フリーランスの保険料はいくら?国民健康保険・年金・節税対策までわかりやすく解説
はじめに
フリーランスになると、会社員時代には給与から天引きされていた保険料や年金を、自分で手続きして支払う必要があります。
特に「フリーランスの保険料はいくらかかるのか」は、独立前後で多くの人が不安に感じるポイントです。会社員のときは健康保険料や厚生年金保険料の一部を会社が負担してくれますが、フリーランスは原則として国民健康保険と国民年金に加入し、自分で全額を負担します。
また、国民健康保険料は所得や住んでいる自治体、年齢、家族構成によって大きく変わります。そのため、同じ年収でも人によって保険料が異なる点に注意が必要です。
この記事では、フリーランスの保険料の目安、国民健康保険・国民年金の仕組み、保険料を抑える方法、節税対策、必要に応じて検討したい民間保険までわかりやすく解説します。
1. フリーランスの保険料はいくらかかる?まず結論と全体像を解説
フリーランスの保険料は、主に「国民健康保険料」と「国民年金保険料」の合計で考えます。
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。国民健康保険料は自治体や所得によって異なりますが、単身・40歳未満・事業所得300万円程度の場合、年間30万円台、年金と合わせて年間50万円台になるケースがあります。
ただし、これはあくまで目安です。フリーランスの保険料は「売上」ではなく、基本的には売上から必要経費などを差し引いた「所得」をもとに計算されます。さらに、40歳以上65歳未満の人は介護保険料も加わるため、負担が増えます。
1-1. フリーランスが支払う主な保険料・年金の種類
フリーランスが主に支払うのは、次のような保険料・年金です。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 病気やけがで医療機関を受診したときの医療保険 |
| 国民年金保険料 | 老後・障害・死亡時に備える公的年金 |
| 介護保険料 | 40歳以上65歳未満の人が国民健康保険料に上乗せして支払う |
| 民間保険料 | 医療保険、就業不能保険、生命保険など任意で加入する保険 |
このうち、必ず意識したいのは国民健康保険と国民年金です。会社員からフリーランスになる場合、退職後に健康保険と年金の切り替え手続きが必要になります。
1-2. 会社員とフリーランスで保険料の負担が違う理由
会社員とフリーランスで保険料の負担感が大きく違う理由は、会社員の場合、健康保険料や厚生年金保険料を会社と本人が分けて負担しているためです。
一方、フリーランスは国民健康保険料を自分で支払い、国民年金保険料も自分で納めます。会社が半分負担してくれる仕組みがないため、独立直後に「思ったより保険料が高い」と感じやすくなります。
また、会社員の健康保険には扶養の仕組みがありますが、国民健康保険では家族の人数に応じて均等割などがかかるため、扶養家族がいる人ほど保険料が高くなりやすいです。
1-3. 月収・年収別に見る保険料の目安
以下は、東京都特別区の多くで使われる2026年度の国民健康保険料率に近い条件をもとにした概算です。実際の金額は自治体や家族構成、控除、年齢によって異なります。
| 事業所得の目安 | 年齢 | 国民健康保険料の目安 | 国民年金の目安 | 合計の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 40歳未満・単身 | 約34万円/年 | 約21.5万円/年 | 約55万円/年 |
| 500万円 | 40歳未満・単身 | 約55万円/年 | 約21.5万円/年 | 約77万円/年 |
| 800万円 | 40歳未満・単身 | 約87万円/年 | 約21.5万円/年 | 約108万円/年 |
| 300万円 | 40〜64歳・単身 | 約42万円/年 | 約21.5万円/年 | 約63万円/年 |
| 500万円 | 40〜64歳・単身 | 約68万円/年 | 約21.5万円/年 | 約89万円/年 |
フリーランスの保険料は、月単位で考えると数万円の負担になります。たとえば事業所得500万円・40歳未満の単身者なら、国民健康保険と国民年金を合わせて月6万円台が目安です。
1-4. 保険料は「所得」「住んでいる自治体」「家族構成」で変わる
フリーランスの保険料を考えるうえで重要なのは、次の3つです。
まず、所得です。国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算されるのが一般的です。売上が多くても経費が多ければ所得は下がり、保険料も抑えられる可能性があります。
次に、住んでいる自治体です。国民健康保険料の料率や均等割額は自治体によって異なります。東京都も、区市町村ごとに保険料の設定が異なる仕組みです。
最後に、家族構成です。国民健康保険には会社員の健康保険のような「扶養に入れば保険料が増えない」という仕組みが基本的にありません。加入する家族の人数が増えるほど、均等割などの負担が増えます。
2. フリーランスが加入する国民健康保険の仕組み
フリーランスの医療保険として基本になるのが、国民健康保険です。会社員を辞めて独立した場合、原則として国民健康保険に加入するか、退職前の健康保険を任意継続するか、家族の健康保険の扶養に入るかを選ぶことになります。
2-1. 国民健康保険とは?会社員の健康保険との違い
国民健康保険は、自営業者、フリーランス、無職の人などが加入する公的医療保険です。病院や薬局で保険証やマイナ保険証を使うことで、医療費の自己負担を一定割合に抑えられます。
会社員の健康保険との大きな違いは、保険料の負担方法です。会社員の健康保険では、会社と本人が保険料を分けて負担します。一方、国民健康保険では会社負担がないため、本人が全額を負担します。
また、会社員の健康保険では要件を満たす家族を扶養に入れられますが、国民健康保険では世帯内の加入者ごとに均等割などがかかります。家族が多いフリーランスほど、国民健康保険料は高くなりやすいです。
2-2. 国民健康保険料の計算方法
国民健康保険料は、自治体が定める料率や金額をもとに計算されます。一般的には、次の要素を組み合わせて算出されます。
国民健康保険料は、医療分、後期高齢者支援金分、介護分、子ども・子育て支援金分などに分かれ、それぞれについて所得割や均等割などが計算されます。介護分は40歳以上65歳未満の人が対象です。
簡単にいうと、所得が高い人ほど所得割が増え、家族の加入人数が多いほど均等割が増えます。
2-3. 所得割・均等割・平等割・資産割とは
国民健康保険料を理解するには、主な計算項目を知っておくことが大切です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所得割 | 前年所得に応じてかかる部分 |
| 均等割 | 加入者1人ごとにかかる部分 |
| 平等割 | 1世帯ごとにかかる部分 |
| 資産割 | 固定資産税額などをもとにかかる部分 |
すべての自治体で同じ項目が使われるわけではありません。たとえば、所得割と均等割の2方式を採用している自治体もあります。東京都の標準保険料率も、所得割と均等割を使う方式が示されています。
2-4. 国民健康保険料が高いと感じる理由
フリーランスが国民健康保険料を高いと感じる主な理由は、会社負担がないこと、扶養の仕組みがないこと、前年所得をもとに計算されることです。
会社員時代は、健康保険料の一部を会社が負担していたため、本人が見ていた金額は実際の保険料全体の一部でした。フリーランスになると自分で全額を支払うため、負担が急に増えたように感じます。
さらに、独立初年度は前年の会社員時代の給与をもとに国民健康保険料が決まることがあります。独立直後に収入が安定していない場合でも、前年所得が高ければ高い保険料が請求されることがあるため注意が必要です。
2-5. 自治体によって保険料が異なる点に注意
国民健康保険料は全国一律ではありません。同じ所得、同じ家族構成でも、住んでいる市区町村によって金額が変わります。
たとえば、所得割の料率、均等割の金額、平等割の有無、保険料の上限額などは自治体によって異なります。東京都も、実際に支払う保険料は区市町村が決定する仕組みです。
そのため、フリーランスの保険料を正確に知りたい場合は、住んでいる自治体の国民健康保険料シミュレーションや窓口で確認するのが確実です。
3. フリーランスの国民年金はいくら?将来の備えも解説
フリーランスは、原則として国民年金に加入します。会社員のように厚生年金には加入しないため、老後に受け取れる公的年金は会社員より少なくなりやすいです。
3-1. フリーランスは原則として国民年金に加入する
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として公的年金に加入します。フリーランスや自営業者は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めます。
会社員からフリーランスになる場合は、退職後に厚生年金から国民年金への切り替え手続きが必要です。配偶者を扶養していた場合、配偶者の年金種別も変わる可能性があるため、あわせて確認しましょう。
3-2. 国民年金保険料の金額と支払い方法
2026年度の国民年金保険料は、月額17,920円です。付加年金に加入する場合は、付加保険料として月額400円を追加で納めます。
支払い方法には、納付書、口座振替、クレジットカード納付、電子納付などがあります。まとめて前払いする前納制度を利用すると割引を受けられ、2026年度の現金納付では1年度前納で3,730円、2年度前納で15,670円の割引が示されています。
3-3. 会社員の厚生年金との違い
会社員は国民年金に加えて厚生年金にも加入しています。つまり、老後は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れる仕組みです。
一方、フリーランスは原則として国民年金のみです。国民年金の保険料は定額ですが、将来受け取れる年金も基礎年金部分に限られます。
会社員時代より毎月の年金保険料が下がることもありますが、その分、将来の年金額も少なくなる可能性があります。フリーランスは、老後資金を自分で上乗せして準備する意識が必要です。
3-4. 将来受け取れる年金額の目安
2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの場合、月額70,608円です。これは保険料を満額納めた場合の金額であり、未納期間や免除期間があると受給額は変わります。
国民年金だけで生活費をすべてまかなうのは難しいと感じる人も多いでしょう。そのため、フリーランスは国民年金に加えて、iDeCo、国民年金基金、付加年金、小規模企業共済などを活用して老後資金を準備することが重要です。
3-5. 国民年金だけでは不安な場合の備え方
国民年金だけでは不安な場合は、次のような制度を検討できます。
| 制度 | 特徴 |
|---|---|
| 付加年金 | 月400円を追加で納め、将来の年金を上乗せする制度 |
| 国民年金基金 | フリーランスなど第1号被保険者向けの上乗せ年金 |
| iDeCo | 自分で掛金を出し、運用しながら老後資金を作る制度 |
| 小規模企業共済 | 個人事業主の退職金づくりに使える制度 |
付加年金は月400円で利用できるシンプルな上乗せ制度です。ただし、国民年金基金に加入している人や国民年金保険料の免除を受けている人は利用できないなどの条件があります。
4. フリーランスの保険料シミュレーション
ここでは、フリーランスの保険料の目安を具体的に見ていきます。
前提として、40歳未満・単身・東京都特別区の多くで使われる2026年度料率に近い条件を想定します。実際の国民健康保険料は自治体によって異なるため、あくまで概算として参考にしてください。
4-1. 年収300万円の場合の保険料目安
事業所得300万円の場合、40歳未満・単身なら国民健康保険料は年間約34万円、国民年金保険料は年間約21.5万円です。
合計すると年間約55万円、月額にすると約4.6万円が目安です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 約34万円/年 |
| 国民年金保険料 | 約21.5万円/年 |
| 合計 | 約55万円/年 |
| 月額換算 | 約4.6万円/月 |
年収300万円でも、保険料だけで月4万円以上になる可能性があります。実際には所得税、住民税、事業に必要な経費、生活費もかかるため、独立前に資金繰りを考えておくことが大切です。
4-2. 年収500万円の場合の保険料目安
事業所得500万円の場合、40歳未満・単身なら国民健康保険料は年間約55万円、国民年金保険料は年間約21.5万円です。
合計すると年間約77万円、月額にすると約6.4万円が目安です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 約55万円/年 |
| 国民年金保険料 | 約21.5万円/年 |
| 合計 | 約77万円/年 |
| 月額換算 | 約6.4万円/月 |
所得が増えると、国民健康保険料の所得割も増えます。節税だけでなく、所得管理や資金繰りも重要になります。
4-3. 年収800万円の場合の保険料目安
事業所得800万円の場合、40歳未満・単身なら国民健康保険料は年間約87万円、国民年金保険料は年間約21.5万円です。
合計すると年間約108万円、月額にすると約9万円が目安です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 約87万円/年 |
| 国民年金保険料 | 約21.5万円/年 |
| 合計 | 約108万円/年 |
| 月額換算 | 約9万円/月 |
所得が高くなるほど、国民健康保険料の負担感は大きくなります。一定以上の所得になると保険料の上限に近づきますが、それまでは所得に応じて負担が増えやすい点に注意が必要です。
4-4. 扶養家族がいる場合の保険料目安
国民健康保険では、会社員の健康保険のように「扶養家族を入れても保険料が増えない」という仕組みは基本的にありません。家族が国民健康保険に加入すると、人数に応じて均等割が増えます。
たとえば、事業所得500万円、本人45歳、配偶者と子どもも国民健康保険に加入するケースでは、国民健康保険料が年間80万円前後になることもあります。さらに、配偶者も国民年金の第1号被保険者になる場合、夫婦2人分の国民年金保険料が必要です。
家族構成によって保険料は大きく変わるため、単身者の目安をそのまま当てはめないようにしましょう。
4-5. 開業初年度・売上が不安定な場合の注意点
開業初年度は、前年の会社員時代の給与をもとに国民健康保険料が決まることがあります。そのため、独立後の売上がまだ少ないにもかかわらず、高い保険料を支払う必要が出ることがあります。
また、フリーランスは収入が毎月一定とは限りません。売上が多い月に保険料や税金分を別口座に分けておくと、納付時期に慌てにくくなります。
売上が大きく下がった場合や災害、失業に近い状況などで支払いが難しい場合は、自治体の減免制度や国民年金の免除・納付猶予制度を早めに確認しましょう。
5. フリーランスが保険料を抑える方法
フリーランスの保険料を抑えるには、制度を正しく理解し、使える控除や減免を活用することが大切です。ただし、無理な経費計上や不適切な申告は避ける必要があります。
5-1. 経費を正しく計上して所得を下げる
国民健康保険料は、基本的に所得をもとに計算されます。そのため、事業に必要な経費を正しく計上して所得を下げることは、保険料対策としても重要です。
たとえば、仕事で使うパソコン、ソフトウェア、通信費、取材費、書籍代、外注費、事務用品費、家事按分した家賃や光熱費などは、条件を満たせば経費にできます。
ただし、経費にできるのは事業に必要な支出です。プライベートな支出を無理に経費にすると、税務調査で否認されるリスクがあります。
5-2. 青色申告特別控除を活用する
フリーランスが節税と保険料対策を考えるなら、青色申告の活用は重要です。
青色申告を行うと、要件に応じて10万円、55万円、または65万円の青色申告特別控除を受けられます。65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳や電子申告などの要件を満たす必要があります。
青色申告特別控除によって事業所得が下がると、所得税や住民税の負担を抑えられるだけでなく、国民健康保険料の計算にも影響する可能性があります。
5-3. 国民健康保険組合への加入を検討する
職種によっては、自治体の国民健康保険ではなく、国民健康保険組合に加入できる場合があります。
国民健康保険組合は、同じ業種や職域の人を対象にした国民健康保険の一種です。業界や地域、加入条件が決まっており、誰でも加入できるわけではありません。
国民健康保険組合は、所得が高い人にとって保険料が抑えられる場合があります。一方で、加入条件、保険料、給付内容、家族分の負担などは組合ごとに異なります。加入できる職種のフリーランスは、自治体の国民健康保険と比較してみるとよいでしょう。
5-4. 家族の扶養に入れるケースを確認する
収入が一定以下の場合、家族が加入している会社員の健康保険の扶養に入れる可能性があります。扶養に入れれば、自分で国民健康保険料を支払わずに済む場合があります。
ただし、扶養に入るには年収見込みや働き方などの条件があります。また、個人事業主の場合は、売上ではなく経費を差し引いた収入の扱いが健康保険組合によって異なることがあります。
フリーランスとして本格的に活動している人は扶養に入れないケースも多いため、家族の勤務先や健康保険組合に確認しましょう。
5-5. 保険料の減免制度・免除制度を利用する
所得が低い場合、国民健康保険料の均等割や平等割が軽減される制度があります。軽減割合は、世帯所得などに応じて7割、5割、2割などに分かれる自治体があります。
国民年金についても、所得が少ない場合や失業した場合などには、保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できる可能性があります。免除には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があり、20歳以上50歳未満の人には納付猶予制度もあります。
支払えないからといって放置するのではなく、早めに自治体や年金事務所に相談することが大切です。
5-6. 前納・口座振替による割引を活用する
国民年金保険料は、前納や口座振替によって割引を受けられます。2026年度の現金納付では、1年度前納で3,730円、2年度前納で15,670円の割引があります。
大きな節約額ではありませんが、確実に支払う保険料を減らせる方法です。資金に余裕がある場合は、前納を検討するとよいでしょう。
ただし、フリーランスは収入が不安定になりやすいため、生活費や事業資金を圧迫しない範囲で利用することが大切です。
6. フリーランスが知っておきたい節税対策
フリーランスの保険料対策とあわせて考えたいのが、節税対策です。ただし、節税と社会保険料の削減は同じではありません。
所得税や住民税を下げる効果はあっても、国民健康保険料の計算には直接反映されない控除もあります。制度ごとの違いを理解して活用しましょう。
6-1. 小規模企業共済を活用する
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が退職金を準備するための制度です。掛金は月1,000円から70,000円までの範囲で設定でき、掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
所得税や住民税の節税をしながら、将来の退職金を準備できる点がメリットです。
ただし、掛金は事業の経費ではなく所得控除です。また、短期間で解約すると元本割れする場合があるため、長期的に続けられる金額で始めることが大切です。
6-2. iDeCoで老後資金を準備しながら節税する
iDeCoは、自分で掛金を出し、自分で運用しながら老後資金を作る私的年金制度です。公的年金とは別に、任意で加入できます。
フリーランスなど国民年金の第1号被保険者は、一定の範囲内で掛金を拠出できます。第1号被保険者の掛金上限は月額68,000円で、国民年金基金や付加保険料と合算して考える必要があります。
iDeCoの掛金は所得控除の対象になるため、所得税や住民税の節税効果があります。ただし、原則として60歳まで引き出せない点には注意が必要です。
6-3. 付加年金・国民年金基金を検討する
付加年金は、国民年金保険料に月400円を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やせる制度です。少額で始められるため、フリーランスの老後対策として検討しやすい制度です。
国民年金基金は、フリーランスなど第1号被保険者が老後の年金を上乗せするための制度です。掛金は社会保険料控除の対象になります。
ただし、国民年金基金と付加年金は併用できません。また、iDeCoと国民年金基金を併用する場合は、掛金の上限に注意が必要です。
6-4. 生命保険料控除・地震保険料控除を活用する
生命保険や医療保険、個人年金保険に加入している場合、生命保険料控除を受けられる可能性があります。新契約の場合、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除はそれぞれ最高4万円、合計で最高12万円まで所得控除の対象になります。
また、地震保険に加入している場合は、地震保険料控除を受けられる可能性があります。保険に加入している人は、年末に届く控除証明書を保管しておきましょう。
ただし、節税目的だけで不要な保険に入るのは本末転倒です。保険料の支払いが家計を圧迫しないよう、必要な保障を見極めることが大切です。
6-5. ふるさと納税を活用する際の注意点
ふるさと納税は、自己負担2,000円で返礼品を受け取りながら、寄附金控除を受けられる制度です。フリーランスも利用できます。
ただし、フリーランスは所得が年によって変動しやすいため、控除上限額の見積もりに注意が必要です。売上が大きく下がった年に前年と同じ感覚で寄附すると、自己負担が増える可能性があります。
また、ふるさと納税は所得税や住民税の控除には関係しますが、国民健康保険料の計算を直接大きく下げる制度ではありません。節税効果と資金繰りを分けて考えましょう。
6-6. 節税と社会保険料削減の違いを理解する
フリーランスが特に注意したいのは、「所得税・住民税の節税」と「国民健康保険料の削減」は必ずしも同じではないという点です。
たとえば、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、iDeCoの掛金控除、生命保険料控除などは、所得税や住民税の節税に役立ちます。社会保険料控除では、国民健康保険料や国民年金保険料など、その年に支払った社会保険料を所得控除できます。
一方、国民健康保険料は、自治体ごとの方式により、総所得金額等から基礎控除を差し引いた金額などをもとに計算されることが一般的です。iDeCoや小規模企業共済などの所得控除を増やしても、国民健康保険料がその分そのまま下がるとは限りません。
保険料対策として効果が出やすいのは、事業所得そのものを適正に下げることです。つまり、経費の正しい計上や青色申告特別控除の活用が重要になります。
7. フリーランスが加入を検討したい民間保険
公的保険だけでは不安な部分を補うために、民間保険を検討する人もいます。ただし、フリーランスは保険料、税金、生活費、事業資金をすべて自分で管理する必要があるため、入りすぎには注意が必要です。
7-1. 医療保険は必要か
国民健康保険に加入していれば、医療費の自己負担は一定割合に抑えられます。また、高額な医療費がかかった場合には、高額療養費制度を利用できる可能性があります。
そのため、医療保険は必ず必要というわけではありません。ただし、入院時の差額ベッド代、食事代、先進医療、通院費、仕事を休むことによる収入減などは公的保険だけでカバーしきれない場合があります。
貯蓄が少ない人、家族を養っている人、長期入院時の収入減が不安な人は、必要最低限の医療保険を検討してもよいでしょう。
7-2. 就業不能保険は必要か
フリーランスにとって、働けない期間の収入減は大きなリスクです。会社員のように傷病手当金が使える健康保険に加入していない場合、病気やけがで働けなくなると収入が止まる可能性があります。
就業不能保険は、病気やけがで長期間働けなくなったときに給付金を受け取れる保険です。
特に、毎月の生活費が高い人、住宅ローンがある人、家族を扶養している人、貯蓄が少ない人は検討する価値があります。一方で、支払い条件や免責期間、精神疾患の扱いなどは保険商品によって異なるため、内容をよく確認しましょう。
7-3. 生命保険が必要になるケース
生命保険は、自分に万が一のことがあったときに、家族の生活費や教育費、住宅費などを残すための保険です。
独身で扶養家族がいない場合、大きな死亡保障は必要ないこともあります。一方、配偶者や子どもがいる人、住宅ローンがある人、親に仕送りをしている人は、必要保障額を考えて加入を検討するとよいでしょう。
生命保険は、必要な期間と必要な金額を決めて加入することが大切です。必要以上に大きな保障をつけると、毎月の保険料が負担になります。
7-4. 所得補償保険・業務トラブルに備える保険
フリーランスは、自分自身が働けなくなるリスクだけでなく、業務上のトラブルにも備える必要があります。
たとえば、納品物のミス、情報漏えい、著作権侵害、クライアントへの損害賠償などが発生する可能性があります。職種によっては、フリーランス向けの賠償責任保険や所得補償保険を検討すると安心です。
特に、エンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント、カメラマン、士業、講師業などは、契約内容や納品物に関するトラブルが起きることがあります。契約書と保険の両方で備える意識が大切です。
7-5. 保険に入りすぎないための考え方
民間保険は不安を減らす手段ですが、入りすぎると固定費が増えて家計を圧迫します。
保険を選ぶときは、まず公的保険でカバーされる範囲を確認し、次に貯蓄で対応できる範囲を考え、それでも足りない部分だけを民間保険で補うのが基本です。
フリーランスは収入が不安定になりやすいため、毎月の固定費を増やしすぎないことが重要です。保険料を払うために生活が苦しくなるなら、保障内容を見直しましょう。
8. フリーランスの保険料に関するよくある悩み
ここでは、フリーランスの保険料に関してよくある疑問を解説します。
8-1. フリーランスになったら保険料はいつから払う?
会社を辞めてフリーランスになる場合、退職日の翌日から会社の健康保険や厚生年金の資格を失うのが一般的です。その後、国民健康保険や国民年金への切り替え手続きが必要になります。
国民健康保険料や国民年金保険料は、資格を取得した月から発生します。手続きが遅れても、加入すべき日までさかのぼって保険料を請求されることがあります。
退職後は早めに市区町村の窓口で手続きを行いましょう。
8-2. 会社を辞めた直後は任意継続と国民健康保険のどちらが得?
退職後の健康保険には、主に次の選択肢があります。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 任意継続 | 退職前の健康保険を一定期間継続する |
| 国民健康保険 | 住んでいる自治体の国民健康保険に加入する |
| 家族の扶養 | 条件を満たせば家族の健康保険に入る |
協会けんぽの任意継続は、退職日までに継続して2か月以上被保険者期間があり、退職日の翌日から20日以内に手続きすることが条件です。保険料は原則として会社負担分も含めた金額になるため、在職中の本人負担額のおおむね2倍になる場合があります。
ただし、任意継続には保険料の上限があり、扶養家族がいても追加の保険料がかからない場合があります。一方、国民健康保険は前年所得や家族人数、自治体によって金額が変わります。どちらが得かは人によって違うため、退職前に両方の金額を試算しましょう。
8-3. 収入が少ないときも保険料は払う必要がある?
収入が少ないときでも、国民健康保険料や国民年金保険料の支払い義務はあります。ただし、所得が低い場合は軽減や減免、免除、納付猶予を利用できる可能性があります。
国民年金には、所得が少ない場合などに使える免除制度や納付猶予制度があります。申請が承認されれば、保険料の全額または一部が免除されたり、納付を猶予されたりします。
支払えないときは、放置せずに自治体や年金事務所に相談しましょう。
8-4. 保険料を滞納するとどうなる?
国民健康保険料を滞納すると、督促や延滞金の対象になることがあります。長期間滞納すると、通常の保険証ではなく特別療養費の対象となり、医療機関でいったん医療費の全額を支払う必要が生じる場合があります。
国民年金保険料についても、未納のまま放置すると、最終催告状、督促状、差押えなどにつながる可能性があります。
滞納は将来の年金額や医療費負担にも影響します。支払いが難しい場合は、早めに相談し、免除や猶予、分割納付などを検討しましょう。
8-5. 副業フリーランスの場合の保険料はどうなる?
会社員として勤務しながら副業でフリーランス収入を得ている場合、勤務先の健康保険と厚生年金に加入し続けるのが一般的です。その場合、副業収入があるからといって、すぐに国民健康保険や国民年金へ切り替えるわけではありません。
ただし、副業所得が増えると所得税や住民税の負担は増える可能性があります。また、副業が本業化して会社を辞める場合は、退職後に健康保険と年金の切り替えが必要です。
副業フリーランスの場合は、社会保険よりも確定申告や住民税の扱いに注意しましょう。
8-6. 法人成りすると保険料はどう変わる?
個人事業主から法人化すると、社会保険の扱いが変わります。法人の事業所は、社長1人の会社であっても、原則として厚生年金保険・健康保険の適用事業所になります。
法人成りすると、役員報酬をもとに健康保険料や厚生年金保険料が決まり、会社と本人で保険料を負担します。会社負担分も実質的には自分の会社のコストになるため、個人負担だけを見て判断しないことが大切です。
法人化は節税や信用力向上につながる場合がありますが、社会保険料の負担が増えるケースもあります。税理士や社会保険労務士に相談しながら判断するとよいでしょう。
9. フリーランスの保険料で損しないための手続き
フリーランスの保険料で損しないためには、金額だけでなく手続きも重要です。退職後の切り替え、確定申告での控除、書類の保管を忘れないようにしましょう。
9-1. 退職後に必要な健康保険・年金の切り替え手続き
会社を辞めた後は、健康保険と年金の手続きが必要です。
健康保険は、国民健康保険に加入する、任意継続する、家族の扶養に入る、という選択肢があります。任意継続を選ぶ場合は、退職日の翌日から20日以内に手続きする必要があります。
年金は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。配偶者を扶養していた場合は、配偶者の国民年金の手続きも必要になることがあります。
9-2. 国民健康保険の加入手続きに必要なもの
国民健康保険の加入手続きは、市区町村の窓口で行います。一般的に必要になるものは、次のような書類です。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 本人確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など |
| マイナンバー確認書類 | マイナンバーカード、通知カードなど |
| 健康保険資格喪失証明書 | 会社の健康保険を抜けたことを証明する書類 |
| 印鑑 | 自治体によって必要な場合がある |
| 口座情報 | 口座振替を申し込む場合に必要 |
必要書類は自治体によって異なるため、事前に市区町村の公式サイトで確認しましょう。
9-3. 国民年金への切り替え手続きに必要なもの
国民年金への切り替えも、市区町村の窓口で手続きできます。一般的には、本人確認書類、基礎年金番号がわかるもの、退職日がわかる書類などが必要です。
会社を辞めた本人だけでなく、配偶者が第3号被保険者だった場合は、配偶者も第1号被保険者への切り替えが必要になることがあります。
退職後の手続きを放置すると、未加入期間や未納期間が生じる可能性があります。将来の年金額にも関わるため、早めに手続きしましょう。
9-4. 確定申告で社会保険料控除を忘れない
フリーランスが支払った国民健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金などは、社会保険料控除の対象になります。支払った金額を所得から控除できるため、所得税や住民税の負担を抑えられます。
確定申告では、社会保険料控除の記入漏れに注意しましょう。特に国民年金保険料や国民年金基金の掛金については、控除証明書の添付または提示が必要です。
家族の国民年金保険料を自分が支払った場合、その分も控除できる可能性があります。支払者や証明書の扱いを確認しておきましょう。
9-5. 保険料の通知書・控除証明書は保管しておく
国民健康保険料の納付通知書、領収書、口座振替の記録、国民年金保険料の控除証明書などは、確定申告に必要になることがあります。
フリーランスは、収入や経費だけでなく、税金や保険料の書類も自分で管理しなければなりません。紙で届いた書類はファイルにまとめ、電子データはクラウドや会計ソフトに保存しておくと安心です。
控除証明書を紛失した場合は再発行できることもありますが、確定申告の時期に慌てないよう、日頃から整理しておきましょう。
まとめ
フリーランスの保険料は、主に国民健康保険料と国民年金保険料で構成されます。2026年度の国民年金保険料は月額17,920円で、国民健康保険料は所得、自治体、年齢、家族構成によって大きく変わります。
フリーランスの保険料で特に重要なのは、次のポイントです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 国民健康保険料は自治体差が大きい | 住んでいる市区町村で金額が変わる |
| 所得が増えると保険料も増えやすい | 経費計上や青色申告が重要 |
| 国民年金だけでは老後資金が不足しやすい | iDeCo、国民年金基金、付加年金などを検討 |
| 退職直後は任意継続との比較が必要 | 国保と任意継続の保険料を試算する |
| 支払いが難しいときは相談する | 減免、免除、納付猶予を活用する |
| 確定申告で控除を忘れない | 社会保険料控除を正しく申告する |
フリーランスの保険料は、会社員時代より見えにくく、負担も大きく感じやすいものです。しかし、仕組みを理解し、経費計上、青色申告、前納、減免制度、老後資金づくりを上手に活用すれば、無理のない形で備えることができます。
まずは自分の所得、住んでいる自治体、家族構成をもとに、国民健康保険料と国民年金保険料を試算してみましょう。そのうえで、節税対策や民間保険を必要な範囲で組み合わせることが、フリーランスとして安定して働き続けるための第一歩です。

