クリエイターの年金はどうなる?フリーランスが知るべき国民年金・厚生年金・老後対策
はじめに
イラストレーター、漫画家、デザイナー、動画クリエイター、配信者など、クリエイターの働き方は多様です。会社員として制作に携わる人もいれば、個人事業主として案件を受注する人、法人を設立してスタジオを経営する人、副業として活動する人もいます。
クリエイターの年金制度は職種ではなく、会社に雇用されているか、個人で事業をしているか、法人から役員報酬を受け取っているかといった働き方によって決まります。
フリーランスクリエイターは原則として国民年金に加入しますが、国民年金だけでは会社員のような厚生年金の上乗せがありません。そのため、公的年金の手続きを適切に行うだけでなく、iDeCo、国民年金基金、小規模企業共済、NISAなどを活用した老後対策も重要です。
本記事では、クリエイターが加入する年金制度、独立時に必要な手続き、将来受け取れる年金額の考え方、年金だけに頼らない資産形成の方法を解説します。保険料や制度内容は改定されるため、具体的な手続きを行う際は、日本年金機構や年金事務所の最新情報も確認してください。
1. クリエイターの年金はどうなる?まず押さえるべき結論
1-1. フリーランスクリエイターは原則「国民年金」に加入する
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金に加入します。会社の厚生年金に加入しておらず、配偶者の扶養による第3号被保険者にも該当しないフリーランスクリエイターは、国民年金の第1号被保険者となります。年金ネット+1
イラストレーター、漫画家、デザイナー、作曲家、カメラマン、ライター、YouTuberなど、活動内容による違いはありません。個人で仕事を受け、会社との雇用関係がないのであれば、基本的には国民年金です。
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。売上や所得が多い月でも少ない月でも基本の保険料は同じで、納付した保険料は所得税・住民税の社会保険料控除の対象になります。年金ネット
1-2. 会社員・法人役員・副業クリエイターは「厚生年金」に関係する
制作会社、広告会社、ゲーム会社などに雇用されているクリエイターは、勤務先を通じて厚生年金に加入するのが一般的です。会社員は国民年金の第2号被保険者となり、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。年金ネット
法人化したクリエイターについても、法人は代表者1人だけの会社を含め、原則として厚生年金・健康保険の適用事業所になります。法人から役員報酬を受け、被保険者の要件を満たす代表者や役員は、厚生年金に加入することになります。年金ネット+1
会社員を続けながら副業で制作活動をしている人は、通常、本業の勤務先で厚生年金に加入します。副業が個人事業による収入であれば、その収入を理由として国民年金を別に納める必要はありません。
1-3. 年金だけでは老後資金が不足しやすい理由
国民年金だけに40年間加入し、すべての保険料を納付した場合、2026年度の老齢基礎年金の満額は年額847,300円、月額では70,608円です。保険料の未納期間や納付猶予期間などがあれば、実際の受給額はこれより少なくなります。年金ネット+1
月額約7万円の年金だけで、住居費、食費、水道光熱費、医療費、通信費などをすべて賄えるとは限りません。賃貸住宅に住み続ける場合や、老後も機材・ソフトウェアを使って制作を続ける場合は、さらに資金が必要です。
会社員には厚生年金や勤務先の退職金制度があることも多い一方、フリーランスクリエイターは自分で上乗せ資金を準備しなければなりません。
1-4. この記事でわかること:加入制度・手続き・老後対策
クリエイターの年金を考える際は、次の順番で整理するとわかりやすくなります。
まず、現在の働き方から国民年金と厚生年金のどちらに加入するのかを確認します。次に、過去の加入履歴や未納の有無を調べ、将来の年金見込額を把握します。そのうえで、老後に不足すると考えられる金額をiDeCo、国民年金基金、小規模企業共済、NISAなどで補います。
2. クリエイターが加入する年金制度の基本
2-1. 国民年金とは?フリーランス・個人事業主の基本制度
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎的な公的年金制度です。フリーランス、自営業者、学生、無職の人などは、原則として第1号被保険者に該当します。年金ネット+1
国民年金は老後のためだけの制度ではありません。一定の要件を満たせば、病気やケガで障害が残ったときの障害基礎年金や、加入者が亡くなったときに一定の遺族が受け取る遺族基礎年金もあります。年金ネット+1
そのため、若いクリエイターであっても「老後はまだ先だから払わなくてよい」と考えるのは危険です。
2-2. 厚生年金とは?会社員や法人化したクリエイターの制度
厚生年金は、適用事業所に雇用される会社員や一定の法人役員などが加入する年金制度です。加入者は国民年金にも加入している扱いとなり、将来は老齢基礎年金に加えて、報酬や加入期間に応じた老齢厚生年金を受け取ります。
厚生年金保険料は、毎月の給与に基づく標準報酬月額と賞与に基づく標準賞与額から計算され、事業主と本人が半分ずつ負担します。厚生年金保険料率は18.3%で、原則としてその半分が本人負担です。年金ネット+1
法人化すれば年金を増やせる可能性がありますが、法人側にも保険料負担が発生します。役員個人の手取りだけでなく、会社負担分を含めて資金計画を立てる必要があります。
2-3. 第1号・第2号・第3号被保険者の違い
国民年金の加入者は、主に次の3種類に分けられます。
第1号被保険者は、フリーランス、個人事業主、学生、無職の人などです。自分で国民年金保険料を納めます。
第2号被保険者は、厚生年金に加入する会社員や公務員などです。給与から厚生年金保険料が控除されます。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者です。原則として年収130万円未満などの要件があり、自分で国民年金保険料を納める必要はありません。年収要件だけでなく、生計維持関係なども審査されます。年金ネット+1
第3号被保険者は、税法上の扶養とは別の制度です。売上ではなく必要経費を差し引いた所得だけを見ればよいとは限らないため、収入が増えそうなクリエイターは、配偶者の勤務先や健康保険の保険者に早めに確認しましょう。
2-4. クリエイターの働き方別に見る年金の加入パターン
個人で案件を受注する専業フリーランスは、原則として第1号被保険者です。
制作会社などに雇用される会社員クリエイターは、第2号被保険者になります。
会社員として厚生年金に加入しながら、副業でイラスト制作や動画配信をする場合も、基本的には第2号被保険者のままです。
法人を設立し、法人から役員報酬を受けるクリエイターは、原則として法人を通じて厚生年金に加入します。
厚生年金加入者である配偶者の扶養に入り、一定の要件を満たす場合は、第3号被保険者となる可能性があります。
2-5. 国民年金と厚生年金で将来受け取れる年金額が違う理由
国民年金の老齢基礎年金は、主に保険料を納めた月数などによって決まります。収入が1,000万円あるフリーランスでも、収入が300万円のフリーランスでも、納付期間が同じであれば老齢基礎年金の基本的な計算は同じです。
一方、老齢厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間と、その期間中の給与・賞与に基づいて計算されます。加入期間が長く、標準報酬が高いほど、原則として将来の受給額も増えます。年金ネット+1
この上乗せ部分の有無が、フリーランスと会社員の年金額に差が生じやすい主な理由です。
3. フリーランスクリエイターの年金は会社員とどう違う?
3-1. 国民年金のみの場合は老齢基礎年金が中心
フリーランスクリエイターが第1号被保険者として国民年金だけに加入している場合、老後の公的年金は老齢基礎年金が中心です。
過去に会社員として厚生年金に加入していた期間がなければ、老齢厚生年金は原則としてありません。そのため、国民年金基金やiDeCoなどを利用しない限り、公的年金の上乗せが少なくなります。
3-2. 厚生年金がないと老後の受給額が少なくなりやすい
会社員は、国民年金に相当する基礎年金に加え、報酬比例の厚生年金を積み上げています。フリーランスにはこの仕組みが自動では付かないため、同じ年数働いた場合でも、公的年金の受給額が会社員より少なくなりやすい傾向があります。
フリーランスは経費や働き方を自分で調整できる一方、老後資金も自分で設計する必要があります。「売上が増えたら貯蓄する」ではなく、毎月一定額を先に積み立てる仕組みを作ることが重要です。
3-3. 保険料は自己負担だが所得に左右されない
国民年金保険料は定額であり、前年所得に比例して増減する仕組みではありません。2026年度は月額17,920円で、原則として翌月末日が納付期限です。年金ネット
売上が高い時期には負担感が小さい一方、案件が減少した月にも同額を納める必要があります。収入の波が大きいクリエイターは、入金が多い月に数カ月分の保険料を確保する、口座振替用口座に資金を移しておくなどの対策が必要です。
3-4. 会社員時代の厚生年金は将来の年金に反映される
会社員からフリーランスになっても、会社員時代に納めた厚生年金が消えるわけではありません。基礎年金番号に基づいて加入記録が管理され、将来の老齢厚生年金に反映されます。
例えば、会社員として10年間厚生年金に加入した後、30年間フリーランスとして国民年金を納めた場合、原則として40年間分の老齢基礎年金に加え、会社員だった10年間分の老齢厚生年金を受け取る形になります。
ただし、転職や氏名変更などによって記録に漏れがないか、ねんきんネットで確認しておくことが大切です。
3-5. 副業クリエイターは本業の勤務先で厚生年金に加入するケースが多い
会社員が勤務先で厚生年金に加入しながら、個人でイラスト、執筆、動画制作などを請け負っても、通常は国民年金への切り替えは必要ありません。副業収入が増えても、第2号被保険者であることは基本的に変わらないからです。
ただし、副業先とも雇用契約を結び、両方の勤務先で厚生年金の加入要件を満たした場合は、「二以上事業所勤務届」などの手続きが必要になります。両方の報酬を合算して標準報酬月額や保険料が決定されます。年金ネット
4. クリエイターの働き方別・年金加入の判断ポイント
4-1. 個人事業主のイラストレーター・漫画家・デザイナーの場合
個人で出版社、広告会社、制作会社などから仕事を受注している場合は、原則として国民年金の第1号被保険者です。
開業届を提出しているか、屋号を持っているか、売上がいくらあるかではなく、厚生年金の適用事業所に雇用されているかどうかが重要です。
アシスタントやスタッフを雇っていても、個人事業主本人が自分の個人事業所を通じて厚生年金に加入できるとは限りません。法人化とは扱いが異なるため、従業員を増やす場合は年金事務所や社会保険労務士に確認しましょう。
4-2. YouTuber・動画クリエイター・配信者の場合
YouTubeの広告収益、ライブ配信の投げ銭、企業案件などで生計を立てている個人は、原則として第1号被保険者です。プラットフォームから報酬を受け取っていても、プラットフォームに雇用されているとは限りません。
芸能事務所や制作会社に所属している場合も、業務委託契約であれば国民年金、雇用契約を結び厚生年金の加入要件を満たしていれば厚生年金となります。「所属している」という名称だけで判断せず、契約内容と給与明細を確認することが必要です。
4-3. 会社員から独立したクリエイターの場合
会社を退職して独立し、次の勤務先で厚生年金に加入しない場合は、第2号被保険者から第1号被保険者への切り替えが必要です。
退職日の翌日が厚生年金の資格喪失日となり、原則としてその日から国民年金の対象になります。手続き期限は退職日の翌日から14日以内です。年金ネット+1
独立直後は、国民年金だけでなく、健康保険の切り替え、開業届、青色申告承認申請など複数の手続きが発生します。年金の切り替えを忘れないよう、退職前から一覧を作っておきましょう。
4-4. 会社員を続けながら副業で制作する場合
本業の勤務先で厚生年金に加入している限り、副業が個人の制作活動であれば、通常は厚生年金を継続します。
副業の売上が増えても、それだけで厚生年金保険料が増えるわけではありません。個人事業の利益は所得税や住民税には影響しますが、本業の勤務先で計算される厚生年金保険料には、原則として直接加算されません。
将来独立する予定がある場合は、副業期間中から生活防衛資金や老後資金を積み立てておくと、独立後の負担を軽減できます。
4-5. 法人化したクリエイター・スタジオ経営者の場合
株式会社や合同会社などを設立した場合、法人は代表者1人だけであっても、原則として厚生年金・健康保険の適用事業所です。加入要件を満たす役員は、法人を通じて社会保険に加入します。年金ネット+1
法人化すると、厚生年金を積み上げられる一方、本人負担分に加えて法人負担分も発生します。法人の口座から納付する保険料を含め、毎月の固定費が大きくなる点に注意が必要です。
役員報酬を低く設定すれば保険料は抑えられますが、将来の厚生年金額も少なくなる可能性があります。税金、社会保険料、生活費、法人の利益を総合的に考えて役員報酬を設定しましょう。
4-6. 配偶者の扶養に入っているクリエイターの場合
厚生年金加入者である配偶者に扶養され、収入などの要件を満たしている場合は、第3号被保険者となる可能性があります。第3号被保険者は自分で国民年金保険料を納めませんが、加入期間は老齢基礎年金の計算に反映されます。年金ネット+1
注意したいのは、クリエイターの収入が毎月一定ではない点です。大型案件の受注、印税、広告収益の増加などによって扶養の基準を超える見込みになった場合、扶養から外れる手続きが必要になることがあります。
扶養の認定は将来の収入見込みを基に行われることがあるため、確定申告が終わるまで何もしなくてよいとは限りません。
4-7. 海外在住・海外案件が多いクリエイターの場合
海外企業から仕事を受けているだけで、日本の年金から外れるわけではありません。日本国内に住所があり、厚生年金に加入していない場合は、原則として国民年金の第1号被保険者です。
海外に転出して日本国内に住所を有しなくなった場合、国民年金の強制加入対象ではなくなります。ただし、日本国籍がある人は、一定の条件のもとで国民年金に任意加入できます。年金ネット+1
海外の年金制度との二重加入や加入期間の通算については、渡航先と日本の間に社会保障協定があるかによって扱いが異なります。長期滞在する場合は、渡航前に年金事務所へ相談しましょう。年金ネット
5. フリーランスクリエイターが必要な年金の手続き
5-1. 会社を退職して独立したときの国民年金への切り替え
会社を退職し、すぐに別の会社の厚生年金に加入しない場合は、住所地の市区町村役場または年金事務所で国民年金への切り替えを行います。マイナポータルを利用した電子申請が可能な手続きもあります。
手続き期限は、原則として退職日の翌日から14日以内です。基礎年金番号がわかる書類、本人確認書類、退職日や厚生年金の資格喪失日を確認できる書類などが必要になる場合があります。年金ネット+1
配偶者を扶養していた場合は、配偶者も第3号被保険者から第1号被保険者への切り替えが必要になることがあります。
5-2. 開業届を出しただけでは年金手続きは完了しない
税務署に開業届を提出しても、その情報だけで国民年金の切り替えがすべて完了するわけではありません。
開業届は税務上の手続きであり、国民年金の加入手続きとは提出先も制度も異なります。退職後は、開業届とは別に市区町村役場、年金事務所またはマイナポータルで年金の手続きを行いましょう。
健康保険についても、国民健康保険への加入、以前の健康保険の任意継続、家族の扶養に入る方法などを別途検討する必要があります。
5-3. 保険料の納付方法と前納・口座振替の活用
国民年金保険料は、納付書、口座振替、クレジットカード、対応するスマートフォン決済アプリ、Pay-easyなどで納付できます。前月以前の保険料は、ねんきんネットに表示される納付情報を使って納められる場合もあります。年金ネット+1
一定期間分をまとめて納める前納には割引があります。納め忘れを防ぎたい場合は、口座振替を設定しておくと管理しやすくなります。
ただし、生活費や事業資金が不足するほど前納するのは避けるべきです。機材の故障や入金遅延に備える資金を確保したうえで利用しましょう。
5-4. 収入が不安定なときの免除・納付猶予制度
前年所得が一定以下の場合や失業した場合など、保険料の納付が難しいときは、全額免除、一部免除または納付猶予を申請できる可能性があります。納付猶予は、原則として20歳以上50歳未満で、本人と配偶者の所得が一定以下の人が対象です。年金ネット
全額免除期間は、老齢基礎年金額の計算上、全額納付した場合の2分の1が反映されます。納付猶予期間は受給資格期間には算入されますが、追納しなければ老齢基礎年金額には反映されません。
免除・納付猶予の承認を受けた保険料は、原則として10年以内であれば追納できます。収入が回復した後に追納すれば、将来の年金額を満額に近づけられます。年金ネット
5-5. 未納・滞納を放置すると起こるリスク
国民年金を未納のまま放置すると、その期間は老齢基礎年金額に反映されません。受給資格期間が10年に満たなければ、老齢基礎年金そのものを受け取れない可能性もあります。年金ネット
さらに、病気や事故が起きた時点の納付状況によっては、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないことがあります。事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって免除を申請しても、障害年金の納付要件に算入されない場合があります。年金ネット
支払う能力があるにもかかわらず滞納を続け、督促にも応じない場合は、延滞金や財産の差押えにつながることもあります。年金ネット+1
収入が少ないときは、未納にするのではなく、早めに免除・納付猶予を申請しましょう。
5-6. ねんきんネットで加入履歴と将来額を確認する方法
ねんきんネットでは、これまでの年金加入記録、保険料の納付状況、将来の年金見込額などを確認できます。マイナポータルと連携する方法と、ユーザーIDを取得する方法があります。年金ネット
「かんたん試算」では、現在と同じ加入条件が60歳まで続くと仮定した見込額を確認できます。「詳細な条件で試算」を利用すれば、将来会社員になる、法人化する、受給開始時期を遅らせるといった条件も設定できます。年金ネット
少なくとも年に1回は記録を確認し、未納や加入漏れがないかチェックしましょう。
6. クリエイターが受け取れる年金額の考え方
6-1. 国民年金だけの場合の老後資金イメージ
2026年度の老齢基礎年金は、40年間すべて納付した場合で年額847,300円です。月額にすると70,608円であり、未納や納付猶予などがあれば減額されます。厚生労働省+1
例えば、老後の生活費が月20万円で、公的年金が月7万円なら、単純計算では毎月13万円の差額が生じます。実際の必要額は、持ち家か賃貸か、同居家族がいるか、老後も仕事を続けるかなどによって異なります。
まずは自分の生活費から老後の支出を見積もり、年金見込額との差を確認することが重要です。
6-2. 厚生年金加入期間がある場合の受給額イメージ
会社員経験があるクリエイターは、老齢基礎年金に加えて、厚生年金加入期間に対応する老齢厚生年金を受け取れる可能性があります。
老齢厚生年金の報酬比例部分は、加入期間と過去の標準報酬月額・標準賞与額などを基に計算されます。会社員期間が同じでも、当時の給与や賞与によって受給額は異なります。年金ネット+1
会社員時代が短いから意味がないと考えず、ねんきんネットで実際の記録を確認しましょう。
6-3. 年金額は加入期間・納付状況・働き方で変わる
クリエイターが受け取る年金額は、主に次の要素によって変わります。
国民年金については、保険料を納めた期間、免除された期間、納付猶予後に追納したかどうかが影響します。
厚生年金については、加入期間、給与、賞与などが影響します。
さらに、年金を65歳より前に繰り上げて受け取るか、受給開始を遅らせて繰り下げるかによっても、受給額が変わります。
6-4. クリエイター収入が多くても国民年金の受給額は自動では増えない
フリーランスとして年間数千万円の売上があっても、国民年金の保険料や老齢基礎年金額が売上に比例して増えるわけではありません。
収入が増えたときに何も対策をしなければ、公的年金は国民年金だけのままです。収入が多い時期こそ、iDeCo、国民年金基金、小規模企業共済、NISAなどに資金を振り分ける必要があります。
ただし、節税目的だけで資金を拠出しすぎると、税金や事業経費を支払えなくなるおそれがあります。納税資金と運転資金を確保した後の余剰資金で積み立てましょう。
6-5. 将来の年金額をシミュレーションする方法
最も手軽なのは、ねんきんネットの年金見込額試算です。現在の加入状況を基にした試算だけでなく、今後の働き方や受給開始年齢を変更した試算もできます。年金ネット
例えば、次のような複数のケースを比較すると、働き方を選びやすくなります。
フリーランスを60歳まで継続するケース、50歳で法人化して厚生年金に加入するケース、再就職して厚生年金に加入するケースなどです。
試算額は将来の制度改正や物価・賃金の変動によって変わる可能性があるため、確定額ではなく資金計画の目安として使いましょう。
6-6. 老後だけでなく障害年金・遺族年金も確認すべき理由
公的年金は老後資金だけではなく、現役時代の生活保障でもあります。
手や目、耳、精神面などに障害が生じれば、クリエイター活動を継続できなくなる可能性があります。一定の障害状態と保険料納付要件を満たせば、障害基礎年金や障害厚生年金の対象になり得ます。
また、家族を扶養しているクリエイターが亡くなった場合には、一定の遺族が遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。未納期間はこれらの受給可否にも影響するため、老後までの損得だけで国民年金を判断してはいけません。年金ネット+1
7. フリーランスクリエイターが年金だけに頼らない老後対策
7-1. iDeCoで自分年金を作る
iDeCoは、自分で掛金を拠出して運用商品を選び、老後資金を準備する私的年金制度です。掛金は全額所得控除となり、運用益も非課税で再投資されます。受け取る際にも、受取方法に応じて公的年金等控除や退職所得控除が適用されます。iDeCo公式サイト+1
一方で、運用商品によっては元本割れする可能性があり、資産は原則として60歳まで引き出せません。売上が不安定なクリエイターは、生活防衛資金を確保してから無理のない掛金を設定しましょう。iDeCo公式サイト+1
2026年6月時点で、第1号被保険者のiDeCo掛金は、国民年金基金や付加保険料と合算して原則月額68,000円が上限です。2026年12月1日からは、第1号加入者についてiDeCoと国民年金基金の共通限度額が月額75,000円へ引き上げられる予定です。iDeCo公式サイト+1
7-2. 国民年金基金で上乗せ年金を準備する
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者などが加入できる公的な上乗せ年金制度です。65歳から生涯受け取る終身年金が基本で、掛金は全額社会保険料控除の対象になります。年金ネット
将来の受取額を計画しやすい一方、加入後に自由に脱退できる制度ではありません。収入の変動が大きい人は、長期的に掛金を続けられるかを確認してから加入しましょう。
国民年金基金とiDeCoは併用できますが、掛金には合算上限があります。また、国民年金基金と付加年金は併用できません。年金ネット+1
7-3. 付加年金で少額から年金を増やす
付加年金は、国民年金保険料に月額400円を上乗せして納める制度です。将来受け取る付加年金の年額は、「200円×付加保険料を納めた月数」で計算されます。年金ネット
例えば、10年間に当たる120カ月納付した場合、納付総額は48,000円で、受給開始後は年額24,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。原則として2年間受け取れば、納付額と同程度になります。
ただし、国民年金基金の加入者や、保険料の免除・納付猶予を受けている人などは付加保険料を納められません。iDeCoとは一定の範囲で併用可能です。年金ネット
7-4. 小規模企業共済で退職金代わりの資金を作る
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員などが、廃業や退職後の資金を積み立てる制度です。フリーランスクリエイターにとっては、自分で用意する退職金として活用できます。
掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。経営状況に応じて掛金を増額・減額できます。共済サポート navi+1
ただし、任意解約の時期や理由によっては、受取額が掛金合計額を下回る場合があります。短期的に使う予定の資金ではなく、長期で積み立てられる資金を充てましょう。小規模企業共済
7-5. NISAで長期の資産形成をする
NISAは、対象となる株式や投資信託などから得た運用益が非課税になる制度です。2024年からのNISAでは、年間投資枠がつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で、非課税保有限度額は合計1,800万円です。金融庁
iDeCoと異なり、必要なときに資産を売却して現金化できます。そのため、老後資金だけでなく、病気、仕事の減少、機材の買い替えなどに備える資金としても使いやすい制度です。
一方、NISAは掛金自体が所得控除になる制度ではなく、投資元本が保証される制度でもありません。価格変動リスクを理解し、長期・積立・分散を基本に検討しましょう。
7-6. 事業用資金と老後資金を分けて管理する
フリーランスクリエイターは、事業用口座、税金・社会保険料用口座、生活費用口座、老後資金用口座を分けると管理しやすくなります。
売上が入金されたら、まず消費税や所得税、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料に備える資金を移します。その後、生活費と事業運転資金を確保し、残った金額から積み立てを行います。
すべての資金を同じ口座で管理すると、帳簿上は利益が出ていても、納税時期に現金が足りなくなるおそれがあります。
7-7. 収入が不安定なクリエイターほど早めに積立を始めるべき理由
収入が安定してから老後対策を始めようとすると、開始時期が先延ばしになりがちです。少額でも早く積み立てを始めれば、長い期間を使って資金を準備できます。
ただし、最初から高額の掛金を設定する必要はありません。収入が少ない時期にも継続できる金額を基本とし、売上が増えた年に増額する方法が現実的です。
老後資金の積み立てを完全に止めるのではなく、月5,000円や1万円など、継続できる最低ラインを決めておくと習慣化しやすくなります。
8. クリエイターが年金・老後資金で失敗しやすいポイント
8-1. 国民年金の未納を軽く考えてしまう
国民年金を「老後の貯金」とだけ考え、受取額が少ないから払わないと判断するのは危険です。
未納期間は老齢基礎年金額に反映されないだけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の受給にも影響します。納付が難しい場合は、未納のまま放置せず、免除や納付猶予を申請しましょう。年金ネット
8-2. 税金対策だけを優先して老後資金を後回しにする
機材購入や外注費を増やせば、必要経費によって課税所得を抑えられることがあります。しかし、経費を使えば手元の現金も減ります。
節税のために不要な機材を買うより、iDeCoや小規模企業共済など、一定の税制優遇を受けながら将来の資金を準備できる制度を検討する方が適している場合もあります。
ただし、資金拘束や解約条件があるため、節税額だけで加入を決めてはいけません。
8-3. 売上が増えても厚生年金に自動加入できるわけではない
フリーランスの売上が増えても、国民年金が自動的に厚生年金へ切り替わることはありません。
厚生年金は、原則として適用事業所との使用関係に基づいて加入する制度です。年収が高くなっただけでは、第1号被保険者のままです。
厚生年金への加入を希望する場合は、会社に雇用される、法人化して加入要件を満たすといった働き方の変更が必要になります。
8-4. 法人化後の社会保険料負担を見落とす
法人化すると、役員本人の給与から控除される社会保険料だけでなく、法人側にも負担が生じます。
厚生年金保険料は原則として労使折半であるため、個人の手取り額だけを基準に役員報酬を決めると、法人の資金繰りが悪化することがあります。年金ネット
健康保険料や子ども・子育て拠出金なども含め、法人が毎月支払う総額を試算してから法人化しましょう。
8-5. iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済の違いを理解しないまま加入する
iDeCoは自分で運用商品を選び、原則60歳まで引き出せない制度です。
国民年金基金は終身年金を基本とする上乗せ年金で、加入後の任意脱退には制限があります。
小規模企業共済は廃業・退職時の資金を準備する制度で、解約理由や加入期間によって受取額が変わります。
いずれも税制上のメリットがありますが、目的や受取条件は異なります。老後の定期収入を増やしたいのか、まとまった退職金を準備したいのか、運用で資産を増やしたいのかを整理して選びましょう。
8-6. 病気・ケガ・仕事減少への備えが不足する
老後資金にすべての余剰資金を回し、すぐに使える預貯金がほとんどない状態も危険です。
クリエイターは、病気やケガだけでなく、取引先の予算削減、プラットフォームの規約変更、作品の売上減少などによって収入が下がる可能性があります。
生活費と事業固定費の数カ月分を現金で確保し、その後にiDeCoなどの引き出しに制限がある制度を利用するのが基本です。
9. クリエイターの年金に関するよくある質問
9-1. フリーランスクリエイターは厚生年金に入れますか?
個人事業主本人が、売上のある自分の事業を理由として厚生年金に加入することは原則としてできません。
厚生年金に加入する主な方法は、厚生年金の適用事業所に雇用されるか、法人を設立して法人から役員報酬を受け、加入要件を満たすことです。法人は代表者1人だけの場合も原則として適用事業所になります。年金ネット
9-2. 会社員時代の厚生年金は独立後どうなりますか?
会社員時代の厚生年金加入記録は残り、将来の老齢厚生年金に反映されます。
独立後に国民年金へ切り替えても、それまで納めた厚生年金が国民年金に変換されたり、消滅したりするわけではありません。ねんきんネットで会社員時代の勤務先や加入期間が正しく記録されているか確認しましょう。
9-3. 国民年金を払わないとどうなりますか?
未納期間に応じて老齢基礎年金が少なくなり、受給資格期間が不足すれば老齢基礎年金を受け取れない可能性があります。
また、納付状況によっては障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れないことがあります。督促後も滞納を続けた場合は、延滞金や財産の差押えにつながることもあります。年金ネット+1
9-4. 収入が少ない月は年金保険料を免除できますか?
免除や納付猶予は、原則として月ごとの売上だけで判断される制度ではありません。本人、配偶者、世帯主などの前年所得や、失業などの事情を基に審査されます。年金ネット
一時的に入金が遅れているだけの場合は、預貯金で納める、前納を避けるなどの資金繰り対策も必要です。前年所得が一定以下の場合や失業した場合は、早めに年金事務所や市区町村の窓口へ相談しましょう。
9-5. 副業クリエイターでも国民年金の手続きは必要ですか?
本業の勤務先で厚生年金に加入している場合、副業が個人事業や業務委託による制作活動であれば、通常は国民年金への切り替えは必要ありません。
ただし、本業を退職した場合や、副業先とも雇用契約を結んで厚生年金の加入要件を満たした場合は、手続きが必要になることがあります。
9-6. 法人化すると年金はどう変わりますか?
法人化し、法人から役員報酬を受けて加入要件を満たす場合は、国民年金の第1号被保険者から厚生年金に加入する第2号被保険者へ変わります。
将来は老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされますが、法人にも社会保険料負担が発生します。税負担だけでなく、法人負担分を含めた毎月のキャッシュフローを確認することが重要です。
9-7. iDeCoと国民年金基金はどちらを選ぶべきですか?
運用商品を自分で選び、運用結果に応じた資産形成をしたい人にはiDeCoが候補になります。終身年金を基本とし、将来受け取る年金を計画的に準備したい人には国民年金基金が候補になります。
iDeCoには価格変動リスクがあり、原則60歳まで引き出せません。国民年金基金は任意に脱退しにくく、加入時の年齢や選択する給付の型などによって掛金が決まります。
両方を併用することもできますが、掛金には合算上限があります。生活防衛資金、事業資金、毎月継続できる金額を確認したうえで選びましょう。年金ネット+1
まとめ
クリエイターの年金は、仕事内容ではなく働き方によって決まります。専業のフリーランスや個人事業主は原則として国民年金、会社員や加入要件を満たす法人役員は厚生年金、厚生年金加入者である配偶者の扶養に入る人は第3号被保険者になる可能性があります。
フリーランスクリエイターは、会社員のように厚生年金が自動で上乗せされないため、老後の公的年金が少なくなりやすい点に注意が必要です。まずは国民年金の未納を防ぎ、ねんきんネットで加入記録と年金見込額を確認しましょう。
そのうえで、付加年金、iDeCo、国民年金基金、小規模企業共済、NISAなどを組み合わせ、自分で老後資金を準備することが大切です。
収入が不安定な時期には、積み立てを優先して生活費や事業資金が不足してしまわないよう注意しなければなりません。すぐに使える生活防衛資金を確保し、少額でも無理なく継続できる方法から老後対策を始めましょう。

