フリーランスの基礎控除はいくら?確定申告で損しない控除額・計算方法・注意点をわかりやすく解説
はじめに
フリーランスとして働く場合、確定申告で必ず押さえておきたい控除のひとつが「基礎控除」です。基礎控除は、事業内容や経費の多さに関係なく、一定の条件に応じて所得から差し引ける所得控除です。
特に令和7年分以後の所得税では、基礎控除額が見直され、合計所得金額によって最大95万円まで控除できるようになりました。フリーランスにとっては、売上から経費を引いた後の所得、青色申告特別控除との関係、住民税との違いを正しく理解することが大切です。
この記事では、フリーランスの基礎控除はいくらなのか、確定申告でどのように計算するのか、青色申告やほかの控除とどう組み合わせれば損をしにくいのかをわかりやすく解説します。
1. フリーランスの基礎控除とは?まず押さえる基本
1-1. 基礎控除はすべての納税者に適用される所得控除
基礎控除とは、所得税を計算するときに、納税者本人の合計所得金額に応じて所得から差し引ける控除です。国税庁は、確定申告や年末調整で所得税額を計算する際、総所得金額などから差し引くことができる控除のひとつとして基礎控除を示しています。
フリーランスだから特別に認められる控除ではなく、会社員、個人事業主、年金受給者など、納税者本人の所得要件に応じて適用されます。つまり、フリーランスであっても、確定申告で所得税を計算する際には基礎控除を使えます。
1-2. フリーランスでも会社員でも基礎控除の考え方は同じ
会社員は年末調整で基礎控除が反映されることが多い一方、フリーランスは自分で確定申告を行い、所得や控除額を申告します。
ただし、基礎控除の考え方自体は同じです。ポイントは「職業」ではなく「納税者本人の合計所得金額」です。フリーランスでも会社員でも、合計所得金額が一定額以下であれば基礎控除の対象になります。
1-3. 基礎控除は「経費」ではなく「所得控除」
フリーランスが混同しやすいのが、基礎控除と経費の違いです。
経費は、売上を得るために必要だった支出を売上から差し引くものです。たとえば、仕事用のパソコン、ソフトウェア利用料、通信費、打ち合わせ費用、外注費などが該当します。
一方、基礎控除は経費ではありません。売上から経費を引いて事業所得を計算した後、さらに所得から差し引く「所得控除」です。
計算の順番は、基本的に次のようになります。
売上 − 必要経費 = 事業所得
事業所得 − 青色申告特別控除など = 所得金額
所得金額 − 基礎控除などの所得控除 = 課税所得
この順番を間違えると、税額の見積もりを誤りやすくなります。
1-4. 確定申告で基礎控除を使うと所得税・住民税が下がる仕組み
所得税や住民税は、所得そのものではなく、各種控除を差し引いた後の「課税所得」をもとに計算されます。基礎控除を適用すると課税所得が小さくなるため、その分、税額が下がる可能性があります。
たとえば、所得税率が5%の人が基礎控除を58万円使える場合、単純計算では所得税だけで2万9,000円程度の税負担軽減効果があります。さらに、復興特別所得税や住民税にも影響するため、実際の負担減は状況によって変わります。
ただし、もともと課税所得が0円の場合は、基礎控除を使ってもそれ以上税金が下がるわけではありません。
2. フリーランスの基礎控除はいくら?最新の控除額一覧
2-1. 所得税の基礎控除額は合計所得金額によって変わる
所得税の基礎控除額は、納税者本人の合計所得金額によって決まります。以前は一定の範囲で一律48万円というイメージが強かったものの、令和7年度税制改正により、令和7年分以後の所得税について基礎控除額が見直されました。
フリーランスの場合、「売上がいくらか」ではなく、「必要経費や青色申告特別控除などを反映した後の所得がいくらか」を確認することが重要です。
2-2. 令和7年分の所得税の基礎控除は最大95万円
令和7年分・令和8年分の所得税の基礎控除額は、合計所得金額に応じて次のように変わります。国税庁の基礎控除の表では、合計所得金額132万円以下の場合、令和7年分・令和8年分の控除額は95万円とされています。
| 納税者本人の合計所得金額 | 令和7年分・令和8年分の所得税の基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 |
| 2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 |
フリーランスで所得がそれほど高くない場合、令和7年分・令和8年分については、従来より大きな基礎控除を受けられる可能性があります。
2-3. 令和8年分・令和9年分以後の基礎控除額との違い
令和7年分と令和8年分は同じ控除額ですが、令和9年分以後は一部の所得区分で控除額が変わります。
令和9年分以後は、合計所得金額132万円以下の場合は95万円のままですが、132万円超2,350万円以下の多くの区分では58万円になります。つまり、令和7年分・令和8年分だけ一時的に大きく上乗せされている所得帯がある点に注意が必要です。
「今年は基礎控除が大きかったから来年以降も同じ」と考えると、将来の税額見積もりを誤る可能性があります。
2-4. 合計所得金額が2,500万円を超えると基礎控除は0円
所得税の基礎控除は、誰でも無条件に満額使えるわけではありません。合計所得金額が2,350万円を超えると段階的に減り、2,500万円を超えると0円になります。
高収入のフリーランス、複数事業を持つ個人事業主、不動産所得や譲渡所得がある人は、基礎控除が減額または適用なしになる可能性があります。
2-5. 住民税の基礎控除は所得税とは金額が異なる
基礎控除は所得税だけでなく住民税にもあります。ただし、所得税と住民税では控除額が異なります。
個人住民税では、基礎控除は最高43万円です。内閣府税制調査会の個人住民税に関する説明資料でも、個人住民税の基礎控除は最高43万円、所得税は最高95万円と整理されています。
そのため、所得税が0円でも住民税が発生するケースがあります。フリーランスは所得税の確定申告だけでなく、翌年度の住民税や国民健康保険料への影響も確認しておきましょう。
3. フリーランスの基礎控除額を判定する「合計所得金額」とは
3-1. 売上ではなく所得で判定する
基礎控除額を判定するときに見るのは、売上ではなく合計所得金額です。
たとえば、年間売上が500万円でも、必要経費が200万円あれば、事業所得は300万円です。さらに青色申告特別控除を使える場合は、所得金額がさらに下がることがあります。
フリーランスの場合、売上だけを見て「自分は基礎控除が減るかもしれない」と判断する必要はありません。実際には、経費や控除を反映した所得ベースで確認します。
3-2. 事業所得の計算方法:売上−必要経費
フリーランスの中心となる所得は、多くの場合「事業所得」です。事業所得は、基本的に次の式で計算します。
売上 − 必要経費 = 事業所得
必要経費には、仕事に直接関係する支出を計上できます。たとえば、デザイナーなら制作ソフト代、ライターなら取材交通費、エンジニアならクラウドサービス利用料などが考えられます。
ただし、プライベート支出は経費にできません。自宅兼事務所の家賃や通信費など、仕事と私用が混在する支出は、事業で使った割合に応じて家事按分する必要があります。
3-3. 青色申告特別控除を差し引いた後の金額で考える
青色申告をしているフリーランスは、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を使えます。国税庁によると、青色申告特別控除には55万円、一定要件を満たす場合の65万円、または10万円の控除があります。
合計所得金額を考えるときは、青色申告特別控除を差し引いた後の所得金額を意識します。
たとえば、売上500万円、必要経費200万円、青色申告特別控除65万円の場合は、次のようになります。
売上500万円 − 必要経費200万円 = 事業所得300万円
事業所得300万円 − 青色申告特別控除65万円 = 所得金額235万円
この場合、基礎控除額を判定する際の所得は、売上500万円ではなく、原則として青色申告特別控除後の235万円をベースに考えます。
3-4. 副業収入・不動産所得・雑所得がある場合の注意点
フリーランスの中には、事業所得以外に副業収入、不動産所得、雑所得、給与所得、株式や不動産の譲渡所得などがある人もいます。
基礎控除額の判定に使うのは、事業所得だけではなく合計所得金額です。たとえば、フリーランスの事業所得が300万円でも、不動産所得が100万円あれば、合計所得金額はさらに増えます。
複数の収入源がある人は、事業所得だけを見て基礎控除額を判断しないようにしましょう。
3-5. 赤字の場合でも基礎控除は使えるのか
事業が赤字の場合でも、基礎控除の考え方自体は関係します。ただし、所得が赤字でほかに所得がない場合、課税所得は基本的に0円になるため、基礎控除によって税金がさらに安くなる効果はありません。
一方で、給与所得や不動産所得などほかの所得がある場合は、事業の赤字と損益通算できるケースがあります。また、青色申告で一定の要件を満たしていれば、純損失の繰越控除を検討できる場合もあります。
赤字だから確定申告しなくてよいと決めつけず、青色申告の特典や住民税、国民健康保険料への影響も含めて判断しましょう。
4. フリーランスの所得税はどう計算する?基礎控除を使った計算例
4-1. 所得税の基本計算式
フリーランスの所得税は、基本的に次の流れで計算します。
売上 − 必要経費 = 事業所得
事業所得 − 青色申告特別控除など = 所得金額
所得金額 − 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 所得税率 − 控除額 = 所得税額
所得税率は、課税所得に応じて5%から45%までの7段階です。国税庁の速算表では、課税所得1,000円から194万9,000円までは5%、195万円から329万9,000円までは10%、330万円から694万9,000円までは20%とされています。
なお、平成25年から令和19年までの各年分では、原則として基準所得税額の2.1%の復興特別所得税もあわせて申告・納付します。
4-2. 白色申告の場合の計算例
白色申告のフリーランスで、次の条件を想定します。
売上:400万円
必要経費:150万円
その他の所得控除:社会保険料控除50万円
令和7年分の基礎控除:88万円
まず、事業所得を計算します。
400万円 − 150万円 = 250万円
白色申告には青色申告特別控除がないため、所得金額は250万円です。令和7年分・令和8年分では、合計所得金額250万円の場合、基礎控除は88万円です。
次に、所得控除を差し引きます。
250万円 − 基礎控除88万円 − 社会保険料控除50万円 = 課税所得112万円
課税所得112万円は所得税率5%の範囲なので、所得税は次のようになります。
112万円 × 5% = 5万6,000円
ここに復興特別所得税が加わります。実際の税額は、ほかの控除や源泉徴収税額の有無によって変わります。
4-3. 青色申告65万円控除を使った場合の計算例
次に、同じ売上・経費で青色申告65万円控除を使える場合を見てみましょう。
売上:400万円
必要経費:150万円
青色申告特別控除:65万円
その他の所得控除:社会保険料控除50万円
まず、事業所得は同じく250万円です。
400万円 − 150万円 = 250万円
ここから青色申告特別控除65万円を差し引きます。
250万円 − 65万円 = 185万円
令和7年分・令和8年分では、合計所得金額185万円の場合、基礎控除は88万円です。
課税所得は次のとおりです。
185万円 − 基礎控除88万円 − 社会保険料控除50万円 = 課税所得47万円
所得税は、47万円 × 5% = 2万3,500円です。
白色申告の例では所得税が5万6,000円だったため、青色申告65万円控除を使うことで、所得税だけでも大きな差が出ます。
4-4. 基礎控除でいくら税金が安くなるかの目安
基礎控除による節税効果は、自分の所得税率によって変わります。
たとえば、基礎控除58万円の場合、所得税率ごとの所得税軽減額の目安は次のとおりです。
所得税率5%:約2万9,000円
所得税率10%:約5万8,000円
所得税率20%:約11万6,000円
基礎控除95万円の場合は、税率5%なら約4万7,500円、税率10%なら約9万5,000円が所得税の軽減目安になります。
ただし、これは単純計算です。復興特別所得税、住民税、税額控除、源泉徴収税額、課税所得が0円になるケースなどによって実際の金額は変わります。
4-5. 課税所得が0円になるケース
フリーランスの所得が少ない場合、基礎控除や社会保険料控除などを差し引くと、課税所得が0円になることがあります。
たとえば、令和7年分で事業所得が90万円、その他の所得がない場合、合計所得金額132万円以下に該当するため、所得税の基礎控除は95万円です。
事業所得90万円 − 基礎控除95万円 = 0円
所得控除は所得をマイナスにするものではないため、課税所得は0円になります。この場合、所得税は発生しません。
ただし、所得税が0円でも住民税の申告が必要なケースや、国民健康保険料の算定に影響するケースがあります。
5. 基礎控除とあわせて使いたいフリーランス向け控除
5-1. 青色申告特別控除
フリーランスが基礎控除とあわせて最初に検討したいのが、青色申告特別控除です。
青色申告特別控除は、青色申告者が一定の要件を満たすことで、所得金額から最大65万円などを差し引ける制度です。65万円控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または電子帳簿保存などの要件を満たす必要があります。
基礎控除と青色申告特別控除は併用できます。青色申告特別控除で所得金額を下げ、その後に基礎控除などの所得控除を差し引く流れです。
5-2. 社会保険料控除
フリーランスが支払う国民年金保険料、国民健康保険料、介護保険料などは、社会保険料控除の対象になります。
社会保険料控除は、支払った金額が原則として全額所得控除になります。フリーランスは会社員と違い、国民年金や国民健康保険を自分で支払うため、確定申告で漏れなく入力することが重要です。
家族分の社会保険料を本人が支払っている場合も、要件を満たせば控除対象になることがあります。
5-3. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済やiDeCoの掛金などは、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度のような仕組みです。掛金は将来の備えになりつつ、所得控除にも使えるため、利益が出ているフリーランスにとって節税効果が大きい制度です。
ただし、途中解約や受取時の税金にも注意が必要です。節税だけでなく、資金繰りや将来設計とあわせて検討しましょう。
5-4. 生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合は、生命保険料控除の対象になることがあります。
また、自宅や事務所兼自宅に関する地震保険料を支払っている場合は、地震保険料控除を使える可能性があります。
これらは支払額の全額が控除されるわけではなく、契約内容や支払額に応じて控除額が決まります。保険会社から届く控除証明書を確認し、確定申告で入力しましょう。
5-5. 医療費控除
本人や生計を一にする家族の医療費が一定額を超えた場合は、医療費控除を使えることがあります。
医療費控除は、病院代や薬代だけでなく、通院のための公共交通機関の交通費なども対象になる場合があります。一方で、美容目的の治療や健康増進目的の支出などは対象外です。
フリーランスは会社の年末調整がないため、医療費控除を使う場合は自分で確定申告する必要があります。
5-6. 配偶者控除・扶養控除
配偶者や扶養親族がいる場合は、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除を使える可能性があります。
ただし、これらの控除は、配偶者や扶養親族の所得金額、年齢、同一生計かどうかなどによって判定されます。フリーランス本人の所得だけでなく、家族のアルバイト収入、副業収入、年金収入なども確認が必要です。
令和7年度税制改正では、扶養親族等の所得要件にも改正があるため、家族を扶養に入れている人は最新の要件を確認しましょう。
5-7. iDeCo・国民年金基金で節税する方法
老後資金を準備しながら節税したいフリーランスは、iDeCoや国民年金基金も検討できます。
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。国民年金基金の掛金も社会保険料控除の対象です。
どちらも将来の年金づくりに役立ちますが、原則として長期の制度です。特にiDeCoは原則60歳まで引き出せないため、短期的な資金繰りに余裕があるかを確認したうえで利用しましょう。
6. フリーランスが確定申告で基礎控除を入力する方法
6-1. 確定申告書のどこに基礎控除を記入するか
確定申告書では、基礎控除は所得控除の欄に記入します。事業所得や給与所得などの所得金額を計算した後、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除などと同じく、所得控除として反映されます。
手書きで申告書を作成する場合は、基礎控除額を自分で確認し、該当欄に記入します。令和7年分以後は合計所得金額によって控除額が変わるため、古い知識のまま48万円と記入しないよう注意しましょう。
6-2. 確定申告書等作成コーナーでの入力手順
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力することで、所得税、消費税、贈与税の申告書や青色申告決算書、収支内訳書などを作成でき、e-Taxによる送信もできます。また、自動計算されるため計算誤りを防ぎやすい仕組みです。
フリーランスの場合は、主に次の流れで入力します。
まず、売上や必要経費を入力し、事業所得を計算します。青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書を作成します。
次に、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除などの所得控除を入力します。基礎控除は、所得金額に応じて自動計算される場合があります。
最後に、税額、源泉徴収税額、予定納税額、還付または納付額を確認します。
6-3. 会計ソフトを使う場合の確認ポイント
会計ソフトを使っている場合、基礎控除は自動で反映されることが多いです。ただし、次の点は必ず確認しましょう。
まず、申告年度が正しいかを確認します。令和6年分以前と令和7年分以後では基礎控除額が異なります。
次に、青色申告か白色申告か、青色申告特別控除が65万円・55万円・10万円のどれで計算されているかを確認します。
さらに、副業の給与所得、不動産所得、雑所得などを入力している場合は、合計所得金額が正しく集計されているかも重要です。
6-4. 基礎控除が自動入力される場合でも確認すべき項目
確定申告書等作成コーナーや会計ソフトで基礎控除が自動入力される場合でも、確認を省略しないようにしましょう。
特に確認したいのは、合計所得金額、青色申告特別控除の金額、配偶者控除や扶養控除の判定、源泉徴収票の入力内容、住民税に関する事項です。
基礎控除額そのものが正しくても、所得金額の入力が間違っていれば、結果として税額も誤ります。
6-5. 電子申告と紙提出での違い
基礎控除そのものは、電子申告でも紙提出でも基本的に変わりません。
ただし、青色申告65万円控除を受ける場合は、e-Taxによる申告または電子帳簿保存の要件が関係します。国税庁は、65万円の青色申告特別控除について、55万円控除の要件に該当したうえで、電子帳簿保存または期限内のe-Tax申告などを要件としています。
つまり、基礎控除額は同じでも、青色申告特別控除額が変わることで、最終的な課税所得や税額に差が出ることがあります。
7. フリーランスが基礎控除で損しないための注意点
7-1. 売上と所得を混同しない
基礎控除で損しないために最も大切なのは、売上と所得を混同しないことです。
売上が多くても、経費が多ければ所得は下がります。反対に、売上がそれほど多くなくても、経費が少なければ所得は高くなります。
基礎控除額は売上ではなく合計所得金額で決まるため、日々の帳簿づけを正確に行い、必要経費を漏れなく記録することが大切です。
7-2. 所得控除と税額控除を混同しない
基礎控除は所得控除です。所得控除は、税率をかける前の所得から差し引く控除です。
一方、税額控除は、計算された税額から直接差し引く控除です。たとえば、住宅ローン控除などは税額控除に分類されます。
同じ「控除」という言葉でも、所得控除と税額控除では税金が安くなる仕組みが異なります。基礎控除額が58万円だからといって、税金が58万円安くなるわけではありません。
7-3. 青色申告特別控除との順番を間違えない
フリーランスの税額計算では、青色申告特別控除と基礎控除の順番も重要です。
青色申告特別控除は、事業所得などの所得金額を計算する段階で差し引きます。その後、基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引いて課税所得を計算します。
順番を整理すると、次のとおりです。
売上 − 必要経費 = 事業所得
事業所得 − 青色申告特別控除 = 所得金額
所得金額 − 基礎控除などの所得控除 = 課税所得
この流れを理解しておくと、税額シミュレーションもしやすくなります。
7-4. 住民税・国民健康保険料への影響も確認する
所得税の基礎控除が増えると、所得税の負担は下がりやすくなります。しかし、住民税の基礎控除は所得税と同じ金額ではありません。
個人住民税の基礎控除は最高43万円であり、所得税の最大95万円とは差があります。
また、国民健康保険料は自治体ごとの計算方法に基づいて所得などから算定されます。所得税が0円でも、住民税や国民健康保険料が発生することはあります。
7-5. 配偶者や扶養家族の控除判定に影響する場合がある
フリーランス本人の所得は、配偶者控除や扶養控除の判定にも影響します。
また、配偶者や子どもがアルバイトや副業をしている場合、その人自身の合計所得金額によって扶養に入れるかどうかが変わることがあります。
令和7年度税制改正では、基礎控除だけでなく、特定親族特別控除の創設や扶養親族等の所得要件の改正も行われています。家族の控除を使う場合は、本人だけでなく家族の所得も確認しましょう。
7-6. 税制改正で基礎控除額が変わる可能性に注意する
基礎控除額は、税制改正によって変わることがあります。実際に、令和7年度税制改正では所得税の基礎控除が大きく見直されました。
令和7年分・令和8年分と令和9年分以後で控除額が異なる所得帯もあるため、毎年同じ控除額で計算しないようにしましょう。
確定申告前には、国税庁や自治体の最新情報、利用している会計ソフトの年度対応状況を確認することが大切です。
8. フリーランスの基礎控除に関するよくある質問
8-1. フリーランスの基礎控除は申請しないともらえない?
フリーランスの場合、会社員の年末調整のように勤務先が処理してくれるわけではありません。確定申告で所得や控除を申告することで、基礎控除が税額計算に反映されます。
確定申告書等作成コーナーや会計ソフトでは自動計算されることもありますが、申告内容が正しいかは自分で確認する必要があります。
8-2. 所得が少ない場合でも確定申告は必要?
所得が少なく、基礎控除などを差し引くと所得税が0円になる場合、所得税の確定申告が不要になるケースもあります。
ただし、青色申告特別控除を受けたい場合、赤字を繰り越したい場合、源泉徴収された税金の還付を受けたい場合、住民税や国民健康保険料の申告が必要な場合は、申告したほうがよいことがあります。
「税金が出ないから何もしなくてよい」と判断せず、自分の状況に応じて確認しましょう。
8-3. 副業フリーランスでも基礎控除は使える?
副業フリーランスでも基礎控除は使えます。
ただし、基礎控除は1人につき1回です。会社員として給与所得があり、副業で事業所得や雑所得がある場合でも、基礎控除を二重に使うことはできません。
給与所得、副業所得、不動産所得などを合算した合計所得金額に応じて、基礎控除額を判定します。
8-4. 赤字でも基礎控除は関係ある?
赤字でほかに所得がない場合、基礎控除を使っても所得税がさらに下がる効果はありません。課税所得が0円になるためです。
ただし、赤字の申告には別の意味があります。青色申告で要件を満たす場合は、損失の繰越控除を使える可能性があります。また、住民税や国民健康保険料の算定のために申告が必要なケースもあります。
8-5. 基礎控除と青色申告特別控除は併用できる?
基礎控除と青色申告特別控除は併用できます。
青色申告特別控除は、事業所得などの所得金額を計算する段階で使います。基礎控除は、その後に所得控除として差し引きます。
たとえば、事業所得300万円から青色申告特別控除65万円を差し引き、所得金額235万円にしたうえで、さらに基礎控除などの所得控除を差し引くことができます。
8-6. 基礎控除だけで税金は0円になる?
基礎控除だけで税金が0円になるかどうかは、所得金額によります。
令和7年分・令和8年分で合計所得金額が95万円以下の場合、所得税の基礎控除だけで課税所得が0円になる可能性があります。ただし、社会保険料控除などほかの所得控除もあるため、実際には所得や控除の組み合わせで判断します。
一方、所得が基礎控除額を超えている場合は、基礎控除だけで税金が0円になるとは限りません。
まとめ
フリーランスの基礎控除は、確定申告で所得税を計算するうえで欠かせない所得控除です。令和7年分・令和8年分の所得税では、合計所得金額132万円以下なら最大95万円、132万円超336万円以下なら88万円など、所得に応じて控除額が変わります。
重要なのは、基礎控除額の判定は売上ではなく合計所得金額で行うことです。売上から必要経費を差し引き、青色申告特別控除などを反映した後の所得をもとに考えます。
また、所得税と住民税では基礎控除額が異なります。所得税が0円でも、住民税や国民健康保険料が発生するケースがあるため、確定申告後の負担まで見据えておくことが大切です。
フリーランスが損をしないためには、基礎控除だけでなく、青色申告特別控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、扶養控除などもあわせて確認しましょう。毎年の税制改正にも注意しながら、正確な帳簿づけと早めの申告準備を進めることが、無駄な税負担を避ける近道です。

