フリーランスの確定申告完全ガイド|いくらから必要?やり方・経費・節税まで初心者向けに解説

はじめに

フリーランスとして働き始めると、多くの人が最初につまずくのが「確定申告」です。会社員であれば、勤務先が年末調整によって所得税の精算をしてくれますが、フリーランスは原則として自分で売上・経費・所得控除を整理し、税金を計算して申告しなければなりません。

特に初心者が迷いやすいのは、「フリーランスはいくらから確定申告が必要なのか」「青色申告と白色申告のどちらを選べばよいのか」「どこまで経費にできるのか」「インボイス制度に登録したら何が変わるのか」といった点です。

この記事では、フリーランスの確定申告について、必要になる基準、申告の流れ、必要書類、経費、控除、節税、インボイス制度まで初心者向けにわかりやすく解説します。なお、税制は年度によって変わるため、申告前には国税庁や自治体の最新情報も確認しましょう。

1. フリーランスの確定申告とは?まず押さえるべき基礎知識

1-1. 確定申告とは1年間の所得と税金を自分で申告する手続き

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を計算し、所得税などの税額を自分で申告・納付する手続きです。フリーランスの場合、クライアントから受け取った報酬や売上を集計し、そこから仕事に必要な経費を差し引いて所得を計算します。

たとえば、年間売上が300万円で、仕事に使った経費が80万円なら、所得は220万円です。ここから基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得に税率をかけて所得税を計算します。

確定申告は「売上を申告する手続き」ではなく、「所得と税額を正しく計算して申告する手続き」です。この違いを理解しておくと、確定申告が必要かどうかを判断しやすくなります。

1-2. フリーランスと会社員で確定申告が必要になる理由の違い

会社員は、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で税額が精算されるのが一般的です。そのため、給与収入だけで一定の条件に該当しなければ、自分で確定申告をしないケースが多くなります。

一方、フリーランスは会社に雇用されているわけではなく、業務委託契約などにより自分で報酬を受け取ります。報酬から源泉徴収されている場合もありますが、それだけで税額の精算が完了するわけではありません。自分で売上・経費・控除を整理し、最終的な税額を確定させる必要があります。

つまり、会社員は「勤務先が税金の計算を代行してくれる」のに対し、フリーランスは「自分で税金を計算して申告する」のが基本です。

1-3. 確定申告で申告する主な税金|所得税・住民税・消費税

フリーランスの確定申告で主に関係する税金は、所得税、住民税、消費税です。

所得税は、1年間の所得に対して国に納める税金です。確定申告書を提出すると、申告内容が自治体にも共有され、住民税や国民健康保険料の計算にも利用されます。

住民税は、前年の所得をもとに自治体が計算する地方税です。所得税の確定申告をしていれば、通常は別途住民税の申告は不要ですが、所得税の確定申告をしない場合でも住民税の申告が必要になることがあります。

消費税は、一定の条件に該当する課税事業者やインボイス登録事業者が申告・納付する税金です。インボイス制度は2023年10月1日から始まり、消費税額等を記載した請求書・領収書等をもとに仕入税額控除を行う仕組みとされています。

1-4. 個人事業主・業務委託・副業フリーランスの違い

「フリーランス」とは、特定の会社に雇用されず、案件ごとに仕事を受ける働き方を指す言葉です。税法上の正式な区分ではなく、実際の申告では「事業所得」または「雑所得」などとして扱います。

個人事業主は、税務署に開業届を提出して継続的に事業を行う人を指すのが一般的です。フリーランスとして本格的に活動するなら、個人事業主として開業届を出すケースが多いでしょう。

業務委託は、会社と雇用契約ではなく業務委託契約を結び、成果物や業務の対価として報酬を受け取る働き方です。副業フリーランスは、会社員として給与を受け取りながら、別に業務委託や個人の仕事で収入を得る人を指します。

同じフリーランスでも、専業か副業か、所得が事業所得か雑所得かによって、確定申告の判断や帳簿の作り方が変わります。

1-5. 確定申告をしないとどうなる?無申告・延滞・加算税のリスク

確定申告が必要なのに申告しないと、後から本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税がかかる可能性があります。期限後申告で納める税金がある場合、その申告書を提出した日が納期限となり、納付日までの延滞税も必要になります。

また、売上の帳簿がない、売上金額の記載が大きく不足しているといった場合には、加算税が重くなることもあります。フリーランスは通帳や請求書の履歴が残りやすく、取引先側の支払記録から売上漏れが判明することもあります。

「少額だから大丈夫」「支払調書が来ていないから申告しなくてよい」と自己判断するのは危険です。申告が必要か迷う場合は、早めに確認しましょう。

2. フリーランスはいくらから確定申告が必要?

2-1. 原則は「所得」が基礎控除を超えるかで判断する

フリーランスの確定申告で重要なのは、「収入」ではなく「所得」です。所得税の申告が必要かどうかは、売上から経費を差し引いた所得に対し、基礎控除などの所得控除を差し引いて税額が発生するかどうかで考えます。

以前は「所得48万円超」がよく目安として使われていましたが、令和7年分以後は所得税の基礎控除が見直されています。国税庁の基礎控除の説明では、令和7年分・令和8年分について、合計所得金額132万円以下の場合の基礎控除は95万円とされています。合計所得金額によって控除額は変わるため、最新の控除額を確認することが大切です。

ただし、基礎控除だけでなく、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除なども関係します。そのため、「所得がいくらなら必ず申告不要」と単純に決めるのではなく、所得控除を含めて税額が出るかを確認しましょう。

2-2. 収入と所得の違い|売上から経費を引いた金額が所得

収入とは、クライアントから受け取った報酬や売上の総額です。所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。

たとえば、Webデザイナーが年間200万円の売上を得て、パソコン代、ソフトウェア代、通信費、打ち合わせ交通費などで50万円を使った場合、所得は150万円です。

確定申告が必要かどうか、所得税がいくらになるかは、売上200万円ではなく所得150万円をもとに考えます。初心者は「売上が少ないから申告しなくていい」と考えがちですが、実際には経費や控除を整理しないと判断できません。

2-3. 専業フリーランスで確定申告が必要になるケース

専業フリーランスの場合、基本的には事業所得を自分で計算し、確定申告する前提で考えましょう。特に、所得から所得控除を差し引いて課税所得が残る場合は、所得税の申告が必要になります。

また、所得税がゼロになりそうな場合でも、青色申告で赤字を繰り越したい場合、源泉徴収された税金の還付を受けたい場合、住民税や国民健康保険料の計算に必要な所得情報を正しく届けたい場合には、申告するメリットがあります。

専業フリーランスは、会社員のように年末調整がありません。毎年、売上・経費・控除を集計して、確定申告が必要か確認する習慣をつけましょう。

2-4. 副業フリーランスは所得20万円超が目安になるケース

会社員が副業でフリーランス収入を得ている場合、給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になるのが一般的です。給与を2か所以上から受けている場合も、年末調整されなかった給与収入や給与以外の所得の合計が20万円を超えるかどうかが判断に関係します。

ただし、この20万円ルールは所得税の確定申告に関するものです。副業所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。自治体の案内でも、給与所得以外の所得が20万円以下でも市民税・県民税の申告が必要と説明されています。

2-5. 赤字でも確定申告したほうがよいケース

フリーランスの所得が赤字の場合、所得税は発生しないことが多いですが、確定申告をしたほうがよいケースがあります。

代表的なのは、青色申告で赤字を翌年以降に繰り越したい場合です。青色申告者は、一定の条件のもとで純損失を翌年以後に繰り越せるため、翌年以降に黒字が出たときの税負担を抑えられる可能性があります。国税庁の青色申告の手引きでも、青色申告者は事業から生じた純損失を翌年以後3年間にわたって所得金額から差し引けると説明されています。

また、事業実績を公的に示すため、融資や補助金申請のため、国民健康保険料の計算を適正にするためにも、赤字申告が役立つ場合があります。

2-6. 源泉徴収されている場合は還付を受けられる可能性がある

ライター、デザイナー、講師、カメラマンなどの報酬は、クライアント側で源泉徴収されていることがあります。源泉徴収はあくまで概算の前払いであり、最終的な税額とは一致しないことがあります。

経費や所得控除を差し引いた結果、実際の所得税額よりも源泉徴収税額のほうが多ければ、確定申告により還付を受けられる可能性があります。国税庁も、原稿料などがある人で年間所得が一定額以下の場合、確定申告により税金が還付される場合があると案内しています。

支払調書が届かない場合でも、入金明細や請求書、自分で把握している源泉徴収額をもとに申告できます。支払調書の有無だけで判断しないようにしましょう。

2-7. 住民税の申告が必要になるケースに注意

所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になるケースがあります。特に副業フリーランスで所得20万円以下のため所得税の確定申告をしない場合は、住民税の申告を忘れやすいので注意が必要です。

住民税の申告先は、原則としてその年の1月1日時点で住んでいる市区町村です。住民税の申告をしないと、所得証明書が発行できない、国民健康保険料や各種行政サービスの負担額に影響する可能性があります。

「税務署への確定申告」と「自治体への住民税申告」は別の手続きです。所得税の確定申告をする場合は通常、住民税申告を別途行う必要はありませんが、確定申告しない場合は自治体の案内を確認しましょう。

3. フリーランスの確定申告の種類|青色申告と白色申告の違い

3-1. 白色申告とは|手軽だが節税メリットは少ない申告方法

白色申告とは、青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法です。青色申告よりも帳簿の要件は比較的シンプルですが、青色申告特別控除などの大きな節税メリットはありません。

白色申告でも記帳や帳簿保存は必要です。国税庁は、事業所得などがある白色申告者について、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、請求書や領収書などの書類は5年保存する必要があると案内しています。

「白色申告なら帳簿はいらない」と誤解している人もいますが、現在は白色申告でも記帳義務があります。簡単に済ませたい人向けではあるものの、事業として継続するなら青色申告を検討する価値があります。

3-2. 青色申告とは|最大65万円控除などのメリットがある申告方法

青色申告とは、事前に税務署へ青色申告承認申請書を提出し、一定の帳簿を作成することで税制上の特典を受けられる申告方法です。

代表的なメリットは、青色申告特別控除です。国税庁は、青色申告者に対して、所得金額から55万円、一定の要件を満たす場合は65万円、または10万円を控除できる制度があると説明しています。

そのほか、赤字の繰越し、青色事業専従者給与、貸倒引当金など、白色申告にはないメリットがあります。フリーランスとして継続的に活動するなら、初心者でも青色申告を目指すのがおすすめです。

3-3. 青色申告と白色申告の違いを比較

青色申告と白色申告の大きな違いは、節税メリットと帳簿の要件です。

白色申告は、比較的シンプルな帳簿で申告できますが、特別控除はありません。青色申告は、複式簿記や貸借対照表の作成などが必要になる場合がありますが、最大65万円の青色申告特別控除を受けられる可能性があります。

会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで青色申告に必要な帳簿や決算書を作成しやすくなります。節税効果を考えると、多少手間が増えても青色申告を選ぶメリットは大きいでしょう。

3-4. 初心者でも青色申告を選ぶべき理由

初心者でも青色申告を選ぶべき理由は、節税効果が大きく、事業のお金の流れを把握しやすくなるからです。

たとえば、青色申告特別控除65万円を使えれば、課税所得を大きく減らせます。所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料の負担にも影響する可能性があります。

また、青色申告のために帳簿をつけることで、売上の増減、経費の使いすぎ、資金繰りの問題に気づきやすくなります。確定申告のためだけでなく、事業を安定させるためにも役立ちます。

3-5. 青色申告承認申請書の提出期限と出し忘れた場合の対応

青色申告をするには、税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに提出します。その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、事業開始日から2か月以内が提出期限です。

この期限を過ぎると、その年は青色申告ができず、白色申告になるのが原則です。出し忘れた場合は、翌年から青色申告できるよう、できるだけ早く申請書を提出しましょう。

開業したばかりの人は、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出すると手続き漏れを防げます。

3-6. 65万円・55万円・10万円控除の違いと要件

青色申告特別控除には、65万円、55万円、10万円があります。

55万円控除を受けるには、事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営み、原則として複式簿記により記帳し、貸借対照表や損益計算書などを添付して期限内に申告する必要があります。65万円控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または電子帳簿保存などの要件を満たす必要があります。

10万円控除は、簡易な帳簿でも適用できる控除です。ただし、節税効果は65万円控除や55万円控除より小さくなります。フリーランスとして本格的に収入を得るなら、会計ソフトとe-Taxを使い、65万円控除を目指すのが現実的です。

3-7. 開業届は必要?提出するメリットとタイミング

開業届は、個人が新たに事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。国税庁は、個人事業の開廃業等届出書について、新たに事業を開始したときなどの手続きであり、事業開始の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出すると案内しています。

開業届を出すメリットは、青色申告の申請と合わせて事業者としての手続きを整えられること、屋号付き口座の開設や融資・補助金申請で事業実態を示しやすくなることです。

副業レベルで継続性が低い場合は状況によりますが、継続的にフリーランスとして活動するなら、早めに開業届を提出しておくとよいでしょう。

4. フリーランスの確定申告のやり方・流れ

4-1. 確定申告の対象期間と申告期限

確定申告の対象期間は、毎年1月1日から12月31日までです。この期間の売上、経費、控除をまとめ、翌年の申告期間に提出します。

令和7年分の所得税・贈与税の申告・納付期限は令和8年3月16日、個人事業者の消費税等の申告・納付期限は令和8年3月31日と国税庁が案内しています。通常、所得税の確定申告期間は2月16日から3月15日までですが、土日祝日にあたる場合は翌営業日になることがあります。

期限直前は税務署や会計ソフトのサポートも混み合います。1月中に帳簿を締め、2月中に申告するくらいのスケジュールで進めると安心です。

4-2. 1年間の売上・経費・控除を整理する

まず、1年間の売上をすべて集計します。請求書、入金明細、通帳、決済サービスの明細などを確認し、売上の計上漏れがないようにしましょう。

次に、仕事に必要な経費を整理します。通信費、消耗品費、広告宣伝費、外注費、旅費交通費、会議費、書籍代、ソフトウェア代など、事業に関係する支出を分類します。

最後に、所得控除に関する資料を集めます。国民年金、国民健康保険、生命保険料、地震保険料、iDeCo、小規模企業共済、医療費、寄附金などの証明書を確認しましょう。

4-3. 帳簿を作成する|単式簿記と複式簿記の違い

帳簿には、単式簿記と複式簿記があります。単式簿記は、家計簿のように収入と支出を記録する方法です。白色申告や青色申告10万円控除で使われることがあります。

複式簿記は、取引を「借方」と「貸方」に分けて記録する方法です。売掛金、普通預金、事業主貸、事業主借、未払金なども使うため少し難しく感じますが、会計ソフトを使えば自動で仕訳されることも多くなっています。

青色申告で55万円または65万円控除を狙うなら、複式簿記で帳簿を作成する必要があります。最初から会計ソフトを使い、事業用口座やクレジットカードを連携しておくと効率的です。

4-4. 必要書類を準備する

確定申告では、確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書、本人確認書類、控除証明書、売上や経費の根拠資料などを準備します。

e-Taxで提出する場合、マイナンバーカードや利用者識別番号が必要です。紙で提出する場合は、本人確認書類やマイナンバー関連書類の添付が必要になることがあります。

医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除などを利用する場合は、それぞれ必要な明細書や証明書も確認しましょう。

4-5. 確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書を作成する

青色申告の場合は、確定申告書に加えて青色申告決算書を作成します。白色申告の場合は、収支内訳書を作成します。

青色申告決算書には、売上、仕入、経費、減価償却費、貸借対照表などを記入します。収支内訳書は、売上や経費の内訳をまとめる書類です。

国税庁の確定申告書等作成コーナーや会計ソフトを使えば、画面の案内に沿って入力することで申告書を作成できます。手書きよりも計算ミスを防ぎやすく、e-Taxにもつなげやすいのがメリットです。

4-6. e-Tax・郵送・税務署窓口で提出する

確定申告書の提出方法は、主にe-Tax、郵送、税務署窓口の3つです。

e-Taxは、自宅からオンラインで申告できる方法です。青色申告で65万円控除を受けるためにも、e-Taxの利用は有力な選択肢です。

郵送は、所轄税務署へ申告書類を送る方法です。控えが必要な場合は、返信用封筒を同封するなどの対応が必要です。

税務署窓口は、直接提出する方法です。ただし、申告期間中は混雑しやすいため、相談が必要な場合は早めに準備しましょう。

4-7. 所得税を納付する・還付金を受け取る

申告の結果、納める税金がある場合は、期限までに納付します。納付方法には、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付、税務署や金融機関での納付などがあります。

還付になる場合は、申告書に記載した口座へ還付金が振り込まれます。源泉徴収されているフリーランスは、経費や控除を正しく入力することで還付を受けられる可能性があります。

納付漏れがあると延滞税の対象になるため、申告書を提出しただけで終わりにせず、納付まで完了させましょう。

4-8. 確定申告後に住民税・国民健康保険料が決まる流れ

確定申告書を提出すると、その内容が自治体に共有され、住民税や国民健康保険料の計算に使われます。

住民税は、通常6月ごろに通知が届きます。フリーランスの場合は、自分で納付書により支払う普通徴収になることが一般的です。

国民健康保険料も、前年所得をもとに自治体が計算します。所得が増えると保険料も上がる可能性があるため、所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料の負担も見込んで資金を残しておきましょう。

5. フリーランスの確定申告に必要な書類

5-1. 確定申告書

確定申告書は、所得や控除、税額を記入するメインの書類です。事業所得、雑所得、給与所得、配当所得などがある場合は、それぞれ該当欄に入力します。

フリーランスの場合、売上から経費を差し引いた事業所得または雑所得を入力し、源泉徴収税額がある場合は忘れずに記載します。

e-Taxや確定申告書等作成コーナーを使えば、質問に答える形で必要項目を入力できるため、初心者でも作成しやすくなっています。

5-2. 青色申告決算書または収支内訳書

青色申告をする人は青色申告決算書、白色申告をする人は収支内訳書を提出します。

青色申告決算書には、損益計算書や貸借対照表などを記載します。65万円または55万円控除を受ける場合は、複式簿記による記帳と貸借対照表の作成が重要です。

収支内訳書は、売上や経費を科目ごとにまとめる書類です。白色申告でも、日々の帳簿と領収書の保存が必要です。

5-3. 本人確認書類・マイナンバー関連書類

確定申告では、マイナンバーの記載が必要です。紙で提出する場合は、マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類などが必要になることがあります。

e-Taxでマイナンバーカードを使う場合は、電子証明書の有効期限にも注意しましょう。マイナンバーカードの期限が切れていると、申告直前に慌てることになります。

5-4. 売上がわかる請求書・支払調書・入金明細

売上を確認するために、請求書、納品書、契約書、支払調書、通帳の入金明細、決済サービスの明細などを用意します。

支払調書は、クライアントによって発行されることがありますが、必ず発行されるとは限りません。支払調書が届かない場合でも、自分の請求書や入金明細をもとに売上と源泉徴収税額を確認します。

売上は、入金日ではなく、原則として仕事を完了して報酬を受け取る権利が確定した時点で計上する考え方が基本です。年末に請求した未入金の売上も漏れやすいため注意しましょう。

5-5. 経費を証明する領収書・レシート・クレジットカード明細

経費を計上するには、その支出が事業に必要だったことを説明できる資料が必要です。領収書、レシート、請求書、クレジットカード明細、銀行振込明細などを保管しましょう。

クレジットカード明細だけでは内容がわかりにくい場合があります。何を買ったか、誰と打ち合わせたか、どの案件に関係するかをメモしておくと、後から説明しやすくなります。

電子データで受け取った請求書や領収書は、電子帳簿保存法の対象になるため、原則として電子データのまま保存する必要があります。国税庁の記帳案内でも、請求書や領収書などを電子データでやり取りした場合は電子データのまま保存する必要があるとされています。

5-6. 社会保険料控除・生命保険料控除などの控除証明書

国民年金、国民健康保険、国民年金基金などを支払っている場合は、社会保険料控除の対象になります。国民年金の控除証明書や、国民健康保険料の支払額がわかる資料を用意しましょう。

生命保険料控除や地震保険料控除を受ける場合は、保険会社から届く控除証明書が必要です。

iDeCoや小規模企業共済の掛金を支払っている場合は、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。国税庁は、小規模企業共済法に基づく共済契約の掛金などを支払った場合、その支払額について所得控除を受けられると説明しています。

5-7. 医療費控除・ふるさと納税がある場合の必要書類

医療費控除を受ける場合は、医療費控除の明細書を作成します。医療費の領収書は提出不要でも、自宅で保存が必要です。

ふるさと納税をした場合は、寄附金受領証明書や自治体から発行される証明書が必要です。ワンストップ特例を利用していても、確定申告をする場合はワンストップ特例が無効になり、すべての寄附を確定申告に含める必要があります。

住宅ローン控除、雑損控除、寄附金控除などを利用する場合も、それぞれ必要書類が異なります。早めに確認しておきましょう。

5-8. インボイス登録事業者に必要な消費税関連書類

インボイス登録事業者は、所得税の確定申告とは別に、消費税の申告が必要になります。売上にかかる消費税、仕入れや経費にかかる消費税、インボイスの保存状況を整理しましょう。

インボイスには、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額、消費税額などの記載が必要です。国税庁は、インボイスは請求書に限らず、所定事項が記載された書類であれば領収書や納品書などでも該当すると説明しています。

インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写しや電子データは、原則として一定期間保存が必要です。消費税の申告が必要な人は、所得税とは別に消費税用の資料も整理しましょう。

6. フリーランスが経費にできるもの・できないもの

6-1. 経費とは事業に必要な支出のこと

経費とは、事業の売上を得るために必要な支出のことです。フリーランスの場合、仕事に使うパソコン、ソフトウェア、通信費、交通費、外注費、広告宣伝費、書籍代などが経費になる可能性があります。

大切なのは、「仕事に関係しているか」「金額が妥当か」「証拠を残しているか」です。プライベートな支出は経費にできませんし、仕事にも私用にも使う支出は家事按分が必要です。

経費にできるか迷ったら、「その支出がなければ仕事に支障が出るか」「税務署に説明できるか」を基準に考えましょう。

6-2. 通信費・サーバー代・ソフトウェア代

フリーランスにとって、通信費やIT関連費用は代表的な経費です。スマートフォン料金、インターネット回線、クラウドストレージ、レンタルサーバー、ドメイン代、チャットツール、デザインソフト、会計ソフトなどが該当します。

ただし、スマートフォンや自宅インターネットをプライベートでも使っている場合は、全額ではなく仕事で使った割合だけを経費にします。

たとえば、スマートフォンの利用のうち仕事が60%、私用が40%なら、通信費の60%を経費にする考え方です。この割合は、利用時間や使用目的に基づいて合理的に決めましょう。

6-3. 交通費・出張費・打ち合わせ費用

クライアントとの打ち合わせ、取材、撮影、セミナー参加、作業場所への移動などにかかった交通費は経費になります。電車代、バス代、タクシー代、宿泊費などが該当します。

交通系ICカードを使う場合は、履歴を保存し、どの移動が仕事に関係するのかをメモしておくと安心です。

打ち合わせで使ったカフェ代や会議室代も、仕事に関係するものであれば経費になります。ただし、単なる友人との食事やプライベートな飲食は経費にできません。

6-4. 書籍代・セミナー代・学習費

仕事に必要な知識やスキルを身につけるための書籍、セミナー、講座、オンライン教材などは経費になる可能性があります。

ライターが文章術やSEOの本を買う、エンジニアがプログラミング講座を受ける、デザイナーがデザインツールの教材を購入する、といった支出は事業との関連性を説明しやすいでしょう。

一方、仕事と関係の薄い趣味の講座や資格取得費用は、経費として認められにくい場合があります。支出の目的を明確にしておきましょう。

6-5. 家賃・電気代・インターネット代の家事按分

自宅を仕事場として使っているフリーランスは、家賃、電気代、インターネット代などの一部を経費にできる場合があります。これを家事按分といいます。

按分割合は、仕事で使っている面積や時間を基準に決めるのが一般的です。たとえば、自宅の床面積50㎡のうち10㎡を仕事専用スペースとして使っているなら、家賃の20%を経費にする考え方があります。

電気代は、仕事時間や使用機器、作業日数をもとに合理的に計算します。重要なのは、毎年同じ基準で継続し、説明できる根拠を残すことです。

6-6. パソコン・カメラなど高額備品の処理方法

パソコン、カメラ、プリンター、机、椅子などの備品は、金額によって処理方法が変わります。

取得価額が10万円未満のものは、原則として購入した年の必要経費にできます。10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一括償却資産として3年間で経費にする方法を選べる場合があります。国税庁の減価償却の説明でも、10万円未満のものや10万円以上20万円未満の資産についての取り扱いが示されています。

また、一定の中小事業者に該当する青色申告者は、10万円以上30万円未満の少額減価償却資産について、一定の条件のもとで取得価額を必要経費に算入できる制度があります。

6-7. 経費にできない支出の具体例

経費にできない支出には、プライベートな飲食費、個人的な旅行代、家族への生活費、仕事と関係のない服や美容代、所得税や住民税の支払いなどがあります。

スーツや美容院代は、仕事で人前に出るために必要と感じても、私生活でも使えるため経費として認められにくい支出です。衣装、制服、撮影用など、事業専用であることを説明できる場合は別ですが、判断は慎重に行いましょう。

罰金、交通違反金、延滞税、加算税なども経費にはできません。税金関係では、事業税や税込経理での消費税など経費になるものもありますが、所得税や住民税は経費にならない点に注意しましょう。

6-8. 領収書がない場合の対応方法

領収書をなくした場合でも、すぐに経費計上を諦める必要はありません。クレジットカード明細、銀行振込明細、メールの購入履歴、請求書、納品書などで支払い内容を確認できる場合があります。

電車代やバス代など領収書が出ない支出は、日付、行き先、目的、金額を記録した出金伝票やメモを残します。

ただし、領収書がない支出が多すぎると、税務調査で説明が難しくなります。日頃からレシートを撮影して保存する、会計ソフトに添付する、月ごとに整理するなどの仕組みを作りましょう。

6-9. 経費計上で税務調査時に見られやすいポイント

税務調査では、売上の計上漏れ、プライベート支出の経費化、家事按分の根拠、交際費や旅費交通費の妥当性、高額備品の処理などが見られやすいポイントです。

特に、売上に関する帳簿が不十分な場合は注意が必要です。国税庁は、売上に関する帳簿を保存していなかった場合や記載が不十分だった場合、通常の加算税に5%または10%が加重されることがあると案内しています。

経費は「多く入れれば節税になる」という単純なものではありません。事業との関連性、証拠、金額の妥当性を意識して計上しましょう。

7. フリーランスが使える所得控除・税額控除

7-1. 基礎控除

基礎控除は、所得税の計算でほとんどの納税者が利用できる所得控除です。控除額は合計所得金額によって変わります。

令和7年分以後の基礎控除は見直されており、令和7年分・令和8年分は合計所得金額132万円以下で95万円、所得が増えるにつれて控除額が変わります。合計所得金額2,500万円超の場合は0円です。

「フリーランスはいくらから確定申告が必要か」を考えるうえで、基礎控除は重要ですが、社会保険料控除など他の控除も含めて判断しましょう。

7-2. 社会保険料控除

社会保険料控除は、国民年金、国民健康保険、国民年金基金、介護保険料などを支払った場合に使える所得控除です。

フリーランスは会社員と違い、国民年金や国民健康保険を自分で支払うことが多いため、支払額を漏れなく控除に入れることが重要です。

家族の社会保険料を自分が支払った場合も、一定の条件で控除対象になることがあります。支払証明書や納付書、口座振替の記録を保存しておきましょう。

7-3. 生命保険料控除・地震保険料控除

生命保険料控除は、生命保険、介護医療保険、個人年金保険などの保険料を支払った場合に使える控除です。保険会社から届く控除証明書をもとに入力します。

地震保険料控除は、地震保険料を支払った場合に使える控除です。火災保険だけでは対象にならないことがあるため、証明書を確認しましょう。

控除証明書は秋から冬に届くことが多いため、確定申告まで紛失しないように保管しておくことが大切です。

7-4. 医療費控除

医療費控除は、自分や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に使える控除です。

病院代、薬代、通院交通費などが対象になることがあります。健康診断や予防接種、美容目的の費用などは対象外になる場合があります。

医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書を作成します。領収書は提出しなくても、一定期間保存が必要です。医療費が多かった年は、確定申告で控除できるか確認しましょう。

7-5. 配偶者控除・扶養控除

配偶者控除は、配偶者の所得が一定以下の場合に使える控除です。扶養控除は、子どもや親など扶養親族がいる場合に使える控除です。

フリーランス本人の所得が高くなると、配偶者控除や配偶者特別控除に影響することがあります。また、家族がアルバイトや副業をしている場合、その所得によって扶養の判定が変わることがあります。

年末時点の家族状況や所得見込みを確認し、控除の対象になるかチェックしましょう。

7-6. 小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済やiDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。支払った掛金が所得控除になるため、フリーランスの節税策としてよく使われます。

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。iDeCoは、自分で掛金を拠出して老後資金を作る私的年金制度です。

どちらも節税効果がありますが、資金が長期間拘束される、受け取り時に税金がかかる場合がある、といった注意点もあります。

7-7. 寄附金控除・ふるさと納税

ふるさと納税などの寄附をした場合、寄附金控除を受けられることがあります。フリーランスが確定申告する場合、ワンストップ特例は使えないため、寄附内容を確定申告に含める必要があります。

寄附金受領証明書をもとに、寄附先、寄附額、寄附日を入力しましょう。

ふるさと納税は、所得や家族構成によって控除上限額が変わります。上限を超えた分は自己負担になるため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。

7-8. 住宅ローン控除がある場合の注意点

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合などに使える税額控除です。所得控除ではなく、税額から直接差し引く控除のため、節税効果が大きい制度です。

会社員は2年目以降、年末調整で手続きできることがありますが、フリーランスは毎年確定申告で手続きするのが基本です。

住宅ローン控除は要件が細かく、入居時期、住宅性能、借入期間、所得要件などによって控除額が変わります。初年度は特に必要書類が多いため、早めに準備しましょう。

8. フリーランスの節税対策

8-1. 青色申告特別控除を活用する

フリーランスの節税で最も基本となるのが、青色申告特別控除です。最大65万円の控除を受けられれば、課税所得を大きく減らせます。

65万円控除を受けるには、複式簿記で記帳し、貸借対照表や損益計算書を作成し、期限内に申告したうえで、e-Taxまたは電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。

会計ソフトを使えば、初心者でも複式簿記に対応しやすくなります。事業を続けるなら、白色申告より青色申告を選ぶほうが節税しやすいでしょう。

8-2. 経費を漏れなく計上する

節税の基本は、事業に必要な経費を漏れなく計上することです。通信費、消耗品費、交通費、広告宣伝費、外注費、支払手数料、会議費、書籍代、セミナー代などを見直しましょう。

ただし、経費を増やすために不要な支出をするのは本末転倒です。節税額より支出額のほうが大きいため、手元資金は減ります。

重要なのは、必要な支出を正しく記録し、領収書や明細を保存することです。

8-3. 家事按分を適切に行う

自宅兼事務所で働くフリーランスは、家賃、電気代、通信費などを家事按分することで、仕事に使った部分を経費にできます。

按分割合は、面積、時間、使用頻度など合理的な基準で決めます。毎年割合が大きく変わる場合は、理由を説明できるようにしておきましょう。

家事按分は節税効果がありますが、過大に計上すると税務調査で指摘されやすい項目です。根拠を残すことが大切です。

8-4. 小規模企業共済を活用する

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主が退職金を準備するための制度です。掛金が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため、所得を減らす効果があります。

将来の廃業や引退に備えながら節税できる点がメリットです。ただし、任意解約の時期によっては元本割れすることがあるため、短期的な節税だけで加入するのは避けましょう。

事業資金と老後資金のバランスを考え、無理のない掛金に設定することが重要です。

8-5. iDeCoを活用する

iDeCoは、老後資金を自分で積み立てる私的年金制度です。掛金は小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。

フリーランスは会社員より公的年金が少なくなりやすいため、老後資金づくりと節税を同時に進められる点がメリットです。

ただし、原則として60歳まで引き出せない、運用結果によって元本割れする可能性がある、受け取り時に課税関係が生じるといった注意点があります。

8-6. 倒産防止共済を検討する

倒産防止共済、正式には経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備える制度です。掛金は、個人事業主の場合、事業所得の必要経費に算入できると中小機構が案内しています。

節税効果だけでなく、売掛金の回収不能リスクに備えられる点がメリットです。ただし、解約時には受け取った解約手当金が収入になるため、出口の税負担も考える必要があります。

また、令和6年10月1日以降に解約して再加入する場合、一定期間の掛金が必要経費に算入できない取り扱いも案内されています。節税目的だけで短期的に加入・解約する使い方は慎重に考えましょう。

8-7. 減価償却・少額減価償却資産の特例を理解する

パソコンやカメラなど高額な備品は、購入時に全額経費にできるとは限りません。原則として、耐用年数に応じて減価償却します。

ただし、10万円未満のものは購入した年の必要経費にできる場合があります。10万円以上20万円未満のものは一括償却資産として3年間で経費にする方法があります。さらに、一定の青色申告者は30万円未満の少額減価償却資産を必要経費に算入できる制度を使える場合があります。

高額備品を購入する前に、どの処理方法が使えるか確認しておくと、資金繰りと節税計画を立てやすくなります。

8-8. 消費税・インボイス制度への対応を考える

インボイス登録事業者になると、原則として消費税の申告が必要になります。これまで免税事業者だったフリーランスにとっては、税負担や事務負担が増える可能性があります。

一方で、取引先が課税事業者の場合、インボイスを発行できるかどうかが取引継続に影響することもあります。登録するかどうかは、売上規模、取引先の属性、価格交渉の余地、事務負担を総合的に考えましょう。

小規模事業者には2割特例や簡易課税制度などの負担軽減策がありますが、適用要件や対象期間に注意が必要です。国税庁は、2割特例について、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった人が対象と説明しています。

8-9. 節税と脱税の違い|やってはいけない申告例

節税は、法律で認められた制度や経費を正しく使って税負担を抑えることです。脱税は、売上を隠す、架空経費を入れる、プライベート支出を事業経費に見せかけるなど、不正に税金を少なくする行為です。

やってはいけない例として、入金があった売上を帳簿に入れない、実際には行っていない外注費を計上する、家族旅行を出張費にする、私物の買い物を消耗品費にする、といったものがあります。

節税は「説明できること」が大前提です。税務署に聞かれても、事業との関連性や金額の根拠を説明できる申告を心がけましょう。

9. インボイス制度と消費税の確定申告

9-1. フリーランスにインボイス制度が関係するケース

インボイス制度は、消費税の仕入税額控除に関係する制度です。フリーランスがインボイス発行事業者として登録すると、取引先に適格請求書を発行できるようになります。

取引先が企業や課税事業者の場合、相手側が仕入税額控除を受けるためにインボイスを求めることがあります。そのため、BtoBの仕事をしているフリーランスほど影響を受けやすい制度です。

一方、主な顧客が一般消費者である場合や、取引先がインボイスを必要としない場合は、登録の必要性が低いこともあります。

9-2. 免税事業者と課税事業者の違い

免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている事業者です。課税事業者とは、消費税の申告・納付が必要な事業者です。

原則として、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。個人事業主の場合、基準期間は通常2年前です。

ただし、インボイス登録をすると、売上1,000万円以下でも課税事業者として消費税申告が必要になります。登録前に、所得税だけでなく消費税の負担も試算しましょう。

9-3. インボイス登録すると消費税申告が必要になる

インボイス登録事業者になると、消費税の課税事業者になります。つまり、所得税の確定申告だけでなく、消費税の確定申告も必要になります。

消費税は、売上時に受け取った消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて計算するのが基本です。国税庁も、事業者が納付する消費税は「売上げ時に受け取った消費税額」から「仕入れ等の際に支払った消費税額」を差し引いて計算すると説明しています。

消費税申告では、請求書や領収書の保存、税率ごとの集計、簡易課税や特例の選択などが必要になるため、早めに準備しましょう。

9-4. 売上1,000万円を超えた場合の消費税申告

フリーランスの課税売上高が1,000万円を超えると、原則として2年後に消費税の課税事業者になります。

たとえば、2026年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、原則として2028年分から消費税の納税義務が発生します。個人事業主の場合は、2年前の売上が基準になるため、売上が伸びている人は早めに消費税を意識しましょう。

また、特定期間の売上や給与支払額によって課税事業者になるケースもあります。売上1,000万円前後のフリーランスは、税理士に相談するのも有効です。

9-5. 2割特例・簡易課税制度の基本

2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者の負担を軽くする制度です。売上にかかる消費税額の2割を納付税額とすることができ、仕入れや経費の消費税を細かく集計する負担を抑えられます。

簡易課税制度は、業種ごとに定められたみなし仕入率を使って消費税を計算する制度です。実際の経費が少ない業種では有利になることがありますが、逆に不利になる場合もあります。

どちらを使うべきかは、売上規模、経費率、業種、インボイス登録の経緯によって変わります。消費税は選択を誤ると税負担が大きく変わるため、慎重に判断しましょう。

9-6. インボイス登録するべきか判断するポイント

インボイス登録をするかどうかは、次のポイントで判断します。

まず、取引先がインボイスを必要としているか確認しましょう。企業案件が中心で、取引先から登録を求められている場合は、登録しないことで取引条件に影響する可能性があります。

次に、消費税の納税負担を試算します。登録により売上は変わらないのに消費税納税が発生すると、手取りが減る可能性があります。価格改定や消費税分の請求ができるかも重要です。

最後に、事務負担を考えます。請求書の記載事項、帳簿保存、消費税申告に対応できる体制が必要です。

9-7. 請求書・帳簿・領収書の保存で注意すべきこと

インボイス制度では、請求書や領収書の記載事項と保存が重要です。登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額など、必要事項が抜けていると取引先が仕入税額控除を受けられない可能性があります。

また、受け取ったインボイスがない仕入れや経費については、原則として仕入税額控除ができません。ただし、簡易課税制度や2割特例を使う場合、受け取ったインボイスを保存しなくても仕入税額控除を受けられる仕組みがあります。

請求書や領収書を紙で受け取った場合、電子で受け取った場合、それぞれ保存方法に注意しましょう。電子データは原則として電子データのまま保存する必要があります。

10. フリーランスの確定申告でよくある失敗と対策

10-1. 売上の計上漏れ

最も注意すべき失敗は、売上の計上漏れです。入金済みの売上だけでなく、年内に仕事が完了して請求済みの未入金売上も確認しましょう。

クラウドソーシング、決済サービス、銀行口座、現金取引など、売上経路が複数ある場合は漏れやすくなります。

対策として、請求書番号を連番にする、売掛金一覧を作る、月末に入金確認をするなどのルールを作りましょう。

10-2. 経費の入れ忘れ・入れすぎ

経費の入れ忘れは、税金を多く払う原因になります。一方で、経費の入れすぎは税務調査で指摘される原因になります。

クレジットカード明細、銀行明細、領収書、通販の購入履歴を確認し、仕事に関係する支出を漏れなく拾いましょう。

ただし、プライベート支出を無理に経費にするのは避けます。事業との関連性を説明できる支出だけを計上しましょう。

10-3. プライベート支出を経費にしてしまう

フリーランスは自宅や私物を仕事にも使うことが多いため、プライベート支出との線引きが難しくなります。

家賃、通信費、電気代、スマートフォン代などは、仕事で使った部分だけを家事按分します。全額を経費にすると、実態と合わない場合に指摘される可能性があります。

按分率は、面積、時間、使用頻度などに基づいて決め、根拠をメモしておきましょう。

10-4. 源泉徴収税額を入力し忘れる

報酬から源泉徴収されている場合、確定申告書に源泉徴収税額を入力し忘れると、還付が少なくなったり、税額が高く計算されたりします。

支払調書が届かない場合でも、請求書や入金額から源泉徴収額を確認できることがあります。

たとえば、請求額から10.21%が差し引かれて入金されている場合、源泉徴収されている可能性があります。クライアントの支払明細も確認しましょう。

10-5. 控除証明書をなくしてしまう

生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCo、小規模企業共済、国民年金などの控除証明書をなくすと、申告作業が止まりやすくなります。

多くの場合、再発行は可能ですが、申告期限直前だと間に合わないことがあります。

控除証明書が届いたら、紙のまま保管するだけでなく、スマートフォンで撮影しておくと安心です。

10-6. 申告期限を過ぎてしまう

申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税の対象になる可能性があります。期限後申告でも、自主的に早く申告すれば負担を抑えられる場合がありますが、放置するほどリスクは高まります。

申告期限に間に合わないと気づいたら、できるだけ早く申告しましょう。国税庁は、期限後申告であっても、一定の要件を満たす場合には無申告加算税がかからないことがあると案内しています。

10-7. 青色申告に必要な帳簿を作成していない

青色申告65万円・55万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿や貸借対照表などが必要です。帳簿が不十分だと、控除額が下がる可能性があります。

1年分をまとめて処理しようとすると、取引内容を思い出せず、ミスが増えます。

毎月1回は帳簿を確認し、未処理の領収書や入金を整理しましょう。会計ソフトを使えば、銀行口座やカード明細を自動取得でき、作業を大幅に減らせます。

10-8. 住民税・国民健康保険料の支払いを見落とす

確定申告が終わっても、税金の支払いは所得税だけではありません。後から住民税や国民健康保険料の通知が届きます。

特に、前年の所得が増えた人は、翌年の住民税や国民健康保険料が大きく上がることがあります。

確定申告後に納税資金が足りなくならないよう、売上の一部を税金用口座に分けておくと安心です。

11. フリーランスの確定申告を楽にする方法

11-1. 普段から売上・経費を記録する

確定申告を楽にする最大のコツは、普段から記録することです。1年分をまとめて処理しようとすると、領収書をなくしたり、経費の内容を忘れたりします。

毎週または毎月、売上と経費を会計ソフトに入力しましょう。最低でも月1回は帳簿を確認する習慣をつけることが大切です。

日々の記録ができていれば、確定申告前に慌てることがなくなります。

11-2. 事業用口座とプライベート口座を分ける

事業用口座とプライベート口座を分けると、売上と経費の管理が格段に楽になります。

同じ口座で生活費、家賃、趣味の買い物、事業売上が混ざると、帳簿付けが複雑になります。事業用口座に売上を入金し、事業経費もその口座から支払うようにすれば、取引の流れが明確になります。

屋号付き口座を作る必要は必ずしもありませんが、事業専用の銀行口座を用意するのがおすすめです。

11-3. クレジットカードを事業用に分ける

クレジットカードも、事業用とプライベート用を分けると便利です。事業用カードで経費を支払えば、明細がそのまま経費チェックリストになります。

会計ソフトと連携すれば、カード明細を自動取得して仕訳候補を作成できます。

プライベート利用が混ざる場合は、事業主貸として処理する必要があり、手間が増えます。できるだけ事業用カードには事業支出だけを集めましょう。

11-4. 会計ソフトを使って帳簿作成を効率化する

会計ソフトを使うと、帳簿作成、青色申告決算書、確定申告書の作成が効率化できます。銀行口座やクレジットカード、決済サービスと連携すれば、入力作業を大きく減らせます。

簿記の知識が少なくても、取引内容を選ぶだけで仕訳できるソフトもあります。

青色申告65万円控除を目指すなら、会計ソフトとe-Taxの組み合わせが現実的です。

11-5. e-Taxとマイナンバーカードを活用する

e-Taxを使えば、税務署に行かずに自宅から申告できます。青色申告65万円控除の要件にも関係するため、フリーランスにとってメリットが大きい方法です。

マイナンバーカードを使う場合は、カード本体の有効期限と電子証明書の有効期限に注意しましょう。

申告期限直前に設定すると、カードの読み取りやパスワード忘れで時間がかかることがあります。早めにログイン確認をしておきましょう。

11-6. 税理士に依頼したほうがよいケース

売上が増えてきた、消費税申告が必要になった、インボイス登録をした、外注費や源泉徴収が複雑になった、税務調査が不安という場合は、税理士に依頼するのも選択肢です。

税理士費用は事業に関係する支出であれば経費にできます。費用はかかりますが、申告ミスの防止、節税提案、税務調査対応、経理時間の削減といったメリットがあります。

特に、課税売上1,000万円前後、法人化を検討している、消費税の計算が不安な人は、早めに相談するとよいでしょう。

11-7. 確定申告前に確認するチェックリスト

確定申告前には、次の点を確認しましょう。

売上はすべて計上したか。未入金の請求分を忘れていないか。経費の領収書や明細は整理したか。家事按分の割合は合理的か。源泉徴収税額を入力したか。社会保険料や保険料控除を入れたか。医療費控除やふるさと納税を忘れていないか。青色申告決算書または収支内訳書を作成したか。納付方法を決めたか。

このチェックを毎年使うことで、申告ミスを大きく減らせます。

12. フリーランスの確定申告に関するよくある質問

12-1. フリーランス1年目でも確定申告は必要?

フリーランス1年目でも、所得があり、所得控除を差し引いて税額が発生する場合は確定申告が必要です。

開業初年度は売上が少なくても、源泉徴収されていれば還付を受けられる可能性があります。また、青色申告で赤字を繰り越したい場合も申告するメリットがあります。

1年目こそ、帳簿の付け方や経費の整理に慣れるため、早めに準備しましょう。

12-2. 売上が少ない場合は確定申告しなくていい?

売上が少ないだけでは判断できません。重要なのは、売上から経費を差し引いた所得と、そこから所得控除を差し引いた後に税額が出るかどうかです。

また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になるケースがあります。

「売上が少ないから何もしない」と考えず、所得を計算したうえで判断しましょう。

12-3. 赤字の場合も確定申告したほうがいい?

赤字の場合、所得税は発生しないことが多いですが、青色申告なら赤字の繰越しができる可能性があります。

また、所得を正しく申告しておくことで、住民税や国民健康保険料の計算、所得証明書の発行、融資や補助金申請に役立つ場合があります。

事業として継続するなら、赤字でも申告を検討しましょう。

12-4. 支払調書が届かない場合はどうする?

支払調書が届かなくても、確定申告は必要です。支払調書は申告に必須の書類ではなく、届かないこともあります。

自分の請求書、入金明細、契約書、クライアントの支払明細をもとに、売上と源泉徴収税額を確認しましょう。

支払調書がないから売上を申告しなくてよい、ということにはなりません。

12-5. 領収書は何年保存する必要がある?

保存期間は申告方法や書類の種類によって異なります。白色申告者の場合、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、請求書や領収書などの書類は5年保存が必要とされています。

青色申告者の場合、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿、損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類は7年、その他の請求書や見積書などは5年保存が基本です。

電子データで受け取った書類は、電子データのまま保存する必要がある点にも注意しましょう。

12-6. 確定申告を忘れたらどうすればいい?

確定申告を忘れた場合は、できるだけ早く期限後申告を行いましょう。放置すると、無申告加算税や延滞税の負担が増える可能性があります。

申告期限を過ぎても、申告書は提出できます。必要書類を集め、早急に売上・経費・控除を整理しましょう。

税務署から指摘される前に自主的に申告したほうが、ペナルティを抑えられる可能性があります。

12-7. 会社員の副業フリーランスは会社にバレる?

副業が会社に知られる主なきっかけは、住民税の通知です。副業所得により住民税が増えると、勤務先が給与に対して住民税額が高いことに気づく可能性があります。

確定申告書の住民税に関する欄で、給与所得以外の住民税を「自分で納付」にすることで、普通徴収にできる場合があります。ただし、自治体の取り扱いや副業の内容によっては希望どおりにならないこともあります。

会社の就業規則、副業の内容、住民税の徴収方法を確認しておきましょう。

12-8. 税理士に依頼する費用は経費にできる?

事業の確定申告や税務相談のために税理士へ支払う費用は、原則として事業に関係する支出として経費にできます。勘定科目は「支払手数料」や「顧問料」などで処理することが一般的です。

ただし、個人的な相続相談やプライベートな税務相談など、事業と関係のない部分は事業経費にできません。

税理士に依頼した場合は、請求書や領収書を保存し、事業に関係する内容であることを説明できるようにしておきましょう。

まとめ

フリーランスの確定申告は、売上から経費を差し引いて所得を計算し、所得控除や税額控除を反映して税額を申告する手続きです。会社員のように年末調整で完了しないため、自分で帳簿を作成し、期限までに申告・納付する必要があります。

確定申告が必要かどうかは、収入ではなく所得で判断します。専業フリーランスは、所得から控除を差し引いて税額が発生するかを確認しましょう。副業フリーランスは、所得20万円超が所得税の確定申告の目安になりますが、20万円以下でも住民税の申告が必要になる場合があります。

節税を考えるなら、青色申告特別控除、経費の適切な計上、家事按分、小規模企業共済、iDeCo、減価償却の制度を正しく活用することが大切です。一方で、売上除外や架空経費、プライベート支出の経費化は脱税につながるため避けましょう。

インボイス登録事業者は、所得税だけでなく消費税の申告も必要になります。2割特例や簡易課税制度などの選択肢もありますが、要件や有利不利を確認することが重要です。

確定申告を楽にするには、普段から売上と経費を記録し、事業用口座とカードを分け、会計ソフトとe-Taxを活用することです。早めに準備を始めれば、フリーランスの確定申告は決して難しいものではありません。