要があります。残日数が3分の1未満になると、再就職手当の対象外になります。

3-3. 1年を超えて事業を継続できる見込みがある

フリーランスの場合、特に重要なのが「1年を超えて事業を継続できる見込み」です。

会社員なら雇用契約期間などで確認できますが、フリーランスは自分で事業継続性を示す必要があります。業務委託契約書、継続案件の契約、取引先との発注書、売上見込み、事業計画、事業用設備、事務所契約、許認可などが判断材料になります。

3-4. 離職前の会社と密接な関係がない

再就職手当では、離職前の事業主に再び就職した場合や、離職前の事業主と資本・資金・人事・取引面で密接な関係がある事業主に就職した場合は対象外とされています。

フリーランスの場合も、前職の会社から業務委託を受けるケースでは注意が必要です。前職からの業務が売上の中心である場合、「実質的に前職と密接な関係がある」と見られる可能性があります。

3-5. 給付制限がある場合は開業タイミングに注意する

自己都合退職などで給付制限がある人は、開業タイミングに特に注意が必要です。

会社員として就職する場合、待期満了後1か月以内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが求められます。さらに自営業を開始する場合は、待期満了後1か月の期間経過後から対象になる旨が案内されています。

つまり、給付制限がある人がフリーランスとして再就職手当を狙う場合、待期満了後すぐに開業すると対象外になる可能性があります。

3-6. 過去3年以内に再就職手当を受け取っていない

就職日前または事業開始日前3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受け取っている場合は、原則として再就職手当の対象外です。事業開始にかかる再就職手当も含まれます。

過去に転職時や独立時に再就職手当を受け取ったことがある人は、受給履歴を確認しておきましょう。

3-7. 求職活動の実績や失業認定を適切に受けている

再就職手当は、基本手当の受給資格があることが前提です。そのため、ハローワークで求職申込みを行い、失業認定を適切に受けている必要があります。

基本手当を受けるには、原則として4週間に1度、失業の認定を受け、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証を提出します。求職活動の状況も確認されます。

フリーランス開業を考えている場合でも、受給手続き中は「いつから開業準備と判断されるか」をハローワークに確認しながら進めましょう。

4. 開業届のタイミングはいつが正解?

4-1. 原則はハローワークで受給資格決定を受けた後に動く

フリーランスが再就職手当を狙うなら、退職後すぐに開業届を出すのではなく、まずハローワークで求職申込みと受給資格決定を受けることが重要です。

再就職手当は、受給資格決定後に早期に就職または事業開始した場合の制度です。受給資格決定前にすでに開業していると、「失業状態ではない」と判断される可能性があります。

4-2. 7日間の待期期間中に開業すると対象外になる可能性がある

受給手続き後の7日間は待期期間です。この期間中に開業届を出したり、事業を開始したりすると、再就職手当の要件を満たさない可能性があります。

特にフリーランスは、開業届を出す前でも、案件の受注、納品、請求、広告出稿、店舗営業、サービス提供開始などがあれば、実質的に事業開始と見られることがあります。

4-3. 開業日と開業届の提出日は混同しない

開業日は「実際に事業を開始した日」、開業届の提出日は「税務署へ届け出た日」です。この2つは同じ日になることもありますが、必ず一致するとは限りません。

ハローワークが見るのは、単に開業届の提出日だけではありません。いつから事業を始めたのか、いつから開業準備を本格化したのか、いつから失業状態ではなくなったのかが重要です。

4-4. 給付制限がある人は待期満了後1か月以内の開業に注意

給付制限がある人は、待期満了後すぐに開業するのではなく、待期満了後1か月の扱いを必ず確認してください。

自営業を開始する場合、給付制限期間がある人は、待期満了の認定後かつ給付制限期間の初めの1か月間を経過した自営開始日であることが必要と案内されています。

ここを誤ると、事業実態があっても再就職手当の対象外になる可能性があります。

4-5. 開業準備を始める前にハローワークへ相談すべき理由

フリーランスの再就職手当では、「どこからが開業準備か」の判断が難しいことがあります。

名刺を作る、ポートフォリオを公開する、営業メールを送る、SNSで集客する、クラウドソーシングに登録する、事業用備品を購入するなど、どの行為が「準備」や「事業開始」と見られるかは、状況によって異なります。

そのため、開業届を出す前だけでなく、営業活動や案件獲得を始める前に、管轄ハローワークへ相談しておくことが安全です。

4-6. 開業届を出す前に確認したいチェックリスト

開業届を出す前に、次の点を確認しましょう。

確認項目チェック
ハローワークで求職申込みをしたか
受給資格決定を受けたか
7日間の待期期間が満了したか
給付制限がある場合、待期満了後1か月の扱いを確認したか
開業準備開始日をハローワークに相談したか
開業日を証明できる書類を用意できるか
1年以上継続できる事業実態を説明できるか
業務委託契約書や請求書などの資料があるか
前職との取引関係に問題がないか
申請期限を把握しているか

なお、税務署へ提出する個人事業の開業・廃業等届出書の提出期限は、2026年以後の開業では「事業開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と案内されています。過去の制度や解説では「開業後1か月以内」と説明されていることもあるため、最新の国税庁情報を確認しましょう。

5. フリーランスが再就職手当を申請する流れ

5-1. 退職後に離職票を受け取る

まず、退職した会社から離職票を受け取ります。離職票は、雇用保険の基本手当の受給手続きに必要な書類です。

会社から届くまでに時間がかかることもあるため、退職後しばらくしても届かない場合は、会社へ確認しましょう。

5-2. ハローワークで求職申込み・受給資格決定を受ける

離職票を持参し、住所地を管轄するハローワークで求職申込みを行います。

この時点で、将来的にフリーランスとして開業する可能性があることを相談しておくと安心です。開業準備をどのタイミングから始めてよいか、どの書類を残すべきかを確認できます。

5-3. 待期期間満了後に開業準備・事業開始を行う

受給資格決定後、7日間の待期期間が満了してから、開業準備や事業開始へ進みます。

ただし、給付制限がある人は、待期満了後1か月以内の自営業開始に注意が必要です。自己判断で進めず、管轄ハローワークの指示を確認しましょう。

5-4. 開業届を税務署へ提出する

個人事業主として開業する場合は、税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書を提出します。

提出後は、必ず控えを保管してください。e-Taxで提出した場合は、受付結果や送信データなど、提出を証明できるものを残しておきます。

5-5. ハローワークに事業開始を申告する

開業届を提出したら、ハローワークへ事業開始を申告します。

自営業を開始する場合、開業届の控えや登記事項証明書など、事業開始日がわかる書類を添えて申告するよう案内されています。

5-6. 再就職手当支給申請書を提出する

再就職手当を受けるには、再就職手当支給申請書を提出します。会社員の場合は就職日の翌日から1か月以内、自営業の場合も自営開始日の翌日から1か月以内に申請する流れが案内されています。

期限を過ぎると不支給になる可能性があるため、開業日が決まったらすぐに必要書類を確認しましょう。

5-7. 審査・事業実態の確認を受ける

申請後、ハローワークで支給要件や事業実態が確認されます。

契約書、請求書、領収書、事業用口座、ホームページ、事業所の契約書、許認可証、備品購入資料などから、継続的な事業として成立しているか確認されます。

5-8. 支給決定後に指定口座へ振り込まれる

審査の結果、支給が決定すると、指定口座へ再就職手当が振り込まれます。

審査期間は状況や管轄ハローワークによって異なります。書類不足や確認事項があると時間がかかるため、最初から事業実態を説明できる資料をそろえておくことが大切です。

6. 申請に必要な書類

6-1. 再就職手当支給申請書

再就職手当支給申請書は、再就職手当を申請するための中心となる書類です。

会社員への再就職とフリーランス開業では、記入内容や添付書類が異なる場合があります。自営業として申請する場合は、事業開始日や事業内容を正確に記入しましょう。

6-2. 雇用保険受給資格者証

雇用保険受給資格者証は、基本手当日額、所定給付日数、支給残日数などを確認するために必要です。

再就職手当の金額計算にも関係するため、紛失しないよう保管してください。

6-3. 開業届の控え

個人事業主として開業する場合、開業届の控えは重要な証明資料です。

税務署の受付印がある控え、またはe-Taxの受付結果など、提出したことを証明できる資料を用意しましょう。

6-4. 業務委託契約書・請負契約書

フリーランスの場合、業務委託契約書や請負契約書は、事業継続性を示す重要な資料です。

単発の発注書だけでは継続性が弱い場合があります。継続契約、月額契約、長期案件、複数取引先との契約があると、1年を超えて事業を続けられる見込みを説明しやすくなります。

6-5. 事業用口座・請求書・領収書・売上資料

売上が発生している場合は、請求書、領収書、入金記録、出納帳、事業用口座の明細などを準備しましょう。

まだ売上がない場合でも、契約書、見積書、発注書、商談履歴、サービス資料などで事業実態を説明できる場合があります。

6-6. 事務所や備品に関する契約書・領収書

事務所を借りた場合は賃貸借契約書、コワーキングスペースを利用する場合は利用契約書や領収書を用意します。

パソコン、カメラ、ソフトウェア、工具、店舗設備、机、椅子など、事業に必要な備品を購入した場合は、領収書や購入履歴を残しておきましょう。

6-7. 許認可が必要な業種で用意すべき書類

飲食業、古物商、運送業、理美容業、建設業、士業など、許認可や登録が必要な業種では、営業許可証、登録証、免許証などが必要になる場合があります。

許認可がなければ事業を開始できない業種では、許認可の有無が事業実態の判断に直結します。

6-8. 書類が不足している場合の対処法

書類が不足している場合は、自己判断で申請を諦めず、ハローワークに相談しましょう。

事業内容によっては、契約書がなくても、発注メール、請求書、入金記録、サービスページ、広告資料、商談記録、許認可書類などで補える場合があります。

7. 再就職手当はいくらもらえる?計算方法

7-1. 支給額の基本計算式

再就職手当の基本計算式は、次のとおりです。

再就職手当の額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率

給付率は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合は70%、3分の1以上残っている場合は60%です。

7-2. 支給残日数が3分の2以上ある場合

基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある場合、給付率は70%です。

たとえば、所定給付日数90日の人が、支給残日数60日以上を残して開業した場合、70%の給付率で計算されます。

7-3. 支給残日数が3分の1以上ある場合

基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上、3分の2未満の場合、給付率は60%です。

所定給付日数90日の人であれば、支給残日数30日以上60日未満の場合が該当します。

7-4. 基本手当日額の上限に注意する

再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限があります。

2026年6月時点で確認できる案内では、再就職手当に係る基本手当日額の上限は、離職時の年齢が60歳未満の場合6,570円、60歳以上65歳未満の場合5,310円です。この金額は毎年8月1日に変更される場合があります。

7-5. 具体例でわかる受給額シミュレーション

たとえば、基本手当日額が5,000円、所定給付日数が90日、支給残日数が60日の人がフリーランスとして開業したとします。

支給残日数60日は所定給付日数90日の3分の2以上なので、給付率は70%です。

5,000円 × 60日 × 70% = 210,000円

この場合、再就職手当の目安は21万円です。

次に、同じ条件で支給残日数が45日の場合は、3分の1以上3分の2未満なので給付率は60%です。

5,000円 × 45日 × 60% = 135,000円

このように、開業時点の支給残日数によって受給額は大きく変わります。

7-6. 早く開業するほど受給額が多くなりやすい理由

再就職手当は、支給残日数が多いほど金額が大きくなります。

ただし、フリーランスの場合は「早く開業すれば必ず得」というわけではありません。待期期間や給付制限、開業準備開始日の扱いを誤ると、受給できない可能性があります。

金額だけで判断せず、受給条件を満たすタイミングで開業することが重要です。

8. フリーランスが再就職手当で失敗しやすい注意点

8-1. 失業認定前に開業したと判断されるケース

受給資格決定前にすでに開業していた、または待期期間中に事業を始めていたと判断されると、再就職手当の対象外になる可能性があります。

開業届を出していなくても、案件を受注していた、請求書を発行していた、営業活動を本格化していた、サービス提供を開始していた場合は注意が必要です。

8-2. 開業届を早く出しすぎるケース

退職後すぐに開業届を出すと、ハローワークで「すでに自営業を開始している」と判断される可能性があります。

フリーランスとして再就職手当を受けたい場合、開業届の提出タイミングは非常に重要です。必ずハローワークで受給資格決定を受け、待期期間や給付制限の扱いを確認してから提出しましょう。

8-3. 事業継続の見込みを証明できないケース

再就職手当では、1年を超えて事業を継続できる見込みが重要です。

「これから頑張ります」という説明だけでは不十分です。契約書、継続案件、売上見込み、事業計画、設備投資、許認可など、客観的な資料を用意しましょう。

8-4. 単発案件・短期案件しかないケース

単発案件が1件あるだけでは、事業の継続性を示しにくい場合があります。

たとえば、1週間だけの業務委託や、納品して終わる単発案件だけでは、1年以上続く事業と判断されにくい可能性があります。複数案件や継続契約、営業計画などを示せるようにしておきましょう。

8-5. 前職からの業務委託が中心のケース

前職の会社から業務委託を受ける場合は、特に慎重な確認が必要です。

前職と取引関係があること自体が必ず不支給になるとは限りませんが、売上の大半が前職からの業務である場合、離職前の事業主と密接な関係があると見られる可能性があります。

8-6. 申請期限の1か月を過ぎるケース

再就職手当支給申請書は、就職日または自営開始日の翌日から1か月以内に提出する必要があります。

開業直後は忙しくなりがちですが、期限を過ぎると受給できない可能性があります。開業日を決めた時点で、申請期限をカレンダーに入れておきましょう。

8-7. 虚偽申告・不正受給に該当するケース

開業日を偽る、実際には事業をしていないのに開業したことにする、売上や契約を偽装する、就労や収入を申告しないといった行為は、不正受給に該当する可能性があります。

不正受給と判断されると、返還や追加納付の対象になることがあります。迷った場合は、必ずハローワークに正直に相談しましょう。

9. ケース別|再就職手当をもらえる可能性

9-1. 会社を退職してすぐフリーランスになる場合

退職後すぐにフリーランスになる場合でも、受給資格決定前に開業してしまうと再就職手当の対象外になりやすくなります。

まずは離職票を受け取り、ハローワークで求職申込みを行い、受給資格決定を受けてください。その後、待期期間や給付制限の扱いを確認してから開業準備へ進むのが安全です。

9-2. 失業手当を受給中にフリーランス開業する場合

失業手当を受給中にフリーランス開業する場合、支給残日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当の対象になる可能性があります。

ただし、開業準備を始めた時点で失業給付が支給停止となることがあるため、どの時点を「自営準備開始」とするかを事前に確認しましょう。

9-3. 副業から本業フリーランスへ移行する場合

会社員時代から副業をしていた人が、退職後に本業フリーランスへ移行する場合は注意が必要です。

すでに事業として継続していた副業を退職後に本業化するだけだと、「離職後に新たに事業を開始した」と判断されにくい場合があります。ただし、実態によって判断が分かれるため、副業の規模、売上、開業届の有無、退職後の変化を整理してハローワークへ相談しましょう。

9-4. 退職前から案件が決まっている場合

退職前からフリーランス案件が決まっている場合、失業状態といえるかが問題になります。

退職前に契約済みで、退職後すぐにその案件で稼働することが決まっている場合、受給資格決定前から事業開始が予定されていたと見られる可能性があります。

9-5. 法人化・会社設立する場合

個人事業主ではなく法人を設立する場合も、事業開始として再就職手当の対象になる可能性があります。

この場合、開業届ではなく、法人登記に関する書類、定款、登記事項証明書、事業所資料、契約書、売上見込みなどが必要になることがあります。

9-6. 業務委託契約で働く場合

業務委託契約で働く場合、雇用契約ではないため、フリーランスとしての事業実態が問われます。

1社専属の業務委託であっても、契約期間や業務内容、報酬、更新見込み、独立性、前職との関係などによって判断されます。契約書は必ず保管しておきましょう。

9-7. 前職の会社から仕事を受ける場合

前職の会社から仕事を受ける場合は、再就職手当の審査で慎重に見られやすいケースです。

特に、退職後も前職とほぼ同じ業務を、業務委託として継続しているだけに見える場合は注意が必要です。前職以外の取引先があるか、事業として独立しているか、取引条件が適正かを説明できるようにしましょう。

10. 申請前にハローワークへ確認すべきこと

10-1. 自分が再就職手当の対象になるか

まず、自分が再就職手当の対象になるかを確認しましょう。

雇用保険の受給資格、離職理由、給付制限の有無、支給残日数、過去3年以内の受給歴などによって、対象になるかが変わります。

10-2. 開業日・準備開始日の扱い

フリーランスの場合、開業日だけでなく、開業準備開始日の扱いも重要です。

営業活動、契約締結、設備購入、ホームページ公開、SNS集客、クラウドソーシング登録などが、どの時点で事業開始または準備開始と判断されるかを確認しましょう。

10-3. 必要書類と事業実態の証明方法

事業内容によって必要書類は異なります。

Web系フリーランスなら業務委託契約書や請求書、店舗型なら賃貸借契約書や営業許可証、士業なら登録証や顧問契約書など、事業実態を示す資料が変わります。

10-4. 申請期限と提出先

再就職手当の申請期限は、原則として就職日または自営開始日の翌日から1か月以内です。

提出先は管轄ハローワークです。郵送や代理提出が可能な場合もありますが、事前に確認しておきましょう。

10-5. 管轄ハローワークによる判断の違い

再就職手当の基本要件は全国共通ですが、フリーランスの事業実態の確認では、事業内容や提出資料によって個別判断になります。

インターネット上の体験談だけを信じず、自分の管轄ハローワークで確認することが大切です。

11. よくある質問

11-1. 開業届なしでも再就職手当はもらえる?

開業届は、フリーランスが事業開始を示す代表的な書類です。ただし、法人登記、許認可証、契約書、請求書、売上資料など、別の資料で事業実態を示せる場合もあります。

とはいえ、個人事業主として申請するなら、開業届の控えを求められるケースが多いため、事前にハローワークへ確認しましょう。

11-2. 開業届を出したら失業手当は止まる?

開業届を出し、自営業を開始したと判断されると、原則として失業状態ではなくなるため、基本手当の支給は止まります。

自営業を開始する人向けの案内でも、自営準備開始時点で失業給付は支給停止となる旨が示されています。

11-3. 再就職手当の申請後、いつ振り込まれる?

振込時期は、審査状況や管轄ハローワークによって異なります。

書類に不備がある場合や、事業実態の確認に時間がかかる場合は、振込まで時間がかかります。急ぎの場合は、申請時におおよその審査期間を確認しましょう。

11-4. フリーランスで収入がまだなくても申請できる?

収入がまだない場合でも、契約書、発注書、事業計画、設備投資、許認可、営業資料などから、事業実態や継続性を説明できれば申請できる可能性があります。

ただし、売上も契約もなく、具体的な事業活動を示せない場合は、不支給になる可能性があります。

11-5. 途中で廃業したら返金が必要?

正しく申請し、支給決定時点で要件を満たしていた場合、後から事業がうまくいかず廃業しただけで、直ちに返金が必要になるとは限りません。

ただし、最初から継続見込みがなかった、虚偽の契約書を提出した、開業日を偽ったなどの場合は、不正受給として返還を求められる可能性があります。

11-6. 会社員として再就職した後に副業フリーランスを始めても対象?

会社員として再就職して再就職手当を申請する場合、対象になるのは原則としてその再就職です。

再就職後に副業フリーランスを始めること自体が、フリーランス開業として再就職手当の対象になるわけではありません。副業の開始は別問題として整理しましょう。

11-7. 青色申告承認申請書も必要?

青色申告承認申請書は、再就職手当の必須書類とは限りません。

ただし、フリーランスとして継続的に事業を行うなら、税務上のメリットがあるため、開業届とあわせて提出を検討する価値があります。国税庁では、青色申告承認申請書について、原則3月15日まで、1月16日以後に新たに業務を開始した場合は業務開始日から2か月以内と案内されています。

11-8. 再就職手当をもらった後に失業手当は受け取れる?

再就職手当を受け取った後に離職・廃業して失業状態になった場合、受給期間内であれば、再就職手当分を除いた残日数分の基本手当を受け取れる可能性があります。ハローワークの案内でも、再就職手当支給後に離職した場合、残日数分を受給できる可能性があるため相談するよう示されています。

ただし、受給期間や離職・廃業の状況によって扱いが変わるため、必ずハローワークへ相談してください。

まとめ

フリーランスや個人事業主でも、条件を満たせば再就職手当をもらえる可能性があります。

重要なのは、退職後すぐに開業届を出すのではなく、まずハローワークで求職申込みと受給資格決定を受けることです。その後、7日間の待期期間、給付制限の有無、開業準備開始日の扱いを確認したうえで、開業届の提出や事業開始へ進みましょう。

フリーランスの場合は、会社員への再就職よりも事業実態の証明が重要です。開業届の控え、業務委託契約書、請求書、売上資料、事業用口座、備品購入の領収書、許認可証などをそろえ、1年を超えて事業を継続できる見込みを説明できるようにしておきましょう。

再就職手当は、開業初期の資金繰りを助けてくれる心強い制度です。一方で、開業日や申請期限を誤ると受給できない可能性があります。フリーランスとして再就職手当を受けたい人は、開業準備を始める前に管轄ハローワークへ相談し、正しい順番で手続きを進めることが大切です。