フリーランスでも職業訓練は受けられる?対象者・給付金・申し込み方法をわかりやすく解説
はじめに
「フリーランスでも職業訓練を受けられるの?」「開業届を出している個人事業主は対象外?」「月10万円の職業訓練受講給付金はもらえる?」と悩む方は少なくありません。
結論からいうと、フリーランスでも条件を満たせば職業訓練を受けられる可能性があります。ただし、職業訓練は原則として「就職・転職を目指す求職者」を支援する制度です。そのため、単にフリーランスとして売上を伸ばしたい、独立を続けるためにスキルアップしたい、という目的だけでは対象外になりやすい点に注意が必要です。
この記事では、フリーランスが職業訓練を受けられる条件、利用しやすい訓練の種類、給付金の要件、申し込み方法、注意点までわかりやすく解説します。
1. フリーランスでも職業訓練は受けられる?まず結論
1-1. フリーランスでも条件を満たせば職業訓練を受講できる
フリーランスでも、ハローワークで求職申込みを行い、就職・転職に向けて職業訓練が必要だと認められれば、職業訓練を受講できる可能性があります。
厚生労働省は、求職者支援制度の対象例として「フリーランス・自営業を廃業した方」や、給付金を受けずに無料訓練のみ受講する例として「フリーランスで働きながら、正社員への転職を目指す方など」を挙げています。つまり、フリーランスという働き方だけで一律に対象外になるわけではありません。
ただし、受講できるかどうかは、現在の事業状況、収入、就職意思、訓練の必要性、出席できるかなどを踏まえて、ハローワークで個別に判断されます。
1-2. 受講可否のポイントは「求職者として就職・転職する意思」があるか
職業訓練は、仕事に就くために必要なスキルや知識を身につける公的制度です。厚生労働省のハロートレーニングは、ハローワークの求職者を対象に、職業相談などを通じて受講が必要と認められた場合に実施されます。
そのため、フリーランスが職業訓練を希望する場合は、「現在の仕事を続けながらスキルアップしたい」だけでなく、「会社員・正社員・契約社員などとして就職または転職する意思があるか」が重要です。
たとえば、Web制作のフリーランスが「制作会社や事業会社のWeb担当者として就職したい」、ライターが「企業のマーケティング職へ転職したい」、個人事業主が「事務職や経理職として再就職したい」といった目的であれば、職業訓練の必要性を説明しやすくなります。
1-3. 開業中・休業中・廃業後で判断が変わるケース
フリーランスの職業訓練では、開業中・休業中・廃業後のどの状態にあるかで判断が変わることがあります。
開業中でも、収入が一定以下で、就職・転職を目指しており、訓練に出席できる場合は相談できる可能性があります。一方で、事業が安定して継続している、訓練期間中も案件対応が中心になる、就職活動の意思が弱いと判断される場合は、受講が難しくなることがあります。
休業中の場合は、現在の事業活動がどの程度止まっているのか、収入があるのか、今後就職を目指すのかを整理して説明することが大切です。廃業後であれば、「フリーランス・自営業を廃業した方」として求職者支援制度の対象に入りやすいケースがあります。
1-4. 「スキルアップ目的だけ」「独立継続目的だけ」では対象外になりやすい理由
職業訓練は、趣味や自己啓発のための講座ではありません。目的は、就職・再就職・転職に必要な能力を身につけることです。
そのため、「フリーランスとして単価を上げたい」「個人事業の売上を増やしたい」「独立を続けるために新しいスキルを学びたい」という目的だけでは、職業訓練の趣旨と合わないと判断される可能性があります。
もちろん、学んだスキルが将来の仕事に役立つこと自体は問題ありません。しかし、申し込み時には「どの職種に就職したいのか」「その職種に就くために、なぜこの訓練が必要なのか」を具体的に説明できることが重要です。
2. フリーランスが利用できる職業訓練の種類
2-1. 公的職業訓練(ハロートレーニング)とは
公的職業訓練は「ハロートレーニング」とも呼ばれ、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための制度です。受講料は無料のものが多く、テキスト代や資格試験の受験料などは自己負担となるのが一般的です。
ハロートレーニングには、大きく分けて「求職者支援訓練」と「公共職業訓練」があります。フリーランスの場合は、雇用保険を受給できるかどうか、現在の収入、就職意思などによって利用しやすい制度が変わります。
2-2. 求職者支援訓練:雇用保険を受給できない人向け
求職者支援訓練は、主に雇用保険を受給できない求職者を対象とした職業訓練です。厚生労働省によると、求職者支援制度は、再就職・転職・スキルアップを目指す人が、無料の職業訓練を受けながら、要件を満たす場合に月10万円の生活支援の給付金を受けられる制度です。
フリーランスは通常、雇用保険に加入していないことが多いため、求職者支援訓練が選択肢になりやすいです。特に、廃業後に再就職を目指す人、収入が少ない状態で正社員への転職を目指す人は、まずハローワークで相談するとよいでしょう。
2-3. 公共職業訓練:主に雇用保険受給者向け
公共職業訓練は、主に雇用保険を受給している求職者を対象に、就職に必要なスキルや知識を身につけるための訓練です。受講料は無料で、テキスト代などは自己負担です。訓練期間はおおむね3か月から2年とされています。
フリーランスが公共職業訓練を利用できるかは、雇用保険の受給資格の有無や離職前の働き方によって変わります。会社員から独立した直後の人、過去に雇用保険に加入していた人は、ハローワークで雇用保険の受給資格も含めて確認しましょう。
2-4. フリーランスが選びやすい訓練コースの例
フリーランスが職業訓練を選ぶ場合、これまでの経験と今後の就職先をつなげやすいコースを選ぶのがおすすめです。
たとえば、Web制作経験がある人ならWebデザインやWebマーケティング、ライター経験がある人なら広報・マーケティング・事務系、経理や請求業務に慣れている人なら簿記・経理事務、IT系の案件経験がある人ならプログラミングやネットワーク系の訓練が候補になります。
求職者支援訓練の主なコース例としては、ビジネスパソコン、オフィスワーク、Webアプリ開発、Java、OA経理事務、医療・介護事務、介護職員初任者研修、Webデザイナー、DTP、3次元CADなどが挙げられています。
2-5. オンライン・夜間・短期間コースはある?
職業訓練には、地域や時期によってオンライン対応、eラーニング、短期間、夜間、託児サービス付きのコースが用意されている場合があります。ただし、すべての地域で希望どおりのコースがあるとは限りません。
求職者支援訓練は2か月から6か月程度のコースが多く、公共職業訓練にはより長期のコースもあります。厚生労働省は、全国の訓練コースを都道府県、分野、募集期間、訓練期間ごとに検索できると案内しています。
フリーランスとして案件を抱えている人は、授業時間、出席要件、課題提出、ハローワークへの来所日などを確認し、仕事との両立が現実的かを事前に見極めましょう。
3. フリーランスが職業訓練の対象になる条件
3-1. ハローワークで求職申込みをしていること
職業訓練を受けるには、まずハローワークで求職申込みを行う必要があります。求職者支援制度の訓練受講要件にも、「ハローワークに求職の申込みをしていること」が含まれています。
フリーランスの場合でも、求人検索だけでなく、職業相談を通じて「どのような職種を目指すのか」「なぜ訓練が必要なのか」を整理していきます。単に講座だけを申し込むのではなく、就職支援の一環として訓練を受けるイメージです。
3-2. 就職・転職に必要な訓練だと認められること
職業訓練は、希望すれば誰でも好きな講座を受けられる制度ではありません。ハローワークで職業相談を行い、再就職のために訓練が必要だと判断された場合に申し込みへ進みます。
愛知労働局の求職者支援訓練の案内でも、ハローワークで職業相談を受け、適切なコースが選定された場合に受講申込書などの必要書類が渡されるとされています。また、再就職のために訓練が必要ではないと判断された場合は、希望した訓練に申し込めないことがあります。
そのため、「なんとなくWebデザインを学びたい」ではなく、「未経験からWeb制作会社のアシスタント職を目指すため、HTML、CSS、Photoshop、ポートフォリオ制作を学びたい」のように、就職先と訓練内容を結びつけて説明することが大切です。
3-3. 訓練を受講できる時間と出席要件を満たせること
職業訓練では出席が重視されます。職業訓練受講給付金を受ける場合、原則としてすべての訓練実施日に出席することが必要です。やむを得ない理由で欠席する場合でも、一定の条件のもとで8割以上の出席が求められます。
フリーランスは、急な納品、打ち合わせ、修正対応などが発生しやすいため、訓練日程と案件対応が重ならないかを確認しておきましょう。出席要件を満たせないと、訓練継続や給付金の受給に影響する可能性があります。
3-4. 現在の収入や事業状況が確認される
フリーランスが職業訓練や給付金を希望する場合、現在の収入や事業状況を確認されることがあります。特に職業訓練受講給付金では、本人収入、世帯収入、金融資産などの要件があるため、事業収入やその他収入の申告が必要です。
厚生労働省は、給付金の収入について、給与だけでなく、事業収入、役員報酬、不動産賃貸収入、年金、仕送り、養育費など幅広い収入を含むと説明しています。
3-5. 開業届を出している個人事業主でも相談できるケース
開業届を出している個人事業主でも、すぐに諦める必要はありません。重要なのは、現在の事業実態、収入、就職意思、訓練の必要性です。
たとえば、開業届は出しているが収入がほとんどない、案件が終了して今後は会社員として再就職したい、廃業または休業を検討している、という場合はハローワークで相談する価値があります。
ただし、開業届の有無だけで判断されるわけではなく、実際に事業を継続しているか、求職者として就職活動を行う意思があるか、訓練期間中に就職支援を受けられるかが確認されます。
3-6. 受講が難しい・対象外になりやすいケース
フリーランスが職業訓練の対象外になりやすいのは、次のようなケースです。
事業収入が十分あり、就職・転職の必要性が低い場合。訓練の目的が、独立継続や事業拡大だけの場合。訓練時間中も案件対応を優先する予定の場合。ハローワークの職業相談や就職活動に応じる意思がない場合。出席要件を満たせない場合。収入や事業状況を正確に申告できない場合。
判断に迷う場合は、自己判断で諦めず、現在の働き方や収入資料を整理してハローワークに相談しましょう。
4. フリーランスは職業訓練受講給付金をもらえる?
4-1. 職業訓練受講給付金とは
職業訓練受講給付金とは、雇用保険を受給できない求職者などが、一定の要件を満たして職業訓練を受講する場合に支給される生活支援の給付金です。
支給内容は、職業訓練受講手当、通所手当、寄宿手当で構成されます。職業訓練受講手当は月10万円で、要件を満たせば訓練を受講している期間について1か月ごとに支給されます。
4-2. 月10万円の給付金を受け取れる主な条件
職業訓練受講給付金を受けるには、複数の要件をすべて満たす必要があります。主な要件は、本人収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下、現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していないこと、すべての訓練実施日に出席すること、世帯内で同時に給付金を受給して訓練を受けている人がいないこと、過去の不正受給がないこと、過去6年以内に職業訓練受講給付金を受けていないことです。
要件は支給単位期間ごとに確認されます。そのため、申し込み時に条件を満たしていても、訓練中の収入や世帯状況が変わった場合は、速やかにハローワークへ相談する必要があります。
4-3. 本人収入・世帯収入・資産要件の考え方
給付金の判定では、本人だけでなく世帯全体の収入や資産も確認されます。ここでいう世帯には、本人のほか、同居または生計を一つにする別居の配偶者、子、父母が含まれます。
たとえば、本人のフリーランス収入が少なくても、配偶者の収入が高い場合や、親と生計を一つにしている場合は、世帯収入要件を満たさない可能性があります。また、預貯金などの金融資産が世帯全体で300万円を超える場合も、給付金の対象外になる可能性があります。
4-4. フリーランス収入がある場合の注意点
フリーランス収入がある場合は、売上、経費、入金日、契約内容を整理しておきましょう。給付金の収入要件では、給与だけでなく事業収入も確認対象になります。
特に注意したいのは、「まだ請求していない」「入金が翌月になる」「単発だから関係ない」と自己判断しないことです。訓練中に案件収入が発生する場合、どのタイミングでどのように申告するかをハローワークに確認しましょう。
申告漏れや虚偽申告は、不支給や返還、不正受給の問題につながるおそれがあります。フリーランスは収入の発生タイミングが複雑になりやすいため、帳簿や請求書、通帳の入金履歴を整理しておくことが重要です。
4-5. 給付金なしでも無料で訓練を受けられる場合がある
職業訓練受講給付金の要件を満たさない場合でも、無料の職業訓練だけを受講できる場合があります。厚生労働省も、給付金の支給要件を満たさない場合であっても、無料の職業訓練を受講できると案内しています。
たとえば、世帯収入が基準を超えていて給付金は受けられないものの、正社員への転職を目指して訓練を受けたいフリーランスは、給付金なしの受講を検討できます。
「給付金がもらえないなら職業訓練は無理」と考えるのではなく、受講料無料の訓練を利用してキャリアチェンジにつなげる方法もあります。
4-6. 交通費・寄宿手当など給付金以外の支援
職業訓練受講給付金には、月10万円の職業訓練受講手当のほか、通所手当や寄宿手当があります。通所手当は訓練施設へ通所する場合の定期乗車券などの額で、月上限42,500円です。寄宿手当は月10,700円で、訓練施設へ通所するために家族と別居して寄宿する必要があるとハローワークが認める場合に支給されます。
また、収入要件の一部を満たさない場合でも、本人収入が月12万円以下、世帯収入が月34万円以下で、その他の要件を満たす場合は、通所手当のみ受給できる可能性があります。
5. フリーランスが職業訓練に申し込む流れ
5-1. 住所地を管轄するハローワークに相談する
フリーランスが職業訓練に申し込む最初のステップは、住所地を管轄するハローワークへの相談です。求職者支援訓練の受講申込みや給付金の手続きは、原則として住所を管轄するハローワークで行います。
相談時には、「フリーランスだが、就職・転職を考えている」「職業訓練を受けたい」と伝えましょう。現在の仕事、収入、希望職種、受けたい訓練の方向性を簡単にまとめておくとスムーズです。
5-2. 求職申込みと職業相談を行う
次に、ハローワークで求職申込みを行い、職業相談を受けます。ここでは、希望する働き方、職歴、スキル、求人状況、訓練の必要性などを確認します。
フリーランス経験がある人は、職務経歴としてアピールできる内容を整理しておきましょう。制作実績、担当業務、使用ツール、取引先業種、売上管理、顧客対応などは、就職活動で評価される可能性があります。
5-3. 希望する訓練コースを探す
訓練コースは、ハローワークインターネットサービスや各都道府県労働局の募集案内で検索できます。全国の訓練コースは、都道府県、分野、募集期間、訓練期間などで探せます。
フリーランスの場合、これまでの経験を活かすのか、未経験分野へ転職するのかで選ぶコースが変わります。応募したい求人を先に確認し、その求人で求められるスキルと訓練内容が合っているかを見比べると失敗しにくくなります。
5-4. 受講申込書・必要書類を準備する
ハローワークで適切なコースが選定されると、受講申込書などの必要書類を受け取ります。求職者支援訓練の場合、募集期間内にハローワークで受講申込手続きを行い、受け付けられた受講申込書を訓練実施機関へ提出します。
給付金を希望する場合は、収入や世帯状況を確認できる書類なども必要になります。フリーランスは、確定申告書、帳簿、請求書、通帳、開業届や廃業届の控えなどを求められる可能性があるため、早めに準備しましょう。
5-5. 訓練校の選考を受ける
職業訓練は、申し込めば必ず受講できるわけではありません。訓練実施機関による選考があり、面接や筆記試験などが行われます。選考内容はコースによって異なります。
面接では、志望動機、就職意思、訓練への参加姿勢、修了後の目標などを聞かれることがあります。フリーランスの場合は、「なぜ会社員への転職を考えているのか」「なぜこの訓練が必要なのか」を前向きに説明できるようにしておきましょう。
5-6. 合格後に就職支援計画を作成する
選考に合格したら、ハローワークで就職支援計画書の交付を受けます。求職者支援訓練では、合格通知を受けた人がハローワークに選考結果通知書を持参し、就職支援計画書の交付を受ける流れです。
就職支援計画は、訓練受講中から修了後までの就職活動の軸になります。フリーランスから会社員へ移る場合は、希望職種、応募時期、職務経歴書の作成、ポートフォリオの整理なども計画に入れておくとよいでしょう。
5-7. 訓練開始後は出席・職業相談・給付金申請を継続する
訓練が始まったら、授業に出席し、課題や実習に取り組みながら就職活動を進めます。求職者支援制度では、訓練期間中および訓練修了後3か月間、就職が決まっていない場合は原則として月1回、指定来所日にハローワークで職業相談を行います。
給付金を受ける場合は、支給単位期間ごとにハローワークへ来所し、職業相談を受け、給付金の申請を行う必要があります。
6. 申し込み前に準備すべき書類と確認事項
6-1. 本人確認書類・マイナンバー・預金通帳
職業訓練や給付金の手続きでは、本人確認書類、マイナンバー確認書類、給付金の振込先となる預金通帳またはキャッシュカードなどが必要になることがあります。
必要書類は制度や地域、給付金の有無によって異なるため、ハローワークで最新の案内を確認しましょう。書類不足があると申し込みや給付金審査が遅れることがあります。
6-2. 収入や世帯状況を確認できる書類
給付金を希望する場合、本人収入と世帯収入を確認できる書類が必要です。給与明細、源泉徴収票、年金額がわかる書類、仕送りや養育費の状況がわかる資料などが該当する場合があります。
フリーランスの場合は、売上や経費がわかる帳簿、請求書、入金履歴、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書などを用意しておくと安心です。
6-3. 開業届・確定申告書・帳簿が必要になる場合
開業届を出している個人事業主は、開業届の控えや確定申告書の控え、帳簿などで事業状況を確認される場合があります。すでに廃業している場合は、廃業届の控えがあると説明しやすくなります。
特に、フリーランス収入がある状態で給付金を申請する場合は、「収入があるかないか」だけでなく、「いつ発生した収入か」「継続的な収入か」「訓練期間中も案件を受ける予定があるか」を整理しておきましょう。
6-4. 現在受けている仕事や契約の整理
申し込み前に、現在受けている案件や契約を一覧にしておくと便利です。クライアント名、契約期間、業務内容、納期、報酬額、入金予定日、継続可能性を整理しましょう。
訓練中に仕事を続ける場合、出席や就職活動に支障がないかを確認されることがあります。案件対応が多すぎると、「求職者として訓練を受ける状態ではない」と見られる可能性もあるため、仕事量の調整が必要です。
6-5. 訓練期間中に案件対応ができるか確認する
職業訓練は、平日の日中に行われるコースが多くあります。授業、実習、課題、就職支援、ハローワークへの来所を考えると、訓練期間中にフリーランス案件をこれまでどおりこなすのは難しい場合があります。
事前に、既存案件を減らす、納期を調整する、訓練時間外だけ対応する、継続案件を一時停止するなどの対応を検討しましょう。無理に仕事を詰め込むと、出席要件を満たせなかったり、就職活動が後回しになったりするおそれがあります。
6-6. ハローワークで聞くべき質問リスト
ハローワークで相談する際は、次の点を確認しておくと安心です。
自分の事業状況で職業訓練に申し込めるか。開業届を出していても対象になる可能性があるか。給付金の対象になるか。フリーランス収入はどのように申告するか。訓練中に単発案件を受けてもよいか。希望コースは就職希望職種と合っているか。出席要件や欠席時の扱いはどうなるか。必要書類は何か。申し込み締切までに何回来所が必要か。
7. フリーランスが職業訓練を受けるメリット・注意点
7-1. 無料で実務スキルや資格取得を目指せる
職業訓練の大きなメリットは、受講料無料で実務スキルを学べることです。テキスト代や資格試験の受験料は自己負担になることが多いものの、民間スクールに比べて費用負担を抑えやすいです。
Webデザイン、プログラミング、経理、医療事務、介護など、就職につながりやすい分野を体系的に学べるため、フリーランスから会社員へキャリアチェンジしたい人に向いています。
7-2. 再就職・転職・キャリアチェンジに活かせる
フリーランス経験は、自己管理力、顧客対応力、納期管理、営業力、問題解決力などの強みになります。一方で、会社員としての実務経験や資格が不足していると、応募できる求人が限られることがあります。
職業訓練でスキルや資格を補うことで、未経験職種への応募や、これまでの経験を活かした転職がしやすくなります。
7-3. ハローワークの就職支援を受けられる
職業訓練では、訓練校だけでなくハローワークからも就職支援を受けられます。厚生労働省は、訓練開始前から訓練期間中、訓練終了後まで、ハローワークが求職活動をサポートすると案内しています。
求人紹介、職業相談、応募書類の相談、面接対策などを受けられるため、会社員への転職活動に不慣れなフリーランスにとって心強い支援になります。
7-4. 訓練中は出席管理が厳しい
職業訓練は出席管理が厳しく、遅刻・早退・欠席が多いと修了や給付金に影響する可能性があります。フリーランスは、急なクライアント対応や納品トラブルが起きやすいため、訓練を優先できる体制を整える必要があります。
「仕事が入ったから休む」という感覚では続けにくい制度です。受講するなら、訓練期間は就職活動と学習を最優先にする意識が必要です。
7-5. 仕事・収入・給付金の申告漏れに注意
フリーランスが特に注意すべきなのが、収入の申告漏れです。職業訓練受講給付金では、事業収入を含む幅広い収入が確認対象になります。
訓練中に案件収入が発生した場合、少額でも自己判断せず、ハローワークに申告方法を確認しましょう。正確に申告していれば問題にならないケースでも、隠したり、誤って申告しなかったりするとトラブルにつながります。
7-6. フリーランス継続と就職活動の優先順位を整理する
職業訓練を受ける前に、「フリーランスを続けたいのか」「会社員として就職したいのか」「両方を比較している段階なのか」を整理しましょう。
職業訓練は、就職・転職を目指す人のための制度です。フリーランス継続が最優先で、就職活動をするつもりがない場合は、民間スクール、オンライン講座、自治体の創業支援、商工会議所のセミナーなど、別の学び方を検討したほうがよいでしょう。
8. フリーランスにおすすめの職業訓練コース
8-1. Webデザイン・Web制作
Webデザイン・Web制作は、フリーランス経験と相性のよい分野です。HTML、CSS、JavaScript、WordPress、Photoshop、Illustrator、Figma、ポートフォリオ制作などを学べるコースがあります。
すでに独学や案件経験がある人でも、体系的に学び直すことで、制作会社、広告代理店、事業会社のWeb担当、EC運営担当などへの転職に活かせます。
8-2. プログラミング・ITエンジニア
プログラミングやITエンジニア系の訓練は、将来性のある分野を目指したいフリーランスに向いています。Java、Python、Webアプリ開発、ネットワーク、クラウド、データベースなどのコースが見つかる場合があります。
未経験から目指す場合は、訓練だけでなく、ポートフォリオ作成、基本的なIT資格、求人研究も並行して行うことが大切です。
8-3. Webマーケティング・SNS運用
ライター、デザイナー、動画編集者、EC運営者などのフリーランス経験がある人は、WebマーケティングやSNS運用の訓練と相性がよいです。
SEO、広告運用、アクセス解析、SNS企画、コンテンツ制作、マーケティング基礎を学ぶことで、企業のマーケティング職、広報職、EC担当、SNS担当などを目指しやすくなります。
8-4. 経理・事務・簿記
フリーランスとして請求書作成、経費管理、確定申告を経験してきた人は、経理・事務・簿記系の訓練も選択肢になります。
日商簿記、会計ソフト、Excel、Word、ビジネスマナー、給与計算、社会保険事務などを学ぶことで、一般事務、経理補助、営業事務、総務事務などへの応募に役立ちます。
8-5. 介護・医療事務など未経験から就職しやすい分野
未経験から安定した就職を目指すなら、介護、医療事務、調剤事務なども候補です。求職者支援訓練の主なコース例にも、医療・介護事務科、調剤事務科、介護職員初任者研修科、介護職員実務者研修科などが挙げられています。
フリーランスの仕事からまったく別分野へ転職したい人、地域で求人が多い職種を目指したい人は検討してみましょう。
8-6. コース選びで失敗しないポイント
コース選びで大切なのは、「学びたいこと」よりも「就職したい職種」から逆算することです。興味だけで選ぶと、訓練修了後に応募できる求人が少ない、年齢や経験条件が合わない、希望年収と求人条件が合わないといったミスマッチが起こります。
事前に求人票を確認し、必要スキル、資格、実務経験、勤務地、雇用形態、給与を調べましょう。そのうえで、希望職種に近づくために必要な訓練を選ぶのが失敗しないポイントです。
9. 職業訓練以外にフリーランスが使える学び直し支援
9-1. 教育訓練給付制度との違い
教育訓練給付制度は、一定の条件を満たす雇用保険の被保険者または被保険者であった人が、厚生労働大臣指定の講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。
一般教育訓練給付金は教育訓練経費の20%、上限10万円。特定一般教育訓練給付金は40%、上限20万円で、条件を満たすと50%、上限25万円。専門実践教育訓練給付金は50%、年間上限40万円で、資格取得や就職、賃金上昇などの条件を満たすと最大80%、年間上限64万円まで支給される場合があります。
職業訓練は「ハローワークのあっせんを受けて無料訓練を受ける制度」、教育訓練給付は「指定講座の受講費用の一部を後から受け取る制度」と考えると違いがわかりやすいです。
9-2. リスキリング支援制度との違い
リスキリング支援には、国や自治体、民間スクールが関わるさまざまな制度があります。たとえば、厚生労働省のリ・スキリング等教育訓練支援融資は、スキルアップ等を目指す人に対し、教育訓練費用と教育訓練期間中の生活費を融資する制度です。一定要件を満たすと債務残高の一部返済免除を受けられる場合があります。
ただし、融資は給付金ではなく返済が必要です。利用する場合は、利息、返済計画、返済免除の条件を必ず確認しましょう。
9-3. 自治体の助成金・補助金を確認する
自治体によっては、就職支援、デジタル人材育成、女性の再就職支援、ひとり親支援、創業支援などの講座や補助金を用意している場合があります。
フリーランスとして事業継続を目指すなら、職業訓練よりも自治体の創業支援、商工会議所のセミナー、小規模事業者向け補助金、IT導入支援などのほうが合う場合もあります。
9-4. 民間スクールを選ぶ場合の注意点
民間スクールは、職業訓練より柔軟に学べる一方で、受講料が高額になることがあります。特にWebデザイン、プログラミング、マーケティング系のスクールでは、数十万円以上かかることも珍しくありません。
申し込む前に、カリキュラム、講師の実績、転職支援の内容、返金条件、卒業生の就職実績、ポートフォリオ支援、質問対応の範囲を確認しましょう。「必ず稼げる」「未経験からすぐ高収入」など過度な広告には注意が必要です。
9-5. 自分に合う支援制度の選び方
就職・転職を目指すなら、まずハローワークで職業訓練を相談するのがおすすめです。雇用保険に加入していた経験があり、指定講座を受けたいなら教育訓練給付制度も検討できます。
フリーランスとして事業を続けたいなら、職業訓練よりも民間講座、自治体支援、商工会議所、創業支援、補助金制度のほうが合う可能性があります。目的が「就職」なのか「独立継続」なのかを明確にして選びましょう。
10. フリーランスの職業訓練に関するよくある質問
10-1. 開業届を出していても職業訓練は受けられる?
開業届を出していても、必ず対象外になるわけではありません。ただし、実際に事業を継続しているか、収入があるか、就職・転職を目指しているか、訓練に出席できるかによって判断されます。
開業中でも、正社員への転職を目指している場合は相談できる可能性があります。一方で、独立継続や事業拡大だけが目的の場合は、職業訓練の趣旨と合わないと判断されやすいです。
10-2. 仕事を続けながら職業訓練に通える?
仕事を続けながらでも、訓練時間や出席要件を満たせる場合は相談できます。厚生労働省は、給付金を受けずに無料訓練のみ受講する在職者の例として、フリーランスで働きながら正社員への転職を目指す人を挙げています。
ただし、訓練中は授業や就職活動が中心になります。案件対応が多い場合は、受講前に仕事量を調整しましょう。
10-3. 在宅ワークをしながら給付金はもらえる?
在宅ワークによる収入がある場合でも、本人収入や世帯収入などの要件を満たせば、給付金の対象になる可能性はあります。ただし、事業収入も収入として確認されます。
少額の在宅ワークであっても、申告が必要かどうかを自己判断せず、ハローワークに確認してください。
10-4. 職業訓練後に必ず就職しないといけない?
職業訓練は就職を目的とする制度のため、訓練後は就職活動を行うことが前提です。ただし、訓練を受けたからといって、必ず特定の会社に就職しなければならないわけではありません。
求職者支援制度では、訓練修了後も一定期間、ハローワークで就職支援が継続されます。
10-5. フリーランスとして独立するための訓練は受けられる?
職業訓練は、原則として就職・再就職・転職に向けた制度です。そのため、フリーランスとして独立することだけを目的にした受講は認められにくいです。
独立や事業拡大を目的に学びたい場合は、自治体の創業支援、商工会議所、民間スクール、オンライン講座、補助金制度などを検討しましょう。
10-6. 過去に職業訓練を受けた人でも再受講できる?
過去に職業訓練を受けた人でも、一定の条件を満たせば再受講できる可能性があります。ただし、前回受講からの期間、受講した訓練内容、就職状況、再度訓練が必要な理由などが確認されます。
職業訓練受講給付金については、過去6年以内に職業訓練受講給付金を受けていないことが要件に含まれています。
まとめ
フリーランスでも、条件を満たせば職業訓練を受けられる可能性があります。ポイントは、フリーランスかどうかではなく、「求職者として就職・転職する意思があるか」「就職に必要な訓練だと認められるか」「収入や事業状況、出席要件を満たせるか」です。
特に、雇用保険を受給できないフリーランスや自営業者は、求職者支援訓練が選択肢になります。要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金を受けられる場合もありますが、本人収入、世帯収入、資産、出席状況などの条件があるため、事前確認が欠かせません。
一方で、独立継続や事業拡大だけを目的にする場合は、職業訓練ではなく、民間スクールや自治体の支援制度のほうが合うこともあります。
まずは、現在の収入、開業状況、希望職種、受けたい訓練、訓練中の働き方を整理し、住所地を管轄するハローワークへ相談してみましょう。

