フリーランスは雇用保険に入れない?失業保険の代わりになる制度と加入できる例外をわかりやすく解説

はじめに

フリーランスとして働く人が増える一方で、「フリーランスは雇用保険に入れるのか」「仕事がなくなったら失業保険はもらえるのか」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、業務委託や請負で働く一般的なフリーランスは、原則として雇用保険に加入できません。雇用保険は、会社などに雇用されて働く労働者を対象にした制度だからです。

ただし、フリーランスでも会社員・パート・アルバイトと兼業している場合や、法人の役員であっても労働者性が強い場合など、例外的に雇用保険の対象になるケースがあります。また、雇用保険に入れないからといって、何の備えもできないわけではありません。小規模企業共済、労災保険の特別加入、求職者支援制度、民間保険など、失業保険の代わりに検討できる制度やサービスがあります。

この記事では、「フリーランス 雇用保険」で調べている人に向けて、加入できない理由、加入できる例外、退職後に失業保険を受け取れるケース、代わりに使える公的制度・民間保険までわかりやすく解説します。

1. フリーランスは雇用保険に入れない?結論と基本ルール

1-1. フリーランスは原則として雇用保険の対象外

フリーランスは、原則として雇用保険に加入できません。

雇用保険は、会社などに雇われて働く人が、失業したときや育児・介護で休業するとき、教育訓練を受けるときなどに給付を受けられる制度です。フリーランスは、基本的に企業と雇用契約を結ぶのではなく、業務委託契約や請負契約などで仕事を受けます。そのため、雇用保険上の「被保険者」には通常該当しません。

現在の一般的な雇用保険の加入要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがあることです。これは「雇用されている人」を前提にした要件であり、個人事業主として仕事をしているだけでは満たせません。

1-2. 雇用保険は「雇用されている労働者」のための制度

雇用保険は、会社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、雇用契約に基づいて働く労働者を守る制度です。

たとえば、会社を退職した人が次の仕事を探す間に受け取る「基本手当」、いわゆる失業保険は、雇用保険に加入していた人が一定の条件を満たした場合に支給されます。ハローワークでは、基本手当を受けるために求職の申し込みを行い、原則として4週間に1回、失業の認定を受ける必要があります。

つまり、雇用保険は「仕事がない人なら誰でももらえる制度」ではありません。雇用保険に加入していた期間があり、働く意思と能力があるにもかかわらず就職できない状態で、ハローワークを通じて求職活動をしていることが前提になります。

1-3. 業務委託・請負・個人事業主が対象外になる理由

業務委託や請負で働くフリーランスは、仕事の進め方、働く時間、報酬の決まり方などを自分で調整する立場にあります。発注者から業務を受けていても、発注者に雇われているわけではないため、原則として雇用保険の対象にはなりません。

会社員の場合、会社の指揮命令を受け、決められた勤務時間に働き、給与を受け取ります。一方、フリーランスは成果物や役務の提供に対して報酬を受け取ることが多く、事業主としての性格が強い働き方です。

ただし、契約書に「業務委託」と書かれていても、実態として会社の指揮命令を受け、勤務時間や場所を拘束され、労働者に近い働き方をしている場合は別です。厚生労働省も、フリーランスであっても働き方によっては「労働者」に当たる可能性があり、契約の名称ではなく実態で判断されるとしています。

1-4. 失業保険と雇用保険の違いをわかりやすく整理

「失業保険」と「雇用保険」は混同されやすい言葉ですが、厳密には意味が異なります。

雇用保険は制度全体の名前です。その中に、失業した人に支給される基本手当、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付などがあります。一方、失業保険は、一般的に雇用保険の基本手当を指して使われる通称です。

つまり、「失業保険に入る」というより、正確には「雇用保険に加入し、失業したときに基本手当を受ける」という関係です。フリーランスが原則として雇用保険に入れないということは、仕事がなくなったときに会社員のような失業保険を受け取れない可能性が高い、という意味になります。

2. フリーランスが雇用保険に加入できないことで困ること

2-1. 仕事がなくなっても失業保険を受け取れない

フリーランスにとって最も大きな不安は、仕事が途切れても失業保険を受け取れないことです。

会社員であれば、退職後に雇用保険の受給資格を満たしていれば、一定期間、基本手当を受けながら再就職活動ができます。しかし、フリーランスは雇用保険に加入していないため、取引先との契約が終了したり、案件が急になくなったりしても、それだけで失業保険を受け取ることはできません。

特に、特定の取引先に売上の大半を依存しているフリーランスは注意が必要です。実質的にひとつの会社から仕事を受けていても、契約形態が業務委託で雇用保険に入っていなければ、契約終了時の保障は会社員よりも薄くなります。

2-2. 収入減・廃業・病気への備えを自分で用意する必要がある

フリーランスは、収入が安定しないリスクを自分で管理する必要があります。

たとえば、次のような場面では収入が大きく落ちる可能性があります。

案件が急に終了した
取引先からの入金が遅れた
病気やけがで働けなくなった
家族の介護や育児で稼働時間が減った
景気や業界変化で受注が減った
廃業して再就職を考えることになった

会社員であれば、雇用保険、労災保険、健康保険の傷病手当金、会社の福利厚生などで一部をカバーできる場合があります。しかし、フリーランスは自分で制度を選び、必要に応じて加入し、貯蓄や保険で備える必要があります。

2-3. 会社員とフリーランスの社会保険の違い

会社員とフリーランスでは、社会保険の仕組みが大きく異なります。

会社員は、勤務先を通じて雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金に加入するのが一般的です。保険料の一部を会社が負担し、手続きも会社が行います。

一方、フリーランスは、国民健康保険と国民年金に自分で加入し、保険料も自分で納めます。雇用保険は原則対象外で、労災保険も通常は対象外ですが、一定の条件を満たせば特別加入できる場合があります。令和6年11月1日からは、フリーランスにも労災保険の特別加入の対象が拡大されています。

この違いを理解しておかないと、「会社員時代と同じように守られている」と思っていたのに、いざというときに使える制度が少ないという事態になりかねません。

2-4. 「加入できない=何も保障がない」わけではない

フリーランスは雇用保険に原則加入できませんが、何も保障がないわけではありません。

廃業や退職金代わりに備える小規模企業共済、老後資金を準備する国民年金基金やiDeCo、業務中のけがや病気に備える労災保険の特別加入、再就職やスキルアップを支援する求職者支援制度など、目的別に使える制度があります。

重要なのは、雇用保険の代わりになる制度をひとつだけ探すのではなく、「仕事がなくなるリスク」「病気やけがで働けないリスク」「廃業するリスク」「老後資金が不足するリスク」などに分けて備えることです。

3. フリーランスでも雇用保険に加入できる例外

3-1. 会社員・パート・アルバイトと兼業している場合

フリーランスでも、会社員・パート・アルバイトとして雇用されている場合は、勤務先で雇用保険に加入できる可能性があります。

たとえば、平日は会社で働き、夜や休日にフリーランスとして副業をしている人は、勤務先との雇用契約が雇用保険の要件を満たしていれば、雇用保険の対象になります。この場合、雇用保険に加入するのはフリーランス事業に対してではなく、雇用されている勤務先での働き方に対してです。

副業フリーランスの場合は、「自分はフリーランスだから雇用保険に入れない」と決めつけず、勤務先で雇用保険に加入しているかを確認しましょう。

3-2. 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合

現在の雇用保険では、原則として、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある場合に被保険者となります。

そのため、フリーランスと並行してパートやアルバイトをしている場合でも、勤務時間が週20時間未満だったり、短期契約で31日以上の雇用見込みがなかったりすると、雇用保険の対象にならないことがあります。

確認すべきポイントは次の3つです。

勤務先と雇用契約を結んでいるか
週の所定労働時間が20時間以上か
31日以上働く見込みがあるか

この3つを満たす場合は、勤務先に雇用保険の加入状況を確認しましょう。

3-3. 副業フリーランスなら勤務先で雇用保険に入れる可能性がある

副業フリーランスは、働き方によって雇用保険の扱いが変わります。

たとえば、会社で週5日勤務しながら、休日にWeb制作やライティング、動画編集などを個人で請け負っている場合、会社員として雇用保険に加入している可能性が高いです。一方、週1〜2日の短時間アルバイトをしながらフリーランスをしている場合は、勤務時間が足りず、雇用保険に入っていない可能性があります。

大切なのは、「フリーランスかどうか」ではなく、「雇用されている勤務先で雇用保険の要件を満たしているか」です。給与明細で雇用保険料が控除されているか、雇用契約書に勤務時間がどう記載されているかを確認しましょう。

3-4. 法人化した代表・役員は原則対象外だが兼務役員は例外になる場合がある

フリーランスが法人化して会社を設立した場合、代表取締役や役員は原則として雇用保険の対象外です。役員は会社を経営する立場であり、会社に雇用される労働者とは扱いが異なるためです。

ただし、役員であっても、同時に部長・支店長・工場長など従業員としての身分があり、服務態様、賃金、報酬などから見て労働者的性格が強く、雇用関係があると認められる場合は、雇用保険に加入できることがあります。厚生労働省も、会社の取締役や役員は原則として被保険者にならないものの、兼務役員については例外があると説明しています。

法人化したからといって、代表者本人が自動的に雇用保険に入れるわけではありません。役員報酬、給与、勤務実態、就業規則の適用状況などを踏まえて判断されるため、迷う場合はハローワークや社会保険労務士に確認しましょう。

3-5. 業務委託でも実態が労働者に近い場合は確認が必要

契約書上は業務委託でも、実態が労働者に近い場合は、雇用保険や労働法の対象になる可能性があります。

たとえば、次のような状況がある場合は注意が必要です。

勤務時間や場所を発注者に細かく決められている
仕事の進め方について強い指揮命令を受けている
他社の仕事を自由に受けられない
報酬が成果ではなく時間給に近い
会社の従業員と同じように管理されている
欠勤や遅刻について会社員のように扱われている

フリーランスか労働者かは、契約名だけで決まるものではありません。厚生労働省は、契約の形式や名称にかかわらず、実態を総合的に見て労働者に当たるか判断するとしています。

「業務委託と言われているが、実際は社員と同じように働いている」と感じる場合は、ハローワーク、労働基準監督署、フリーランス・トラブル110番などに相談することをおすすめします。

3-6. 2028年10月以降の雇用保険適用拡大で変わるポイント

2028年10月1日から、雇用保険の適用対象が拡大される予定です。具体的には、被保険者の要件のうち、週所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変更されます。

これにより、短時間で働くパート・アルバイトなど、これまで雇用保険に入れなかった一部の労働者が対象になる可能性があります。

ただし、この改正は「雇用されている労働者」の対象拡大です。業務委託や請負で働く純粋なフリーランスが、2028年10月以降に自動的に雇用保険へ加入できるようになるわけではありません。

副業フリーランスとして短時間勤務をしている人にとっては影響が大きい可能性があります。現在は週20時間未満で雇用保険に入っていない人でも、2028年10月以降は勤務先での加入対象になるかもしれないため、制度改正が近づいたら勤務先に確認しましょう。

4. フリーランスになる前に失業保険を受け取れるケース

4-1. 会社を退職してから開業する場合の基本的な考え方

会社を退職してフリーランスになる場合、退職後すぐに失業保険を受け取れるとは限りません。

失業保険、つまり雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があるにもかかわらず職業に就けない状態の人に支給されるものです。そのため、退職後すぐに開業し、フリーランスとして事業を始めている場合は、「失業状態」と認められない可能性があります。

一方で、退職後にいったん再就職も視野に入れて求職活動をしており、まだ事業を開始していない、または本格的に事業に専念していない場合は、状況によって基本手当の対象になることがあります。

判断は個別事情によるため、「退職後に開業予定だが、失業保険を受けられるか」は必ずハローワークに相談しましょう。

4-2. 求職活動中で「失業状態」と認められる条件

基本手当を受けるには、単に仕事をしていないだけでは不十分です。

ハローワークで求職の申し込みを行い、働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしていることが必要です。ハローワークでは、原則として4週間に1回、失業の認定を受け、求職活動の状況などを申告します。

フリーランスとして独立する予定がある人でも、「条件に合う会社があれば就職したい」「再就職活動をしながら将来の独立も検討している」という状態であれば、失業状態と認められる余地があります。

一方、すでに事業に専念している、開業準備に多くの時間を使っていて就職する意思がない、受注活動を本格化しているといった場合は、失業状態とは判断されにくくなります。

4-3. 開業届を出すタイミングと失業保険への影響

開業届を出したからといって、必ずその日から失業保険が受け取れなくなると単純に決まるわけではありません。しかし、開業届は「事業を開始した」ことを示す重要な資料のひとつです。

ハローワークでは、開業届の提出日だけでなく、実際に事業を始めた時期、収入の有無、作業時間、受注状況、求職活動の状況などを総合的に見て判断します。

注意したいのは、失業認定の際に、開業準備や業務の実施、収入の発生を隠すことです。事実と異なる申告をすると、不正受給と判断されるおそれがあります。

フリーランスとして開業する予定がある場合は、開業届を出す前にハローワークへ相談し、「いつから事業開始と見なされるのか」「失業認定にどう影響するのか」を確認しておきましょう。

4-4. 起業準備中に失業保険を受け取れるケース・受け取れないケース

起業準備中でも、失業保険を受け取れる可能性があるケースと、受け取れない可能性が高いケースがあります。

受け取れる可能性があるのは、再就職の意思があり、求職活動を継続していて、起業準備が補助的な範囲にとどまっている場合です。たとえば、求人に応募しながら、将来に向けて事業アイデアを整理している程度であれば、失業状態と認められる可能性があります。

一方、受け取れない可能性が高いのは、すでに営業活動をしている、案件を受注している、Webサイトを公開して集客している、事業に専念していて就職する意思がないと見られる場合です。

また、離職後に事業を開始した人や、事業に専念し始めた人、事業の準備に専念し始めた人については、一定条件のもとで雇用保険の受給期間に算入しない特例があります。厚生労働省は、離職後に事業を開始した場合などに、本来の受給期間1年間に最大3年間、算入しない期間を申請できる特例を設けています。

4-5. 再就職手当を活用して独立する方法

退職後にフリーランスとして独立する場合、基本手当を最後までもらうのではなく、再就職手当を活用できるケースがあります。

再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、早期に安定した職業に就いた場合などに支給される手当です。一定の条件を満たせば、就職だけでなく事業を開始した場合も対象になることがあります。ハローワークの案内でも、受給手続き後の7日間の待期期間満了後に就職または事業を開始したことなどが要件として示されています。

ただし、再就職手当には、支給残日数、待期期間、給付制限期間中の扱い、事業の継続性など複数の要件があります。独立予定の人は、開業前にハローワークで「再就職手当の対象になるか」を確認してから動くことが大切です。

4-6. 判断に迷う場合はハローワークに事前相談する

失業保険とフリーランス開業の関係は、非常に判断が難しい分野です。

同じ「起業準備中」でも、求職活動をしているのか、事業に専念しているのか、収入があるのか、開業届を出しているのかによって扱いが変わります。

自己判断で進めると、受け取れるはずの給付を逃したり、反対に不正受給と見なされたりするリスクがあります。退職後にフリーランスになる予定がある人は、退職前または受給手続き前にハローワークへ相談し、開業届、事業開始日、求職活動、再就職手当の条件を確認しておきましょう。

5. フリーランスの失業保険代わりになる公的制度

5-1. 小規模企業共済|廃業・退職金代わりの積立制度

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主が廃業や退職に備えるための代表的な制度です。

中小企業庁は、小規模企業共済について、小規模企業の個人事業主や会社等の役員が、事業をやめたり退職したりした場合の生活の安定や事業再建のために資金を準備する制度であり、いわば「経営者の退職金制度」と説明しています。

フリーランスにとって、会社員の退職金や失業保険のような役割を一部補える制度です。毎月掛金を積み立て、廃業時などに共済金を受け取れます。掛金は所得控除の対象になるため、節税効果も期待できます。

ただし、短期で解約すると元本割れする可能性があります。失業保険のように「仕事がなくなった翌月から給付される制度」ではなく、廃業や老後に備える長期的な積立制度として考えましょう。

5-2. 国民年金基金・iDeCo|老後資金を自分で備える制度

フリーランスは会社員と違い、厚生年金に加入しない働き方が中心です。そのため、老後資金は自分で上乗せして準備する必要があります。

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者が、公的年金に上乗せできる制度です。全国国民年金基金も、自営業やフリーランスのために年金額を増やせる制度と説明しています。

iDeCoは、公的年金とは別に給付を受けられる私的年金制度です。厚生労働省は、iDeCoについて、加入の申し込み、掛金の拠出、運用を自分で行い、掛金と運用益をもとに給付を受け取る制度と説明しています。

国民年金基金やiDeCoは、失業時の生活費を直接補う制度ではありません。しかし、フリーランスに不足しがちな老後保障を補ううえで重要です。

5-3. 労災保険の特別加入|業務中のけがや病気に備える制度

フリーランスは、原則として労災保険の対象外です。しかし、一定の条件を満たす場合は、労災保険に特別加入できる場合があります。

厚生労働省は、令和6年11月1日から「フリーランス」にも労災保険の特別加入の対象を拡大しています。

労災保険の特別加入は、業務中や通勤中のけが、病気、障害、死亡などに備える制度です。たとえば、配送、建設、IT、クリエイティブ、営業代行など、働き方によっては業務中の事故や健康リスクがあります。

失業保険とは目的が異なりますが、「働けなくなったときの収入減」に備えるという意味では重要な制度です。特に、体を使う仕事や現場作業があるフリーランスは、加入を検討する価値があります。

5-4. 求職者支援制度|再就職・スキルアップを支援する制度

求職者支援制度は、雇用保険を受給できない人が、再就職や転職、スキルアップを目指すときに使える制度です。

厚生労働省は、求職者支援制度について、月10万円の生活支援の給付金を受給しながら無料の職業訓練を受講でき、ハローワークが求職活動をサポートする制度と説明しています。雇用保険を受給できない離職者や、一定収入以下の在職者などが対象になります。

フリーランスを廃業して再就職を目指す場合や、収入が減って別の職種への転換を考える場合に利用できる可能性があります。給付金には収入、資産、出席率などの要件があるため、利用したい場合はハローワークで確認しましょう。

5-5. 生活福祉資金貸付制度など生活資金を支える制度

収入が大きく減り、生活費に困る場合は、生活福祉資金貸付制度などの公的な貸付制度を検討できる場合があります。

生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯などに対して、低利または無利子で資金の貸付けと必要な援助指導を行い、経済的自立や生活の安定を支援する制度です。

これは給付ではなく貸付であるため、原則として返済が必要です。失業保険の代わりに気軽に使う制度ではありませんが、急な収入減で生活が立ち行かないときの選択肢として知っておく価値があります。

相談窓口は、地域の社会福祉協議会です。税金や国民健康保険料、国民年金保険料の支払いが難しい場合は、市区町村役場で減免や猶予についても相談しましょう。

5-6. 事業開始等による雇用保険受給期間の特例

会社を退職してから事業を始める人には、「事業開始等による雇用保険受給期間の特例」も関係します。

通常、雇用保険の基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。しかし、離職後に事業を開始した人、事業に専念し始めた人、事業の準備に専念し始めた人については、一定の条件で受給期間に算入しない特例を申請できる場合があります。

これは、フリーランスとして挑戦した後、もし事業をやめて再就職活動をすることになった場合に、雇用保険の受給可能性を残すための制度です。

ただし、申請期限や条件があります。退職後に独立する予定がある人は、事業開始前にハローワークで確認しておくと安心です。

6. フリーランスが民間保険やサービスで備えられるリスク

6-1. 所得補償保険|病気やけがで働けない期間に備える

所得補償保険は、病気やけがで働けなくなったときの収入減に備える民間保険です。

フリーランスは、働けない期間がそのまま収入減につながりやすい働き方です。会社員のように有給休暇や傷病手当金が使えるとは限らないため、短期〜中期の就業不能リスクに備える手段として所得補償保険を検討できます。

選ぶときは、支払対象になる病気やけが、免責期間、支払期間、月額保険金、保険料、精神疾患の扱いなどを確認しましょう。

6-2. 就業不能保険|長期的な収入減に備える

就業不能保険は、病気やけがで長期間働けなくなった場合に備える保険です。

所得補償保険が比較的短期の収入減を想定することが多いのに対し、就業不能保険は長期療養や重い障害など、働けない期間が長引くリスクに備える目的で使われます。

フリーランスは、本人が働けなくなると売上が止まりやすいため、家賃、生活費、教育費、ローン返済など固定費が大きい人ほど検討する価値があります。

6-3. 損害賠償保険|取引先とのトラブルや納品ミスに備える

フリーランスは、仕事上のミスで取引先に損害を与えるリスクもあります。

たとえば、納品物の不備、情報漏えい、著作権侵害、システム障害、納期遅延などが原因で損害賠償を請求される可能性があります。こうしたリスクに備えるのが、フリーランス向けの損害賠償保険です。

特に、ITエンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント、マーケター、動画制作者など、成果物を納品する仕事では重要です。契約書で損害賠償責任の範囲を確認し、必要に応じて保険でカバーしましょう。

6-4. 医療保険・生命保険|家計と家族を守る

医療保険や生命保険は、病気、入院、手術、死亡などに備える保険です。

独身で生活費が少ない人と、家族を扶養している人では必要な保障額が異なります。フリーランスの場合、入院中に収入が止まる可能性があるため、医療費だけでなく生活費も含めて考えることが大切です。

生命保険は、配偶者や子どもがいる人、住宅ローンがある人、親族を経済的に支えている人ほど優先度が高くなります。一方で、必要以上に保険に入りすぎると固定費が重くなるため、貯蓄とのバランスを見て判断しましょう。

6-5. フリーランス向け団体・協会の補償サービス

フリーランス向けの団体や協会では、会員向けに賠償責任補償、所得補償、法律相談、福利厚生サービスなどを提供していることがあります。

個人で民間保険に加入するよりも、団体経由のほうが保険料や補償内容の面で使いやすい場合があります。また、契約トラブルや未払いの相談先を持てることもメリットです。

ただし、団体によって補償内容、対象職種、会費、利用条件が異なります。加入前に、自分の仕事内容で補償対象になるか、免責事項は何か、どの程度の金額まで補償されるかを確認しましょう。

6-6. 公的制度と民間保険を組み合わせる考え方

フリーランスの備えは、公的制度と民間保険を組み合わせることが基本です。

公的制度は保険料や掛金の面で有利なものが多く、まず優先して確認すべきです。小規模企業共済、国民年金基金、iDeCo、労災保険の特別加入、求職者支援制度などを把握したうえで、足りない部分を民間保険で補います。

たとえば、廃業リスクには小規模企業共済、業務中のけがには労災保険の特別加入、長期の就業不能には就業不能保険、取引先トラブルには損害賠償保険というように、リスクごとに分けて考えると整理しやすくなります。

7. フリーランスが雇用保険の代わりに今すぐ準備すべきこと

7-1. 生活費の6か月分を目安に緊急資金を確保する

フリーランスは、まず生活費の6か月分を目安に緊急資金を確保しましょう。

雇用保険に入れない以上、仕事が途切れたときに最初に頼れるのは自分の貯蓄です。家賃、食費、通信費、保険料、税金、国民健康保険料、国民年金保険料など、毎月必ず出ていくお金を把握し、最低でも数か月は生活できる資金を分けておくことが重要です。

緊急資金は、投資ではなく普通預金などすぐ引き出せる形で置いておきましょう。

7-2. 収入源を複数持ち仕事が途切れるリスクを下げる

フリーランスにとって、ひとつの取引先に依存することは大きなリスクです。

売上の大半を1社に頼っていると、その契約が終了した瞬間に収入が大きく落ちます。雇用保険のような失業時の給付がないため、収入源を複数持つことが最大の防御策になります。

既存顧客を複数持つ、継続案件と単発案件を組み合わせる、紹介経路を増やす、プラットフォーム以外の集客手段を持つ、スキルを横展開するなど、案件が途切れにくい状態を作りましょう。

7-3. 契約書・請求書・入金管理を整えて未払いに備える

フリーランスの収入リスクは、案件がなくなることだけではありません。納品したのに報酬が支払われない、支払いが遅れる、追加作業の報酬が曖昧になるといったトラブルもあります。

そのため、契約書や発注書で、報酬額、納期、支払期日、業務範囲、修正回数、損害賠償、契約解除条件を明確にしておきましょう。

請求書は期日どおりに発行し、入金予定日を管理します。入金が遅れた場合の催促フローも決めておくと、資金繰りの悪化を防ぎやすくなります。

7-4. 国民健康保険・国民年金・住民税の支払いを見積もる

会社員からフリーランスになると、税金や社会保険料の支払いタイミングが大きく変わります。

会社員時代は給与から天引きされていた健康保険料、厚生年金保険料、住民税などを、フリーランスになると自分で納める必要があります。特に独立1年目は、前年の会社員時代の所得をもとに住民税や国民健康保険料が決まるため、想定より負担が大きく感じることがあります。

毎月の生活費だけでなく、税金・保険料の支払いを見越して資金を残しておきましょう。

7-5. 廃業時・休業時に使える制度を事前に確認する

収入が減ってから制度を調べ始めると、手続きが間に合わないことがあります。

小規模企業共済は加入して積み立てていなければ使えません。労災保険の特別加入も、事故が起きてから過去にさかのぼって加入することはできません。求職者支援制度や生活福祉資金貸付制度も、利用条件や手続きに時間がかかる場合があります。

元気に働けているうちに、廃業時、休業時、病気やけがのとき、再就職を目指すときに使える制度を確認し、必要なものは早めに準備しておきましょう。

8. フリーランスと雇用保険に関するよくある質問

8-1. フリーランスは失業保険をもらいながら仕事をしてもいい?

失業保険を受給中に仕事をした場合は、必ずハローワークに申告する必要があります。

短時間の仕事、単発の業務委託、少額の収入であっても、申告せずに受給すると不正受給になるおそれがあります。働いた日や収入額によって、基本手当が減額されたり、支給されない日が出たり、就職と判断されたりする場合があります。

「少しだけだから大丈夫」と自己判断せず、受給中にフリーランス業務をする場合は事前にハローワークへ確認しましょう。

8-2. 開業届を出したら失業保険は受け取れない?

開業届を出したら必ず失業保険が受け取れない、というわけではありません。ただし、開業届は事業開始を示す重要な資料になるため、失業認定に大きく影響します。

すでに事業を開始している、営業活動をしている、案件を受注している、事業に専念している場合は、失業状態と認められにくくなります。

一方、求職活動を継続しており、事業準備が限定的な場合は、状況によって判断が分かれます。開業届を出す前にハローワークへ相談するのが安全です。

8-3. 副業でフリーランスをしていても会社の雇用保険は続く?

副業でフリーランスをしていても、本業の勤務先で雇用保険の加入要件を満たしていれば、会社の雇用保険は続くのが一般的です。

雇用保険の加入は、フリーランス副業をしているかどうかではなく、勤務先との雇用契約、週の所定労働時間、雇用見込みなどで判断されます。

ただし、副業によって勤務時間が減り、週20時間未満になるなど、勤務先での条件が変わった場合は、雇用保険の資格を失う可能性があります。勤務形態が変わる場合は、会社に確認しましょう。

8-4. フリーランスが廃業したら失業保険はもらえる?

フリーランスとして廃業しても、それだけで失業保険を受け取れるわけではありません。

失業保険は、雇用保険に加入していた人が対象です。フリーランス期間中に雇用保険に加入していなければ、廃業しても基本手当の受給資格は発生しません。

ただし、会社員を退職してからフリーランスになった人で、過去の雇用保険の受給資格や受給期間の特例が関係する場合があります。また、廃業後に再就職を目指す場合は、求職者支援制度を利用できる可能性もあります。

8-5. 業務委託でも雇用保険に入れることはある?

業務委託契約のままでは、原則として雇用保険には入れません。

ただし、契約名が業務委託でも、実態が労働者に近い場合は、雇用関係があると判断される可能性があります。勤務時間や場所を拘束されている、強い指揮命令を受けている、会社員と同じように管理されているなどの場合は、労働者性が問題になります。

自分の働き方が実質的に労働者ではないかと感じる場合は、労働基準監督署やハローワークなどに相談しましょう。

8-6. フリーランスが最低限入っておくべき保険はどれ?

フリーランスが最低限検討したいのは、国民健康保険、国民年金に加えて、仕事内容に応じた労災保険の特別加入、損害賠償保険、所得補償保険または就業不能保険です。

また、廃業や将来の退職金代わりには小規模企業共済、老後資金には国民年金基金やiDeCoも候補になります。

ただし、全員に同じ保険が必要なわけではありません。体を使う仕事か、納品責任が重い仕事か、扶養家族がいるか、貯蓄があるかによって優先順位は変わります。まずは「収入が止まるリスク」「損害賠償リスク」「老後資金リスク」の3つに分けて考えましょう。

まとめ

フリーランスは、原則として雇用保険に加入できません。雇用保険は、会社などに雇用されて働く労働者のための制度であり、業務委託・請負・個人事業主として働くフリーランスは通常対象外です。

ただし、会社員・パート・アルバイトと兼業している場合、勤務先で週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合、兼務役員として労働者性が強い場合、業務委託でも実態が労働者に近い場合などは、雇用保険の対象になる可能性があります。また、2028年10月からは雇用保険の週所定労働時間の要件が20時間以上から10時間以上へ拡大される予定ですが、これは雇用されている労働者向けの改正であり、純粋なフリーランスが自動的に加入できる制度変更ではありません。

フリーランスにとって大切なのは、「雇用保険に入れないから不安」で終わらせず、代わりの備えを作ることです。小規模企業共済、国民年金基金、iDeCo、労災保険の特別加入、求職者支援制度、生活福祉資金貸付制度、民間の所得補償保険や損害賠償保険などを組み合わせれば、リスクを減らすことはできます。

仕事が途切れたとき、病気やけがで働けないとき、廃業して再就職を考えるときに困らないよう、生活費の確保、複数の収入源づくり、契約・入金管理、公的制度の確認を早めに進めておきましょう。