フリーランスのe-Tax完全ガイド|確定申告のやり方・必要なもの・青色申告の注意点を初心者向けに解説
はじめに
フリーランスとして仕事を始めると、避けて通れないのが確定申告です。会社員のように勤務先が年末調整をしてくれるわけではないため、1年間の売上や経費、各種控除を自分で整理し、所得税を計算して申告する必要があります。
その確定申告を自宅からオンラインで行える仕組みが「e-Tax」です。税務署へ行かずに申告書を送信でき、青色申告をするフリーランスにとっては、青色申告特別控除の面でも重要な制度です。令和7年分の所得税及び復興特別所得税の申告・納付期限は令和8年3月16日(月)までと案内されています。個人事業者の消費税等は令和8年3月31日(火)までです。
この記事では、「フリーランス e-Tax」で調べている初心者に向けて、e-Taxの基本、必要なもの、確定申告のやり方、青色申告の注意点、よくある失敗までをまとめて解説します。
1. フリーランスがe-Taxで確定申告する前に知っておきたい基礎知識
1-1. e-Taxとは?税務署に行かずに確定申告できる仕組み
e-Taxとは、国税に関する申告や納税、申請・届出などをインターネット上で行える国税電子申告・納税システムです。フリーランスの場合、所得税の確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書などを作成し、オンラインで税務署へ送信できます。
従来のように紙の申告書を印刷して税務署に持参したり、郵送したりする必要がないため、自宅や事務所から確定申告を完了できるのが大きな特徴です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、申告書や青色申告決算書などを作成でき、作成したデータをe-Taxで送信できます。
1-2. フリーランスがe-Taxを使うメリット
フリーランスがe-Taxを使う主なメリットは、税務署に行かずに申告できること、申告データをオンラインで送信できること、控えをデータで保存しやすいことです。確定申告期の税務署は混雑しやすいため、移動時間や待ち時間を減らせるだけでも大きなメリットがあります。
さらに、青色申告で65万円の青色申告特別控除を受けたい場合、一定の要件を満たしたうえでe-Taxによる申告、または優良な電子帳簿保存が必要です。55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告などの条件を満たすことで、最高65万円の控除を受けられます。
1-3. e-Taxと紙の確定申告の違い
e-Taxと紙の確定申告の違いは、提出方法だけではありません。紙の申告では、申告書を印刷して税務署に持参または郵送します。一方、e-Taxでは作成した申告データをインターネット経由で送信します。
紙提出の場合、印刷、押印が必要な書類の確認、郵送準備、控えの管理などに手間がかかります。e-Taxの場合は、送信後に受付結果を確認でき、申告データや控えもデジタルで保管しやすくなります。
また、青色申告特別控除の観点では、紙提出とe-Tax提出で控除額に差が出るケースがあります。特に65万円控除を目指すフリーランスは、e-Taxを前提に準備するのがおすすめです。
1-4. スマホ申告とパソコン申告の違い
e-Taxはスマホでもパソコンでも利用できます。スマホ申告は、マイナンバーカードをスマホで読み取りながら申告できるため、パソコンやICカードリーダーを持っていない人にも便利です。国税庁も、スマホとマイナンバーカードを使ったe-Tax申告を案内しています。
一方、パソコン申告は画面が大きく、売上や経費、控除項目を確認しながら入力しやすいのがメリットです。会計ソフトで帳簿を作成している人、複式簿記で青色申告をする人、添付書類や控えを細かく確認したい人は、パソコンのほうが作業しやすい場合があります。
1-5. e-Taxが向いているフリーランス・向いていないケース
e-Taxが向いているのは、税務署へ行く時間を減らしたい人、青色申告特別控除65万円を目指したい人、会計ソフトを使っている人、毎年の申告データを効率よく管理したい人です。デザイナー、エンジニア、ライター、動画編集者、コンサルタントなど、オンラインで仕事をしているフリーランスとは特に相性がよいでしょう。
一方、パソコンやスマホ操作が苦手な人、マイナンバーカードの読み取り環境を準備できない人、複雑な取引が多く自力で判断できない人は、税務署の相談会場や税理士への相談も検討しましょう。ただし、最初は難しく感じても、会計ソフトや確定申告書等作成コーナーを使えば、入力画面に沿って進められるため、初心者でも十分に対応できます。
2. フリーランスで確定申告が必要な人・不要な人
2-1. フリーランスが確定申告をする必要がある所得の目安
フリーランスとして事業所得や雑所得がある場合、基本的には1年間の収入から必要経費を差し引いた「所得」を計算し、そこから所得控除を差し引いて税額を求めます。所得税が発生する場合は、確定申告が必要です。
よく「収入がいくらなら申告が必要ですか」と聞かれますが、判断するのは売上ではなく、原則として所得や税額です。たとえば年間売上が100万円でも、経費が80万円なら所得は20万円です。反対に売上が同じ100万円でも、経費が10万円なら所得は90万円になります。
そのため、フリーランスはまず「売上」「必要経費」「所得控除」「源泉徴収税額」を整理し、自分に申告義務があるかを確認することが大切です。
2-2. 副業フリーランス・会社員兼業の場合の判断基準
会社員として給与を受け取りながら副業でフリーランス収入がある場合は、副業所得が20万円を超えるかどうかがひとつの目安になります。国税庁は、給与所得者で確定申告が必要な人の例として、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人などを挙げています。
ただし、副業所得が20万円以下でも、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、副業分も含めて申告する必要があります。また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があるため、自治体の案内も確認しましょう。
2-3. 開業届を出していないフリーランスも申告は必要?
開業届を出していない場合でも、フリーランスとして収入があり、所得税の申告が必要な状態であれば確定申告は必要です。開業届は「事業を始めました」という届出であり、提出していないからといって申告義務がなくなるわけではありません。
たとえば、ライティング、デザイン、プログラミング、ハンドメイド販売、動画編集、講師業などで継続的に収入を得ている場合、開業届の有無にかかわらず、所得を計算して申告の要否を判断します。
ただし、青色申告をしたい場合は、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。青色申告の特典を受けたいフリーランスは、開業届と青色申告承認申請書を早めに提出しておきましょう。
2-4. 赤字でも確定申告したほうがよいケース
フリーランスの事業が赤字の場合、所得税が発生しないため申告不要だと思う人もいます。しかし、赤字でも確定申告したほうがよいケースがあります。
特に青色申告の場合、一定の要件を満たすと赤字を翌年以降に繰り越せる制度があります。国税庁は青色申告の特典として、純損失の繰越しや繰戻しに関する制度を案内しています。
また、報酬から源泉徴収されている場合、赤字や所得が少ない年は、確定申告によって源泉徴収された税金が還付されることがあります。フリーランスのライター、デザイナー、講師、カメラマンなどは、報酬から源泉徴収されているケースがあるため、支払調書や入金明細を確認しましょう。
2-5. 確定申告しないとどうなる?無申告のリスク
確定申告が必要なのに申告しないと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。申告期限を過ぎてから慌てて申告すると、本来の税金に加えて余計な負担が増えることがあります。
また、無申告の状態が続くと、収入証明ができず、住宅ローン、賃貸契約、保育園の手続き、補助金申請などで困ることもあります。フリーランスにとって確定申告は、税金を納めるためだけでなく、自分の所得を公的に証明するための重要な手続きです。
3. フリーランスがe-Taxで確定申告するために必要なもの
3-1. マイナンバーカード
e-Taxで確定申告するなら、基本的にはマイナンバーカードを用意しましょう。マイナンバーカード方式では、マイナンバーカードを使ってe-Taxにログインし、申告データを送信できます。
e-Taxでは、マイナンバーカードを事前登録することで、利用者証明用電子証明書の暗証番号を入力してログインできます。マイナンバーカード方式では、利用者識別番号やパスワードの管理負担を減らせる点もメリットです。
3-2. マイナンバーカードの暗証番号・パスワード
マイナンバーカードを使う場合、暗証番号やパスワードが必要です。代表的なのは、利用者証明用電子証明書の暗証番号、署名用電子証明書のパスワード、券面事項入力補助用の暗証番号などです。
特にe-Taxでは、ログイン時や電子署名時に暗証番号・パスワードを求められます。複数回間違えるとロックされることがあるため、申告期限直前に慌てないよう、事前に確認しておきましょう。ロックされた場合は、市区町村の窓口などで再設定が必要になることがあります。
3-3. スマホ・パソコン・ICカードリーダー
スマホで申告する場合は、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホが必要です。パソコンで申告する場合は、ICカードリーダー、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマホを使います。
最近は、スマホでマイナンバーカードを読み取り、パソコン画面で申告を進める方法もあります。画面の大きさや入力のしやすさを考えると、売上や経費が多いフリーランスはパソコン、シンプルな申告ならスマホという使い分けがおすすめです。
3-4. 利用者識別番号
利用者識別番号とは、e-Taxを利用するために必要な16桁の番号です。初めてe-Taxを使う場合は、利用開始手続きの中で取得します。
e-Taxの利用開始では、WEBからマイナンバーカードを使ってアカウント登録する方法や、WEBから利用者識別番号を取得する方法などが案内されています。
マイナンバーカード方式で利用開始した場合、利用者識別番号が分からなくなっても、マイページの基本情報メニューなどから確認できます。
3-5. 売上・経費・控除に関する書類
フリーランスの確定申告では、売上、経費、控除を正しく整理する必要があります。具体的には、請求書、領収書、レシート、通帳、クレジットカード明細、源泉徴収の分かる支払明細、社会保険料控除証明書、生命保険料控除証明書、医療費の明細などを用意します。
e-Taxで申告する場合でも、根拠資料が不要になるわけではありません。申告書に入力した金額を説明できるよう、帳簿や証憑類を保存しておくことが重要です。
3-6. 青色申告決算書または収支内訳書
青色申告をするフリーランスは「青色申告決算書」を作成します。白色申告の場合は「収支内訳書」を作成します。
青色申告決算書では、売上、仕入、経費、減価償却費、家事按分、貸借対照表などを記載します。65万円または55万円の青色申告特別控除を受ける場合、複式簿記による記帳や貸借対照表・損益計算書の作成が重要になります。
3-7. 還付を受ける銀行口座情報
源泉徴収された税金がある場合や、所得控除によって税金を納め過ぎていた場合は、確定申告によって還付を受けられることがあります。還付を受けるには、本人名義の銀行口座情報を入力します。
口座名義、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を事前に確認しておきましょう。屋号付き口座や旧姓口座などは、還付口座として使えるか注意が必要です。
4. フリーランスがe-Taxで確定申告する全体の流れ
4-1. 1年間の売上・経費を整理する
まずは、1月1日から12月31日までの売上と経費を整理します。請求日、入金日、取引先、仕事内容、金額、源泉徴収額を確認し、会計ソフトや帳簿に入力します。
経費については、仕事に必要な支出だけを計上します。通信費、交通費、消耗品費、外注費、広告宣伝費、会議費、書籍代、ソフトウェア利用料など、事業に関係する支出を分類しましょう。
4-2. 白色申告・青色申告を選ぶ
フリーランスの確定申告には、白色申告と青色申告があります。青色申告は事前申請が必要ですが、青色申告特別控除や赤字の繰越しなどのメリットがあります。
一方、白色申告は事前申請が不要で始めやすい反面、青色申告のような大きな控除はありません。長くフリーランスとして活動する予定があるなら、早めに青色申告を検討しましょう。
4-3. 会計ソフトまたは国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う
申告書の作成方法は、大きく分けて会計ソフトを使う方法と、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う方法があります。
会計ソフトは、日々の記帳から決算書・申告書作成までを一体で管理できるのがメリットです。確定申告書等作成コーナーは、国税庁が提供している無料の作成サービスで、画面の案内に従って入力すれば申告書を作成できます。
4-4. 申告書・決算書を作成する
売上、経費、所得控除、税額控除、源泉徴収税額などを入力し、申告書と決算書を作成します。青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書も作成します。
この段階で、売上の計上漏れ、経費の二重計上、家事按分の入力漏れ、源泉徴収税額の入力漏れがないか確認しましょう。
4-5. e-Taxで申告データを送信する
申告書の作成が完了したら、マイナンバーカード方式などで本人確認を行い、e-Taxで申告データを送信します。送信後は、受付結果を必ず確認します。
送信しただけで安心せず、正常に受け付けられているか、エラーが出ていないかを確認することが大切です。
4-6. 所得税を納付する・還付を受ける
納付税額がある場合は、期限までに納税します。e-Tax申告をしても、納税は自動で完了するわけではありません。国税庁は、申告書を提出して納付税額がある場合、納期限までに自分で納付する必要があると案内しています。
納付方法には、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付などがあります。電子納税を使えば、税務署や金融機関に行かずに納付できます。
還付の場合は、申告書に入力した口座へ後日振り込まれます。
4-7. 申告後に控えや帳簿を保存する
申告後は、申告書の控え、青色申告決算書、収支内訳書、帳簿、領収書、請求書、通帳、カード明細などを保存します。
国税庁は、所得を正しく計算して申告するためには日々の取引を記帳し、帳簿や書類を一定期間保存する必要があると案内しています。青色申告者は原則として正規の簿記の原則により記帳することとされています。
5. e-Taxで確定申告する具体的なやり方
5-1. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」から申告する方法
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う場合、まず作成コーナーにアクセスし、所得税の確定申告書作成を選択します。次に、提出方法としてe-Taxを選び、マイナンバーカード方式などの認証方法を選択します。
その後、事業所得や雑所得、給与所得、所得控除、税額控除、源泉徴収税額などを入力します。青色申告の場合は、青色申告決算書も作成します。入力が終わったら、内容を確認し、マイナンバーカードで電子署名を行って送信します。
5-2. 会計ソフトからe-Tax送信する方法
会計ソフトを使う場合は、日々の売上や経費を入力しておくことで、確定申告書や青色申告決算書を自動作成しやすくなります。ソフトによっては、そのままe-Tax送信に対応しているものもあります。
会計ソフトを使うメリットは、銀行口座やクレジットカードとの連携、レシート読み取り、勘定科目の自動提案、減価償却の自動計算などです。特に青色申告で65万円控除を目指す場合、複式簿記の負担を減らせるため、初心者ほど会計ソフトを活用するとよいでしょう。
5-3. スマホでe-Tax申告する手順
スマホで申告する場合は、スマホがマイナンバーカードの読み取りに対応しているか確認します。次に、確定申告書等作成コーナーへアクセスし、画面の案内に従って収入や控除を入力します。
マイナンバーカードを読み取り、暗証番号を入力して本人確認を行い、申告データを送信します。副業収入が少ない人、医療費控除やふるさと納税の申告をしたい人、比較的シンプルなフリーランス収入の人は、スマホ申告でも対応しやすいでしょう。
5-4. パソコンでe-Tax申告する手順
パソコンで申告する場合は、確定申告書等作成コーナーにアクセスし、e-Taxで提出を選択します。マイナンバーカードを読み取るために、ICカードリーダーまたは対応スマホを準備します。
パソコン申告では、複数画面で資料を見ながら入力しやすく、会計ソフトから出力したデータやPDFを確認しながら作業できます。売上先が多い人、経費項目が多い人、青色申告決算書を細かく確認したい人にはパソコン申告が向いています。
5-5. マイナンバーカード方式で申告する手順
マイナンバーカード方式では、マイナンバーカードを使って本人確認を行い、e-Taxへログインします。e-Taxでは、マイナンバーカードを事前登録すると、利用者証明用電子証明書の暗証番号でログインでき、利用者識別番号やパスワードの管理負担を減らせます。
手順としては、マイナンバーカードの読み取り、暗証番号の入力、申告書データの作成、電子署名、送信、受付結果の確認という流れです。電子証明書の有効期限が切れていると使えないため、申告前に確認しておきましょう。
5-6. ID・パスワード方式で申告する場合の注意点
ID・パスワード方式は、マイナンバーカードやICカードリーダーが普及するまでの暫定的な方式として案内されてきた方法です。国税庁は、ID・パスワード方式は「確定申告書等作成コーナー」でのみ利用できる送信方式であり、暫定的な対応であるためマイナンバーカードの取得を検討するよう案内しています。
また、e-TaxではID・パスワードの新規発行停止についても告知されています。これからe-Tax申告を始めるフリーランスは、原則としてマイナンバーカード方式を前提に準備するのが安心です。
5-7. 送信後に受付結果を確認する方法
e-Taxで申告データを送信したら、必ず受付結果を確認しましょう。送信後にエラーが出ていた場合、申告が正常に完了していない可能性があります。
受付結果やメッセージボックスを確認し、受付日時、受付番号、申告内容に問題がないかを確認します。申告書のPDFや送信票、受付結果は、後から見返せるように保存しておきましょう。
6. フリーランスの青色申告とe-Taxの注意点
6-1. 青色申告とは?白色申告との違い
青色申告とは、一定の帳簿を備え付け、正しく記帳・申告することで、税制上の特典を受けられる制度です。白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法です。
青色申告は手間が増える一方で、青色申告特別控除、青色事業専従者給与、純損失の繰越しなどのメリットがあります。フリーランスとして継続的に収入を得るなら、青色申告の検討価値は高いです。
6-2. 青色申告で受けられる主なメリット
青色申告の代表的なメリットは、青色申告特別控除です。要件を満たすと、所得金額から最高65万円を差し引けます。国税庁のパンフレットでも、青色申告の主要な特典として、最高65万円の控除、家族への給与の必要経費算入、赤字を前年や翌年の所得金額から差し引けることが紹介されています。
所得が増えてきたフリーランスほど、青色申告による節税効果は大きくなります。
6-3. 青色申告特別控除を受けるための条件
青色申告特別控除には、10万円、55万円、65万円の区分があります。65万円控除を受けるには、原則として複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成し、期限内に申告することが必要です。さらに、e-Taxによる申告、または優良な電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。
つまり、青色申告をしているだけで自動的に65万円控除になるわけではありません。帳簿の作成方法、提出書類、提出期限、提出方法まで確認しましょう。
6-4. 複式簿記・貸借対照表・損益計算書の基本
複式簿記とは、取引を原因と結果の両面から記録する方法です。たとえば、報酬が普通預金に入金された場合、「普通預金が増えた」「売上が発生した」という両面で記録します。
損益計算書は、1年間の売上、経費、利益を示す書類です。貸借対照表は、年末時点の資産、負債、元入金などを示す書類です。青色申告で65万円または55万円控除を目指す場合、この2つの書類を正しく作成する必要があります。
簿記に慣れていないフリーランスは、会計ソフトを使うと複式簿記の仕訳や決算書作成を効率化できます。
6-5. 青色申告承認申請書の提出期限
青色申告を始めるには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに提出します。新たに業務を開始した場合などは、開始日によって提出期限が変わります。国税庁は、青色申告をしようとする年の3月15日まで、期限が土日祝日に当たる場合は翌日が期限と案内しています。
1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、その事業開始日から2か月以内に提出する必要があります。
6-6. e-Taxを使わないと控除額が変わるケース
青色申告で65万円控除を受けたい場合、e-Taxを使うか、優良な電子帳簿保存を行う必要があります。要件を満たしていない場合、控除額が55万円になる可能性があります。
たとえば、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成し、期限内に申告していても、紙で提出し、優良な電子帳簿保存の要件も満たしていなければ、65万円控除ではなく55万円控除になるケースがあります。
青色申告の節税メリットを最大限活かしたいフリーランスは、e-Tax申告を標準にしておきましょう。
6-7. 開業初年度のフリーランスが注意すべきポイント
開業初年度は、開業届、青色申告承認申請書、帳簿付け、経費管理、源泉徴収の確認など、初めての作業が多くなります。特に注意したいのは、青色申告承認申請書の提出期限です。期限を過ぎると、その年は青色申告の特典を受けられない可能性があります。
また、開業前に支払った名刺代、Webサイト制作費、パソコン代、書籍代、打ち合わせ費用などは、開業費として処理できる場合があります。開業前後の支出も、領収書や明細を捨てずに保管しておきましょう。
7. フリーランスがe-Tax申告前に整理すべき売上・経費・控除
7-1. 売上に含める収入の範囲
フリーランスの売上には、仕事の報酬、業務委託料、原稿料、デザイン料、開発費、コンサルティング料、講演料、販売収入などが含まれます。入金ベースだけでなく、発生主義で売上を計上する必要がある場合もあります。
たとえば、12月に納品して請求書を発行し、翌年1月に入金された場合でも、原則として12月の売上として扱うケースがあります。年末年始をまたぐ取引は、計上時期を特に確認しましょう。
7-2. 経費にできるもの・できないもの
経費にできるのは、事業に必要な支出です。たとえば、仕事用のパソコン、ソフトウェア利用料、通信費、交通費、外注費、広告宣伝費、打ち合わせ費、書籍代、セミナー参加費、仕事用備品などが該当します。
一方、プライベートの食事、私用の旅行、家族の買い物、事業と関係のない支出は経費にできません。仕事にも私用にも使う支出は、家事按分が必要です。
7-3. 家事按分が必要な経費
自宅で仕事をしているフリーランスは、家賃、電気代、インターネット代、スマホ代などを事業用と私用に分ける必要があります。これを家事按分といいます。
たとえば、自宅の一部を仕事部屋として使っている場合、面積や使用時間など合理的な基準で家賃を按分します。通信費も、仕事で使う割合を決めて経費計上します。按分割合は毎年大きく変えず、説明できる根拠を残しておきましょう。
7-4. 源泉徴収されている報酬の確認方法
フリーランスの報酬は、職種や取引内容によって源泉徴収されることがあります。ライター、デザイナー、講師、カメラマン、士業などは、報酬から所得税が差し引かれて入金されるケースがあります。
源泉徴収額は、支払調書、請求書、入金明細、取引先からの支払通知などで確認します。確定申告で源泉徴収税額を入力しないと、還付額が少なくなったり、納税額が多くなったりする可能性があります。
7-5. 医療費控除・社会保険料控除・生命保険料控除
確定申告では、事業の売上や経費だけでなく、所得控除も重要です。国民年金、国民健康保険、介護保険料などは社会保険料控除の対象になります。生命保険料や地震保険料を支払っている場合は、控除証明書を確認しましょう。
医療費が多い年は、医療費控除を受けられる可能性があります。医療費控除は、病院代や薬代だけでなく、通院交通費などが対象になることもあります。領収書や医療費通知を整理しておきましょう。
7-6. インボイス登録事業者・消費税申告が必要な場合
インボイス登録をしているフリーランスや、一定の売上規模を超えるフリーランスは、所得税の確定申告だけでなく消費税申告が必要になる場合があります。令和7年分の個人事業者の消費税等の申告・納付期限は令和8年3月31日(火)までと案内されています。
インボイス登録をした人は、売上にかかる消費税、経費に含まれる消費税、簡易課税や2割特例の適用可否などを確認する必要があります。消費税は所得税より複雑になりやすいため、不安がある場合は税理士に相談しましょう。
7-7. 領収書・請求書・帳簿の保存期間
e-Taxで申告しても、領収書や請求書をすぐに捨ててよいわけではありません。帳簿や証憑類は一定期間保存する必要があります。国税庁は、個人で事業を行っている人の記帳や帳簿等の保存について案内しており、日々の取引を記帳し、帳簿や書類を保存する必要があるとしています。
青色申告の場合は、帳簿や決算関係書類、現金預金取引等関係書類など、種類ごとに保存期間が決められています。迷ったら、申告書類、帳簿、領収書、請求書、通帳、カード明細はまとめて保存しておくと安心です。
8. e-Taxでよくある失敗・エラーと対処法
8-1. マイナンバーカードが読み取れない
マイナンバーカードが読み取れない原因として、スマホが読み取りに対応していない、カードの位置がずれている、ICカードリーダーの接続不良、ブラウザやアプリの設定不備などがあります。
まずは、対応機種かどうか、カードを当てる位置、アプリの最新版、ブラウザ設定を確認しましょう。パソコンでうまくいかない場合は、スマホ申告に切り替える、またはスマホをカードリーダー代わりに使う方法も検討できます。
8-2. 暗証番号を忘れた・ロックされた
マイナンバーカードの暗証番号や署名用電子証明書のパスワードを忘れると、e-Taxのログインや電子署名ができません。複数回間違えるとロックされるため、申告期限直前の入力ミスには注意が必要です。
ロックされた場合は、市区町村の窓口などで再設定が必要になることがあります。申告期間に入る前に、暗証番号が分かるか、電子証明書が有効かを確認しておきましょう。
8-3. 利用者識別番号がわからない
利用者識別番号が分からない場合、マイナンバーカード方式でログインしている人は、e-Taxソフト(WEB版)のマイページから確認できる場合があります。e-Taxの案内でも、マイナンバーカードまたはスマホ用電子証明書でログインすると、利用者識別番号の確認やパスワード設定が可能とされています。
どうしても分からない場合は、e-Taxの「変更等届出書」などの手続きが必要になることがあります。過去にe-Taxを使ったことがある人は、以前の申告控えや利用者情報を確認しましょう。
8-4. 申告内容を間違えて送信した
e-Taxで送信した後に間違いに気づいた場合でも、訂正できる場合があります。法定申告期限内であれば、再度正しい申告書を送信することで訂正できるケースがあります。
期限後に間違いに気づいた場合、税額が多すぎたときは更正の請求、税額が少なすぎたときは修正申告を行います。国税庁は、納める税金が多すぎた場合や還付が少なすぎた場合は更正の請求、納める税金が少なすぎた場合や還付が多すぎた場合は修正申告により訂正すると案内しています。更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です。
8-5. 添付書類の提出が必要か迷う
e-Taxでは、一定の添付書類について提出を省略できる場合があります。ただし、提出省略できる書類でも、税務署から提示や提出を求められる場合に備えて保存が必要です。
医療費控除、寄附金控除、保険料控除、住宅ローン控除などは、控除の種類によって必要書類が異なります。申告書作成時の案内を確認し、不安な場合は国税庁の確定申告特集や税務署に確認しましょう。
8-6. 納税方法がわからない
e-Taxで申告しても、納税が自動で完了するとは限りません。納付税額がある場合は、期限までに自分で納付する必要があります。国税庁は、後日、税務署から納付書や納税通知書等のお知らせが送付されるわけではないため注意するよう案内しています。
納税方法には、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付などがあります。毎年確定申告をするフリーランスは、振替納税やダイレクト納付を設定しておくと便利です。
8-7. 期限に間に合わない場合の対応
確定申告の期限に間に合わない場合でも、放置せず、できるだけ早く申告しましょう。期限後申告になると、無申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。
必要書類が一部そろわない場合でも、分かる範囲で早めに税務署や税理士に相談することが大切です。特に青色申告特別控除65万円を受けたい場合は、期限内申告が重要な要件になるため、余裕を持って準備しましょう。
9. フリーランスのe-Tax申告をラクにする方法
9-1. 会計ソフトを使うメリット
会計ソフトを使うと、売上や経費の記帳、勘定科目の分類、減価償却、家事按分、青色申告決算書の作成などを効率化できます。簿記の知識が少ない初心者でも、画面の案内に沿って入力すれば帳簿を作りやすくなります。
特に青色申告で65万円控除を目指す場合、複式簿記や貸借対照表の作成が必要になるため、会計ソフトの活用は大きな助けになります。
9-2. 銀行口座・クレジットカード連携で記帳を効率化する
会計ソフトと銀行口座、クレジットカード、電子マネーを連携すると、取引データを自動取得できます。手入力の手間が減り、入力漏れや金額ミスを防ぎやすくなります。
フリーランスは、事業用の銀行口座やクレジットカードを分けておくと、経理が一気に楽になります。プライベートの支出と混ざると家事按分や仕訳が複雑になるため、開業初期から分けて管理するのがおすすめです。
9-3. レシート・領収書をスマホで管理する
紙のレシートや領収書は、放置すると紛失しやすく、確定申告前に整理するのが大変です。会計ソフトやスキャンアプリを使い、スマホで撮影して保存しておくと管理が楽になります。
ただし、電子保存には電子帳簿保存法のルールが関係する場合があります。紙原本を捨てるかどうかは、保存要件を確認してから判断しましょう。不安な場合は、紙とデータの両方を保存しておくと安心です。
9-4. 毎月やっておくべき経理作業
確定申告を楽にする一番のコツは、年明けにまとめて作業しないことです。毎月、売上の請求状況、入金確認、経費入力、領収書整理、源泉徴収額の確認を行いましょう。
月末または翌月初に1時間だけ経理時間を作るだけでも、確定申告前の負担は大きく減ります。特に12月分の売上、年末に購入した備品、未入金の請求書は漏れやすいため注意が必要です。
9-5. 税理士に相談したほうがよいケース
次のような場合は、税理士に相談するのがおすすめです。売上が大きく増えた、消費税申告が必要になった、インボイス登録をした、外注費や人件費が増えた、海外取引がある、暗号資産や投資収入がある、法人化を検討している、税務調査が不安というケースです。
また、開業初年度に一度だけ相談し、帳簿の付け方や経費判断、青色申告の進め方を確認しておくのも有効です。自己判断で誤った申告を続けるより、早めに専門家に確認したほうが結果的にコストを抑えられることがあります。
10. フリーランスのe-Taxに関するよくある質問
10-1. フリーランスはスマホだけでe-Tax申告できる?
スマホだけでe-Tax申告できるケースはあります。マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホがあり、申告内容が比較的シンプルであれば、スマホ申告でも対応できます。
ただし、青色申告で取引数が多い場合、複式簿記の確認が必要な場合、会計ソフトのデータを見ながら申告したい場合は、パソコンのほうが作業しやすいでしょう。
10-2. マイナンバーカードなしでもe-Taxは使える?
マイナンバーカードなしでも、過去に取得したID・パスワード方式で申告できる場合があります。ただし、ID・パスワード方式は暫定的な方式であり、国税庁はマイナンバーカードの取得を検討するよう案内しています。
これからe-Taxを始めるフリーランスは、マイナンバーカード方式を前提に準備するのが現実的です。
10-3. e-Taxの利用は無料?
e-Tax自体の利用に手数料はかかりません。国税庁の確定申告書等作成コーナーも無料で利用できます。
ただし、ICカードリーダーを購入する場合、会計ソフトを利用する場合、税理士に依頼する場合は、それぞれ費用がかかります。スマホでマイナンバーカードを読み取れる場合は、ICカードリーダーを購入せずに済むこともあります。
10-4. 開業届を出していなくてもe-Taxで申告できる?
開業届を出していなくても、e-Taxで確定申告することは可能です。申告義務の有無は、開業届を出したかどうかではなく、所得や税額の状況によって判断します。
ただし、事業として継続的に活動するなら、開業届を提出し、青色申告を希望する場合は青色申告承認申請書も期限内に提出しましょう。
10-5. 副業収入もe-Taxで申告できる?
副業収入もe-Taxで申告できます。会社員で副業所得がある場合、給与所得と副業の所得をあわせて申告します。給与所得者で給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える場合などは、確定申告が必要です。
副業収入が事業所得になるか雑所得になるかは、継続性、規模、営利性、帳簿管理の状況などによって判断されます。迷う場合は税務署や税理士に確認しましょう。
10-6. e-Taxで送信した後に紙の書類提出は必要?
e-Taxで送信した場合、多くの書類はオンラインで完結しますが、内容によっては別途提出が必要な書類がある場合もあります。また、提出を省略できる書類でも、一定期間の保存が必要です。
申告書作成時に「提出が必要」と表示された書類や、別途郵送が必要な書類がないか確認しましょう。控除証明書や領収書は、税務署から確認を求められたときに対応できるよう保存しておきます。
10-7. 確定申告後に間違いに気づいたらどうする?
確定申告後に間違いに気づいたら、まず申告期限内か期限後かを確認します。期限内であれば、正しい内容で再送信できる場合があります。期限後の場合、税金を多く納めすぎたなら更正の請求、少なく申告していたなら修正申告を行います。国税庁は、更正の請求書や修正申告書を確定申告書等作成コーナーで作成できると案内しています。
間違いに気づいたら、放置せず早めに対応しましょう。
まとめ
フリーランスにとってe-Taxは、確定申告を効率化するための便利な仕組みです。税務署に行かずに申告できるだけでなく、青色申告特別控除65万円を目指すうえでも重要です。
まずは、マイナンバーカード、暗証番号、利用者識別番号、売上・経費・控除資料、青色申告決算書または収支内訳書を準備しましょう。そのうえで、会計ソフトや国税庁の確定申告書等作成コーナーを使い、申告書を作成してe-Taxで送信します。
特に青色申告をするフリーランスは、青色申告承認申請書の提出期限、複式簿記、貸借対照表・損益計算書、e-Tax送信の要件を確認しておくことが大切です。
確定申告は、年に一度まとめて行う作業ではなく、日々の売上管理、経費整理、領収書保存の積み重ねです。毎月少しずつ経理を進め、e-Taxを活用すれば、フリーランスの確定申告は大きくラクになります。

