フリーランスは厚生年金に入れる?将来の年金不安を解消する加入条件・代替制度・老後資金対策

はじめに

「フリーランスは厚生年金に入れるのか」「会社員を辞めたら将来の年金はどれくらい減るのか」と不安に感じている方は多いでしょう。

結論からいうと、個人事業主として働くフリーランスは、原則として厚生年金に任意加入することはできません。基本的には国民年金の第1号被保険者となり、自分で国民年金保険料を納めます。一方で、会社員として雇用されている、副業でフリーランスをしている、法人化して役員報酬を受け取っているなど、働き方によっては厚生年金に加入できるケースもあります。

厚生年金に入れないからといって、老後資金対策ができないわけではありません。付加年金、国民年金基金、iDeCo、NISA、小規模企業共済などを組み合わせれば、国民年金だけでは不足しやすい老後資金を計画的に補うことができます。

この記事では、フリーランスと厚生年金の関係、加入できるケース・できないケース、年金不安を減らすための代替制度、法人化のメリット・デメリット、保険料が払えないときの対処法までわかりやすく解説します。

1. フリーランスは厚生年金に入れる?まず結論をわかりやすく解説

1-1. 個人事業主のフリーランスは原則として厚生年金に加入できない

個人事業主として開業し、業務委託契約や請負契約で仕事をしているフリーランスは、原則として厚生年金には加入できません。

厚生年金は、会社員や公務員など「適用事業所に常用的に使用される人」が加入する制度です。日本年金機構は、厚生年金の被保険者について、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人と説明しています。ここでいう「使用される」とは、雇用契約書の有無だけでなく、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係があることを指します。

そのため、フリーランスが「自分で厚生年金に入りたい」と思っても、個人事業主のまま任意で厚生年金に加入することはできません。厚生年金に加入できるかどうかは、本人の希望ではなく、雇用関係や事業所の適用状況によって決まります。

1-2. フリーランスが加入するのは基本的に国民年金

日本に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金に加入します。そのうち、自営業者、学生、無職の人など、第2号被保険者・第3号被保険者に該当しない人は第1号被保険者です。フリーランスや個人事業主も、基本的にはこの第1号被保険者に該当します。

第1号被保険者は、会社員のように給与から年金保険料が天引きされるわけではありません。自分で納付書、口座振替、クレジットカード、スマートフォンアプリなどを使って国民年金保険料を納めます。2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。

1-3. 厚生年金に入れるかどうかは「働き方」と「雇用関係」で決まる

フリーランスという肩書きだけで、厚生年金に入れるかどうかが決まるわけではありません。重要なのは、実態として会社などに雇用されているか、厚生年金の適用事業所で働いているか、社会保険の加入条件を満たしているかです。

たとえば、平日は会社員として勤務し、休日に副業フリーランスをしている人は、本業の勤務先で厚生年金に加入します。パートやアルバイトでも、一定の労働時間・賃金・企業規模などの要件を満たせば厚生年金に加入する場合があります。さらに、フリーランスが法人化して会社を設立し、役員報酬を受け取る場合も、社会保険の加入対象になる可能性があります。

一方で、業務委託契約で働き、報酬を事業所得として受け取っているだけでは、原則として厚生年金の対象にはなりません。

1-4. 将来の年金不安は国民年金の上乗せ制度で対策できる

厚生年金に入れないフリーランスは、会社員よりも将来の年金額が少なくなりやすいのが現実です。国民年金は老後の基礎部分を支える制度であり、厚生年金のような報酬比例の上乗せがありません。

ただし、フリーランスには国民年金の上乗せ制度があります。月400円を追加で納める付加年金、終身年金を上乗せできる国民年金基金、掛金が所得控除になるiDeCo、退職金代わりに使いやすい小規模企業共済、運用益が非課税になるNISAなどを活用すれば、老後資金の不足に備えられます。

大切なのは、「厚生年金に入れないから不利」と考えて終わるのではなく、自分で上乗せする仕組みを早めに作ることです。

2. フリーランスと会社員で年金制度はどう違う?

2-1. 日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て

日本の公的年金は、1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金で構成されています。国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎年金で、厚生年金は会社員や公務員などが加入する上乗せ部分です。

フリーランスは原則として1階部分の国民年金のみ、会社員や公務員は国民年金に加えて2階部分の厚生年金にも加入します。そのため、同じ年齢で同じ期間働いていても、会社員のほうが将来受け取る公的年金額は多くなりやすい仕組みです。

2-2. 会社員・公務員は第2号被保険者として厚生年金に加入する

会社員や公務員など厚生年金の加入者は、国民年金の第2号被保険者です。第2号被保険者は、厚生年金に加入していると同時に国民年金にも加入している扱いになります。国民年金保険料を別途自分で納める必要はなく、厚生年金保険料として給与から天引きされます。

厚生年金保険料は、会社と本人が原則として折半して負担します。会社員は手取りが減る一方で、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金など、保障面のメリットもあります。

2-3. フリーランス・個人事業主は第1号被保険者として国民年金に加入する

フリーランスや個人事業主は、原則として国民年金の第1号被保険者です。第1号被保険者は、毎月の国民年金保険料を自分で納めます。2026年度の保険料は月額17,920円で、納付した保険料は所得税や住民税の計算上、全額が社会保険料控除の対象になります。

国民年金だけの場合、老後に受け取るのは老齢基礎年金です。2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの人で月額70,608円です。会社員世帯の標準的な厚生年金額と比べると、フリーランスは公的年金だけでは老後資金が不足しやすいといえます。

2-4. 扶養されている配偶者は第3号被保険者になる場合がある

会社員や公務員など第2号被保険者に扶養されている配偶者は、一定の条件を満たすと第3号被保険者になります。第3号被保険者は国民年金に加入しますが、本人が国民年金保険料を直接納める必要はありません。第2号被保険者の加入制度が負担する仕組みです。

ただし、フリーランス本人が配偶者の扶養に入れるかどうかは、収入、働き方、健康保険上の被扶養者認定などによって判断されます。収入が増えて扶養から外れる場合は、第1号被保険者として国民年金保険料を自分で納める必要があります。

2-5. 国民年金と厚生年金の保険料・受給額・保障内容の違い

国民年金と厚生年金の違いを整理すると、次のようになります。

項目フリーランス・個人事業主会社員・公務員
被保険者区分第1号被保険者第2号被保険者
加入制度国民年金国民年金+厚生年金
保険料定額を自分で納付給与・賞与に応じて天引き
事業主負担なし原則として会社が半分負担
老後の年金老齢基礎年金老齢基礎年金+老齢厚生年金
障害年金障害基礎年金中心障害基礎年金+障害厚生年金の可能性
遺族年金遺族基礎年金中心遺族基礎年金+遺族厚生年金の可能性

フリーランスは保険料が定額でわかりやすい一方、将来の年金額や保障内容は会社員より手薄になりやすいのが特徴です。その差を埋めるために、上乗せ制度や資産形成を早めに検討する必要があります。

3. フリーランスでも厚生年金に加入できるケース

3-1. 会社員として雇用されながら副業でフリーランスをしている場合

会社員として勤務しながら、副業でフリーランスの仕事をしている場合は、勤務先で厚生年金に加入します。たとえば、平日は正社員として働き、夜や休日にライター、デザイナー、エンジニア、コンサルタントとして業務委託を受けているケースです。

この場合、副業収入があっても、厚生年金の加入は本業の雇用関係に基づきます。副業分について追加で国民年金保険料を払う必要はありません。ただし、副業収入がある場合は、所得税・住民税・事業所得または雑所得の申告が必要になることがあります。

副業フリーランスは、厚生年金に加入しながら事業収入も得られるため、年金面では比較的安定した働き方といえます。

3-2. パート・アルバイト・契約社員として社会保険の加入条件を満たす場合

フリーランスとして活動しながら、パート、アルバイト、契約社員として働く場合も、勤務先で社会保険の加入条件を満たせば厚生年金に加入します。

通常の労働者の4分の3以上の所定労働時間・所定労働日数で働く場合は、パートやアルバイトでも厚生年金の被保険者になります。また、4分の3未満でも、特定適用事業所などで働く短時間労働者は、週の所定労働時間20時間以上、学生でないこと、所定内賃金月額8.8万円以上などの条件を満たすと加入対象になります。なお、月額8.8万円以上の賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。

企業規模の要件も段階的に拡大されます。2027年9月までは従業員数51人以上、2027年10月以降は36人以上、2029年10月以降は21人以上、2032年10月以降は11人以上、2035年10月以降は10人以下の企業も対象になる予定です。

3-3. 法人化して会社を設立し、役員報酬を受け取る場合

フリーランスが法人化して株式会社や合同会社を設立した場合、法人事業所は原則として社会保険の適用事業所になります。日本年金機構は、法人事業所で常時従業員を使用するものについて、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険・健康保険の加入が義務づけられていると説明しています。

つまり、一人会社であっても、法人から役員報酬を受け取る形にすると、厚生年金と健康保険の加入対象になる可能性があります。個人事業主のときは国民年金・国民健康保険だった人も、法人化後は会社の社会保険に切り替わるイメージです。

ただし、法人化すれば必ず得になるとは限りません。社会保険料の会社負担分も実質的には自分の法人が負担するため、手取りや資金繰りに影響します。

3-4. 業務委託ではなく実態として雇用関係がある場合

契約書の名称が「業務委託契約」でも、実態として雇用関係に近い働き方であれば、厚生年金の加入対象となる可能性があります。

たとえば、勤務時間や勤務場所を強く指定されている、会社の指揮命令を受けて働いている、仕事の進め方を自分で決めにくい、報酬が成果物ではなく労働時間に応じて支払われている、代替要員を立てられない、といった事情がある場合は注意が必要です。

社会保険の対象になるかどうかは、契約書のタイトルだけでなく、実際の働き方や使用関係で判断されます。フリーランスとして契約しているつもりでも、実態として従業員に近い場合は、勤務先や年金事務所に確認しましょう。

3-5. 厚生年金に加入できないケースと誤解しやすいポイント

次のようなケースでは、原則として厚生年金には加入できません。

ケース厚生年金加入の可否
個人事業主として業務委託のみで働く原則加入できない
クライアントが大企業であるそれだけでは加入できない
長期間同じ取引先から仕事を受けている雇用関係がなければ原則加入できない
フリーランス本人が希望している希望だけでは加入できない
国民年金基金やiDeCoに入っている厚生年金加入とは別制度

特に多い誤解は、「取引先が会社なら厚生年金に入れる」「毎月同じ報酬をもらっていれば会社員扱いになる」というものです。厚生年金は、単なる取引関係ではなく、適用事業所に使用される関係があるかどうかが重要です。

4. フリーランスが厚生年金に入れないことで起こる年金不安

4-1. 老齢基礎年金だけでは老後資金が不足しやすい

フリーランスが厚生年金に加入していない場合、老後の公的年金は基本的に老齢基礎年金のみです。2026年度の老齢基礎年金の満額は月額70,608円であり、生活費、住居費、医療費、介護費、税金・社会保険料などをすべて賄うには不足しやすい金額です。

もちろん、持ち家か賃貸か、配偶者の有無、生活水準、住んでいる地域によって必要額は変わります。しかし、老齢基礎年金だけで余裕のある老後生活を送るのは難しいと考えておくべきです。

4-2. 障害年金・遺族年金の保障も会社員より手薄になりやすい

国民年金にも障害基礎年金や遺族基礎年金はあります。ただし、厚生年金に加入している会社員は、条件を満たせば障害基礎年金に加えて障害厚生年金、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

障害基礎年金は原則として障害等級1級・2級が対象ですが、障害厚生年金は1級から3級までが対象です。 また、厚生年金加入者が亡くなった場合、一定の遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

フリーランスは、老後だけでなく、病気・けが・死亡時の家族保障も会社員より薄くなりやすいため、民間保険や貯蓄で補う視点が重要です。

4-3. 産休・育休中の保険料免除など会社員向け制度を使えない場合がある

会社員は、産前産後休業や育児休業の期間中に厚生年金保険料・健康保険料が免除される制度があります。一方、フリーランスは会社員向けの産休・育休制度や傷病手当金、出産手当金を利用できないことが多く、収入が止まったときのリスクが大きくなります。

ただし、第1号被保険者にも制度拡充があります。たとえば、国民年金では第1号被保険者が出産した際の産前産後期間の保険料免除制度があり、さらに2026年10月からは、1歳になるまでの子を養育する第1号被保険者について、国民年金保険料の育児免除制度が始まります。免除された期間は、保険料を納付したものとして老齢基礎年金に反映されます。

4-4. 保険料を未納にすると将来の年金額や受給資格に影響する

フリーランスは収入が不安定になりやすいため、国民年金保険料の支払いが負担になる時期もあります。しかし、払えないからといって未納のまま放置するのは避けるべきです。

未納期間があると、将来の老齢基礎年金額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金の受給要件に影響することがあります。保険料を納めることが難しい場合は、免除制度や納付猶予制度を申請することが大切です。日本年金機構の資料でも、申請により保険料の納付猶予または全額・一部免除を受けられる制度が案内されています。

4-5. フリーランスが老後資金を早めに準備すべき理由

フリーランスは、会社員のように退職金や企業年金が用意されていないケースが多く、収入も年齢とともに安定するとは限りません。体調不良、取引先の減少、業界の変化、単価下落などにより、思ったほど長く働けない可能性もあります。

また、老後資金づくりは時間が長いほど有利です。30代・40代から少額でも積み立てを始めれば、税制優遇や複利効果を活かしやすくなります。逆に、60歳が近づいてから準備を始めると、毎月必要な積立額が大きくなり、家計への負担も重くなります。

5. フリーランスが年金を増やすために使える代替制度

5-1. 付加年金:月400円で老齢基礎年金を上乗せする

付加年金は、フリーランスが最初に検討しやすい上乗せ制度です。国民年金第1号被保険者や65歳未満の任意加入被保険者は、定額保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることで、将来の老齢基礎年金を増やせます。

付加年金で増える年金額は、「200円×付加保険料を納めた月数」です。たとえば、10年間、120カ月納めた場合、年間24,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。支払った付加保険料は400円×120カ月=48,000円なので、2年以上受け取れば元が取れる計算です。

ただし、国民年金基金に加入している人や、国民年金保険料の免除・納付猶予を受けている人は、付加年金を利用できない場合があります。

5-2. 国民年金基金:終身年金で老後の受給額を増やす

国民年金基金は、フリーランスや自営業者など国民年金の第1号被保険者が、老齢基礎年金に上乗せするための公的な個人年金です。20歳以上60歳未満の第1号被保険者のほか、一定の任意加入被保険者も加入できます。

国民年金基金の特徴は、終身年金が基本であることです。長生きした場合でも、一生涯受け取れる年金を増やせる点は大きなメリットです。掛金は選択する型や口数、加入時の年齢、性別によって変わり、上限は原則としてiDeCoとの合算で月額68,000円です。

掛金は全額が社会保険料控除の対象になるため、所得があるフリーランスにとっては節税効果も期待できます。

5-3. iDeCo:掛金を所得控除しながら老後資金を積み立てる

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選ぶ私的年金制度です。フリーランスなど国民年金第1号被保険者の拠出限度額は月額68,000円で、国民年金基金の掛金や付加保険料を納めている場合は、それらを控除した範囲内で拠出します。

iDeCoの大きなメリットは、掛金が全額所得控除になることです。課税所得が高い人ほど、所得税・住民税の軽減効果が大きくなります。また、運用益は非課税で、受け取り時にも一定の税制優遇があります。

一方で、iDeCoは原則として60歳まで引き出せません。生活防衛資金を確保せずに掛金を増やしすぎると、急な支出に対応しにくくなります。まずは無理のない金額から始めることが大切です。

5-4. NISA:老後資金づくりに活用しやすい非課税投資制度

NISAは、株式や投資信託などの運用益が非課税になる制度です。2024年からの新NISAでは、非課税保有期間が無期限となり、制度も恒久化されました。つみたて投資枠と成長投資枠を併用でき、年間投資枠は最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円です。

NISAはiDeCoと違い、必要に応じて売却して現金化しやすい点がメリットです。老後資金だけでなく、住宅資金、教育資金、事業資金の予備などにも柔軟に対応できます。

ただし、NISAには所得控除がありません。また、投資である以上、元本割れのリスクがあります。老後資金として使う場合は、長期・積立・分散を意識し、短期的な値動きに振り回されない運用方針を決めておきましょう。

5-5. 小規模企業共済:退職金代わりに使えるフリーランス向け制度

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員のための退職金制度です。月々の掛金は1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、掛金の全額を所得控除できます。

フリーランスには会社員のような退職金がないため、小規模企業共済は「自分で作る退職金」として活用しやすい制度です。廃業時や退職時に共済金を受け取れるほか、一定の貸付制度を利用できる場合もあります。

注意点は、短期間で任意解約すると元本割れする可能性があることです。事業を長く続ける見込みがあり、所得控除を活かしながら退職金を準備したい人に向いています。

5-6. 民間の個人年金保険・就業不能保険を検討する

公的制度や税制優遇制度だけで不安が残る場合は、民間の個人年金保険や就業不能保険を検討する方法もあります。

個人年金保険は、将来の年金形式の受け取りを目的とした保険です。一定の条件を満たせば個人年金保険料控除の対象になりますが、iDeCoや小規模企業共済ほど大きな所得控除にはなりにくい点に注意が必要です。

就業不能保険は、病気やけがで長期間働けなくなったときの収入減少に備える保険です。フリーランスは傷病手当金を受けられないことが多いため、生活費や事業継続費を守る手段として検討する価値があります。

5-7. 付加年金・国民年金基金・iDeCoは併用できるか

フリーランスの年金上乗せ制度は、併用ルールに注意が必要です。

制度の組み合わせ併用可否
付加年金+iDeCo併用可能。ただしiDeCo限度額に影響
国民年金基金+iDeCo併用可能。ただし合算で上限あり
付加年金+国民年金基金併用不可
小規模企業共済+iDeCo併用可能
NISA+iDeCo併用可能

付加年金は少額で始めやすく、国民年金基金は終身年金を厚くしやすく、iDeCoは所得控除と運用を組み合わせられる制度です。どれが最適かは、年齢、所得、家族構成、投資経験、資金の流動性をどの程度重視するかで変わります。

6. フリーランスが法人化して厚生年金に入るメリット・デメリット

6-1. 法人化すると原則として社会保険の加入対象になる

フリーランスが法人化すると、個人事業主ではなく法人の役員として働く形になります。法人事業所で常時従業員を使用するものは、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険・健康保険の加入が義務づけられています。

そのため、一人会社であっても、役員報酬を受け取っている場合は、社会保険への加入を検討する必要があります。法人化によって、国民年金から厚生年金へ、国民健康保険から健康保険へ切り替わる可能性があります。

6-2. 厚生年金に加入すると将来の年金額を増やせる

法人化して厚生年金に加入すると、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れるようになります。老齢厚生年金は、厚生年金への加入期間や報酬額に応じて増えるため、個人事業主として国民年金だけに加入するよりも、将来の公的年金を増やしやすくなります。

特に、法人化後も長く事業を続ける予定がある人や、一定以上の役員報酬を安定して出せる人にとっては、厚生年金加入による老後保障の上乗せは大きなメリットです。

6-3. 健康保険の傷病手当金など保障面のメリットもある

法人化して健康保険に加入すると、年金だけでなく医療保険の保障も変わります。会社員などが加入する健康保険には、病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産で仕事を休むときの出産手当金などがあります。社会保険に加入すると、病気・けが・出産で会社を休む場合に収入保障を受けられることがあると厚生労働省も案内しています。

フリーランスは働けなくなると収入が止まりやすいため、こうした保障があることは大きな安心材料になります。

6-4. 社会保険料の会社負担分が発生し手取りが減る可能性がある

法人化のデメリットは、社会保険料の負担が重くなることです。会社員の場合、社会保険料の半分は勤務先が負担します。しかし、一人会社の場合、その「会社負担分」も実質的には自分の法人が負担します。

つまり、個人としての手取りだけでなく、法人の資金繰りにも影響します。役員報酬を高く設定すれば将来の厚生年金額は増えやすくなりますが、毎月の社会保険料負担も増えます。逆に役員報酬を低くしすぎると、厚生年金の上乗せ効果は小さくなります。

6-5. 法人化は売上・利益・節税効果・事務負担を含めて判断する

法人化は、厚生年金に入るためだけに判断するものではありません。売上規模、利益、消費税、所得税・法人税、経費計上、信用力、取引先との関係、会計処理、社会保険手続き、税理士費用などを総合的に考える必要があります。

たとえば、所得が高くなってきたフリーランスは、法人化によって税負担を調整しやすくなる場合があります。一方で、法人住民税の均等割、決算申告、社会保険の事務、役員報酬の設定など、個人事業主より事務負担は増えます。

法人化を検討する場合は、税理士や社会保険労務士に相談し、手取りと保障の両面からシミュレーションしましょう。

6-6. 社会保険料を下げる目的だけの不自然な法人化に注意する

社会保険料を下げたいからといって、実態に合わない役員報酬を設定したり、法人を作っただけで事業活動が伴っていなかったりすると、税務・社会保険の面で問題になる可能性があります。

法人化は、事業を継続・拡大するための選択肢のひとつです。厚生年金に加入できることはメリットですが、社会保険料を不自然に抑えることだけを目的にすると、制度の趣旨から外れた運用になりかねません。

7. フリーランスが年金保険料を払えないときの対処法

7-1. 国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用する

収入が減った、仕事が途切れた、病気や家族の事情で働けないなどの理由で国民年金保険料を払えないときは、免除制度や納付猶予制度を申請しましょう。

国民年金には、本人・配偶者・世帯主の所得などに応じて保険料の全額免除、一部免除を受けられる制度があります。また、50歳未満の人は、本人と配偶者の所得が一定以下であれば納付猶予を受けられる場合があります。

未納のまま放置するより、免除や猶予を申請したほうが将来の年金や障害年金・遺族年金の面で有利です。

7-2. 収入が不安定な時期は未納ではなく申請を優先する

フリーランスは、売上がある月とない月の差が大きいことがあります。資金繰りが厳しいときに年金保険料を後回しにしたくなるかもしれませんが、何も手続きせず未納にするのは危険です。

免除が承認されれば、全額免除の期間でも一定割合が年金額に反映されます。一方、未納期間は年金額に反映されず、受給資格や万一の保障にも影響することがあります。保険料を払えないとわかった時点で、早めに市区町村窓口や年金事務所に相談しましょう。

7-3. 追納制度で将来の年金額を回復できる場合がある

免除や納付猶予を受けた期間は、あとから保険料を納める「追納」によって、将来の年金額を増やせる場合があります。追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られます。

収入が回復したら、古い期間から優先して追納することを検討しましょう。ただし、一定期間を過ぎると加算額が上乗せされる場合があります。追納する順番や金額は、年金事務所で確認すると安心です。

7-4. 失業・廃業・出産・育児など状況別に使える制度を確認する

国民年金の免除・猶予制度は、所得が低い場合だけでなく、失業や事業廃止などの事情がある場合にも利用できることがあります。フリーランスの場合、取引先の減少や廃業に近い状況でも、制度を使える可能性があります。

また、第1号被保険者には産前産後期間の保険料免除制度があり、2026年10月からは育児期間に関する新しい免除制度も始まります。

「自分は対象外だろう」と判断せず、状況が変わったときは必ず最新の制度を確認しましょう。

7-5. 年金事務所や市区町村窓口に相談すべきケース

次のような場合は、早めに年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口に相談しましょう。

相談すべきケース理由
保険料を数カ月払えていない未納のまま放置すると不利益が大きい
免除と猶予の違いがわからない将来の年金額への反映が異なる
会社員からフリーランスになった第1号被保険者への切り替えが必要
配偶者の扶養に入る・外れる第3号・第1号の手続きが必要
追納したい期限や納付順を確認する必要がある
出産・育児・廃業があった特例制度を使える可能性がある

年金は手続きのタイミングが重要です。わからないまま放置せず、制度を使って未納を防ぐことが大切です。

8. フリーランスの老後資金対策の始め方

8-1. ねんきんネットで将来の年金見込額を確認する

老後資金対策の第一歩は、自分が将来どれくらい年金を受け取れそうかを確認することです。日本年金機構の「ねんきんネット」では、さまざまな条件を設定して将来の老齢年金の見込額を試算できます。現在と同じ条件が60歳まで続く前提の簡単な試算や、今後の働き方・受給開始年齢などを設定した詳細な試算も可能です。

フリーランスは、会社員よりも自分で老後資金を設計する必要があります。まずは見込額を確認し、足りない金額を具体的に把握しましょう。

8-2. 老後に必要な生活費と不足額を試算する

年金見込額を確認したら、老後の生活費を試算します。住居費、食費、水道光熱費、通信費、医療費、介護費、税金、趣味・旅行費、家の修繕費などを書き出しましょう。

たとえば、老後の生活費が月20万円必要で、年金見込額が月7万円なら、毎月13万円が不足します。65歳から90歳まで25年間と考えると、13万円×12カ月×25年=3,900万円の不足です。

この金額を見て不安になるかもしれませんが、実際には働く期間を延ばす、支出を減らす、NISAやiDeCoで積み立てる、小規模企業共済を活用するなど、複数の対策を組み合わせられます。

8-3. まずは国民年金の未納をなくす

フリーランスの老後資金対策で最優先すべきなのは、国民年金の未納をなくすことです。国民年金は一生涯受け取れる終身年金であり、長生きリスクに備える基本になります。

投資や節税制度を始める前に、まずは国民年金保険料をきちんと納めましょう。払えない時期は免除・猶予を申請し、収入が回復したら追納を検討します。未納を放置したままNISAやiDeCoにお金を回すのは、本末転倒になりかねません。

8-4. 少額なら付加年金から始める

毎月大きな金額を積み立てる余裕がない人は、付加年金から始めるのがおすすめです。月額400円の負担で老齢基礎年金を上乗せでき、仕組みもシンプルです。

付加年金は、投資のように元本割れする心配がなく、2年以上受け取れば支払った付加保険料を上回る計算になります。少額で老後の終身収入を増やしたいフリーランスに向いています。

8-5. 節税効果を重視するならiDeCo・小規模企業共済を検討する

所得がある程度あり、節税効果を重視したい人は、iDeCoや小規模企業共済を検討しましょう。どちらも掛金が全額所得控除の対象になるため、所得税・住民税を軽減しながら老後資金を準備できます。

iDeCoは運用商品を自分で選び、長期投資で増やす制度です。小規模企業共済は退職金代わりに積み立てる制度です。どちらも強力な制度ですが、途中で自由に引き出しにくい点があります。生活費や事業資金に余裕を持ったうえで掛金を設定しましょう。

8-6. 流動性を重視するならNISAを活用する

老後資金を準備したいけれど、急な支出にも対応できるようにしたい人は、NISAを活用しやすいでしょう。NISAは売却すれば現金化できるため、iDeCoより流動性があります。

ただし、短期で使う予定のお金を投資に回すのは危険です。生活防衛資金として、最低でも数カ月分の生活費を普通預金などで確保したうえで、長期で使わないお金をNISAに回しましょう。

8-7. 年金・貯蓄・投資・保険を組み合わせてリスク分散する

フリーランスの老後資金対策は、ひとつの制度に頼りすぎないことが大切です。

国民年金は終身で受け取れる土台、付加年金や国民年金基金は公的年金の上乗せ、iDeCoは節税しながら老後資金を積み立てる制度、NISAは流動性のある資産形成、小規模企業共済は退職金準備、民間保険は働けないリスクへの備えとして考えましょう。

複数の制度を組み合わせれば、長生き、病気、収入減、インフレ、投資の値動きなど、さまざまなリスクに対応しやすくなります。

9. フリーランスの厚生年金に関するよくある質問

9-1. フリーランスは任意で厚生年金に加入できる?

個人事業主のフリーランスが、自分の希望だけで厚生年金に任意加入することはできません。厚生年金は、適用事業所に常用的に使用される人が加入する制度です。

任意で上乗せしたい場合は、厚生年金ではなく、付加年金、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済などを検討しましょう。

9-2. 業務委託契約でも厚生年金に入れる?

原則として、業務委託契約だけでは厚生年金には加入できません。業務委託は雇用契約ではなく、事業者同士の契約だからです。

ただし、契約書上は業務委託でも、実態として会社の指揮命令を受けて働き、勤務時間や場所を拘束され、労務の対価として報酬を受けている場合は、雇用関係に近いと判断される可能性があります。その場合は、勤務先や年金事務所に確認が必要です。

9-3. 副業フリーランスは厚生年金保険料を二重に払う?

会社員として厚生年金に加入しながら、副業でフリーランス収入を得ている場合、副業分について国民年金保険料を二重に払う必要はありません。第2号被保険者は、厚生年金に加入していると同時に国民年金にも加入している扱いになるためです。

ただし、副業収入に対する所得税・住民税、個人事業税、消費税などは別途関係する場合があります。

9-4. 会社を辞めてフリーランスになったら年金手続きは必要?

会社を辞めてフリーランスになる場合は、厚生年金の第2号被保険者から国民年金の第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。手続きは、原則として住んでいる市区町村の国民年金担当窓口で行います。

退職後すぐに手続きしないと、未納期間が発生する可能性があります。退職日が決まったら、健康保険の切り替えとあわせて年金手続きも確認しましょう。

9-5. 法人化すれば一人社長でも厚生年金に入れる?

法人化して役員報酬を受け取る場合、一人社長でも厚生年金・健康保険の加入対象になる可能性があります。法人事業所は、事業主のみの場合を含めて社会保険の適用対象とされています。

ただし、法人化には社会保険料の会社負担分、税務申告、会計処理などのコストもあります。厚生年金に入るためだけでなく、事業全体のメリット・デメリットを見て判断しましょう。

9-6. 配偶者の扶養に入れば年金保険料は払わなくていい?

会社員や公務員である配偶者の扶養に入り、第3号被保険者に該当すれば、本人が国民年金保険料を直接納める必要はありません。

ただし、フリーランス収入が一定以上ある場合や、健康保険上の被扶養者認定を満たさない場合は、扶養に入れないことがあります。収入見込みや働き方によって判断が変わるため、配偶者の勤務先に確認しましょう。

9-7. フリーランスにおすすめの年金上乗せ制度はどれ?

少額で始めたいなら付加年金、終身年金を厚くしたいなら国民年金基金、節税しながら投資したいならiDeCo、退職金代わりに準備したいなら小規模企業共済、流動性を重視するならNISAが候補です。

迷った場合は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

目的向いている制度
少額で年金を増やしたい付加年金
一生涯の年金を増やしたい国民年金基金
所得控除を活かしたいiDeCo・小規模企業共済
途中で現金化できる資産もほしいNISA
退職金代わりに準備したい小規模企業共済
働けないリスクに備えたい就業不能保険

最初からすべて使う必要はありません。国民年金の未納をなくし、生活防衛資金を確保したうえで、無理のない制度から始めましょう。

9-8. 厚生年金に入れないフリーランスは老後いくら必要?

必要額は人によって大きく異なります。まずは、ねんきんネットで将来の年金見込額を確認し、老後の生活費との差額を計算しましょう。

たとえば、老後の生活費が月25万円、年金見込額が月8万円なら、毎月17万円が不足します。65歳から90歳まで25年間なら、不足額は約5,100万円です。ただし、これは単純計算であり、実際には働く期間、住居費、配偶者の年金、退職金、資産運用、支出削減などで変わります。

「老後2,000万円」「老後5,000万円」といった一般論より、自分の年金見込額と生活費をもとに計算することが重要です。

まとめ

フリーランスは、個人事業主として働いている限り、原則として厚生年金に加入できません。基本的には国民年金の第1号被保険者となり、自分で国民年金保険料を納めます。

ただし、会社員として雇用されながら副業フリーランスをしている場合、パート・アルバイト・契約社員として社会保険の加入条件を満たす場合、法人化して役員報酬を受け取る場合などは、厚生年金に加入できる可能性があります。

厚生年金に入れないフリーランスは、老後の年金額や障害・遺族保障が会社員より手薄になりやすいのが課題です。しかし、付加年金、国民年金基金、iDeCo、NISA、小規模企業共済、民間保険などを組み合わせれば、年金不安を減らすことは十分可能です。

まずは国民年金の未納をなくし、ねんきんネットで将来の年金見込額を確認しましょう。そのうえで、少額なら付加年金、節税を重視するならiDeCoや小規模企業共済、流動性を重視するならNISAというように、自分の収入やライフプランに合う制度を選ぶことが大切です。

フリーランスの年金対策は、会社任せにできない分、自分で設計できる自由度もあります。早めに仕組みを整え、老後資金・万一の保障・日々の資金繰りをバランスよく準備していきましょう。